皮膚感覚と人間のこころ (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106037221

作品紹介・あらすじ

外界と直接触れ合う皮膚は、環境の変化から生体を守るだけでなく、自己と他者を区別する重要な役割を担っている。人間のこころと身体に大きな影響を及ぼす皮膚は、脳からの指令を受ける一方で、その状態を自らモニターしながら独自の情報処理を行う。その精妙なシステムや、触覚・温度感覚のみならず、光や音にも反応している可能性など、皮膚をめぐる最新研究。

感想・レビュー・書評

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  • 特に1番印象的だったことは、視覚障害者が舌になんらかの圧を加え、学習させると、ボールをバットで撃てるようになること。
    舌はご飯を食べる時にも使うし、キスをする時にも使うけど、確かに感じると言うことに全てが集約されてるのかも。
    視覚・聴覚は記号化できるけど、触覚と嗅覚だけは確かに人によって感じ方が違う。おもしろい。


    以下記憶したい部分を抜粋。

    顔面フィードバック・・・自分の顔の表情が、その感情を誘導する
    口が笑っている形になるだけで、人間はより楽しい気分になる
    拒食症患者は健常者に比べて、触覚による図形の把握が下手

    不幸な幼少期を送って脳構造にその影響が残ったとしても、あるいはうつ病になりやすい遺伝子を持っていても、その後の生き方の選択によって、幸福な人生を得ることができる。

    毛づくろいがサルに快感をもたらす

    毛繕いをしながら学習すると学習効率が高くなる

    男性より女性の方が、肌や髪の荒れに対して不快に感じる

    言葉を駆使できるようになるまで、人間は触れ合うことによって相手の気分や意識を察していたのかも。

    マッサージはエイズを治す細胞を増やすことができる、メカニズムは明らかになってないが、実証例がある。

    皮膚のケアが心のケアにもつながる
    肌が乾燥してると、心も不安症やうつになったりする

    糖をなめるだけで、自己意識が変わる。排卵期の女性はより肌を露出させる

    相手がなければ自分というものもなく、自分がなければさまざまな心も現れようがない。これこそが真実に近いのだ。「荘子」

    右脳に言語能力はない。言語による説明は左脳でしかできない。
    左脳が、さまざまな情報から辻褄の合う関連性を構築する役割を担う(情報処理能力)

    自分で自分に触れた時より、他人に触られた時の方が心地よく感じる、という報告がある。
    誰が触ったかが大きな影響を及ぼす。

    意識は脳という臓器だけでは生まれない。身体のあちこちから、もたらされる情報と脳との相互作用の中で生まれている。
    つまり皮膚感覚は意識を作り出す重要な因子。

    五感がもたらすさまざまな刺激のうち、皮膚感覚ほど個々の快・不快を惹起(じゃっき)するものはない。例えば性的な接触は強烈な快感をもたらし、逆に皮膚の痛みや痒みは、堪え難い不快をもたらす。

    システムの中で生きてる人間を(視覚や聴覚は電気信号に変化しやすい)皮膚感覚は突然、個人に戻してしまう。皮膚感覚が個人の意識に結びついていて、自己と他者を区別するという重大な役割を担っている。

    視覚障害者に舌への圧刺激で入力された情報は本来、視覚情報を受け持つ領域で処理される。ボールをバットで打つことができるようになる。

    脳の感覚は五感それぞれで部位は異なっていゆが、それらは固定されたものではなく、状況によって使い方が変わる。

    皮膚感覚は個々の意識の影響を受けやすいものだが、視覚の代わりを担える。

    外部の世界を最初に認識するのは皮膚感覚。

    化粧行為の中には、身体運動を引き出す効果、皮膚へのマッサージ効果、香料が嗅覚を通じてもたらすストレス緩和効果をもたらす。
    メイクアップとスキンケアをすることは、コミュニケーション能力の有意な向上がある。

    認知症の女性も失われつつあった身体意識を取り戻し、認知能力、コミュニケーション能力、運動機能の回復。食事、着替え、ベッドや椅子への移乗の能力も改善。手の握力も向上。

    身体と世界との境界である皮膚を彩るという行為。古い時代には、体を彫るイレズミが行われていた。その記憶が身体の奥深くに残っているのではないか。

    人間にとって美しくありたいという欲求は、食欲にも劣らない欲求。

    数学を駆使できる人間は、創造主に近づくことを許された存在なのかもしれない。

    単なる観察では人間が予想できなき事柄について、ある程度までなら予見することも可能。

  • とてもカタイ内容でした。著者の非科学的なことが嫌いなところ、データ重視な面がうかがい知れる本です。

  • ふむ

  • 141

  • 皮膚について様々な観点から分析を試みた本。
    皮膚感覚と人間の心との関係から始まり、皮膚の防御機能、表皮の機能、皮膚感覚が体に発信するメッセージと進んでいく。
    温かい飲み物を渡すと、その人の心も温められるっていうのは凄い面白いと思った。
    また、皮膚がブルーレイに記録されている高周波の音を聞き取ってるかもしれないという意見も非常に興味深かった。

  • 半分ぐらい斜め読みでした。機会があれば再読したい。
    頭に残っているのは,皮膚は音も光も感じるということ。ガムランの生演奏ではトランス状態になる場合もあるが,CD演奏ではならないとのこと。これは,耳には聞こえない周波数の音が,皮膚を通して人間に作用しているのではないかと考えられるそうだ。塾の講義もネット受講とライブ受講とでは,何か決定的に違うなと感じていたのは,この皮膚で感じることだったのかもしれない。

  • 皮膚感覚と人間のこころ (新潮選書)

  • 視覚や聴覚に注目しがちだが、
    皮膚感覚はどこまで備わっているか
    検証している。

  • ビブリオバトル in 阪大 第二部

  • 皮膚には聴覚も視覚も備わっていて、情報処理も可能な「外脳」である、というロマンティックなお話。

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著者プロフィール

1960年生。京都大学工学博士。資生堂研究員、JST CREST研究者、広島大学客員教授を経て明治大学MIMS研究員。主著に『皮膚感覚と人間のこころ』 『驚きの皮膚』。表皮研究で世界的に知られる。

「2021年 『サバイバルする皮膚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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