妻に捧げた1778話 (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社
3.24
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本棚登録 : 1763
レビュー : 206
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106100697

作品紹介・あらすじ

余命は一年、そう宣告された妻のために、小説家である夫は、とても不可能と思われる約束をする。しかし、夫はその言葉通り、毎日一篇のお話を書き続けた。五年間頑張った妻が亡くなった日、最後の原稿の最後の行に夫は書いた-「また一緒に暮らしましょう」。妻のために書かれた一七七八篇から選んだ十九篇に、闘病生活と四十年以上にわたる結婚生活を振り返るエッセイを合わせた、ちょっと風変わりな愛妻物語。

感想・レビュー・書評

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  • 僕が青春時代、既にオールドタイプのSF作家という認識でいました。何冊か読んだ事はあると思うのですがあまり覚えておりません。(不定期エスパーシリーズを読んだ記憶があります)
    本作はカズレーザーさんがアメトークの読書芸人で紹介した事で一気に広がったと思うのですが、(僕も見ていました)メチャクチャ感動する泣ける、という方向の紹介だった為泣かせて欲しい症候群の人々が群がったのがとっても残念でした。
    淡々とした筆致で奥様との日々を語り、短編を淡々とつづる。
    長い時間を共有した夫婦だからこそ醸し出せる奥深い空気感。
    誰にでも訪れる別れに、わが身を置いてこそ感じるしんとした切なさ寂しさ。
    最後の一文に込められた感情に背筋が伸びます。自分もこんな風に配偶者に向き合いたいと強く想いました。

    「感動するって聞いたのに泣けませんでした」というようなレビューを書いている人が沢山いるのにびっくり。どれだけ慟哭したいんだよとガックリ来ました。

  • 【感想】
    タイトルだけで泣ける・・・晩年の良い夫婦のスタイル
    自分の妻がそういう状況になった時、自分はこんなにも色んな事を妻にしてやれるのかな?いや、出来ないな。
    ただ、妻に捧げた1778話の内容がほとんどくだらない空想なのは如何なものか。
    正直、話の一つ一つは読んでいて全く面白くなかった。

    両方が元気なうちに、いっぱい思い出を作りたいなーと、読んでいて漠然と感じた。


    【引用】
    p9
    妻が退院してから、私は考えた。何か自分にできることはないだろうか。
    思いついたのは、毎日、短い話を書いて妻に読んでもらうことである。
    文章の力は神をも動かすというが、もちろん私は、自分の書くものにそんな力があるとは信じていない。
    ただ、癌の場合、毎日を明るい気持ちで過ごし、よく笑うようにすれば、体の免疫力が増す、とも聞いた。


    p203
    ひとつひとつ記憶がよみがえるたびに、あのときああすればよかったのではないか、こうすればよかったのではないか、との悔いが出てきて、しかも何が正解だったのか、いまだにわからないのである。
    そして今となっては、たしかめるすべもない。

    私は癌になった当人ではなかった。
    その私が、妻の心境をいくら推察しようとしても、本当のところがわかるはずがない。

    人と人とがお互いに信じ合い、ともに生きて行くためには、何も相手の心の隅まで知る必要はないのだ。
    生きる根幹、めざす方向が同じでありさえすれば、それでいい。

  • 癌になった妻のために、筆者は“何か自分にできることはないだろうか”と考え、“毎日、短い話を書いて妻に読んでもらうこと”を思いつきます。“癌の場合、毎日を明るい気持ちで過ごし、よく笑うようにすれば、体の免疫力が増すーとも聞いた”(p9)からでした。

    病気の妻を読者としたため、書くものには制約を設けました。エッセイではなくお話にする、商業誌に載ってもおかしくないレベルを保持する、読んであははと笑うかにやりとするものであることなどです。

    病気の妻に捧げる話と聞いて、もっと深刻で哀しい話なのかと勝手に想像していましたが、初めは病気とは関係のないショートショートでした。病気だからこそ笑える話を、という発想が素敵でした。そして妻はそんな筆者の協力者であることに自負心と誇りを持っており、理想の夫婦だと思いました。

