【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛 (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社
3.87
  • (21)
  • (42)
  • (24)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 337
レビュー : 34
  • Amazon.co.jp ・本 (141ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106037863

作品紹介・あらすじ

百年前、英・仏・露によって結ばれた秘密協定。それは本当に諸悪の根源なのか。いまや中東の地は、ヨーロッパへ世界へと難民、テロを拡散する「蓋のないパンドラの箱」と化している。列強によって無理やり引かれた国境線こそが、その混乱を運命づけたとする説が今日では主流だ。しかし、中東の歴史と現実、複雑な国家間の関係を深く知らなければ、決して正解には至れない。危機の本質を捉える緊急出版!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • ★難しさばかりを痛感★整然とした国境線にみえるように、中東は外部勢力による人為的なルールで縛られている。「少数民族」とは自然に生まれる民族ではない。多数派が自らと異なるものと決めて特定の政策を作るから誕生する。そして少数民族が独立すると新たな少数民族を生み出す。民族はどこまでも分裂していくだけに解決は簡単ではない。悲しいことに中東に解決できる勢力はないが、解決策に対する拒否権を持つものは多い。

  • ☆オスマン帝国崩壊に際し列強が国境を取り決めした。

  • この協定を聞くと
    学生時代の己の阿呆さを思い出します。
    中東のあたりの歴史、よくわかんねえーと悩んでおりました。
    インド史?南アジア史に至ってはお手上げでした。
    K大文学部の受験時、一つの大きな設問が出たのを思い出します。
    解けなかったのに何故か合格いたしました。なんでだろう
    我が家はど田舎の貧乏人だったのに。合格させても意味ないぞと。
    お父様の御不幸。どうぞ御愁傷さまです。

  • 第一次大戦中の1916年にイギリスとフランスとの間で結ばれた、
    戦後のオスマン帝国南東部の分割協定を手がかりとして、
    現代までの中東の情勢を概説した著作。
    平易な文章で書かれていて、中東地域にあまり知識の無い人でも
    読みやすいと思います。

    モザイク状に小集団が存在している地域では、
    どう線引きしても域内での少数派ができてしまうこと、
    線引きによっては少数派と多数派が逆転してしまうこと、
    少数派が難民として流出すれば域内はある意味"安定"すること、
    などといったことが歴史を基に説明されています。

    ところで、「サイクス=ピコ協定」は「墾田永年私財法」と同じような
    語感の良さで、言葉だけはなんとなく頭の片隅に残っていました(笑)

  • 高校世界史で「帝国主義列強の理不尽の象徴」として学ぶサイクス・ピコ協定。旧オスマン帝国の領土を、そこに住む民族に全く配慮せず英仏(露)で線引きして植民地化。しかし著者はその捉え方は(間違っていないとしても)一面的と考える。

    まず以って、サイクス・ピコ協定はそのままの状態ではほとんど発効していない。著者は、むしろそのあとのローザンヌ条約、セーヴル条約への短期間の変遷の意味に着目する。詳細は略するが、要は列強も(自らのエゴは当然ありつつも)何はともあれ「つかの間の平穏」をのぞんだのであり、その時々に優勢だった勢力の主張を追認する形で次から次へと条約を改定していったのだ(次々と支配権を確立した少数民族に配慮したローザンヌ、それを平定して統一国家となったトルコに配慮したセーヴル)。

    「・・・この三つの協定・条約には、それぞれに別個の根拠があり、それぞれに異なる難点を抱えている。これらの協定・条約は中東の問題の原因というよりも、むしろ、オスマン帝国の崩壊後に中東の社会が抱えた困難な条件に対して提示された、三つの異なる対処の方法なのである。三つの協定・条約は、中東問題の困難さを、それぞれに示している。これら三つの協定・条約と、それが結ばれた経緯の中に、近代の中東に国家と国際秩序を形成するという、今もなお結論の出ていない問題への、これまでの試みの成功と失敗がいずれも含まれている」(P.46)

    今現にシリアで起きている大規模な難民問題を少しでも立体的に理解したいと思う人々にとって、必読の書と思う。

  • 【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛。池内恵先生の著書。現代の中東問題の根源は遥か昔にイギリスとフランスとロシアによって結ばれた秘密協定にある。中東問題、イスラム問題、イスラム国問題は多くの人にとって理解するのが難しい問題だけれど、本書を通じてこのような問題が発生している歴史的な背景を学べます。

  • 単純に諸悪の根源とも言い切れない、地域の入れ子状の複雑さ、多様さがよく伝わってきた
    当時の中東に国家と社会を形成できる主体があったか疑わしいあたり、近代国家のあり方を中東に押し付けるのが欧州の傲慢さに感じられる
    その上セーブル自体も自立が困難なものであった
    難民の流出が、問題の解決に近づくというのは、なるほど言い得て妙だなと思う
    国の利益のために、他国の紛争を続けさせるというのも、紛争のリアルさが読み取れる

  • 1916年サイクス=ピコ協定(第一次世界大戦後、オスマン帝国の支配地域をどのように分割し統治するかの、イギリスとフランスによる取り決め)→1920年セーヴル条約(アナトリア各地で現地の勢力が進めた実効支配を、列強や周辺諸国が認め、恒久化しようとした)→1923年ローザンヌ条約(ムスタファ・ケマルらが設立したトルコのアンカラ政府が、セーヴル条約受け入れを拒否。トルコ独立戦争を戦い、フランスやソ連軍に対して有利に戦闘を進めて、個別に条約締結に持ち込んだ)

  • サイクス=ピコ協定を銘打って、池内先生が書かれているので、面白そうと思い手に取りました。
    冒頭で池内先生が指摘されているように、サイクス=ピコ協定は大国による密約で悪でしかないもの、と私も思っていました。悪ではないわけではないですが、オスマン帝国崩壊に際して、1つの「解決策」として考えられたものだという視点を本書によって得られました。
    皮肉なことにアラブの春によって、再び中東が混迷する中、欧米が手をこまねいている間にロシアが進出してくるという、100年前と同じような構図ができている、というのもなるほど、というお話でした。
    国民国家を前提とした国境の線引き、というのはかなり破綻した考え方だと最近とても感じていますが、では中東の国々はどのような形になると中東の人々にとって”最善”といえるのか、本書を読むことでますます難しい問題に思えてきました。

  •  分かりやすくまた140頁程度と短く、詳しい予備知識がなくても読みやすかった。現在の中東を見る上で100年前のオスマン帝国崩壊後の状況が参考になること、「域外大国の権力政治に翻弄される可哀想な中小国・少数民族」イメージが果たして妥当か、普遍的な善や正義の難しさ、等に気づく。
     民族や宗教の分布を無視して引いた線も、重視して細分化しすぎた線も機能せず、結局はムスタファ・ケマルが実力で得たトルコ領土の範囲が現在まで維持されている現実。露土戦争と西欧が介入する東方問題と、現在との類似性。同じ民族が加害者にも被害者にもなり得ること。「アラビアのロレンス」に表れた、「民族主義を掲げる各地の指導者が、域外の大国の介入に表向きは反発しながら実は利用しているという中東政治の根深い問題」。
     筆者は末尾で、現在と100年前が似ているとしつつも、西欧と中東の力の差が狭まり、地域大国は「駒」として扱われることをもはや是認しないと述べている。では100年前以上に、「解決」にはほど遠くても、「安定」すら難しくなっているということだろうか。

全34件中 1 - 10件を表示

池内恵の作品

【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛 (新潮選書)を本棚に登録しているひと

ツイートする