考える短歌: 作る手ほどき、読む技術 (新潮新書 83)

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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106100833

作品紹介・あらすじ

どうすれば気持ちを正確に伝えることができるのか。短歌上達の秘訣は、優れた先人の作品に触れることと、自作を徹底的に推敲吟味すること。ちょっとした言葉遣いに注意するだけで、世界は飛躍的に広がる。今を代表する歌人・俵万智が、読者からの投稿を元に「こうすればもっと良くなる」を添削指導。この実践編にプラスし、先達の作品鑑賞の面からも、表現の可能性を追究する。短歌だけに留まらない、俵版「文章読本」。

感想・レビュー・書評

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  • 「考える短歌」で私が試みてみたいのは、短歌を作るうえでの「言葉の技術」をどこまで伝えられるか、ということだ。そのためには抽象的な理屈を並べるのではなく、なるべく具体的な方法をとりたい。そこで「添削」ということを中心に据えることにした。ーはじめにより。


    第一講
    「も」があったら疑ってみる。
    必然性のある「も」

    必然性のある「も」の入った歌
    ○あなたからきたるはがきのかきだしの「雨ですね」さう、けふもさみだれ     松平修文

    第二講
    句切れを入れてみよう
    思い切って構造改革をしよう
    せっかく定型に納まったと思わずに

    句切れなしの名歌
    ○ゆく秋の大和の国の薬師寺の塔の上なる一ひらの雲
                  佐佐木信綱

    第三講
    動詞が四つ以上あったら考えよう
    体言止めは一つだけにしよう

    動詞が五つ使われている名歌
    ○大海の磯もとどろに寄する波破れて砕けて裂けて散るかも             源 実朝

    第四講
    副詞には頼らないでおこう
    数字を効果的に使おう

    数字の入った秀歌
    ○一つ駅を乗り越せば違った人生もあると思えり午前八時五十分           光栄たか夫

    第五講
    比喩に統一感を持たせよう
    現在形を活用しよう

    現在形で降る雪の歌
    ○体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ            穂村弘

    第六講
    あいまいな「の」に気をつけよう
    初句を印象的にしよう

    初句が印象的な名歌
    ○たとへば君 ガサッと落葉すくふやうに私をさらって行ってはくれぬか       河野裕子

    第七講
    色彩をとりいれてみよう
    固有名詞を活用しよう

    固有名詞を使った秀歌
    ○あまりよい比喩ではないが東山魁夷のやうな山霧は降る              中山 明

    第八講
    主観的な形容詞は避けよう
    会話体を活用しよう

    主観的な形容詞が表現の中で生きている例
    ○サバンナの象のうんこよ聞いてくれだるいせつないこわいさみしい         穂村弘

    会話体の応酬
    ○<反省の色が見えない><反省の色はなにいろ>教師と少年            今井恵子




    ※ところで、短歌好きの皆さまにお知らせです。
    2023年5月28日(日)午後9時から
    NHKスペシャル 響きあう歌ーコロナ禍喪失と再生の物語を放送します。
    出演は東直子さん他。
    再放送は2023年6月1日午前0時35分からです。
    お見逃しなく!
    (私のTwitter見ていただけると、リツイートしていますのでどのような番組かわかるかと思います)

    • 5552さん
      まことさん、こんにちは。

      NHKの短歌特集、お知らせありがとうございます!
      さっそく、録画予約しました。楽しみ♪
      俵さんの短歌指南...
      まことさん、こんにちは。

      NHKの短歌特集、お知らせありがとうございます!
      さっそく、録画予約しました。楽しみ♪
      俵さんの短歌指南書、読んでみたいです。
      2023/05/26
    • まことさん
      5552さん、こんばんは♪

      私も番組を楽しみにしています。
      この本も、良書だと思います。
      5552さん、こんばんは♪

      私も番組を楽しみにしています。
      この本も、良書だと思います。
      2023/05/26
  • 短歌のコツを集めてあって、お〜こりゃすげえ添削だ となることもあれば、元のもいいね となることもあり、短歌を教えること自体の難しさを感じた一冊だった。
    コツの用例集として捉えた方が良いのかもしれないが、短歌の本質に言及する一章が加えられたりしてもよかったような…少し内容が寂しかったかもしれません 読みやすくて良いとも言える!!!!!!!!

