- 本 ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106100857
感想・レビュー・書評
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”人事担当という仕事柄、読んで役立てたい一冊。「土管人事」など耳に痛い言葉がたくさんならぶが、「個々の異動はSECIプロセスのどの局面を目的にしたものかを明確に意図できる」という主張(p.113)が新鮮だった。徳岡 晃一郎さんは『MBB』の共著者の一人でもある。
<読書メモ>
・人事異動は、人を慣れ親しんだ環境から引き離す。人材を異質な場に放り込み、異質な体験を通じて目を見開かせ、新たな発展につなげるドライビングフォース(駆動力)にもなりえるのである。(p.8)
・日本の組織の深く考えない風土(p.14-)
3大症候群(何も決まらない、とりあえず、形だけ)
・このような視野の狭い人間ではなく、いろいろな体験を積み、幅広い視野や人脈を備えた人材を作るのが人事異動だ。(中略)人を大きく成長させるために人材の化学反応を促進させる意図が、そこには必要だ。(p.38)
・人事の根幹をなす人事異動は、組織の形成、個々人のモチベーション、人材育成と人材活用の肝である(p.43)
・成果主義、結果主義からチャレンジ主義へ
人事部が企業の強みの源泉に想いを馳せていない例が多く見られる(p.86)
人事部も変化しつつある。自社のビジネスモデルを研究し、強みを理解し、会社のメッセージを社員との双方向のコミュニケーションを充実させ伝えようとし始めてもいる。(p.93)
★ムダに人を動かさない(p.111-113)=知識創造型人事異動
これらの問いに誠実に答えられる異動が組まれるようになれば、企業の知の体系がはっきりし、組織や個々人の志も高く保たれるだろう(中略)
したがって、個々の異動はSECIプロセスのどの局面を目的にしたものかを明確に意図できる。会社は社員に原体験を積んでほしいのか(S)、コンセプトを創造してほしいのか(E)、既存事業を大きく発展させてほしいのか(C)、じっくり考えて改善してほしいのか(I)など、期待するものが明確になる。
★プロジェクトベースの異動観(p.138-139)
「次期型のxxモデルの商品戦略をやりたい」というように、異動先で自分の蓄積をどう活かし、どのような知を生み出し、さらには次に向けてどんな能力や経験を積みたいのかを明確にして、異動先を希望するという方向に変わっていくだろう。
・現場と一体化するお節介人事(p.153)
知識創造型の人事部ならば、人事部自体に企業の知の体系が埋め込まれていなければ気が済まないだろう。自ら現場の知を吸い上げ、コンサルタントとともにアイデアを出し合い、自社固有の異動の仕組みを作成し、とりわけ運用にコミットする。
・大きな構えを持つチェンジリーダーは、自らが会社を背負っているという徹底した当事者意識をもっている。(p.177)
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T:1h(8/24行き帰り)→1.5h
P:これからのローテ、出向、育成異動等の調整に向け、チームの方針決めのヒントを得る
O:わんさか
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徳岡晃一郎"人事異動"を読む。
04年の作。日産の人事部勤務を経て人事コンサルとして自立した著者による、積極的人事異動論。異動を所与のものではなく、個人のプロジェクトを明確化するためのきっかけとして捉えることを提案する。
10年前の古い本ではありますが、目標管理(MBO)や社内公募、社内FAなど、お役所もようよう追いつきつつある情勢で興味深いところです。
◯このような管理職には、共通の行動パターンがある。肝心なときにいない、戦うべきときに逃げる、責任を部下に取らせる、質問されても答えは部下まかせ、上の人や関係部署と調整できない、説明責任を果たさない、何をしたいのかよくわからない、優先順位がはっきりしない、現場を知らない…、などなどである。すべてスルスルと、上意下達を越えた"上意垂れ流し"であり、自分では何も考えていないことを象徴している。
◯現在でも、いわゆる専門職や職人の世界では知識やスキルを基にした異動が行われているが、事務系や技術系のジェネラリスト的職務では、残念ながら知は十把一絡げの状態だ。個々人の間には、できる奴か普通か、相性がよさそうか悪そうか、というくらいの差しか認められていない。
◯やはり知識は人脈が肝であり、知識創造型人事異動が進むことではじめて、個人の知や想いは共有され、実効性のある棚卸しが進む。まずはどれだけ多くの社内の人を知るかがポイントになる。個々の社員が自分なりの知識を売りにして、異動をしかけたり協働の相手をさがすという、より積極的な関与も次第に日常茶飯になる。 -
『人事異動は、人を慣れ親しんだ環境から引き離す。
