進化論はいかに進化したか (新潮選書)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106038365

作品紹介・あらすじ

ダーウィンのどこが正しく、何が間違いだったのか? 『種の起源』が出版されたのは160年前、日本では幕末のことである。ダーウィンが進化論の礎を築いたことは間違いないが、今でも通用することと、誤りとがある。それゆえ、進化論の歩みを誤解している人は意外に多い。生物進化に詳しい気鋭の古生物学者が、改めてダーウィンの説を整理し、進化論の発展を明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • ダーウィンが「種の起源」を出版したのは160年前のことで、その理論が今でも当時のまま、修正なしに通用するとは考えにくい。ダーウィン自身が自分の進化論では説明がつかない点がいくつかあるのを認めているくらいだし、そのあたりの間隙を埋めてくれると思って楽しみに読んだのだが、なんだか結局釈然としなかった。進化途中の化石が見つからないことや、「飛べない中途半端な翼が適者生存の役に立つのか?」といった有名な反論については、いくつかの学説を紹介するにとどまって、結局どうなんだか(少なくとも著者がどう考えているのか)よくわからない。もちろん、結論じゃなくて、進化論が進化する過程を記した本だよ、と言われればそりゃそのとおりなんだが。

    その一方で、ことさらに難しい言葉を使わない説明は丁寧で、コンピュータ・シミュレーションを使った母集団の大きさと適者生存の効果などはわかりやすい。「遺伝子的浮動」という言葉は、ほかの本で読みはしたがよくわからなかったのが、本書では「なんだそういうことね」ととてもスッキリした。

  • 種の起源を読んでからこっちを読んだ方が良かったかもしれない。それでも良い本だった。

  • 更科功(1961年~)氏は、東大教養学部卒、(民間企業を経て大学に戻り)東大大学院理学系研究科博士課程修了の生物学者。東大総合研究博物館研究事業協力者、明大・立大兼任講師。専門は分子古生物学。進化論、生物学に関する一般向け著書多数。
    本書は、ダーウィン及び進化論に関して、そもそもダーウィンの考えを間違えて理解している、或いは、現在の進化生物学とダーウィンの進化論が異なることを知らないなどの理由により、多くの誤解を受けているとの認識のもと、(第1部)ダーウィンを中心にして、誤解されやすい進化の学説について、(第2部)生物の進化の歴史において、誤解されやすいポイントについて、解説したものである。
    章立ては以下の通り。
    <第1部:ダーウィンと進化学> 1章:ダーウィンは正しいか、2章:ダーウィンは理解されたか、3章:進化は進歩という錯覚、4章:ダーウィニズムのたそがれ、5章:自然選択説の復活、6章:漸進説とは何か、7章:進化が止まるとき、8章:断続平衡説をめぐる風景、9章:発生と獲得形質の遺伝、10章:偶然による進化、11章:中立説、12章:今西進化論
    <第2部:生物の歩んできた道> 13章:死ぬ生物と死なない生物、14章:肺は水中で進化した、15章:肢の進化と外適応、16章:恐竜の絶滅について、17章:車輪のある生物、18章:なぜ直立二足歩行が進化したか(Ⅰ)直立二足歩行の欠点、19章:同(Ⅱ)人類は平和な生物、20章:同(Ⅲ)一夫一婦制が人類を立ち上がらせた
    私はこれまで進化生物学に関する何冊かの本を読んできたものの、著者が懸念する通り、ダーウィンの考え、ダーウィン後の進化論の進展、対立する学説の位置付けなどが整理できず、本書を手に取ったのだが、理解を深めるために以下のような説明が役立った。
    ◆『種の起源』の主張は以下の3点。①多くの証拠を挙げて、生物が進化することを示したこと、②進化のメカニズムとして「自然選択」を提唱したこと、③進化のプロセスとして「分岐進化」を提唱したこと。
    ◆ダーウィンの提唱する「自然選択」とは以下の3点を指す。①同種の個体間に遺伝的変異(子に遺伝する変異)がある、②生物は過剰繁殖をする(実際に生殖年齢まで生きる個体数より多くの子を産む)、③生殖年齢までより多く生き残った子が持つ変異が、より多く残る。そして、現在の進化生物学では、自然選択の働き方には大きく「安定化選択」と「方向性選択」があると考えるが、ダーウィンの考えは後者に当たる。
    ◆ダーウィン(1809~1882年)の死後、1908年に発見されたハーディ・ヴァインベルクの定理により、進化のメカニズムには以下の4つがあることがわかった。①遺伝的浮動(集団の大きさが無限大ではないこと)、②自然選択(対立遺伝子の間に生存率や繁殖率の差があること)、③遺伝子交流(集団に個体の移入や移出があること)、④突然変異。この中でダーウィンが明示的に主張していたのは②である。
    ◆1968年に木村資生は、「分子レベルの進化的変化の大部分は、自然選択に中立またはほぼ中立な突然変異を起こした遺伝子の、遺伝的浮動によって起こる」、即ち「自然選択による進化よりも偶然による進化の方が多い」とする「分子進化の中立説」を主張した。(この中立説は、現在、自然選択説と並立し得るとして多くの進化生物学者に受け入れられているらしい)
    第2部の代わりに、第1部のスコープをもう少し広げてもよかったとも思うが(私の疑問の一つだった「マルチレベル自然選択」などについては触れられていなかった)、進化論の歴史と主要論点がコンパクトにまとめられた良書と思う。
    (2021年10月了)