  • 俵万智(1962年~)氏は、早大第一文学部卒の歌人。大学卒業後、高校の国語教員として働きながら発表した『野球ゲーム』が1985年の角川短歌賞次席となり、その奔放で斬新な表現で現代口語短歌のホープとして一躍脚光を浴びた。『八月の朝』で1986年の角川短歌賞を受賞。翌年に発行した第一歌集『サラダ記念日』は刊行前から話題を集め、歌集としては異例の大ベストセラーとなり(280万部で1987年度ベストセラーランキング1位)、社会現象を引き起こした。その後も、歌集、エッセイなどを多数執筆。
    私は著者とほぼ同世代で、『サラダ』は発表当時に一読したものの、引越しを繰り返すうちにどこかへ行ってしまったのだが、最近短歌を詠む友人に刺激を受けてぽつぽつと歌を詠み始めたことから、本書を手に取った。(『サラダ』も文庫版で入手した)
    本書は著者が、短歌を作る上での「言葉の技術」を語ったものであり、季刊誌「考える人」に2002~2004年に連載された「考える短歌」と、『三十一文字のパレット』、『記憶の色 三十一文字のパレット2』(共に中公文庫)からの再録(大幅加筆修正)である。
    構成は以下の通りで、そのまま一言アドバイスになっている。
    第一講:「も」があったら疑ってみよう
    第二講:句切れを入れてみよう/思い切って構造改革をしよう
    第三講:動詞が四つ以上あったら考えよう/体言止めは一つだけにしよう
    第四講:副詞には頼らないでおこう/数字を効果的に使おう
    第五講:比喩に統一感を持たせよう/現在形を活用しよう
    第六講:あいまいな「の」に気をつけよう/初句を印象的にしよう
    第七講:色彩をとりいれてみよう/固有名詞を活用しよう
    第八講:主観的な形容詞は避けよう/会話体を活用しよう
    また、著者は技術面に先立って、「はじめに」で以下のように語っているのだが、歌を詠むにあたって心に残る記述である。
    「短歌は、心と言葉からできている。まず、ものごとに感じる心がなくては、歌は生まれようがない。心が揺れたとき、その「揺れ」が出発点となって、作歌はスタートする。・・・日頃から、心の筋肉を柔らかくしておくことが、大切だ。・・・私にとっては「短歌を作ること」そのこと自体が、なによりの柔軟体操になっている。もし、自分が短歌を作っていなかったら、慌ただしい毎日のなかで、「あっ」と思うことがあったとしても、思いっぱなしで過ぎてしまうだろう。短歌を作っているからこそ、その「あっ」を見つめる時間が、生まれる。たとえ隙間のような時間であっても、毎日の小さなつみかさねこそが、大切だ。「あっ」を見つめて、立ちどまって、味わいつくすことが、心そのものを揉みほぐしてゆく。」
    著者の語る「心」と「言葉(の技術)」を心に留めて、これから地道に歌を詠んでいきたいと思う。
    (2021年3月了)

  • この手ほどきもまた著者の価値観でしかないことを念頭に置かなくてはならないが、なるほどなと思った。以下メモ

    ・「も」の必然性や、あいまいな「の」を疑う
    ・句切れをつくる、構造を組み替える
    ・動詞は3つまで
    ・体言止めはひとつだけ
    ・副詞に頼らない
    ・数字や固有名詞、色彩を効果的に使う
    ・比喩に統一感を持たせてみる
    ・現在形を活用する
    ・初句を印象的にする
    ・主観的な形容詞は避ける
    ・会話体を活用する

  • いろんな短歌を添削してます。
    鑑賞コーナーもあり、心打つ短歌が味わえます。
    ステイホーム中何かやりたいなあと適当な気持ちで読んだけど、
    自分がそんなlevelじゃないって、わかりました。

  • 短歌って時間を切り取った絵画のようなものなのかな。心が豊かになった。少し始めてみようかな

  • 俵万智さんによる短歌の実践講座。 アマチュアの投稿を添削したり、プロの作品を読み解いたり。 なるほどね!の連続ですっご~~~く面白いです。(#^.^#).
    私の短歌の原点(#^.^#)は石川啄木で、中学のころ、「一握の砂」「悲しき玩具」に夢中になりました。
    で、すぐに影響される私は三行の短歌を作り始めたわけですが、それが気持ちばかり先走って凡庸、つまり下手くそ~~!でね。
    その後時々、思い出したようには作ってみても、なんか奥行のない短歌しか出来上がらずちっとも面白くないんですよ。