人材を異質な場に放り込み、異質な体験を通じて目を見開かせ、新たな発展につなげるドライビングフォース(駆動力)にもなりえるのである。
すなわち人事異動は人が知的な想像をするためにふさわしい刺激を受ける絶好のチャンスであり、想像の時代に不可欠なツールということになるはずである。』
堅いやつだと思ったら、意外と熱くて面白かった。10年前の作品だけど、非常に勉強になったな。これは使えるなぁ〜。 -
現代組織の様々な課題について分析したうえで、人事異動の在り方について述べてあります。
自分自身の働き方についても考えさせられました。
内容も難しくなく、人事担当者だけでなく、会社員全般にお薦めです。 -
例外はあったとしても、異動したくないという声をそこまで聞く必要はあるのか?若くても経験できることが自社のウリであり、成長の源泉なのでは?採用の段階で分かって入ってきているのであれば、地元に帰りたいという声は聞く必要ない気がする。また、キャリアプランを考えてもらう時に自社にずっといることが前提で良いのか疑問に感じた。優秀な人が社外に出て行っても、下に優秀な人がいる状態を作るほうが良いのでは?大手のマネをして離職率を下げようとするのは間違っているように感じた。
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人事を軸に、
会社の経営と社員個人を、
上手くつなげてあります。
人事担当の方のみならず、
ホワイトカラーから、
自分のような現場の者にとっても、
モチベーションアップに、
一役買う一冊であると
思います。
また、ビジネスの枠にとらわれず、
哲学者からの引用などもあり、
考えさせられるところが
大きかったです。
なかなか、現実は、
多難ですが、
信念を持つことは、
間違っていないんだという
信念を持つことが、
できました。
これを機に、
ドラッカーなど、
マネジメントに関する本を
読んでみようと、
思いました。 -
図書館で借りた。
何となくで行われているように見える人事異動により現在どのような問題が起きているのか、過去の人事部はどのような動きをしていたのか、現在の問題を解決するためには何をしたらよいのか、などが説明されている。
専門職となろうとする人にはまるで向いていない内容だと感じた。異動の理由をきちんと説明するなど異動を命じる側の改善点もいくつか書かれているが、最終的には著者が理想とする人事異動の仕組みを導入すれば、命じられた側はどんな場に動いたとしてもきちんと経験を得られるという結論だった。
当人の希望通りにならないという所は置いておいて、動いた先で自分に必要な経験を得るよう努力しろ、ということらしかった。
過去の人事部の動きは面白いと思った。
『35歳までに読むキャリア(しごとえらび)の教科書 就・転職の絶対原則を知る』 (ちくま新書)とは対極にある本だと思う。 -
本書のテーマは、サラリーマンとして会社に奉仕するだけのスタイルではなく、人事異動を通じて『原体験・修羅場体験』し、知識創造・質向上をさせ、その結果で個人の夢・キャリアを達成しようというもの。
個人での明確な目的意識を持つことによって、そこから目標設定、結果評価、見直しなどができる。単に仕事をこなしているだけで、目的意識を見失いがちな場合、それを気づかせてくれる本。MBOの問題点として「個人の想いを反映されない等」、意識を具体化させることで見える点も興味深かった。
自分は将来のために今何をやりたいのか? -
[ 内容 ]
組織人なら誰しも心穏やかではいられない一大イベント、人事異動。
本来は組織を発展させ、個人を成長させるはずの制度だが、その場しのぎの人のやりくりでは活力をそぐばかり。
一般社員、人事部、経営者は、いかに人事異動に臨むべきか?
知識創造の時代を生き抜く人事戦略の最新事情を、多彩なキーワードで解説。
成果主義も従来型をも超える、「明るい人事異動」を求めるすべての人に。
[ 目次 ]
序 考えない組織、考えない人々
1 多様化する人事異動
2 人事部の功罪
3 知識創造型人事異動
4 脱土管の異動戦略
5 明るい人事異動
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
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☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
暗黙知を形式知に。
色々な経験を積むことが重要。だがどんなに貴重な経験でもそれを整理しなければ経験しなかったこととなんら変わりない。
では経験を実のあるものにするにはどうすればよいか。
それは自分がその経験をしたことによって何を学び、次にどう生かせるかを深く考察することである。
だがそれをするためには日々常に何かビジョンをもって行動することが必要とされる。自分は何故このような行動をとるのか、と。
人事の本を通して生き方についても学ぶことが出来た。
著者プロフィール
徳岡晃一郎の作品