  • ダーウィンが発見したこと、認識の誤りがわかり、原著を読む土台ができたと思う。

    中盤からはダーウィンとは関係のない進化や化石の話になり、面白さが減った。

  • 難しいが面白かった
    ノートに書いて整理しながら読むのがオススメ

  • とあるビジネス研修で進化論の引用があってその際にあまり自分の理解がスッキリしなかった事もあり本書を手に取った。

    そのビジネス研修では、要不要論的な考えで成長(進化)を無理矢理ダーウィンの進化論に結びつけていただけ。間違った進化論の理解とはこうやって(ビジネスなどの異分野で強引に結びつけ語られる) 広まっていくのか...?と気付く機会になった。

    本書自体は、ダーウィンの進化論、現在の進化生物学との違いや、進化のメカニズムやプロセスなど、わかりやすく整理されつつ論じられていて、とても読み進めやすい。

    今西進化論の話しは要らない気もしたが、生物の進化はそれほど多種多様な考えをもつ人々や研究者の興味を刺激するものであり、それがまた進化論の面白いところだと思った。

  • ダーウィンの進化論の正しいところ、今となってはまちがっているところ、そして進化論の現状についてまとめられた書。
    最後、人類はなぜ直立歩行二足歩行を獲得したか、の締めはとてもわかりやすく納得感がある。

  • ダーウィンは過去の人だが、今でも通用する部分とそうでない部分がある。
    詳しい解説により、理解。

    読了90分

  • イギリスには王権神授説のジェームズ2世を断首刑にした実績があり神意よりも民意を優先/生命の目的とは?“生命の継続、発展”/19世紀には数々の遺跡、発掘化石から目をそらし「世界はBC4000年に始まった」と敬虔に信じられていた/進化evolutionとは環境に有利なように変わること。情緒的価値判断を採らなければdevolutionと同義/20世紀後半、戦勝国の“平和攻勢”によって人類個体数は4倍に/マルサスは増えすぎた人口は負の圧力を受けると説いたが、ダーウィンも天敵がいないヒトが生態系を破壊する危険を警告

  • ダーウィンの進化論についての自分もどれだけ誤解していたか、理解が表面的だったか気づかせてくれたのは○。教科書寄りの淡白さが少し残念。素人向けにはもう少し図表を増やしたり、噛み砕いて説明してくれた方がよかったです値。

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著者プロフィール

更科功
1961 年、東京都生まれ。東京大学教養学部基礎科学科卒業。民間企業を経て大学に戻り、東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。専門は分子古生物学。現在、武蔵野美術大学教授、東京大学非常勤講師。『化石の分子生物学――生命進化の謎を解く』で、第 29 回講談社科学出版賞を受賞。著書に『若い読者に贈る美しい生物学講義』、『ヒトはなぜ死ぬ運命にあるのか―生物の死 4つの仮説』、『理系の文章術』、『絶滅の人類史―なぜ「わたしたち」が生き延びたのか』など。

「2022年 『人類の進化大百科』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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