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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784106038273
作品紹介・あらすじ
男性はいつか、この地球上から消えてしまうのだろうか? 地球に暮らす175万種類近くの生物には、温度などの環境によって雌雄の比率を変える生物もいれば、性のない生き物すらいる。そもそも、なぜ性は存在するのか? なぜヒトには雌雄同体がないのか? 性転換する生物の目的とは? 命を次世代に継いでいくため、驚くほど多様化させてきた生き物たちの「性」の通史。
感想・レビュー・書評
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自分はなぜ「男の体」をもち「女の自覚」を持つのか(意識という言葉は避けますが)を理解する1つの方向性は、物質的な「染色体」について理解することでしょう。本書は、内容としてはかなり専門性が高く、著者自ら「飛ばして読んでもいい」としている部分がありますが、著者の長年の研究としてはそこが核心であり、一番熱が入っているところなので、是非チャレンジしたほうが良いと思います。
さて、自然界には様々な性決定様式があり、一度男として生まれていても、環境によって性転換する(実の所は強制的にさせられている)という種もあり、それらは環境に適応して進化した結果なのだということが非常によくわかる事例が多数紹介されています。そういう事例は界隈でもなんとなく知られていて、それをもって「自然界では性が多様なのに、人間はなぜ男女にこだわるのか」のような意見もたまに出ます。しかし、それはお門違いの理論で、あくまで他種は他種。とりまく環境や戦略が違うのですから比較不能というのが答えではないでしょうか。本書のように、人間の性染色体がどのような過程を経て形成されてきたのかを丁寧に辿ればまた違った論になるでしょう。
度々取り上げられているグレイブス博士の衝撃的な論文「ヒトのY染色体は年々退化しておりやがて消失する」を取り上げて論じています。何万年後の人間は、おそらくそうなっているのでしょう。著者はそれに対しそれでも男女の性決定方式はなくならないのだろうと考えています。それは本書をじっくりお読みいただくとして、その時、男の身体は「女性化」しているのでしょうか?何かしらの違いがあるのでしょうか?わかりませんが、もし区別が小さくなっているなら、いろんなジェンダーに関する事柄のうち、勝手に解決するものもあるのかもしれませんね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
生き物の染色体と性決定遺伝子の進化や、それらの役割について今わかっていること、まだわからないこと、ゲノム編集でできること、ゲノム編集の生殖医療への応用には倫理的な規定が不可欠であること。語りかける文体で書かれていて、講義を聞いてるみたいにわかりやすい。
Y染色体の上の生きてる遺伝子が50個くらいとか、もとはX染色体だったとか、鳥類爬虫類両生類と、カモノハシ、有袋類、哺乳類で性染色体の仕組みが違うとか、今後も変化はあるだろうとか、とても勉強になる。エピジェネシスのことは聞いたことがある程度で仕組みの理解まではできなかったので別の本を読んでみたい。 -
「ヒトは男に生まれるのではない。男になるのだ」
と強がってみても、肝心のY染色体の遺伝子自体78個しかなく、そのうち実際に機能しているのは30個程しかない。
ちなみに女性のそれは1098個。
さらにX染色体を1本しか持たない男性は、予備のバックアップを持っている女性に比べて、遺伝子の突然変異による障害が発現しやすい。
そもそも男を決めるという機能を持たせるだけのために、X染色体をまるまる1本犠牲にするという進化自体が、まことに採算の合わない選択で、Y染色体は後戻りもできずただ退化の道を突き進むしかない運命にある。
結局のところ、ヒトはもともと女性になるようにできていて、Y染色体を持つことによって男性化がうながされているにすぎない。
このようにY染色体はX染色体とは異なり、相方のいない一人ぼっちの染色体であるために、退化を運命付けられた染色体であるが、それと平行して現代では、一夫一妻制や著しく進歩した生殖補助医療など、ますます精子の質は劣化していく環境にあり、この先なくなってしまうのではないかと懸念する研究者も現れる程だ。
著者は、Y染色体がそう簡単に消滅してしまうことはないと予想するが、消えたって一向に構わないとも語る。
なぜなら雌雄を決める性染色体が消えることはありえないので、カエルやメダカなどのように、新たにW染色体が生まれることによって、新たな性決定遺伝子がY染色体に取って代わることは、これまでの生物の進化の過程で繰り返し起こってきたことだからだ。
そう考えるとゾウリムシの戦略はなかなか高等で、無性生殖で個体数を増やしつつ、接合による核の交換で遺伝的な多様性をも獲得するという、まさにいいとこ取りのハイブリッドな方式なのだ。 -
まだこのような内容の本がちゃんと読めてちゃんと何が書いてあるのかわかるのだぞ、ということを自覚したくて読んだのですが面白かった。生殖医療技術が向かおうとしている方向が誤った方向に行かないようにしたいという著者の思いもしっかりと受け止めることができました。
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「草食男子」や「肉食女子」という言葉が巷を賑わしたのは随分前だったし、男性の精液中の精子の数の減少を学者が発表してからも久しいが、その後の研究発表は寡聞にして知らないところ、ようやく本書を手に取ることができた。
かなり専門的な内容なので、読後も全て理解出来たとは到底思えないのだが、現在の遺伝学の到達点の一端を知ることができる本である。
難しい学術的な内容を、少なくとも小生のような素人に最後まで興味を繋ぎ続けさせた本だが、出来ればもう少し平易に噛み砕いた本の方がありがたいとも思えた。 -
性選択の研究から、人間の性別の決定方法や人間の染色体についての解説
Y染色体の変化のスピードはかなり早く、いつかはヒトのY染色体は消滅する?という研究もあるが、Y染色体の消滅=男性の消滅ではない。Y染色体をもたずに他の手段で性別決める生き物もいる -
危機感を抱くと同時にその解決策も示されていることから希望も抱けました。
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請求記号 467.3/Ma 74
著者プロフィール
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