死の壁 (新潮新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106100611

感想・レビュー・書評

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  • 人生の問題に正解はない、そもそも本に書いてあることを全部絶対正しいなんて思わないでくれ
    実際に、何でも、「調べればわかる」「見ればわかる」というようなことはありません
    ただし、人生でただ一つ確実なことがあります。人生の最終解答は、「死ぬこと」だということです。

    気になったことは、以下です。

    なぜ人を殺してはいけないのか
     ⇒ 二度と作れないもの だから
     ⇒ 殺すのは簡単、でも後戻りできない

    人間が死ぬということが知識としてはわかっていても、実際にはわかっていない
    そもそも、人間とは移り変わるもの。平家物語でも、方丈記でも、中世文学に流れているものは、人とは変わっていくものであると語っています。
    中世に描かれた「九相詩絵巻」。そこに描かれているのは、生きた美女が死んで、腐っていき、最後は、骸骨になるまで。人間型の骸骨だったのがバラバラになるところまでが描かれている
    中世は、死がとても身近なものだったのです
    逆に、現代人にとって「死」は実在ではなくなってきている。

    生とは何かがわからないと、死とは何かもわからない
    脳死が、部分的な脳死が、ほんとうの死なのかどうかは実はわからない
    生死の境目、死の瞬間が厳格に存在しているというのは勝手な思い込みにすぎない

    臓器移植が始まる前までは、死とは、 ①自発呼吸が止まる ②心拍がとまる ③瞳孔が開く であったのに、現代は、「ハテ?」となっている。

    死体って、もの、それとも人。塩をきよめに使うというのは、穢れとみているから、死体とは穢れ
    戒名とは、死んだから別のものになったから、死んだ奴は我々の仲間ではない

    日本人は、火葬を拒否する人はあまりいません。でも、イラン人は火葬して問題になる。それは宗教で火葬を禁じているから。

    靖国のルール、死者は別もの、だから、神さまとしておまつりしても問題はないという考え

    7章からは、別の論点となります。

    一元論に陥ったときに、人は絶対の真実があると思い込んでいます
    「みんなのため」は、本当にいろんなことをしなければならない。決して、「みんなと一緒のことをする」ではない

    乃木希典の覚悟、兵を死にやった重さを背負わなければならなかった。人の上に立つ人というのは、本来こういう覚悟がなくてはいけない。

    みんなが嫌がることは、エリートがやっていた。エリートとはいうのは本来はある種の汚れ仕事を引き受ける立場の人だった。現在は、エリートが存在しにくくなったということになります。

    エリート教育がなくなってしまっているのが根本です。多くのトップ、指導者に自分が生死を握っているという意識がなくなっているのもそのせいです。

    死の恐怖は存在しない。 死んだらどうなるかというようなことで悩んでも仕方がないのです。自分の死について延々と悩んでも仕方がないことです
    老醜うんぬんというのはありまでも、他人が見ての話であって、当人の問題ではありません。

    周囲の死を乗り越えてきた者が生き延びる。「神に愛される者は早死にする」

    目次

    序章 「バカの壁」の向う側
    第1章 なぜ人を殺してはいけないのか
    第2章 不死の病
    第3章 生死の境目
    第4章 死体の人称
    第5章 死体は仲間はずれ
    第6章 脳死と村八分
    第7章 テロ・戦争・大学紛争
    第8章 安楽死とエリート
    終章 死と人事異動
    あとがき

    ISBN:9784106100611
    出版社:新潮社
    判型:新書
    ページ数:192ページ
    定価:760円(本体)
    発売日:2004年04月15日

  • この本は東大名誉教授の養老孟司さんの「壁シリーズ」です。
    解剖学の専門医師をされていた著者の「死生観」は、とても深く参考になりました。
    ぜひぜひ読んでみて下さい。

  • ”死”について多角的な視点から考察されているが、その結論や前提に違和感を感じるものも多い。
    書かれてからしばらくするので変わったものが多いかもしれないが、死に捕らわれることが共同体からの離脱を意味する、というのはもはや共同体がほぼ崩壊している現在ではあまり意味がないような気がする。
    (もちろん、国家としての共同体はあるが…)
    深い洞察力や知性を感じさせる本ではあるので、違和感を覚える自分の方がずれているのかもしれない。

