教養としてのゲーテ入門 (新潮選書)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106037955

作品紹介・あらすじ

「分かったつもり」でいた日本人のための必読書! 『ウェルテル』は単なる〈妄想青年〉に過ぎないのか。『親和力』はなぜ〈私の一番の本〉と評されているのか。『ヴィルヘルム・マイスター』は何の〈修業〉をしているのか。『ファウスト』に出てくる〈ワルプルギスの夜〉は何を意味しているのか。「教養の代名詞」とされてきたゲーテ作品の〈ツボ〉がはっきり分かる完全ガイド。

感想・レビュー・書評

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  • ゲーテは東洋的な見方をしていたなどという根拠のない知識を抱いていた。

    また、『ウエルテル』や『ファウスト』を読んでも、いまいち何が言いたいのかピンとこない。いわゆる西洋の文学とは違うが、かといって歴史を画する意義を持つ作品とは思えなかった。

    そのような私が本書を読んで、ゲーテ、恐るべし、という感慨を抱いた。ゲーテは一筋縄では扱えなかったのだ。時代の要請に存分に挑みつつ、皮肉も含め、彼なりの心情を正直に表明していたとは。

  • 「市民」と「人間」をキーワードに、ゲーテの主要著作を読み解き、何がテーマとされているのか、なぜゲーテが偉大な作家と見なされてきたのかを考察することが本書のテーマ。

    人々が封建的な身分制度や地縁血縁の拘束から解放され、市場経済を中心とした自由な相互関係を構築し、生き方が多様化した18~19世紀のヨーロッパ。近代社会で自由を得た人々は、生きる目的や生き方の規範を自ら考え、追求していく必要に迫られた。
    そのような自己形成の実際においては、哲学、心理学、社会学等に分類される問題が複雑に絡み合う。ゲーテは、このような学問がアプローチできない複合的な関係性を散漫にならないよう物語化した作家である。

    現代の日本も、教育、終身雇用、社会保障等これまで生き方の規範として確立していた慣習・制度が機能しなくなり、各人が自ら生き方を考え、実行していくことが求められる変革の時代である。
    様々な自己形成上の問題にもがく人物が多く登場するゲーテ作品から学ぶことは多くあるだろう。

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著者プロフィール

哲学者、金沢大学法学類教授。
1963年、広島県呉市に生まれる。東京大学大学院総合文化研究科地域文化専攻研究博士課程修了(学術博士)。専門は、法哲学、政治思想史、ドイツ文学。難解な哲学害を分かりやすく読み解くことに定評がある。
著書に、『危機の詩学─へルダリン、存在と言語』(作品社)、『歴史と正義』(御 茶の水書房)、『今こそア ーレントを読み直す』(講談社現代新書)、『集中講義! 日本の現代思想』(N‌H‌K出版)、『ヘーゲルを越えるヘーゲル』(講談社現代新書)など多数。
訳書に、ハンナ・アーレント『完訳 カント政治哲学講義録』(明月堂書店)など多数。

「2021年 『哲学JAM[白版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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