    なので、あとは手当たり次第に先人の歌集を読み漁り、(当時は、与謝野晶子、若山牧水、斉藤茂吉、寺山修司が好きだった。万葉集、古今、新古今あたりは拾い読み。新古今の技巧を凝らした和歌に惹かれたのは若かったから、なんでしょうね。今は万葉が一番好きです。) なんて巧いんだぁ~~なんて、あはは・・当たり前じゃん、と今なら思うけど、感嘆するばかりの日々でありました。

    で、俵万智さんの「サラダ記念日」。これは20代で結婚してから出た歌集ですが、凄い衝撃でしたね。全て五・七・五・七・七にはまり、その定型の気持ちよさと1人暮らしの若い女性の瑞々しい感性が発露されて…。
    「また電話しろよと言って受話器置く 君に今すぐ電話をしたい」が一番好きだったんだけど、なんかもう女の子の気持ちがわかりすぎるほどわかって、ホント、泣けちゃいましたもの。


    ・・・・・・なんてすみません、短歌のことをこちらに書くのは初めてなので、つい熱く自分語り(大汗)をしてしまいました。

    で、「考える短歌」ですよ。(#^.^#)

    万智さんの穏やかな口調で添削された投稿作品は、たった一語を変えるだけで、ぐっとテーマがクローズアップされる、というまるでマジックのよう。


    「も」があったら疑ってみよう という章では


    「冷蔵庫のシチューも食べ終え君のいた証拠がついに消えたこの部屋」を
    「冷蔵庫のシチューを食べ終え君のいた証拠がついに消えたこの部屋」に。


    「も」は同様のことが他にもあるという意味で、無防備に遣ってしまうと焦点が絞りきれずに印象が甘くなる、との指摘があり、また、意味的に確かに「も」であっても、「を」「が」「は」に置き換えたほうがすっきりすることもある。


    うん、わかるなぁ。
    タッチが柔らかくなることもあって、私なんて本の感想を書くときに、無防備どころか必要ないようなところにまで「も」を使ってるなぁ、と反省。
    で、シチュー「も」食べ終えるのと、シチュー「を」食べ終えるのとでは、読み手の女の子(だと思う。)が彼の去った後、悲しさを抱えながらもすっくと立ち上がっている強さまで感じられる・・・。

    そして、寺山修司の

    「きみが歌うクロッカスの歌も新しき家具のひとつに数えむとする」

    の「も」の必然性を語る万智さんの優しい口調とその内容がとても好き!(#^.^#)
    うんうん、ホントだ!なんてそればっかりなんだけど。

    そのほか、句切れを入れて全体のリズムを引き締め、言いたいことがより一層切なく伝わる、とか、
    動詞はあまりたくさん入れないこと、
    体言止めも一つだけ、

    「バスタブに泡だてて手にすくうシャボン幼い頃に見上げていた雲」を
    「バスタブに泡だつシャボンすくうとき幼い頃に追いかけた雲」に。


    上の歌は体言止めが二つあるために上の句と下の句が同じ重みで分かれてしまった。シャボン=雲の図式が単純に見えてしまう。


    そして


    シャボンから雲への連想を、もう少し不親切につなげたほうが、かえって余韻が生まれる。


    なるほどね~~、“不親切に”という作歌の姿勢があるわけですか。(#^.^#)

    で、また、見上げていた を 追いかけた にしたのは


    字余りが気になっただけではなく、このほうがリズムだけではなく動きが出ていいのではないだろうか。
    体言止めが「雲」のみになって、記憶の世界のほうに重心が定まった。


    ですって。

    体言止めって便利だから、私なんてすっごく使うんだけど・・・。
    もう、短歌を作ろうなんて思うこともないとは思いながら、うんうん、そうなんだ!と嬉しくなってしまいます。

    また、

    安易な副詞で自分の気持ちを表わさない(ふと、とか、ひっそり、とか、さびしく、とか)
    現在形を活用しよう、

    とか、

    焦点をぼやけさせないこと、をたぶん主眼においてのレクチャーだと思うのだけど、
    いちいち腑に落ちてすっごく面白い。

    バリバリ理系男の主人が、例によってテーブルの上に置きっぱなしにしていたこの本を覗いたみたいで、
    それこそ短歌なんかに全く!!!縁のない人なのに、

    面白いなぁ~~、この本~~!と感嘆していたのが可笑しかったです。(#^.^#)

