経済成長主義への訣別 (新潮選書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106038020

作品紹介・あらすじ

非難すべきは、資本主義ではなく、経済成長主義なのだ。私たちは実に大きな「誤解」をしている。経済成長が人々を幸福にする――という思い込みだ。すでに到達してしまった豊かな社会でこれ以上の成長至上主義を続ければ、人々の「ふつうの生活」は破壊され続けるだけなのだ。日本を代表する社会思想家が、「人間にとって経済とは何か」を根本からとらえ直した圧倒的論考。

感想・レビュー・書評

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  • 自動車はGDPを2倍にするが、毎年2万人が死亡する。
    時間稼ぎの資本主義=危機を先送りしているだけ。
    経済成長を求めるほど、経済成長は達成できなくなる。
    借金を原動力に成長するのが資本主義=成長しなければ借金は返済できない=未来の収益は負債より大きいものにしなければ、破綻する=成長が義務付けられている。=やがて破局を迎える=賢明な破局主義。
    ベルの「脱工業社会の到来」は、将来の見通しが楽観的過ぎた。
    新自由主義や市場原理主義が、政府の介入を招いたという逆説。
    ハイエクは、社会民主主義や福祉主義を隷属への道として拒否した。

    限界費用ゼロ社会=技術開発が利益を生まなくなる。その結果資本主義が滅びる=資本主義のパラドックス。

    情報化のコスト=情報が多すぎることで混乱が生じ、情報の取捨選択が困難になること。

    個人主義、合理主義、自由主義、能力主義の詐術によって、構造改革が行われた。

    資本主義は均衡状態では終わらない。静態分析と動態分析のはざまで常に世間は動いている。
    総所得の一部は消費に回らず資本になって再生産を拡大する。これが資本主義の定義。発展のためには過剰性が必要。=過剰性がなければ、新たな技術による希少性は生まれない。
    人口減少社会では、投資不足=過剰貯蓄を解消できない=公共投資による投資の必要性がある=ケインズの主張。

    グローバル化はコスト削減の圧力を高める。
    フロンティアがなくなれば成長できない。
    生産可能性フロンティア=最大限の効率性を実現した場合に生産できる状態。

    イノベーションだけでは成長できない=イノベーションが起きても消費が伸びる保証はない。人口が増加したから成長した。労働生産性を上げると省力化になり、失業が増える。イノベーションが先ではなく、所得の増加が先。
    労働生産性が上がっても、成長率が上がるためには需要が必要。

    政府支出による研究開発費は、費用として計上すべき=企業の利益で独占されるべきではない。一部に富が集中するのはおかしい。

    経済成長そのものは良いことでも悪いことでもない。
    最低限の生活は定義できない。
    経済学では、需要がないことを定義できない。過剰はあり得ないという前提でないと議論ができない。

    比較優位論は、狭い前提条件で成り立つ。明確に得意分野が違うこと、その環境が固定していること。イギリスの毛織物とポルトガルのブドウ。
    グローバリズムこそがフラットな世界ではなく強い国家を後押ししている。
    国民的需要のほうが国際貿易よりも成長に資する。

    製造業から離職した場合は、生産性が高い分野に移ることができない。生産性が高いとは、労働力を必要としないから。
    自由化が進むほど、自由化から得られる利益は少なくなる。むしろ保護主義の方が成長できる。

    資本主義と自由主義は、自壊の道をたどっている。

  • 『「成長」というものにこだわるのをやめよう』
    いつまでも、経済成長なんて続くもんじゃない!
    誰かに言ってほしかったし、そう思っている人がいると知って、何だかホッとしました。

  • もとより頭悪いのですが
    さらに病気になりやしてなかなか佐伯氏の著者に取りかかれ
    ないです。夏の間「おかしいな」と思いつつ「まあいいか」
    とひたすら不眠とうたた寝を繰り返しておりやして…
    アカン…お迎えが近ひがな…と流石に病院に逝きました。。
    秋口になっても熱が治りません!
    頭がぼーっとなりやして
    始終忘れ物繰り返しておりやした。
    今日の朝刊何処行ったのさと半日くらひ探しておりやして
    冷蔵庫の棚に置いてありやした!食えるんですか?コレ?的な・・

  • 著者の意見は傾聴に値する。各所方面でもっと取り上げてほしい。

  • 【資料ID: 1117021995】 331.19-Sa 14
    http://opac.lib.saga-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB23733759

  • 東2法経図・開架 331.19A/Sa14k//K

  • 思想家佐伯啓思の脱成長・主義がよくわかる本。

    価値を変えなければ本質的なところでは何も変わらないのであろう。中間社会、善き生、多様性の承認、などは、障害のある子どもの教育の問題を考える上でも重要だと思う。

    様々な新たな考え方や理念や制度構想がされているが、根底にある価値観が近代から固定化されていれば、大きな変化は見られないのではないか。

    序章と終章だけでも繰り返し読みたい。

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著者プロフィール

経済学者、京都大学大学院教授

「2011年 『大澤真幸THINKING「O」第9号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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