- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106037894
作品紹介・あらすじ
なぜ人間は「悪徳」を取りこむ必要があるのか――? 「悪」を取りこみ、人間社会は強くなる――タスマニア人の悲劇から得た洞察の真意とは。なぜイギリスは広大なインドを容易に征服でき、しかしその統治には失敗したのか。なぜ二度の大戦で勝利を収めたアメリカが、ベトナムでは敗北したのか。稀代の国際政治学者が、若き日に世界各地で綴った珠玉の文明論。 【没後二十年記念復刊】
感想・レビュー・書評
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タスマニアへの英国の入植、世界大戦でのアメリカの役割、ベトナム戦争、インドにおける英国など、各文明と各地における影響などが幅広く取り上げられ、考察されていて、あれこれ考えるヒントになりました。
1960年代後半の作品ですが、2020年代の今から見ても通じる内容が数多くあり、最近の出来事や技術革新などを背景に考えながら読み進めていました。最後の文明には光の面と闇の面があり、場所によりそれが変わりうるという指摘は、非常に深い内容だと印象深く読みました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
(中盤から難しくなりましたが)序盤のタスマニアの話が分かりやすいおかげでめげずに読み終え。
作者の「I told you」呆れ声が聞こえてきそうな。 -
目の前のことで忙殺されるなか、少し大きな視点で物事を考えたいと思い、読んでみた。
表現が丁寧すぎる感じがするし、中身も少し難しく感じた。
他の本でもう少し勉強したい。 -
国際政治の指南書というよりかは、国際政治学者が徒然と書いたエッセイという雰囲気。とは言え、高坂先生だけあって、決して簡単というわけではない。むしろ、著者の深い知見に支えられて思考が流れるように進んでいくので、気合を入れていないと迷子になるような本。
タスマニアに関する考察から本書がスタートするのは唐突にも思えるが、タスマニア原住民の滅亡を振り返ることを通じて、「巨大文明が新しい地域に突入していくときに何が起きるのか」という本書全体に共通する問題設定がなされる。そこから、筆者の思考は自由に流れ始め、イギリス、そしてアメリカという巨大文明の直面する課題、それに対する日本の反応など、世界全体を見渡す議論に進む。
数十年前の本であるにも関わらず、問題設定は今にも十分通じるもの。その課題を本にしたところに筆者の先見の明があるのだろうけど、結局、歴史は繰り返すし、私たちは解決できない問題を抱えたまま前に進み続けているということなのかな。 -
高坂正堯の著作はどれも非常に興味深い内容で、私が今までの人生で複雑過ぎて理解しようとする努力を怠ってきたことに対して、大きな視点でかつ具体的な説明を与えてくれるものだ。中でもこの「世界地図の中で考える」は、例えばベトナム戦争について、アメリカの大統領選挙のしくみ、幕末における日本人の開国論と攘夷論、日本人のアジア主義的心情の根源など、どの分析も面白く、思わず夢中で読んでしまうものだった。今から50年以上前(1968年)に書かれたものであるにもかかわらず、その未来予測は古さを感じさせない非常に示唆に富んだものであると思う。
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50年近く前に書かれたもので、ベトナム戦争や文化大革命、冷戦構造など取り上げられた同時代の出来事はさすがに現在とは異なるが、根底に流れる相対主義というか現実主義というか、そのような視座には古さを感じない。
筆者は、タスマニア原住民が外来の病原菌への抵抗力を持たなかった故に滅びたことから、悪と呼ばれようが善と呼ばれようが、社会では「諸要因の均衡」が大切だと述べる。日本では「進歩的文化人」と呼ばれる人々が影響力を持ち、世界ではイデオロギー対立が激しかった時代であったことを思い起こすと味わい深い。また、米の多元主義を「独裁制の危険や画一主義の行き詰り」から救うものとして評価している。
他方で筆者は米をべた褒めもしていない。米の産業の効率性が総力戦の時代に入り大きく力を持ったことを指摘した後で、米のアジアへの無知も述べている。米の世界への影響力の大きさやその「楽観主義」は肯定的に評価しているようだが。
また、我々が主にマス・メディアを通じて大量の知識を得つつも、「表面的であるだけでなく一面的な世界像を持つことになってしまう」「雑多な現象を『イメージ』という形で単純化して捉えている」と警鐘を鳴らしているが、これが現在でもなお、あるいは一層当てはまるのではないか。
最後に筆者は、光と闇に二分されるような単純な世界像の「狂信」と、その逆で、「混沌に圧倒されてしまった結果である懐疑主義」の中間に踏みとどまることができるか、と述べて締めくくっている。いずれかに身を任せてしまえればある意味楽なのだろうが。 -
とても50年前の論考とは思えない。それはつまり、後半に記述があるように高坂本人がいかにイメージでものを考えず、事実を把握したうえで論を展開した結果だと思う。特に若い人には必読書でしょう。