- Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106037535
作品紹介・あらすじ
知られざる「諸子百家」の異端! その痛快無比なる面白さ――。死なない方法を見つけた男、ウィンクするアンドロイド、人格の入れ替え譚、あべこべ病、天が抜け落ちる「杞憂」……アイロニカルで残酷、そして突拍子もないユーモア、現代の我々をも十二分に魅了するストーリーテラーぶり。論理立った正論の儒家、逆説の無為を説く老荘思想、そのどちらでもない第三の道を行く列禦寇の世界。
感想・レビュー・書評
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朝三暮四や杞憂などの故事成語の典拠として知られる『列子』だが、それ以外はあまり知られていない。老荘思想の流れを組みながらも独自なストーリー展開をする『列子』の魅力をこの本は分かりやすく説明してくれる。
逆説や意図的な論理矛盾、まとまらない終わり方など現代小説が行っている手法の原点がここにあったと分かる。古代中国には創作が生まれにくかったというのが私の先入観にあるが、どうもこれは違っていたようだ。
作り話は語らないというふりをしながら壮大な嘘を語るのが中国文学の本質であると気づかせてくれるのだった。
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あべこべ病、孔子の憂鬱、心臓移植(人格の入れ替え)、ウィンクをするロボットなど、妙ちきりんな話がたくさん。
ひねくれた論法などに道家の流れを汲んでいるのが感じられる。 -
『老子』は極端、『荘子』は大げさ、『列子』はひねくれ。そのひねくれとはエピソードの構成と展開が考え抜かれたものであることによるという。 ただ、『列子』のエピソードは人に読ませる面白さを追求した結果、思想を伝えるという面で甘くなっているという。そのため「まともな」中国思想学者からは忌避されて、日本での注釈本も絶版になってしまっている。
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まあまあかな
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老荘思想についてや書物の成り立ち等も書かれているが、基本的には著者の読書感想文。列子という思想家の本に触れる入門書としてはいいかもしれないが、この本ではそれほど思想の内容に触れることはできない。
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キャーおもしろい。
参考文献が絶版だらけ。図書館だのみ。 -
編集者として高校教科書や辞書の編纂に携わった著者がお気に入りの古典『列子』を語ったもの。
列子はいわゆる老荘思想の一派ですが、内容が雑多で荘子の焼き直しエピソードが目立つことなどから決してメインストリームの思想ではありません。エピソード性が高く、高校漢文の「杞憂」「朝三暮四」などの出典となっています。(これに限らず高校漢文では、たとえ話のエピソード部分のみが取り上げられて本論は語られません)
しかし、それゆえに自由な面もあり、完璧なお師匠ではない列子の姿があれこれ語られます。これもまた老荘的態度といえましょう。
○私たちはときに、"逆説"というひねくれたものごとの見方をして、そこに、"人生の真実"を発見したような気になって、満足してしまうことがあります。しかし、列子さんに言わせるとそれではまだまだ甘いのでしょう。
"常識"をひっくり返すというのは、"常識"にまだとらわれている証拠なのですから。"常識にとらわれるな"をさらにひねって、"常識にとらわれるな、という考え方にもとらわれるな"というのです。列子さんは"ひねくれ者"ではありますが、"ひねくれ方"に念が入っているのです。
○老荘思想では、"自然のまま"であることを尊びますから、"意識して何かをする"ことを嫌います。その立場からすれば、"天を楽しみ命を知る"なんて意識してやっているうちは、まだまだダメなのです。
"まわりは気にしないで、自分にできることだけをやればよい"と力み返っていると、かえって雑音に惑わされかねません。よけいな意識は持たないで自然のままに生きることこそが、"天を楽しみ命を知る"ことなのだ、というのです。 -
(欲しい!)
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円満字二郎(えんまじ じろう)『ひねくれ古典『列子』を読む』(新潮選書、2014年)
著者の名前がひねくれていると思った。
本選書は諸子百家の一人である「列子」の紹介本だ。20話の白文、読み下しに著者の解説からなる。
我々は「杞憂」とか知っているようで知らない。教科書に載らない続きの話が面白い。そうだったのかというわけである。
そうして列子をもっと読もうとすると、ご親切にも参考文献を載せているのだが、高価だったり重版未定で入手しにくいのである。
このあたりは、本のタイトルのようだ。面白いぞ、と煽っておいて、でも手に入りにくいぞといっている。出版界へのアピールと受け止めたい。