倭寇とは何か 中華を揺さぶる「海賊」の正体 (新潮選書)

  • 新潮社 (2025年2月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784106039225

作品紹介・あらすじ

倭寇が中国の歴史を動かしてきた――驚きの「倭寇史観」! 日本史学は「倭寇は日本人主体ではない」と立証した。それでは、彼らは何者だったのか。グローバルな視座から東アジアの長期的な構造をとらえなおし、倭寇が収束したとされる17世紀以降も次々と「海賊」が現れ、今なお「中華」の秩序を揺さぶり続けている状況を解き明かす。世界史の見方が大きく変わる、岡本史学の決定版!

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

歴史の中で倭寇が果たした役割を新たな視点から探求する本作は、倭寇を単なる海賊としてではなく、東アジアの複雑な交流と経済活動の一部として捉え直します。著者は「華夷同体」という概念を用いて、倭寇の背景にあ...

感想・レビュー・書評

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  • 倭寇といっても、所謂前後期倭寇については前半で終わり。海域アジアが独自の統制で動いていたことを倭寇的とする。
    それ以降は、いわゆる中華政府の影響から離れたところで、海外との交流や経済活動を行う「華夷同体」と言う語をキーに中国史における夷界との関わりを語る。
    倭寇を知りたいという狙いとは異なるかも知れない。中国史の一視点。

  • シナの海岸を荒らし回ったという、日本海賊、倭寇。
    とはいえ、特に後半は日本人ではなく、シナ人も含む外国人も多かったのが実態だという。

    それまで海から攻められたことのないシナにとって、東から海を渡ってくる東夷は、倭に相違なかった。
    それが、他の民族であったとしても、シナには関係ない。

    寇というが、要するに海の民の交易が平素で、それがまあ、乱暴ごとになったことも含むと。

    14世紀の倭寇は治安の悪化による物だが、16世紀のそれは、日本は鎖国状態であったこともあるし、シナの政治形態と周辺の産業、生活乖離があって、中央の政治に従わない海の民が「倭寇」となった。

    著者は、「華夷同体」という言葉を使う。
    中央の矛盾に背を向けた「華人」が、「夷人」と協力し、またその力を借りてブイブイ言わす。それが倭寇の本質であると。
    そんなとこか。

    その観点から、アヘン戦争もそれ以降の紛争も、今の習近平に至るまで、中央と「倭寇」のせめぎ合いであると喝破する。倭寇とは中国そのものであり、そういう視点から中国を睥睨すれば理解できる。

    いやその、多分、東洋史学の方はそう思うのかもしれませんが、世間一般は「倭寇」なんて言葉を使わないでずーっとシナの矛盾をそう捉えて来てる気がする。

    生産と政治の矛盾を、政治が統制しようとする。

    笑うね。

    その矛盾から共産主義社会になると謳っていたと思うんだが、共産主義が、生産の矛盾を潰すんだって。

    本筋ではないが、共産主義がいかに机上の空論かって笑ける。

    しかし、本の内容は特に問題ないと思うが、タイトルを見てそう、こういう本が読みたかってっていう人、どのくらいいるんだろうか。

  •  倭寇の「華夷同体」構造に注目し、その視点で現代中国まで見る。中華としての体制や建前と離れた所で、儲けなど実利のために華と夷が一体となる構造を指す。著者は倭寇の概念を広げ、これを「倭寇」的行動様式とも呼ぶ。
     明朝時代の本来の「倭寇」自身はもちろんそうだ。その収束後も、清朝時代の「互市」、アヘン貿易、「洋務」、「変法」。孫文の三民主義と「革命」。国共合作。満洲国。「改革開放」と「一国二制度」。これら全てを「華夷同体」で読み解いていく。
     興味を惹かれた点いくつか。アヘン貿易でも戦争でも清朝の建前とは別に加担した華人は存在。「洋務」は、「華夷同体」を理解した李鴻章だから可能だった。孫文の思想は中華王朝的な独裁と西洋近代的な民主から成り、これもやはり「華夷同体」の発露。香港は、北京から見れば「華夷同体」の中で海外に傾倒した「倭寇」。
     やや著者の牽強付会かと思わなくもないが、上からの規制やプライドと下の現実の乖離はよく理解できる。

  • 倭寇の本質として「華夷同体」という構造を見出し、「倭寇」的なものは、狭義の倭寇収束後も中国史の中でたびたび立ち現れているということを論じている。
    近世・近代中国史を「倭寇」という観点で読み直すような試みで、知的面白さがあった。
    著者の文章を悪文と指摘する向きもあるようだが、個人的には、昭和以前の歴史家のような、漢文の教養を感じさせる味のある文体だと思う。

