妻に捧げた1778話 (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106100697

作品紹介・あらすじ

余命は一年、そう宣告された妻のために、小説家である夫は、とても不可能と思われる約束をする。しかし、夫はその言葉通り、毎日一篇のお話を書き続けた。五年間頑張った妻が亡くなった日、最後の原稿の最後の行に夫は書いた-「また一緒に暮らしましょう」。妻のために書かれた一七七八篇から選んだ十九篇に、闘病生活と四十年以上にわたる結婚生活を振り返るエッセイを合わせた、ちょっと風変わりな愛妻物語。

感想・レビュー・書評

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  • 僕が青春時代、既にオールドタイプのSF作家という認識でいました。何冊か読んだ事はあると思うのですがあまり覚えておりません。(不定期エスパーシリーズを読んだ記憶があります)
    本作はカズレーザーさんがアメトークの読書芸人で紹介した事で一気に広がったと思うのですが、(僕も見ていました)メチャクチャ感動する泣ける、という方向の紹介だった為泣かせて欲しい症候群の人々が群がったのがとっても残念でした。
    淡々とした筆致で奥様との日々を語り、短編を淡々とつづる。
    長い時間を共有した夫婦だからこそ醸し出せる奥深い空気感。
    誰にでも訪れる別れに、わが身を置いてこそ感じるしんとした切なさ寂しさ。
    最後の一文に込められた感情に背筋が伸びます。自分もこんな風に配偶者に向き合いたいと強く想いました。

    「感動するって聞いたのに泣けませんでした」というようなレビューを書いている人が沢山いるのにびっくり。どれだけ慟哭したいんだよとガックリ来ました。

  • 【感想】
    タイトルだけで泣ける・・・晩年の良い夫婦のスタイル
    自分の妻がそういう状況になった時、自分はこんなにも色んな事を妻にしてやれるのかな?いや、出来ないな。
    ただ、妻に捧げた1778話の内容がほとんどくだらない空想なのは如何なものか。
    正直、話の一つ一つは読んでいて全く面白くなかった。

    両方が元気なうちに、いっぱい思い出を作りたいなーと、読んでいて漠然と感じた。


    【引用】
    p9
    妻が退院してから、私は考えた。何か自分にできることはないだろうか。
    思いついたのは、毎日、短い話を書いて妻に読んでもらうことである。
    文章の力は神をも動かすというが、もちろん私は、自分の書くものにそんな力があるとは信じていない。
    ただ、癌の場合、毎日を明るい気持ちで過ごし、よく笑うようにすれば、体の免疫力が増す、とも聞いた。


    p203
    ひとつひとつ記憶がよみがえるたびに、あのときああすればよかったのではないか、こうすればよかったのではないか、との悔いが出てきて、しかも何が正解だったのか、いまだにわからないのである。
    そして今となっては、たしかめるすべもない。

    私は癌になった当人ではなかった。
    その私が、妻の心境をいくら推察しようとしても、本当のところがわかるはずがない。

    人と人とがお互いに信じ合い、ともに生きて行くためには、何も相手の心の隅まで知る必要はないのだ。
    生きる根幹、めざす方向が同じでありさえすれば、それでいい。

  • SF作家である眉村卓氏が、癌で闘病する妻に毎日ショートショートを作り続け、読んでもらう、病が進み読めなくなってからは病床で読み聞かせるという、ちょっと通常の不特定多数の読者に向けて書いた物語ではなく、あくまでも最愛の妻に向けての物語。

    アメトーーク!の「読書芸人」で紹介されていた一冊だけれど、たしかに死を目前とした妻に向ける物語という意味では鬼気迫る迫力を感じるけれど、紹介していた芸人たちの手放しでの賛辞が妥当かどうかはちょっと微妙かも。

    特に最後の一篇だけ読んでも泣ける、ということに関しては首を傾げざるを得ない。

    でもまあ、眉村氏の奥様に対する深い深い愛情については痛いほどよくわかった。

  • お話をつくることで作者自身が癒され、そんな作者を受け入れることで、妻も癒されたのではないか。夫婦って何だろうなと最後の最後で考えさせられた。夫婦がみな同じ想いや考え方を抱くわけではない。それぞれに夫婦の形がきっとあるんだと思う。
    夫婦になりたいと思った。自分達なりの夫婦をやってみたいと思った。