  • わかりやすいし、具体的だった。
    言いたいこともすっきりまとめられていた。

    添削というのが良い。

    そうだったのか!というような気づきが特にあるわけでもなく、割と言われなくても分かっていたことが多い印象。
    比喩を重ね過ぎてぼやけるとか、体言止めは使い過ぎるとバランス悪いとか、言われてみたらそうだけどおそらく本人が真面目に推敲したら割と気づきそうでもある。

  • 「考える短歌」俵万智著、新潮新書、2004.09.20
    171p ¥693 C0292 (2023.09.20読了)(2008.11.08購入)
    副題「作る手ほどき、読む技術」

    【目次】
    はじめに
    第一講 「も」があったら疑ってみよう
    第二講 句切れを入れてみよう、思いきって構造改革をしよう
    第三講 動詞が四つ以上あったら考えよう、体言止めは一つだけにしよう
    第四講 副詞には頼らないでおこう、数字を効果的に使おう
    第五講 比喩に統一感を持たせよう、現在形を活用しよう
    第六講 あいまいな「の」に気をつけよう、初句を印象的にしよう
    第七講 色彩をとりいれてみよう、固有名詞を活用しよう
    第八講 主観的な形容詞は避けよう、会話体を活用しよう

    ☆関連図書(既読)
    「サラダ記念日」俵万智著、河出書房新社、1987.05.08
    「ふるさとの風の中には」俵万智著・内山英明写真、河出書房新社、1992.11.30
    「短歌をよむ」俵万智著、岩波新書、1993.10.20
    「恋する伊勢物語」俵万智著、ちくま文庫、1995.09.21
    「三十一文字のパレット」俵万智著、中公文庫、1998.04.18
    「記憶の色 三十一文字のパレット2」俵万智著、中公文庫、2003.04.25
    「花咲くうた 三十一文字のパレット3」俵万智著、中公文庫、2009.03.25
    「ある日、カルカッタ」俵万智著、新潮文庫、2004.03.01
    「トリアングル」俵万智著、中央公論新社、2004.05.25
    「かーかん、はあい」俵万智著、朝日文庫、2012.05.30
    「みだれ髪 チョコレート語訳」与謝野晶子著・俵万智訳、河出書房新社、1998.07.06
    「みだれ髪Ⅱ チョコレート語訳」与謝野晶子著・俵万智訳、河出書房新社、1998.10.09
    (「BOOK」データベースより)amazon
    どうすれば気持ちを正確に伝えることができるのか。短歌上達の秘訣は、優れた先人の作品に触れることと、自作を徹底的に推敲吟味すること。ちょっとした言葉遣いに注意するだけで、世界は飛躍的に広がる。今を代表する歌人・俵万智が、読者からの投稿を元に「こうすればもっと良くなる」を添削指導。この実践編にプラスし、先達の作品鑑賞の面からも、表現の可能性を追究する。短歌だけに留まらない、俵版「文章読本」。

  • 短歌の技術的な面が、かなり勉強になりました。
    添削スタイルなのもわかりやすくて良かったです。
    今すぐ真似できる技術ばかりなので、少しずつ意識して取り入れてみたいと思います。

    短歌というのは、余分な部分を削って説明的にならないようにシンプルにして、感情の部分は読者に読み取ってもらうようにするんだなぁと思いました。

    ・必要以上に「も」を使わない
    ・句切れを入れてリズムをひきしめる
    ・構造を推敲する
    ・動詞は多くて3つまで
    ・体言止めは1つまで
    ・副詞に頼らない
    ・具体的な数字を使う
    ・比喩に統一感を持たせる
    ・現在形を使う
    ・正しい「の」の使い方をする
    ・初句を印象的にする
    ・色彩を取り入れる
    ・固有名詞を活用する
    ・主観的な形容詞は避ける
    ・会話体を活用する

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著者プロフィール

1987年の第1歌集《サラダ記念日》はベストセラー。歌集に《かぜのてのひら》《チョコレート革命》《プーさんの鼻》《オレがマリオ》《未来のサイズ》《アボカドの種》、評伝《牧水の恋》、エッセイ《青の国、うたの国》など。2022年、短歌の裾野を広げた功績から朝日賞を受賞。読売歌壇選者のほか、宮崎で毎年開催される高校生の「牧水・短歌甲子園」審査員もつとめる。

「2023年 『旅の人、島の人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

俵万智の作品

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