「エコノミック・アニマル」は褒め言葉だった: 誤解と誤訳の近現代史 (新潮新書 84)
- 新潮社 (2004年9月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106100840
感想・レビュー・書評
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目から鱗
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翻訳につきまとう誤解や誤訳・・・・・・といかないまでもニュアンスの違いによって齟齬が生じてしまった事例を細かく紹介した一冊。
同じモノを表す単語でもニュアンスの違いというものはどの言語にもあるし、更に英語には冠詞ひとつで文脈、意味も変ってくる。自分もそうだけれどここが日本人は苦手だよな。冠詞って日本語にないし。
たとえば表題のEconomic Animalには侮蔑的ニュアンスはない。** Animalという言い方は英語(イギリス)にあり、チャーチルはPolitic Animalと呼ばれ、それは「他の分野ならいざ知らす、政治に関してはずば抜けている」というようなニュアンスだという。
アニマルという言葉につきまとう獣というイメージは英語でいうならばBeastになるといい、元の発言となったプット首相も対日批判の文脈の中での発言ではあるものの「経済においては優れている」ということが言いたかったのではないだろうか。
それにしても「日本はダメだ」論というは人気があるもんである。これは日本人特有の嗜虐性なのだろか? -
“金の亡者”と同様なイメージと思われがちな「エコノミック・アニマル」という言葉は、日本人を侮辱するつもりで使われたのではなく、むしろ「経済面で非常に優れた才能がある」という褒め言葉だったという。
タイトルになった「エコノミック・アニマル」を始め、「ウサギ小屋」「12歳の少年」など一般に日本人を揶揄していると捉えられている言葉の真意や、翻訳や通訳のミス(あるいは故意の誤訳)によって意図がねじまげられた事例を紹介している。
薄い新書なので1日あれば読了できる。著者は30年の外務省勤務の大半を海外で過ごした人であり、特に英語の微妙なニュアンスによる印象の違いには敏感のようだ。前半は興味深いエピソードが多く読みごたえがあるが、後半はやや著者の回顧録のような内容になっているのが残念。 -
さすが元?外交官英語の表現は、ちょっとしたことで全く意味が違ってくるんですね。こういった微妙な違いが、勘違いを生むということが、面白かったです。
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へぇーっ、っていうことが沢山あり読んで損はないと思います。著者は(元?)外交官なので、英語には精通されているはずですが、その著者にしても「英語は難しい」と言わしめています。名詞の countable, uncountable、冠詞、英語と米語の違い、王室英語など話題も多彩で、かつ読みやすい。英語勉強しなきゃ。。。
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英語の知識がある程度ないと難解な本。
世界しに残る重要な事件が、翻訳の誤解によるものがこんなにたくさんあることを知り、面白く感じると同時に少し怖くもあった。
タイトルにあった「エコノミックアニマル」が実は褒め言葉だったことについては筆者の想像の域を出ていないのが残念だった。 -
私もしっかり翻訳せねば!
翻訳者(ときには読者)の性格や心理から思わぬ誤訳が生まれてしまう事を指摘している。日本では、マッカーサーの「日本人は12歳」発言を筆頭に、外国人の日本に対する発言を悪く誤訳する。その背景には日本人の国際社会での自分の立ち位置に関する自信のなさ、コンプレックスが表れている。
さらに英語では冠詞の有無で意味が大きく異なってしまうことや、自分のことを三人称で話すことから読み取れるニュアンスなど、英文法や語法に関するトピックも興味深い。
また、これだけ英語に造詣の深い著者が、moronという単語を知らず、また周囲の英語熟練者も知らなかった、でも英語ネイティブなら誰でも知っている単語であることに驚いていたエピソードが印象的だった。私にとっては、高校留学時にまっさきに耳にした単語の一つだった。
今思うと、現地で覚えた単語って使いようのない差別単語ばかりだったなぁ。 -
小泉政権時代、某省の官僚が「全面的民営化」とすべきところを「全面的に民営化」という文言にしたことで意に沿う法案を作ることに成功したという話をどこかで聞いたことがある。
本書でも同じように、単数形と複数形の違いといった細かな表現の違いで歴史が動いた、あるいは動きかけたケースについて、丁寧に原典をひきながら論じている。
それと並んで重要なのが通訳にまつわる話で、通訳が意味をねじ曲げるようなことが起きてしまったケースを取り上げている。語学力をあなどってはならないと肝に銘じた。 -
途中でやめた
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[ 内容 ]
マッカーサーの「日本人は十二歳の少年」という発言や、「エコノミック・アニマル」「ウサギ小屋」といった言葉は、日本人をネガティブに評する際に使われる決まり文句である。
しかし、実はこれらの言葉に批判的な意味はなかった。
日米開戦のきっかけになった誤訳、ダイアナ妃の招いた誤解、世界には通じない「グローバル・スタンダード」の意味等、近現代史のさまざまな場面での誤解、誤訳を紹介する。
[ 目次 ]
第1章 「日本人は十二歳」の真意―この一言で、マッカーサー元帥は日本人に嫌われてしまったのだが…。
第2章 「エコノミック・アニマル」「ウサギ小屋」は悪口か―二つの言葉には、日本への意外な高評価が隠されていた。
第3章 アーネスト・サトウと山下将軍の無念―外交の場では小さな勘違いが致命傷になる。そこに悪意はなくても…。
第4章 暗号電報誤読の悲劇 日米開戦前夜―悪意に溢れた米国側の「誤訳」が、日米開戦のきっかけだった!
第5章 漱石の鬱屈、魯迅の感動―イギリスで屈辱を味わった文豪と日本の人情に触れた文豪。
第6章 ダイアナ妃とブッシュ・シニアの文法―世界を揺るがせたプリンセスの三人称。大統領が見せた言語学の知識。
第7章 存在しない「グローバル・スタンダード」という言葉―政財界がお題目にした「基準」は、日本でしか通用しない言葉だった!
第8章 ブッシュ・ジュニアの国連演説―単数か複数か、それが大問題だった。イラク戦争を巡る駆け引き。
第9章 騒動の中心はたったひとつの言葉―「うすのろ」「強情者」呼ばわりで大統領も首相も激怒。
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