戦争の日本中世史: 「下剋上」は本当にあったのか (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 32
  • Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106037399

作品紹介・あらすじ

源平合戦から応仁の乱まで、中世の二百年間ほど「死」が身近な時代はなかった――。手柄より死を恐れた武士たち、悪人ばかりではなかった「悪党」、武家より勇ましいお公家さん、戦時立法だった一揆契状……「下剋上」の歴史観ばかりにとらわれず、今一度、史料をひもとき、現代の私たちの視点で捉え直してみれば、「戦争の時代」を生きた等身大の彼らの姿が見えてくる。注目の若手研究者が描く真の中世像。

感想・レビュー・書評

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  • Lv【初心者】

    初心者にも歴史研究書読み込んでいる層にも面白い!
    日本史自体の研究史照らし合わせつつ、実態を探る。

    やはり自分でもこのカテゴライズは惜しいのだけど、「室町人の精神」「破産者たちの中世」「大飢饉、室町社会を襲う!」などこの時代の本と合わせて読むと面白味が倍増する。

    「そこにシビれる憧れるゥッ」だけじゃない面白さ

  • 特徴に「階級闘争史観」へのアンチテーゼがあるが、自分にはそれが何か分からず、所謂従来の定説と読み替えたが、結果個人的には著者の主張が空回りした格好になった。日本中世の情勢や局面を現代に例える箇所もさほど腑に落ちず。史料が多用されているので、当時の実情を垣間見るには良かった。南北動乱期あたりの経過は、所領をめぐる小事件の連続で、一つ一つ追っていては面白い読み物にはならないと再認識。

  • ふむ

  • めちゃくちゃ読み応えがありました‼︎中世史ビギナーの癖していきなり手に取ったので(無謀)、蒙古襲来から応仁の乱まで、もうちょい勉強してから読んだらもっと頭に入るかなという感じです。

    あとがきにも書かれてましたが、一番面白かったのは思考のプロセスを全て書かれてたことですね!

    史料の読み方、評価の仕方、疑問に対してどういう思考プロセスで掘り下げていくのか、疑問の持ち方に至るまで惜しげなく開陳してあるので本当に勉強になりました。

    私はどうも枠組みとか制度とか構造から考えていくのが面白いみたいで、ようやく中世史の面白さの端緒を掴ませてもらった感じです。中世史引き続き掘り進めて行きたいです!(やる気)

  • 応仁の乱で一躍有名になった著者の前著。
    最後に「ハト派こそがリアリズムに徹するべきである。そのために歴史学が貢献できることは、まだまだあると思っている。」また、あとがきに「私は軍事学の専門家ではないし、ミリオタでもない。にもかかわらず中世の戦争を取り上げようと思ったのは、この分野の研究が一番遅れているからだ。」と記載のあるように、鎌倉中期から室町期を通じての戦争(合戦)に向かう武士の姿を丁寧に描き出しつつ、戦争の姿、平和の姿を見いだそうとしている。教科書では単に年表的に過ごされ、歴史小説では武勇伝的に描かれる武士の姿が、単にそれだけではない様子で丁寧に論じられるのが好ましい。また、時折顔を出す今風の表現や、会社組織になぞらえた比喩がこの著者の魅力。

  • 社会科学に興味があるなら『応仁の乱』よりもこっち。制度の特徴が歴史にどのように影響を与えたか、社会環境の変化に応じて制度が生成・変化していく様の記述が多々ある。(かなりくどいが)戦後史学、特に日本史研究に対してマルクス主義がいかに影響を与えていたかを考えさせられるのもよいところ。

  • 鎌倉幕府末期から南北朝の争いを経て応仁の乱までの日本中世、戦乱は乱発し、武士たちにとって「死」は身近な時代だった。だから、その時代の日本人は今とは違って、喜び勇んで戦乱に身を投じていたと考えるかもしれない。

