「維新革命」への道 (新潮選書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106038037

作品紹介・あらすじ

「明治維新=文明開化」史観を覆す! 明治維新で文明開化が始まったのではない。すでに江戸後期に日本近代はその萌芽を迎えていたのだ――。荻生徂徠、本居宣長、頼山陽、福澤諭吉ら、徳川時代から明治時代にいたる思想家たちを通観し、十九世紀の日本が自らの「文明」観を成熟させていく過程を描く。日本近代史を「和魂洋才」などの通説から解放する意欲作。

感想・レビュー・書評

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    ★★★★☆ 星4つ

    [感想]
    読む前は明治維新の経済発展の基礎は江戸時代から徐々に蓄積されていたといった内容かと思っていたが異なっていた。
    本書の内容は明治維新の文明開化に至った思想面に関しての歴史となっている。
    私が考えていたよりも江戸時代の思想は色々と変化があったことには驚くとともに明治維新後の文明開化の源となったことにも納得できた。

  • 著者はあえて「19世紀日本」という言い方を選び、「徳川時代後期・明治時代」と書かなかったのには、1868年の断絶にだけ目を向けず、19世紀日本が自らの文明観を育んできたからだという。そして、荻生徂徠、本居宣長、山片蟠桃、頼山陽、福沢諭吉、竹越與三郎らの思想家たちを通観していく。

    個人的には最近読んだいくつかの論文のテーマがまさに重ねっており、興味深いものがあった。近世に萌芽する近代思想という視角は目新しいものではないが、本書のように非常に整理されていると改めて勉強になる。もちろん渡辺浩先生などの重要な先行研究が下敷きになっていることは強調するまでもないのだが。

    その渡辺浩先生の今年6月に出た『明治革命・性・文明ー政治思想史の冒険』をまだ読み終わっていないという恥ずかしさよ・w

  • 黒船がやってきて尊皇攘夷運動が高まり志士が活躍して明治維新や文明開化が起こったという短絡的な歴史観に物申す作品。所謂「内憂外患」によって18世紀末から江戸幕府の崩壊危機が始まっていたというのは教科書レベルの知識ではあるが、「ロング・リボリューション」として思想史的に論じたものはこれまで目にした事はなかったので新鮮であった。
    ただし、都合よく江戸の思想家と著作をピックアップして、自由主義と民主主義を謳歌している現代的視点から結論ありきで恣意的に解釈していると思える部分もあり、ダイナミックな地殻変動までは切り込めておらず、表層的な印象は否めない。これが思想史の制約であり限界でもあるので仕方ないとも言えるし、政治史や経済史とは違って実証史学から逸脱可能なある種の治外法権的側面の現れとも言えるのかもしれないが。

  • 難しい。
    かなり歴史検証的な内容で論文を新書にした感じ。読みやすくわかりやすくしようとしていない。三浦瑠璃が面白かったと言ってたから読んだけど、知識が不足していてよくわからなかった。これだから歴史ものは

  • 1.この本を一言で表すと?
    ・思想の歴史をたどることで、鎖国によって長年閉じられていた日本がどのように「開化」したのかを明らかにしている本。

    2.よかった点を3〜5つ
    ・「和魂洋才」の罠(p22)
     →なぜ「洋才」を欲したのか、富国強兵を目指したからというだけではなく別の理由があったというのは面白い。

    ・「民衆不在」の罠(p28)
     →文明開化のただ中にいた大勢の人々は、文明開化を楽しみ、徳川の時代には抑え込まれていた欲望を発散していたという話は初めて聞いて面白い。

    ・現代人は学校で無理やりやらされる「お勉強」にあまりにも慣れすぎているので、人間の素朴な興味が学問に向かうという事態を想像しにくくなっている。 ・・・儒者の私塾で学問を学ぶことも自発的な知的欲求の現れだった。(p100)
     →指摘のとおり、想像しにくくなっています。

    ・飢えに苦しむ農民というステレオタイプ(p115)
     →事実ベースで見ればわかることだが、今までの歴史では語られなかったので興味深い。

    3.参考にならなかった所(つっこみ所)
    ・第九章の「勢」はよくわからなかった。
    ・丸山眞男の「古層」は結局否定しているのか?

    4.全体の感想・その他
    ・様々な資料を引用しており、かなり長期に渡る研究の結果ということがわかる。
    ・「維新」の名の由来は、本書の主題と外れていると思うが、興味深かった。

  • (後で書きます。参考文献リストあり)

  • 帯には仰々しく「日本の「近代」は江戸時代に始まった!」「「明治維新=文明開化」史観をひっくり返す!」と銘打たれていたが、中身はそんな過度に近世と近代の連続性を主張しているわけではない。近世における経済発展とともに、思想家のなかに徐々に「進歩」や「開化」といった、明治期以降に称揚される概念の前提が用意されていたという至極まっとうな論調だった。逆にいえば、思想家のなかには用意されていたかも知れないが、社会の構造(身分制から個人主義みたいな)としてはどれくらい用意されていたのだろうか。あるいは、思想家でない人たちはどうなんだろうか。

  • 明治維新の前後、徳川時代から明治時代にいたる思想家を通観し、維新革命として、明治維新をひもとく。
    明治維新は、偶然でなく必然であったと感じる。

  •  明治維新は突発的に起こったものではなく下地となる変革があった。

     教育水準の高まり、経済活動への意識変革、変わる勢い。。。明治維新は黒船によって突然なされたものではなく、色々な変化が積み重なった中で黒船がきっかけとなったものだった。
     なるほどなぁと納得。歴史は詳細にこそ意味がある。

  • 東2法経図・指定 311.2A/Ka69i/Nakada

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著者プロフィール

東京大学大学院法学政治学研究科教授

「2011年 『政治学をつかむ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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