  • 癌になった妻のために、筆者は“何か自分にできることはないだろうか”と考え、“毎日、短い話を書いて妻に読んでもらうこと”を思いつきます。“癌の場合、毎日を明るい気持ちで過ごし、よく笑うようにすれば、体の免疫力が増すーとも聞いた”(p9)からでした。

    病気の妻を読者としたため、書くものには制約を設けました。エッセイではなくお話にする、商業誌に載ってもおかしくないレベルを保持する、読んであははと笑うかにやりとするものであることなどです。

    病気の妻に捧げる話と聞いて、もっと深刻で哀しい話なのかと勝手に想像していましたが、初めは病気とは関係のないショートショートでした。病気だからこそ笑える話を、という発想が素敵でした。そして妻はそんな筆者の協力者であることに自負心と誇りを持っており、理想の夫婦だと思いました。

    最後は“病気の変化と進行には無関係ではいられなかった(p13)”、“ナマの気持ちを表に出してしまっている作品(?)(p182)”ですが、その話の変化に胸が苦しくなりました。

    話の変化から筆者の気持ちの変化を感じましたが、泣ける話というよりは、夫婦のお互いへの思いやる気持ちを感じて、憧れるような物語でした。

  • 眉村卓というSF作家の側面をみることができた。

  • 最後、泣きました。
    眉村さんがどれだけ奥さんのことを想っていらしたか、そしてお二人がどれだけ望ましい関係であられたかがよくわかりました。

    一日一話の物語をすべて読んでみたいです。
    単純に眉村さんの書く話がおもしろいと感じました。
    この本に収録されているものの中では、「ある書評」「書斎」「秒読み」などが読んでいてとてもワクワクしました。
    読んでいる途中はSF作家なんだ!ぐらいに思っていましたが、読み終わったあとに気がつきました。
    眉村卓さんは「ねらわれた学園」の原作者なんですね。
    現代版のアニメ映画しか観たことありませんが、設定がおもしろい作品だなと感じたのでいつか原作もチェックしてみたいと思っていました。
    いいきっかけになりそうです!

  • 構えて読んだのだけど、あっという間に読み切ってしまった。

    妻に「捧げた」とあるけれど、あとがきで想定した読者は妻であって、でもそれだけではない、誰が読んでも通じるものを、とある。
    この言い方が、とてもよく分かる。

    妻の病状が進むに従って、それを全く抜きにしては語れないであろう、無意識下の想像が浮かび上がってきたり。
    また、作者自身の想いが、物語を通して逆に気付かされるようなことだってあったはずだ。
    二人にしか味わえない何かが、きっとある。

    そして、二人の迎えた結末を知っている「私」が、リアルタイムで書かれたショート・ショート達を更に外側から読んでゆく。
    不思議な読書体験だった。

    1778話を連ねてゆく中で、その表側にはどんな1778日が在ったのか。
    作者が取り上げた幾つかのお話に添えられたあとがきから、ほんの少し垣間見える生活。
    長くなるほど、止めることで何か起きるんじゃないか、と思うこと。
    二人が看病する者と看病される者を離れ、共同作業として編んだ作品たちを、素敵に読ませていただいた。

    私としては、一万円が降ってくる話がお気に入り。
    結局一万円は消えてなくなった、という教訓めいた終わりにするのではなく、最後は消えてなくならなかった、という終わらせ方が意外だった。

    文庫版では更に多くの話が入っているよう。
    1776日目が飛んでいたことも気になるけれど、全話完全版を、是非とも美しい装丁の本で読んでみたいなぁと思う。

  • 【悲幸福感】
    話もいいですが、注釈など話の合間がいい感じです。

  • 作家眉村卓さんが病に伏した奥様の為に1日1作品の短い話を作り聞いて貰うことと決めて5年間の闘病に寄り添った1778作品の抜粋と眉村さんの所感です。夫婦が互いに信じ合い共に生きる為には二人の生きる根っこ目指す方向が同じでありさえすれば良い という箇所に共感しました。私達もそのようにありたいものです 笑。

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著者プロフィール

1934 - 2019。SF作家。1979年に『消滅の光輪』で泉鏡花文学賞および星雲賞を受賞。また1987年に『夕焼けの回転木馬』で日本文芸大賞を受賞。代表作にジュブナイルSFの名作といわれる『なぞの転校生』『ねらわれた学園』などがある。

「2023年 『不思議の国の猫たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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