中央銀行が終わる日: ビットコインと通貨の未来 (新潮選書)

著者 : 岩村充
  • 新潮社 (2016年3月25日発売)
3.63
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106037825

作品紹介

マイナス金利の衝撃! フィンテックの台頭! 新たな通貨戦争が勃発する――。日本銀行の金融政策はなぜ効かなくなったのか? 仮想通貨はなぜお金として機能するようになったのか? 「金利付き貨幣」の出現は、経済の仕組みをどう変えるのか? 日銀を飛び出した異能の経済学者が、「貨幣発行独占」崩壊後の新しい通貨システムを洞察する。マイナス成長がもたらす大格差時代を生き抜くための必読書。

中央銀行が終わる日: ビットコインと通貨の未来 (新潮選書)の感想・レビュー・書評

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  • おもしろかった。
    図書館で借りたんだけど、人気の本で、数十人待ちだったし、今こうして読んでる間にも、どんどん、待ってる人の数は増えてる。

    p20
    あまりにも危険でありやめなければならないのは、政府の貨幣発行権ではなく、その排他的な権利であり、人々にその貨幣を使わせ、特定の価格で受領させる政府の権力である。
    『通貨の選択』ハイエク

    責任ある金融政策をとる国の通貨は、次第に信頼できない通貨にとって代わるようになるだろう、というのがおそろらく結論である。金融的高潔さの評判があらゆる貨幣発行者が用心深く守ろうとする資産となるであろう。
    『通貨の選択』ハイエク

    ハイエクの貨幣についての考えは、このふたつのフレーズに尽きている。

    p21
    ハイエクが異議を唱えているのは、政府あるいは中央銀行による貨幣の発行そのものではなく、その「選択」に関する政府の介入であり、具体的には、自国の造幣局や中央銀行が発行する貨幣しか使用させないという法的手段による強制だということ。

    ハイエクは世界的インフレに対する処方箋として、貨幣に関する選択を人々に委ねることを提案した。

    p23
    国際通貨制度が、1971年のニクソンショックから、固定相場制から変動相場制に変わり、通貨価値の維持競争が始まった。
    これこそが、ハイエクの主張が形を変えて実現したものといえる。
    通貨間競争が世界のインフレを見事なまでに収束させた。

    p23
    通貨を人々の選択に委ねれば、インフレは解決するとしたハイエクの主張が実現した。

    p34
    1998年、クルーグマンは、バブル経済崩壊後の日本の状況を整理して、これは大恐慌から遠ざかるにつれて、経済学者たちから忘れさられてきた「流動性の罠」が再び現れてきたのだと診断した。

    アメリカでは、IS曲線もLM曲線も死語に近くなっていた。

    p37
    アベノミクスにおいて、浜田宏一は、物価は貨幣的現象であり日銀は貨幣量を増やしさえすれば良いのだという分かりやすい提言を行ったが、彼は、ケインジアン全盛時代には、不況期における金融政策の一般的限界を説いていた。

    p56
    ビットコインは先端的な数学理論の所産ではなく、よく知られた常識的な理論と技術を組み合わせて、誰もが気づかなかった使い方をしたもの。

    p103
    なぜ紙切れが貨幣になるのかを満足に説明できないままで金融政策を論じ続けている現代の中央銀行たちは、なぜ卑金属が貴金属になるか(実際にはならなかった)の正しい理論を持てないまま研究を続けた錬金術と似ている。

    p112
    ビットコインが成功すると、多くの追随者または模倣者があらわれた。
    これらはアルトコインと呼ばれる。アルトコインはモノマネではあるけれど、無価値ではない。
    そもそも貨幣の歴史そのものがモノマネの歴史なのだ。

    p284
    通貨の選択をひとりひとりに委ねることは、私達の選択をエリートたちの誤りや功名心から遠ざる賢い知恵になる、それこそがハイエクが提唱していた通貨発行競争の世界ではないか。

    p286
    金融政策というのは、現在の豊かさと将来の豊かさを国民経済全体として交換する政策でしかありません。
    成長の時代にあった将来の豊かさへの予感が消えてしまったら、金融政策にはその役割を果たすことはできない。
    そして世界的に広がる格差の問題がある。
    格差拡大そのものは金融政策の責任ではないが、金融政策を「良きもの」とする合意を崩すことにはなる。
    たしかに企業業績は良くなったらしい、だが、賃金は上がらない、残るのは物価の上昇による老後の貯えの現象への恐怖だけだとしたら、人々の怒りが中央銀行に向くことになる。