    最後は“病気の変化と進行には無関係ではいられなかった(p13)”、“ナマの気持ちを表に出してしまっている作品(?)(p182)”ですが、その話の変化に胸が苦しくなりました。

    話の変化から筆者の気持ちの変化を感じましたが、泣ける話というよりは、夫婦のお互いへの思いやる気持ちを感じて、憧れるような物語でした。

  • 最後、泣きました。
    眉村さんがどれだけ奥さんのことを想っていらしたか、そしてお二人がどれだけ望ましい関係であられたかがよくわかりました。

    一日一話の物語をすべて読んでみたいです。
    単純に眉村さんの書く話がおもしろいと感じました。
    この本に収録されているものの中では、「ある書評」「書斎」「秒読み」などが読んでいてとてもワクワクしました。
    読んでいる途中はSF作家なんだ!ぐらいに思っていましたが、読み終わったあとに気がつきました。
    眉村卓さんは「ねらわれた学園」の原作者なんですね。
    現代版のアニメ映画しか観たことありませんが、設定がおもしろい作品だなと感じたのでいつか原作もチェックしてみたいと思っていました。
    いいきっかけになりそうです!

  • 構えて読んだのだけど、あっという間に読み切ってしまった。

    妻に「捧げた」とあるけれど、あとがきで想定した読者は妻であって、でもそれだけではない、誰が読んでも通じるものを、とある。
    この言い方が、とてもよく分かる。

    妻の病状が進むに従って、それを全く抜きにしては語れないであろう、無意識下の想像が浮かび上がってきたり。
    また、作者自身の想いが、物語を通して逆に気付かされるようなことだってあったはずだ。
    二人にしか味わえない何かが、きっとある。

    そして、二人の迎えた結末を知っている「私」が、リアルタイムで書かれたショート・ショート達を更に外側から読んでゆく。
    不思議な読書体験だった。

    1778話を連ねてゆく中で、その表側にはどんな1778日が在ったのか。
    作者が取り上げた幾つかのお話に添えられたあとがきから、ほんの少し垣間見える生活。
    長くなるほど、止めることで何か起きるんじゃないか、と思うこと。
    二人が看病する者と看病される者を離れ、共同作業として編んだ作品たちを、素敵に読ませていただいた。

    私としては、一万円が降ってくる話がお気に入り。
    結局一万円は消えてなくなった、という教訓めいた終わりにするのではなく、最後は消えてなくならなかった、という終わらせ方が意外だった。

    文庫版では更に多くの話が入っているよう。
    1776日目が飛んでいたことも気になるけれど、全話完全版を、是非とも美しい装丁の本で読んでみたいなぁと思う。

  • 作家眉村卓さんが病に伏した奥様の為に1日1作品の短い話を作り聞いて貰うことと決めて5年間の闘病に寄り添った1778作品の抜粋と眉村さんの所感です。夫婦が互いに信じ合い共に生きる為には二人の生きる根っこ目指す方向が同じでありさえすれば良い という箇所に共感しました。私達もそのようにありたいものです 笑。

  • 本日2冊めの読了。

    カズレーザーさんが紹介なさったというのは、知らずに読みました。どちらかというと、この本が出た時のブクログの紹介や感想に惹かれて、予約待ちを随分して、ようやく読んだ感じです。

    眉村さんといえば、私にとっては『ねらわれた学園』や『消えたペンフレンド』などを子供の頃に図書館で借りて読み、SFなんて何も知らなかった頃、ただわくわくと楽しんで…星新一さんや新井素子さんのファンになり…。そこからゼラズニィやハインラインに進んだ、SFのとば口を教わった作家さんのお一人です。ヒット作もお持ちのベテランですが、新作は手にしていなくて、ふっとこの本で再会させて頂きました。

    うーん。今日、窓の外は朝から冷たい雨なのですが。こんな雨の日に読む本ではなかったですね。サラサラと読み進められますが、淡々と語られるお話も、奥様のためのお話も、寂しさと愛惜がにじみ出るようで、悲しくて、ページを繰る手が早くなりました。きっとお若い頃から、大作家になられるまで、一緒に苦労なさった時期が、一番お楽しかったのではないでしょうか。