  • 日本史の教科書で習った倭寇は知識としては一面的に過ぎません。この本が上梓されたのでもっと知る必要があると考えて読んでみましたが、生半可な歴史の知識では理解が覚束ない内容でした。そのため、今回は筆者にも失礼と考えてレビューの星印はつけませんでした。とはいえ中世の「倭寇的状況」(本文に説明あります)から現在に至るまで、中華に於いて「華夷同体」という事象がくびきのように離れず、香港の一国二制度も矛盾を孕みつつ最近まで続いていたのだとわかりました。台湾に対する態度も然り、彼の国の統治者にとって最早その矛盾は、許すわけにはいかないということなのでしょう。

  • 華夷同体を視座にして倭寇どころか習近平まで貫き通した、なかなかワクワクさせられた本。
    しかし、もう少し読みやすくできたのではないか

  • 『倭寇とは何か』を読了しました。私個人的には非常に刺激的な内容で一気読みしましたが、読書会にはやや相応しくないように思いますので、皆様からの推薦書を待ちます。折角ですので、以下に要約を記載しておきますね。

    本書『倭寇とは何か―中華を揺さぶる「海賊」の正体―』は、従来の「倭寇」像(「日本人海賊が暴虐をほしいままにした」という「常識論」や「倭寇図巻」からくるイメージ)が伝聞に基づくとして、その本質を根本から問い直します。著者は、倭寇を単なる「数百年も前の瑣事」とせず、現代に繋がる意義を持つと捉え、従来の日本史に偏りがちだった見方や16世紀末終息説に異を唱え、新たな「倭寇」像・「倭寇」観を提示しています。

    本書の主要な論点は以下の通りです。

    • 「倭寇」概念の再定義:その担い手は「日本人」ではなく、列島的な「コード」を共有する「倭人」と見なすのが定説です。特に「後期倭寇」は、中国人が主体で、ポルトガル人や朝鮮半島人も含む雑居連合集団でした。著者は、「倭」よりも「寇」に注目し、「前期倭寇」が治安悪化に伴う海賊行為だったのに対し、「後期倭寇」は国家統制を超えたグローバル規模の経済活動の所産であり、その発生メカニズムが大きく異なると強調します。また、漢語の歴史叙述においては文字通りの解釈を避けるべき「言葉と事実の乖離」があることを指摘しています。

    • 「倭寇的状況」の継続と変容:日本が「鎖国」によって列島人が「海域アジア」から切り離され、狭義の「倭寇」が収束した後も、その背後にある「華人の貿易ネットワーク」を主軸とする「倭寇的状況」は東南アジアなどで継続し、あたかも国家的な存在にまで発展したと見なされます。

    • 「華夷同体」構造と現代中国への連続性:「倭寇」は明代の「華夷同体」という東アジアの秩序構造に根差しており、この構造が時代を超えて形を変えながら発現し続けると論じます。例えば、アヘン戦争は、清朝の公式貿易と民間の非合法アヘン取引の乖離から生じ、「倭寇」と酷似した構造で発生したとされます。また、孫文の革命活動も、外国勢力の支援を求める行動様式が「倭寇」と類似していると指摘され、彼の「大アジア主義」もその体質を具現化したものと捉えられます。現代の「両岸三地」(中国大陸・台湾・香港)という概念も、「華夷同体」構造の矛盾を内包し、「一国二制度」の虚実を測るバロメーターであるとしています。

    全体として本書は、「倭寇」を単なる歴史上の海賊としてではなく、東アジアの政治・経済・社会に深く根ざした歴史構造が時代を超えて発現し続けた現象として捉え直し、現代の中国(特に香港・台湾問題)にも通じる連続性を提示しています。

    特に最終の毛沢東、鄧小平から習近平につながる、現代中国に関する記述は圧巻でした。

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著者プロフィール

1965年、京都市に生まれる。現在、京都府立大学文学部教授。著書、『近代中国と海関』(名古屋大学出版会、1999年、大平正芳記念賞)、『属国と自主のあいだ』(名古屋大学出版会、2004年、サントリー学芸賞)、『中国経済史』(編著、名古屋大学出版会、2013年)、『出使日記の時代』(共著、名古屋大学出版会、2014年)、『宗主権の世界史』(編著、名古屋大学出版会、2014年)、『中国の誕生』(名古屋大学出版会、2017年、アジア・太平洋賞特別賞、樫山純三賞)ほか

「2021年 『交隣と東アジア 近世から近代へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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