ビッグデータの罠 (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106037597

感想・レビュー・書評

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  • ・匿名化はただすればよいというものではなく、どの水準の匿名化を何の目的でどのような手段で行っているかを明らかにし、かつそれを利用者に分かりやすい言葉で示さなければならない

  • AIが人間を支配する『1984』的な世界観ではなくとも、データにより人間の行動を分析し、知らず知らずの内にその行動に影響を与える事は、既に行われている。著者が言うようにそれはとてもスマートで、例えばAmazonがオススメ本を表示して購買欲をそそる程度だから、あまり不快に思わない。しかし、確かに我々は感情を揺さぶられているのだ。これが今後どう拡大していくのか。

    本著が指摘するもので、とりわけ危ういなと思うもの。一つは個人情報の利用規約だ。ほとんどの人が面倒くさがって、細かな規約を読まずに同意する。利用規約に悪意ある一文があるかも知れないにも関わらず。それと、ネット上のデータを検索しての私刑。SNSなどで無防備に流している写真や書き込みから居場所、素行、よく行くお店などが特定される。

    しかし、これらは人間による所作であり、怖いのはデータを利用する人間の悪意だ。オススメを表示するならセーフ。それが脅しや騙しに繋がるならアウト。境界知能者をターゲットに、一斉に危険思想を発信する。人間なら内乱罪、外患誘致罪が成立するが、データがオススメに巧みに表示してバリケード役や集会イベントに誘導する事も可能だ。オススメの記事で炎上している火事場にリンクさせる事も可能。大衆操作と私刑の合わせ技で一本、ターゲットは自殺に追い込まれる。「ワタシ以外」の人々が属性や能力をデータベース化されるリスク。最も重要かつ危険なリスト化は、詐欺に遭いやすい人のリスト同様、ネット上の承認欲求、繋がりに依存している人リストだ。他人事ではない、こういう人がSNSに溢れているではないか。ネットで否定されて秋葉原で起きた無差別殺人もあったのだから。

  • 以前に読んだ『数式を使わないデータマイニング入門』が面白かったので、それなりにビッグデータについては知ってはいるものの手にとってみた。

    やや古い本なのだが、ビッグデータの取り扱いについての基本的な箇所が押さえられているようで、個人のデータを提供することのリスクとメリットがイコールであることがよくわかった。

    本物のパノプティコンの写真も載っているので、そういう方向で進めて欲しかった。

  • 181020 中央図書館
    記憶の外部化に伴って、セキュリティリスクに加えて、行動・思考の空間を統計分析によってコントロールされてしまうという気持ち悪さがあるとのこと。

  • タイトルの通り、ビッグデータ時代の個人情報管理の危険性を説いた本だが、ネットの仕組み、情報管理の仕組みなどを比喩を用いながら巧みに説明しており、類書と比べても素人に分かり易い。
    個人情報を管理する、秘匿することの重要性はしばしば指摘されることだが、我々自身が利便性を重視し、無防備どころか、むしろ進んで個人情報を開示しようとしている、との指摘には、ハットさせられた。

  • 個人情報の漏洩に敏感になってきたが、本書で紹介があった数々の事例を見ると、知らないうちに情報が流出している事実に驚かされる.選挙の予測などこれまでの常識が通用しない時代になっていくのが少し怖い感じだ.

  • ビッグデータ世界を生きるためには、クラウドなどの仕組みやプライバシーの考え方を理解しておくことが重要ですね。

  • データマイニングシステムは見つけるだけで、理由は突き止めないことだ。データマイニングシステムは、神の託宣のように、関連がある事実だけを黙示する。ビールとおむつの例にしても、「なぜそうなったのか」は示さない。それは人間が後付で考えるひつようがあるのだ。

  • ビッグデータ関連の本は、これまでにも何冊か手にしたことがあるのですが、今一つ面白くない印象がありました。
    が、この本はいい本でした。
    ようやく、ビッグデータに対する見方、ビッグデータの利用法が落ち着いてきたため、このような本の出版が可能なレベルになっただけかもしれませんが。

    この本では、ビッグデータのメリット・デメリットが、具体的な例と合わせて紹介されていますので、読みやすいです。
    とくに、個人情報や利便性に関する記述は、ビッグデータに関するリテラシーを向上させるためにも、より多くの人に知ってほしい・理解してほしい部分です。

    この本を読んで、ビッグデータというか、監視社会の恐ろしさを改めて知ることができました。
    同時に、いかに自分が無知であるかを反省しています。

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著者プロフィール

中央大学国際情報学部教授

「2021年 『デジタル/コミュニケーション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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