    p289
    ハイエクの描く通貨競争の世界は、民間の銀行が、各々の通貨単位を自ら決め、銀行券を競って発行する世界。
    その競争を動機づけるものは、各発券銀行の企業利益追求です。そうすれば、通貨価値は自然に高まるとハイエクは考えた。
    貨幣発行を競争に委ねれば、貨幣価値を高めるというインセンティブが、貨幣発行者にはたらくことは、変動相場制移行後の各国が繰り広げた通貨価値維持競争がもたらした世界的な物価の安定からもうかがい知ることができる。

    p300
    『中央銀行が終わる日』というショッキングな題名は、この本を売るために新潮社の考えた題名に過ぎない。
    著者の書きたかった内容は『中央銀行としての中央銀行は終わるが、それでも残る中央銀行の役割』である。

  • 前著「貨幣進化論」に続く、日銀出身者による貨幣論。前著と同様に現下の金融政策は限界に来ているとの認識に立ちつつ、今作は実社会でも徐々にそのプレゼンスを高めつつあるビットコインのメカニズムを下敷きに「良い通貨」とは何かを論じ、それが金融政策のぶち当たっている壁を破る可能性を示してゆく。

    第1章で前著のアウトラインを大まかになぞった後、第2、3章でビットコインの成り立ちやロジック、今後の展望が解説される。そこではマイナーたちの私利追求がこの管理者不在のいわば「ソーシャルコモンズ」的システムの基盤を成していること、そしてプロトコル次第で様々な目的指向に応ずる通貨が設計可能性であることが示される。そして第4章で低成長時代における金融政策の限界が論じられた後、いよいよ第5章では仮想通貨の方法論を用いた「貨幣利子率」を通じ、中央銀行の通貨独占発行権を排した、多頭的な通貨政策で「流動性の罠」を迂回する方法が模索される。

    現行の日銀の金融政策については相変わらず辛辣な論調だが、いよいよ手詰まり感の彩りを濃くする現状を目の当たりにすれば、如何に上げ潮派であっても本書の提案を一部でも真剣に受け止めねばならない時期に来ているのではなかろうか。無論、本書の提案がすぐに現実の政策に適用可能というわけにはいかず、現時点では思考実験的な領域に止まるものも多い。しかし「そもそも通貨とは何か」を考える上でも、ビットコインを題材とした本書の議論は極めて有用と思う。

    基礎的な暗号理論にまで立ち返った説明は個人的に馴染みの薄いものだったが、これまで読んだどの仮想通貨本よりも丁寧で解りやすかった。また、中央銀行のバランスシートを投資信託のそれに擬して説明される「決済通貨」と「価値尺度測定通貨」の分離などは、極めて直感的で納得的。マイナス金利等のニュースに接するうち、「通貨って何だかよくわからなくなってきた」と感じ始めた向きに是非お勧め。

  • ・貨幣に金利をつけるという仮説
    現実の貨幣に金利が付いたらどうなるのか。そんなお金は嫌だ。しかし、確実にお金は動くようになるだろう。マイナス金利をつけられたら、減るくらいなら使おうと考えるだろう。
    いくら、メディアで「金融緩和」と言われていても、「デフレから抜け出すには、お金を使わないといけない」と分かっていても、みんな結局は自分が一番可愛いんです。明るい未来が見えているからこそ、人はお金を使おうとする。

    ・お金の不思議
    日本人は貯金が大好きな人種と言いますが、改めて考えてみるとお金というのは不思議。
    ただの紙切れである。みんなが価値があると思い込んでいるから成り立っている。
    この理論から言えば、仮想通貨もみんなが価値があると言えば、お金になる可能性は大いにありえる。

    ・仮想通貨の可能性
    まだまだ、ビットコイン・仮想通貨と聞いて胡散臭いという印象を受ける人が多いのではないだろうか。しかし、考えれば考えるほど、仮想通貨は段々日常になっていくように感じる。
    運送会社が荷物の届けを見直すほどネットを使って物を買うということが当たり前になっている今日。
    送金の簡単さ、手数料の安さという面で仮想通貨という概念はネット社会の現代において、理に叶っているのではないか。

