世界地図の中で考える (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106037894

作品紹介・あらすじ

なぜ人間は「悪徳」を取りこむ必要があるのか――? 「悪」を取りこみ、人間社会は強くなる――タスマニア人の悲劇から得た洞察の真意とは。なぜイギリスは広大なインドを容易に征服でき、しかしその統治には失敗したのか。なぜ二度の大戦で勝利を収めたアメリカが、ベトナムでは敗北したのか。稀代の国際政治学者が、若き日に世界各地で綴った珠玉の文明論。 【没後二十年記念復刊】

感想・レビュー・書評

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  •  50年近く前に書かれたもので、ベトナム戦争や文化大革命、冷戦構造など取り上げられた同時代の出来事はさすがに現在とは異なるが、根底に流れる相対主義というか現実主義というか、そのような視座には古さを感じない。
     筆者は、タスマニア原住民が外来の病原菌への抵抗力を持たなかった故に滅びたことから、悪と呼ばれようが善と呼ばれようが、社会では「諸要因の均衡」が大切だと述べる。日本では「進歩的文化人」と呼ばれる人々が影響力を持ち、世界ではイデオロギー対立が激しかった時代であったことを思い起こすと味わい深い。また、米の多元主義を「独裁制の危険や画一主義の行き詰り」から救うものとして評価している。
     他方で筆者は米をべた褒めもしていない。米の産業の効率性が総力戦の時代に入り大きく力を持ったことを指摘した後で、米のアジアへの無知も述べている。米の世界への影響力の大きさやその「楽観主義」は肯定的に評価しているようだが。
     また、我々が主にマス・メディアを通じて大量の知識を得つつも、「表面的であるだけでなく一面的な世界像を持つことになってしまう」「雑多な現象を『イメージ』という形で単純化して捉えている」と警鐘を鳴らしているが、これが現在でもなお、あるいは一層当てはまるのではないか。
     最後に筆者は、光と闇に二分されるような単純な世界像の「狂信」と、その逆で、「混沌に圧倒されてしまった結果である懐疑主義」の中間に踏みとどまることができるか、と述べて締めくくっている。いずれかに身を任せてしまえればある意味楽なのだろうが。

  • とても50年前の論考とは思えない。それはつまり、後半に記述があるように高坂本人がいかにイメージでものを考えず、事実を把握したうえで論を展開した結果だと思う。特に若い人には必読書でしょう。

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