【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛 (新潮選書)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (141ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106037863

感想・レビュー・書評

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  • サイクス=ピコ協定がタイトルだが、これを主題にした本ではなかった。
    英仏が中東に国境を引いたこの協定は、列強の横暴そのもので、今の中東問題の要因であるかのように理解していたが、ことはそう単純ではなかった。
    民族が入り交じり、欧米露の思惑が入り乱れ、ただでさえ混乱していた地域が、地域の強権的な国家によってなんとか押さえられてきたのだが、アラブの春で蓋が外れてしまった。サウジやイランなどの地域の大国もこれまでにない影響力を行使してくる。簡単な解はとても得られそうにない。
    分かりにくい中東問題だけに、本書を読んですっきり理解、というわけにはいかないが、歴史から足元の事象までをコンパクトに解説した良書。

  • [解決策にして病巣]合意の形成から百年を迎え、日本の一部メディアでも改めて取りあげられることがあったサイクス=ピコ協定。外部から中東地図を描いたとして批判されることが多々あるこの協定の形成経緯やその他の条約に触れながら、現在の中東政治を高所から俯瞰した作品です。著者は、中東研究の第一人者と評しても過言ではなくなってきた池内恵。


    「複雑だ」と評される中東政治を、その複雑さをそのままにゴロンと読者に突きつけてきた作品。決して読みやすい読み物ではないですが、中東政治や幅広く国際政治に興味のある方にはぜひオススメ。明快かつ安易な解決策など、現在の中東には存在しないということが痛感できる一冊です。

    〜当時の超大国である列強という「医師」に、中東の国家と社会の「病」への処方箋を書く、その資格と能力があったかというと、それは疑わしい。しかしその当時の中東に、より適切に国家と社会を形成できる主体があったかというと、なかったと言わざるを得ない。それは現在でもなお残る問題でもある。〜

    一気に通読できる分量も☆5つ

  • トルコ・シリアを中心に、第一次大戦から現在までの中東情勢を「サイクス・ピコ協定」「露土戦争」「東方問題」「難民」等を切り口に読み解いていく。時系列に事情を追うよりもかえって個々の事象の連関をクリアに浮かび上がらせることに成功しており、地図の豊富さとも相まって理解しやすい。イスラエル史を思い切って切り捨てたのも奏功していると思う。何より140頁程度と短いのが良。

    著者はサイクス・ピコ協定以前と現代の情勢の異同について、西欧のアラブ諸国に対する相対的優位性の低下を指摘しているが、現代では西欧側が様々な不都合を押し込めておいた中東という「壁」が決壊したとの表現は言い得て妙。人権保護が不十分と批判しつつも、自らに影響がないうちは抜本的解決を望まないというご都合主義も限界に来たということだろう。同じく壁のこちら側で安穏としていられた日本にとっても、最早対岸の火事ではない。

    サイクス・ピコ協定が中東の一時期を切り取った断面図に過ぎないことがよく理解できる本書だが、ではなぜこの題名が採用されたのか。恐らくは本文にあるように「わかった気になるマジック・ワード」なるがゆえに、専門家にとっても「題名にしたくなるアイキャッチング・ワード」でもあるのだろう。

  • 書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記は控えさせていただきます。

    http://www.rockfield.net/wordpress/?p=7964

  • 2016/08/10

  • サイクスピコ協定が今の中東の混乱を招いたというのが、最近富に聞こえる話だが、どうやらそれだけではないというのが本書の内容。

  • 文体が変わったか?まったくストレスなく読めた。当然超面白い。

  • アラビアのロレンスから、「イスラム国」そして英国のEU離脱までが、頭の中でスーッとつながる。快読の一冊。

  • イスラーム世界の…以来の著者の本だったけど、かなりわかりやすい。とはいえ地理がまだ完全に把握しきれていないので、右から左な部分が多い自覚はある。とりあえずアラビアのロレンスみよう

  • 読了0605/サイクス=ピコ協定が、現在の中東の混迷の諸悪の根源、と言う言説があるが、本当か?というところから説き起こされる一冊。確かに、不十分で欺瞞に満ちたものであったが、ではその段階で他に代替案はあったのか?それを実行できるものはあったのか?現地の勢力に応じた線引きをすべきだったというが、諸民族が混在し、点在する状況では、おそらく策定に時間がかかり、策定しても自立した国家運営も難しかったはずだ、と。だからと言って免罪されるものはないが、実態を理解しつつ受け入れるしかない、と。そして、サイクス=ピコ協定単体ではなく、セーブル条約、ローザンヌ条約とセットで理解する必要があること。露土戦争と東方問題は、ソ連の成立、冷戦、トルコとソ連間の緩衝地帯とも言えるソ連の共和国、東欧の共産国家が成立し、トルコ-ロシア関係は直接の接点が激減し、過去のものとなったかに思えたが、シリア内戦を機に、解決などしておらず、ずっとくすぶっていたことが明らかになった、と。/以下備忘録的に。/現在は、依然として「強いトルコ」をどこかで恐れつつ、クルド系反政府組織との紛争や、「イスラーム国」の浸透、そしてロシアとの無謀な紛争によって、不安定化した「弱いトルコ」が出現しかねないこともまた恐れていると言えよう。/ある民族が国家の設立や自治を獲得するか否かは、自らの政府を持って統治することができるか否かは、国際情勢、特にその時々の諸大国あるいは超大国の意向、そして大国間の交渉と強調に大きく依存する。大国の承認が得られるか否かは、その民族がどれだけまとまって組織化しているか、そしてその組織に国を与えることがどれだけその当時の大国の利益にかなっているかにかかっている。/西欧にとって、アラブ諸国やトルコは、地中海の東岸や南岸で、アラブ世界やその背後のサブサハラ・アフリカ、あるいは南アジアから流れ着く移民・難民を、人権や自由の理念・原則からは疑わしい手法を用いながら、食い止めてきた「ダム」か「壁」のような存在だった。/米国とロシアのシリア内戦をめぐるケリー=ラブロフ協定。域外大国間の問題ということで、サイクス=ピコ協定と比べられるが、米露協調を軸に、シリア内戦、中東の諸問題を解決するなら、その後の中東の秩序を型作る原型となったと評価されるかもしれない。/

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