    眉村さんはプロらしく、書き継ぎながら、出版も念頭に置かれたようですが、ここに描かれた心情は、本来他人が大騒ぎしたり、取り沙汰するようなものではないと思います。このお話たちの整い方と、眉村さんご本人の寂寥は、読む側の感想を出なくさせます。泣くなんて、できそうもないくらい。ただ、ご夫婦で睦まじく天上でお暮らしであるよう願います。

    雨の雫が遠くで冷たく光り、やわらかなオーボエを聞きながら、ページを閉じて、息をつきました。

  • 【悲幸福感】
    話もいいですが、注釈など話の合間がいい感じです。

  • 先に『僕と妻の1778話』(以下「僕と妻の」)を読み
    話題の本書を手にする。「僕と妻の」と比べると、
    お二人の日々(過去、現在)と創作時の心情が
    より深く語られており、
    短編を読むためなら「僕と妻の」(感想にも書いたが、
    解説とあとがきを含めて、一つの物語だと思う)、
    本書は、作家眉村卓とそれを陰で支えた(?)
    奥様の最後の日々、作家・家族のこころの動きが
    より深く語られ、あるひとつの夫婦の姿、
    闘病を支える、ともに戦う家族の姿、
    それを背景に創作された短編が紹介される回顧録
    エッセーと読んだ。

    「僕と妻の」では作家である夫、その第一の読者である妻という、これまでの形を残された時間の中で
    できる限り続けていくことを、お二人が望み
    生まれた1778話という印象だったが、
    本書を読むと、作家である夫という姿を
    奥様が望み1778話が生まれたという印象が強い。

    葬儀への要望、祈願のお札のエピソードは
    不意打ちに近くガツンとやられた。
    同志として生き、相手を思い、一緒に暮らしたい
    と思う存在。そう思ってもらえるよういたく、
    そう思いたい。

  •  SF小説作家・眉村卓は、余命1年と宣告された妻のために一日一話ずつショートショートを書いた。
    自分に課した制約は、
    ①四百字詰め原稿用紙3枚以上
    ②エッセイではなく短編小説
    ③全て商業誌に載ってもおかしくないレベルを保持する
    ④病気や人の死、深刻な問題、病人の神経を逆なでする内容は書かない
    ⑤必ず日常とどこかでつながっていること、など。
    それから妻が亡くなるまでの五年間、毎日書き続け、総作品数は1778話。階下に妻の遺体を安置し二階で書き上げたという最終回が読者の胸を打つ。
     40年以上に亘る結婚生活を振り返ったエッセイとともに、妻に捧げた19編を掲載した、静かに心潤うある夫婦の愛の実話。

     アメトークでカズレーザーが「泣いた」と紹介し興味を持って購入。実際に読んでみて、眉村夫妻の互いを理解する愛の形を素敵だと感じたものの、泣くようなことはなかった。
     妻との思い出と妻に捧げた短編小説を交えながら最終回、妻の死へと向かっていくが、悲壮や哀切を大して感じさせない書き方は好感が持てた。色んな夫婦の形があって、これもひとつの素敵な一例、程度にしか感じなかったが…。

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著者プロフィール

眉村卓(まゆむら たく)
1934年、大阪市西成区生まれ。大阪大学経済学部卒。耐火煉瓦会社勤務の傍ら、SF同人誌「宇宙塵」に参加。61年、「SFマガジン」第1回SFコンテストに投じた「下級アイデアマン」が佳作入選し、デビュー。63年、処女長編「燃える傾斜」刊行。その後コピーライターを経て、65年より専業作家に。企業社会と個人の関係をテーマにしたいわゆるインサイダー文学論を唱え、ショートショートやジュニアSFでも健筆をふるい、絶大な人気を博す。71年、未来の管理社会を描いたインサイダーSF「司政官」シリーズを開始。79年、その長編第一作『消滅の光輪』で第7回泉鏡花文学賞を受賞。癌を患った妻に日々、自作のショート・ショートを捧げた。妻が逝去したのち『妻に捧げた1778話』として発刊、大きな反響を呼んで2011年1月に映画化、代表作の一つに数えられる。

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