    しかし、どの時代だって、人間は死を恐れるし、平和に暮らしたいはず。そう考えて日本中世史をながめてみれば、違う世界、人間が見える。

    南北朝に分裂した天皇家と足利将軍が争い合う時代、武士たちは裏切りを繰り返し、複雑で混沌としていた。著者はこうした離合集散する武士たちのマインドについて、死を避け、富を得るために戦闘参加していたとシンプルに定義する。忠義、正義なんて言葉が登場する前の時代であればこその斬新な発想。

    武士同士の戦闘に大義や革命、階級闘争なんて大げさな意味を見つけようとせず、現代と同じ人間の行動だと割り切ってしまえば、臆病で、子孫を守りたいという今と同じ感情が浮かび上がる。歴史上の人物はドラマチックであってほしいという大河ドラマファンと歴史学者の考え方は異なるのだ。

  • 本著で扱われている時代は、鎌倉末期から室町時代、元寇から応仁の乱くらいまでの期間。

    一通り日本史は学んできたつもりだが、鎌倉末期から室町時代というのは正直なところ印象が薄い時代である。
    建武の新政、南北朝、北山文化・東山文化、応仁の乱くらいで、そこから先は戦国時代、あんまり明確なイメージが無い。
    大河ドラマなどテレビの史劇でも、戦国時代や幕末を舞台にしたものは圧倒的に多く、あとは源平もので、室町時代を舞台にしたのは本著でも取り上げられている91年の大河ドラマ「太平記」くらいか(観ていなかったので覚えていないが)。
    この時代がここまで影が薄くなってしまったのは、建武の新政や南朝正統論が戦前の皇国史観で特別な意味を持っていたことの反動もあるのかもしれない。

    そんな影の薄い時代だが、本著により詳細に振り返ってみると、これが酷い内戦の時代であったことが分かる。
    内戦といっても、天下統一のロマンだとか、或いは憎悪の連鎖だとか、わかりやすいドラマチックな構図ではなく、武士も公家も僧侶もただただ生き延びるための戦いで疲弊していた時代。
    しかも戦場は東国から九州まで広範囲に及び、各陣営は遠く離れた場所への遠征を余儀無くされていた。

    経済的な負担の大きさや、死や一族の滅亡が隣り合わせであったという時代背景を考慮に入れて、この時代の政策や社会制度を捉え直す試みもされている。
    例えば、
    ・徳政令は、御家人救済策というよりも、御家人の所領取り戻しを認めて彼らが軍役負担をできるようにするため、幕府の軍事上の必要性から採られた政策である。
    ・一族のサバイバルのために、養子を早期選定したり、兄弟で均分に相続するなどの対策が採られた。
    など。

    著者の前著「一揆の原理」と同様、戦後歴史学が傾倒していた「階級闘争史観」を忘れ、この時代を生きた人々の「現実的な事情」を想像することに基点をおいたクールな視座が展開されます。

    それにしても、細川、畠山、斯波、山内、大友、赤松、山名、大内といった有力氏族が、時に兄弟・親族間で争い、陣営をくっついたり離れたり、しかも同じような紛らわしい名前の人物が多く、とても覚えきれない。
    そのあたりもこの時代がとっつきにくくなってしまっている理由の一つかもしれません。

  • [評価]
    ★★★★☆ 星4つ

    [感想]
    最近、『応仁の乱』で有名になった呉座勇一の著作
    従来の武士のイメージを覆す内容となっている。この本の面白いところは歴史というものが対象となる時代だけではなく、解釈された時代の影響を受けている事に触れていることだ。
    この本では従来の階級闘争史観に基づき書かれた歴史に異を唱えている。要所要所の内容は行き過ぎたことも書かれていると思うが、中々に面白い内容だった。
    武士の継承が時代の状況に合わえて分割相続になったり、長子相続になったりと変化していたことは以外だった。また、武士も戦乱が収束に向かうと平和が望んだということが面白い事実だった。