  • 日本の共同体のルール、暗黙の了解。現代にも受け継がれており、私達の意識しないところで働いていることに気付いた。
    死刑制度や安楽死、仕事として請け負う死なせる側の立場について考えされられる。
    バカの壁、こちらの方が私的に面白かった。

  • それ以前から考えることは多かったけど、死について本腰を入れて考え始めたのは2017年2月8日以降だったと思う。
    死ぬとはどういうことなのか、そもそも生きている状態とはどういう定義なのか。医学系の本や宗教、スピリチュアル系の本など色んな文献を斜め読みした結果、何がなんだか全くわからなくなってしまった経験がある。

    2020年、新型コロナウイルスによる訃報や、テレビで活躍する役者さんやミュージシャンの自殺報道が相次ぐなかで、ネット記事に引用されている養老さんの文章を見かけた。

    ”死は不幸だけれども、その死を不幸にしないことが大事なのです。「死んだら仕方がない」というふうに考えるのは大切なことなのです。”(P182より引用)

    これは、と思って引用元の『死の壁』を読むことにした。
    正直に言うと、養老さんの言葉に納得できる箇所と、それはあまりにも極端な考え方じゃないですか養老さん、と感じる部分が混在していた。自分には受け入れにくい部分も、そういう考え方もあるのか、という具合に思えた。読んでみてよかった。色んなひとがいて、色んな考え方がある。

    なぜ人を殺してはいけないかというと、元に戻せない、取り返しがつかないことだから、ということらしい。
    そして、自殺していけない理由は、取り返しがつかないことと、周囲に大きな影響を与えてしまうからだという。

    うーん。一応納得はできるけど、もっと違う別の何かがあるような気もする。

    人生のなかで他者の死は経験せざるをえないことで、死は様々な後遺症(影響)を残すが、それを良し悪しと捉えるのではなく、それを含んでいるのが人生で別の道はない、と言い切る養老さん。

    自分はそんなふうに達観できないなあ。
    色んなひとの死を経験し続けて、悲しい想いをし続けることが人生ならば、自分の意志で消え去りたいような気持にさえなってくる。さよならだけが人生なのか。銀河鉄道999みたいに機械の身体を手に入れて、不老不死になれば、他者の死も自分の死も無くなるのかな。
    結局わからないまま、人生は続く。そしていつか死ぬ。

  • 人を殺すのがなぜいけないかというと、
    復活させることだできないからだという。
    人間というシステムを壊すことは非常にいけないことなのである。
    壊すことは簡単にできるのだが、治すことはとても難しい。

    今はまだピンとこないが来るときもあるのであろう。
    また、自分の死体を見ることはできないのであるから、実質死というものは経験できないとのこと。
    なかなか考えさせられる本書であった。

  • 先日読んだ「「死」とは何か」と言ってる内容が被ってた。生死の境界、肉体と精神、死の先にあるものとは。死を学ぶことによって生を知る。
    265冊目読了。

  • とても読みやすく面白かった。
    死について考えることを悪いことと捉えたくない、生きるために必要なことだと思った。死を考える上で、様々な視点で考える必要についてもよくわかった。

  • 読書開始日:2021年11月14日
    読書終了日:2021年11月19日
    要約
    ①殺生はなぜいけないか、命は二度と元に戻せないから
    ②一人称の死は想像上のものなので、重要なのは二人称の死。周りにとって自分も二人称の死
    ③死とは自然の摂理。淘汰。死をどう活かすかに尽きる。

  • 皆安楽死する側の気持ちは考えるが、安楽死させる側の視点は欠如していることがある。
    死体を見る視点では、俺の死体は存在しない。

    普段考えが及ばない視点からの記述があり新鮮でした。

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著者プロフィール

養老 孟司(ようろう・たけし):1937年神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学名誉教授。医学博士(解剖学)。『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞。『バカの壁』(新潮社)で毎日出版文化賞特別賞受賞。同書は450万部を超えるベストセラー。対談、共著、講演録を含め、著書は200冊近い。近著に『養老先生、病院へ行く』『養老先生、再び病院へ行く』(中川恵一共著、エクスナレッジ)『〈自分〉を知りたい君たちへ 読書の壁』(毎日新聞出版)、『ものがわかるということ』(祥伝社)など。

「2023年 『ヒトの幸福とはなにか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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