    管理者がいないという点もおもしろい。どこの国の支配下でもないお金。
    少々専門的で難しいと思うところもありますが、お金に対する考え方を変えてくれる本。
    仮装通貨というものを、ただの「仮装」ではなく、リアルに考えることのできる内容で良い意味で期待を裏切られた。

  • パスした

  • ビットコインの基本を、公開鍵暗号から説明してくれる。その上で、ビットコインのプロトコルにある限界、それを回避する代替通貨アルトコインがあり得ること、従来通貨もビットコイン達と同様裏付けがないことを説明する。
    ところで、楕円曲線暗号の説明を今まで何度も聞かされたが、この本で初めて入口がわかった (~_~;)

  • ブロックチェーンとかビットコインを学ぶにはとても良い本です。大変勉強になりました。日々勉強ですね。
    銀行も今の業務形態からどんどん変わっていくのでしょうね。日々の技術の進歩で業務が変わっていき、それについていくためにどうするか考えたりするのでしょう。そもそも自分たちが業務を変えてしまうような技術の進歩に携わっていきたいものですね。日々チャレンジ!

  • 単なる投資家目線でビットコインを知りたかったのだけど、そういう人には難儀でした。
    あるいは中央銀行がどうなっていくか気になったのですが、一投資家がコントロールできることでもない。
    学者さんや銀行家の方が読むのがいいんではないでしょうか。

  • 各章が50ページごとに振り分けてあって、私的に読みやすい。1日につき50ページで、5日で読めそう。
    第一章 協調の風景――良いが悪いに 悪いが良いに
     スタグフレーションという言葉を4年ぶりぐらいに聞いたよ。もう4年たつのかと、個人的に感慨にふける。
    過去の政策を振り返り、手法が変化していくのを示した。一部難しいところもあったが、要点を捉えていて解りやすかった。
    第三章
     ビットコインの問題性について、「トランザクション展性」(ビットコインに関する取引データの全体にデジタル署名が施されているわけではない、これは実装上の問題でもある)や「スケーラビリティ」(現代のビットコインのブロックの大きさが大量の取引を支えるのに必ずしも十分なものでない)が挙げられている。前者はともかく、後者は今後解決されるのではないかと思う。

     読了後、解説のなかにあった呪文に笑ってしまった(引用301)経済関係の本を読むときは、出版年数をきにしている。この本は2016年2月の本。今日の新聞でビットコインが急激に価値が増しており、中国からの資産逃避がおおいとの記事があった。著者はどう考えているのだろうか?聞いてみたい。
     ビットコインの登場は、金融界にとってじわじわと寝食する良性腫瘍のように思えてきた。増殖のきっかけは、著者のいう枯れた技術の掘り起しから起こっており、コロンブスの卵化することで始まっている。考えると、エキサイティングだ。あとからじわじわ感じる(引用237)。
     正直、読むのに難しい本だった。経済学の専門的な内容についてはほとんどわからなかったと言ってよい気がする(じゃぁ全く分からなかったのかよ!)。もう少し金融の勉強をしてから読み直したい一冊。
    紹介してくださったLさんに感謝。

  • ビットコインと呼ばれるものが「仮想通貨」であることを知っている人は少なくないと思うが、実際に誰が作り出して、どういう仕組みで管理されているのかを知っている人はまだ多くないだろう。
    本書は、新しい通貨としてのビットコインの可能性と役割、課題として残る点などが指摘されており、ビットコインと一国のマクロ経済政策、特に金融政策との関係を説明している。
    ビットコインは、マイナーと呼ばれる人たちによって作り出されており、ビットコイン自体の価値が変動するため、投資の対象ともなっているようだ。仮想空間の技術的な部分や、どうやって上限が決まるのかなど、専門的で難しい。
    平易な言葉で書かれているとはいえ、経済学の素養がない人には、本書はマニアックすぎると思われる。筆者の議論はきわめて論理的であり、「すごいな~」と思いながら読んだ。

  • ビッドコインを縦軸にしながら、通貨と中央銀行をテーマにした一冊。読みながら通貨とは何か、金融政策の役割、効果とは?そもそもの問題に思いを馳せながら読め、視野が拡がった気がする。
    著者は日銀OBで経済学者。暗号にも詳しいらしく、ついていけない部分もあったか、ビッドコインやブロックチェーンの解説も良かった。

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