  •  「応仁の乱」よりずっと読みやすく分かりやすい。ぼくのような素人が応仁の乱の上っ面だけを知りたいのなら、本書最終章の「山名宗全と戦後レジーム」以降だけで充分。とは言え、そこに至る過程を知っておく方が遙かに理解は深まる。

    はじめに――「戦争の時代」としての日本中世
    第一章 蒙古襲来と鎌倉武士
    「戦争」を知らない鎌倉武士/蒙古襲来は避けられた戦争?/鎌倉幕府の“平和ボケ”/一騎打ちは本当にあったのか/鎌倉武士の装備/武士団の構成/日本軍の弱点/「モンゴル軍優勢」という虚構/「神風」は吹いたか/モンゴル軍撤退の真因/戦後日本の「平和主義」/遺言状を書いて出陣/幕府権力の変質/「戦時体制」と鎮西御家人/鎌倉後期は「戦争の時代」か
    第二章 「悪党」の時代
    楠木正成は悪党?/『峯相記』に描かれた虚像/訴訟用語としての「悪党」/宗教用語としての「悪党」/「悪党」論の限界/有徳人=ヒルズ族の登場/有徳人はなぜ僧侶なのか/坊主の姿をした武士たち/「一円化」というサバイバル/「都鄙名誉の悪党」寺田法念 「悪党」は強かった?/なぜ鎌倉幕府は滅びたのか
    第三章 南北朝内乱という新しい「戦争」
    後醍醐天皇と足利尊氏/“圧勝”が後醍醐天皇を過信させた/足利尊氏は躁鬱病か?/東奔西走する兄・尊氏/「政道」を任された弟・直義/幕府の内紛で“六〇年戦争”に/守護と大将/転戦する武士たち/略奪という軍事作戦/兵粮料所の設定/半済令とは何か/陣夫と野伏/「戦術革命」はあったか
    第四章 武士たちの南北朝サバイバル
    戦いたくない武士たち/続出する戦死者/死地に赴く気構え/戦死以外のリスク/武士たちの危機管理型相続/一族団結の必要性/それでも団結は難しい/思いがけず長期化した内乱/「天下三分」はいい迷惑/遠征の忌避と「一円化」の進行/「危機管理システム」としての一揆/戦時立法だった一揆契状
    第五章 指揮官たちの人心掌握術
    催促か勧誘か/戦うお公家さん/北畠顕家の地方分権論/北畠親房は“上から目線”か/親房の「失敗の本質」/今川了俊は悲劇の名将か/足を引っ張られた了俊/大将はつらいよ/約束手形をばらまく/大義名分を説く/大将同士の交渉/軍勢の「勧進」/旅する僧侶/「勧進」も軍功/大将たちの「大本営発表」
    第六章 武士たちの「戦後」
    遠征は諸刃の剣/足利義詮の挫折/畠山国清の勘違い/遠征はもうこりごり/大内氏・山名氏の「降参」/応安大法は“大規模戦闘終結宣言”/戦闘態勢の解除/足利義満の一族離間策/内乱の幕引き/弓矢よさらば
    終章 “戦後レジーム”の終わり
    妥協の産物としての「室町の平和」/足利義持と諸大名の“手打ち”/“ハト派”の重鎮、畠山満家/「戦後レジームからの脱却」を目指して/室町幕府の「終わりの始まり」/追いつめられた赤松満祐/将軍犬死/「幕府を、取り戻す」/空洞化する京都/山名宗全と“戦後レジーム”/足利義政の錯誤/足軽と土一揆/村の“集団的自衛権”/勝者なき戦争/墓穴を掘って下剋上/平和は「きれい」か[/private]

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著者プロフィール

国際日本文化研究センター(京都市)助教。専門は中世の日本の歴史研究。著書に「日本中世への招待」「陰謀の日本中世史」など。

「2020年 『1偉人1分 まんがでサクッと日本史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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