海図の世界史: 「海上の道」が歴史を変えた (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106037177

作品紹介・あらすじ

古来、地図には二種類あった。陸上で自分たちの知りうる範囲を描いた「マップ」、何もない海上での航海のために正確な経線・緯線を付した「チャート」。「チャート」すなわち海図を描くこととは、世界を俯瞰する試みでもあった。新大陸発見、産業革命、資本主義の誕生、世界大戦…海の視点から読みとくと、全く新たな通史が見えてくる。

感想・レビュー・書評

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  • [評価]
    ★★★★☆ 星4つ

    [感想]
    本書では海洋を中心とした世界の繋がりと海洋の地図についてを解説している。大航海時代を築いたのがヨーロッパなので、そちら中心の内容とはなっているが、海と海を通じた交易が歴史に大きな影響を与えることがよく分かる内容になっている。

  • 紀元前から現代までの人類史を海図の励起を通して、振り返った本、
    庁舎は高校の教師を経て大学の教授となった宮崎正勝氏、2000年以上にわたる人類の通史を海図を通してえがくという視点が面白かった。
     地図は自国を大きく捉えがちであったり、あるいは逆に未知の大陸が(未知故に)大きく描画されたりいろいろと本当の地形図を知る我々からは面白く歪められてきた。
     そのなかでプトレマイオスの世界地図は正確なところも不正確なところも含めて後世に与えた影響が甚大であったことがわかる。
     大航海時代に欧米はアジアに進出してきたが、あくまでの財をなすためであったことがよくわかる。
     イスラム勢力が貿易を担っていたときは非人間的なことはあまりおこらなかったのに、スペイン、ポルトガル、オランダ、イギリス、フランス、アメリカが影響力を持つと。大虐殺、植民地化、奴隷、支配、などパンドラの箱が開かれたようにこの世の災厄が人類に降りかかる。
     これは香辛料、貴金属、砂糖などの商品が換金制が高く、保存性があり、比較的軽いという理由によるのだろう。
     話は面白いのだが、掲載されている地図が不鮮明でいまひとつ。本の値段が高くなっても大きな地図を載せてもらいたかった。

  • ふむ

  • 2015.06.06 図書館で見つける。

  • 世界史の見地から国家覇権の変遷についての記述は詳しいが、海図との関連性はうすい。海図について述べているというよりは、海洋への冒険の歴史、あるいは海洋覇権の変遷についての本といえる。なぜ、いにしえの時代の人が、正確な地図を描けなかったのかに焦点を当てず、海図が正確でなかったがためにビジネスがうまくいかなかったと記すのはいかがなものか。正確な時計がない限りは正確な海図は作れないのである。発明されていない事項を理由として結論づけ、論理を展開しても意味がないであろう。そもそも、航海学の基礎すらわかっていない。正確な時間が必要なのは航続時間を計測するためではなく、天体観測をした時、地球の自転による現在位置補正をするためである。地球は自転しているから、4分の誤差のある時計は、経度で1°の誤差を生み、これが赤道上であれば60海里、すなわち100km以上の誤差が生ずるのである。著者は、なぜ正確な時間がわからなければ経度が計測できないのかがわかっていない。航続時間の誤差なら、経度のみならず緯度にも影響するではないか。航海学の発展や技術の推移に焦点を当てることなく海図について語っても深みのある研究にはならない。また、地名について現代名や解説がなく、また人名も一般的呼称と違うなど、素人にはわかりづらかった。
    ちょっと期待はずれの本であった。

  • 地図の本は読まねば、ということで・・・
    地図はMapであるが、海図はChart。
    Chartは「二つ以上の対象の相互関係や変化の状態を図形的に表現したもの」と言う事でChartで示されるのは方位と距離である。海図の歴史は航路開発の歴史でもある。そして本格的な遠洋航海はこの方位と距離がいかに正確に測れるかという技術の進歩とともにあった。

    本書は、ヨーロッパの列強がアジアへの海路、新大陸への航路、そこから太平洋を越えて世界を繋ぐ航路の開発とその目的である交易そこから派生する植民政策の拡大の歴史を描いている。

    本書の欠点は図版が少ないことである。電子書籍だから図版を省略しているのかと思ったが、人様のレビューをみても判りにくいと言う意見が散見され、どうも書籍版の方にも図版はあまり無いようだ。地図を文章で説明されてもピントこないのである。

    面白いと思ったのは、古代ギリシャの時代から地球は丸いと言うことが天体観測の結果として判っていたと言う事である。いつの間に世界の果てでは水が瀧のように落ちているという世界観が出てきたのだろうか。

  • どうしても西洋史に偏りがちなのは仕方ないか、でも第二次大戦は宣戦したのはアメリカではないのでそこは訂正されたい。
    海図とともに世界観がどう形成され、世界が繫がり歴史が織り成されてきたかってとこで自分にとっては新しくて面白い視点だった。ギリシャ人のプトレマイオスの世界図、これが人々の世界観に影響を与え続けたこと。その中でポルトラーノになり開拓されていく海。大航海時代の探検。少ない誤差で大洋を渡るために生み出されたメルカトル図法。英海軍による世界の測量、そして海を通して繋がる世界。

  • SLBA選定図書 2012年度 第3期 Bセットから

    新大陸発見、産業革命、資本主義の誕生、世界大戦・・・
    世界史の陰にはいつも1枚の「海図」があった。
    海からの視点で描く新しい通史。

    分類 557/ミ

  • 【配置場所】工大選書フェア【請求記号】557.78||M【資料ID】91123498

  • 地中海・大西洋、インド洋、太平洋をそれぞれ第一、第二、第三の海として、ヨーロッパの航海者の行動範囲が時代とともに広がっていく様子を海という視点からまとめ上げた歴史書。
    膨大な資料に基づく興味深い逸話が数多く盛り込まれているにも関わらず、全体の構成がしっかりしていて散漫になることなく、最後まで興味深く読むことができた。
    西洋史の視点に偏っている点、著者の専門外と思われる現代の海図に関する記載がやや貧弱な点は気になった。

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著者プロフィール

1942年,東京生まれ.東京教育大学文学部史学科卒業.
都立三田高等学校,九段高等学校,筑波大学附属高等学校教諭(世界史担当),筑波大学講師(常勤)などを経て,現在は北海道教育大学教育学部教授.
1975年から1988年までNHK高校講座「世界史」(ラジオ・TV)常勤講師.

「2005年 『ハイパワー世界史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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