戦後教育で失われたもの (新潮新書 129)

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  • 新潮社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106101298

作品紹介・あらすじ

戦後日本はひたすら走り続け、空前の繁栄を実現した。だが、今の社会は本当に我々が望んだ姿なのだろうか。己の力を顧みず、夢を追うと言いながら親に寄生する。努力せず不平等を嘆き、世の不条理にすぐに挫けてしまう。気がつけば、そんな幼稚で情けない日本人が増えすぎてはいないか-。日本人から常識と生きる力を奪った全ての元凶、「戦後教育」の罪を炙り出し、解決策を提言する警世の書。

感想・レビュー・書評

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  • 私は物事を何も忖度なくズバズバ言う人(書く人)が好きだ。時には自分の考え方を否定されてカッとなる事はあるが、すぐに冷静になって何でそういった考えになるのか相手の心の中を探索してみたくなる。本書の筆者の書きっぷりも潔い。戦後教育に潜む問題点とその結果生み出された我儘自分勝手な日本人に鉄槌を下しているような見事な書きっぷりである。レビューを書くにあたりその全てが正しいとか、自分の考え方と一致するとは思えない記述も多いが、概ね私の考え方には近かった。だから余計にスカッとしたのも間違いではない。
    私が幼い頃は先生は神のような存在だったと思う。今でも幼稚園の先生から大学の教授までほとんどの先生の顔も名前も言っていた事も多くが記憶に刻まれている。今の自分のものの考え方も、働き方も、日常の趣味でさえ、〇〇先生の影響があったとはっきり言える。そして特に小学校5、6年の時に担任を受け持ってくれた渡辺先生への感謝は今でも忘れないし、人間として何が大切でどう生きたら良いかはその先生が教えてくれたと信じている。まだご存命だろうか。兎に角私の学生時代などは何から何まで全て競争だった。運動も勉強も1番になればクラスの人気者になれたし、近隣の学校とのスポーツの交流試合にも(競技の経験など関係なく)学校の代表選手に選ばれるような時代だ。勿論、学校を背負って試合に出てるから絶対に負けられない、という信念も小学生ながら強く持っていた。高校時代は中間期末試験結果は全教科上位10名の名前と点数が張り出され、1位独占までは中々達成できずとも全て3位以内を目指せば卒業時にはかなりの有名大学への推薦の道も開けるような学校だった。死に物狂いで教科書ガイドに書き込んだ事を今でもよく覚えてる。競争に育てられ、助けられて生きてきたような物だから、確かに今の学生諸君のやり方や考え方は直ぐには理解できない事もある。会社組織で部下を持つようになって漸く自分との違いに気づく事も多くあった。凡そ管理職は同世代が多いから、相容れない考え方の若い子達を一括りに「ゆとり」と読んで新橋で酒のネタにしている(実際はどう対処するか真面目に話す事が多いが)程度である。その様な中でもキラリと光る人材も稀にいて、彼ら、彼女らは私が一々指図などしなくても担当プロジェクトを1人で上手に回してしまう(特に最近は女性が優秀と感じる)。大体そういう子達との1on1では話し方考え方に頭の良さが出ている。逆にできない子の典型は言い訳ばかりで他人のせいにばかりしてる。話し方もいかにも偉そうに政治家の様な喋り方をしながらも内容は常に世の中や会社組織への不満や、給料が安い事などを暗に?文句ばかり言うタイプだ。それなりの評価しかこちらもしないから、2、3年も経つと大きく差がついている。話はそれたが、要はどの程度真剣に勝負や競争をしてきたかではないかと感じる。勿論遺伝的な物で頑張り方や理解力も異なるだろうが、しっかり競争の中で勉強を重ねてきた子は強い。暇さえあれば本を読んでる子などもそうかもしれない。
    本書は現在の教育が抱える問題について実例を挙げながら、本来どうあるべきか考えさせてくれる。このままでは日本が停滞していくという予想は、本書が書かれた2005年から今日までの20年を見れば、今の結果を見れば、残念ながら当たってしまったようだ。教育は時間がかかる。1人や2人を勉強のできる子にするなら容易ではあるが、日本を背負うような世代全体を勉強のできる世代にするには相当な努力と改革が必要だ。さらにその先にその子供達が大人になるまでの期間を考えたらあっという間に四半世紀、半世紀が過ぎてしまう。だからこうした書籍を読んで現実を知り、各々が教育について真剣に考える事が必要だ。

  • 森口は元東京都職員の教育評論家である。今のところ外れなし。どれもお勧めできる。実に頭の柔らかな人で左翼を昂然と批判しながらも、保守派の甘さを突くバランス感覚が好ましい。歴史認識についてもかなり慎重な姿勢で好感が持てる。中道を歩む人物と見た。
    https://sessendo.blogspot.com/2020/01/blog-post_70.html

  • [ 内容 ]
    戦後日本はひたすら走り続け、空前の繁栄を実現した。
    だが、今の社会は本当に我々が望んだ姿なのだろうか。
    己の力を顧みず、夢を追うと言いながら親に寄生する。
    努力せず不平等を嘆き、世の不条理にすぐに挫けてしまう。
    気がつけば、そんな幼稚で情けない日本人が増えすぎてはいないか―。
    日本人から常識と生きる力を奪った全ての元凶、「戦後教育」の罪を炙り出し、解決策を提言する警世の書。

    [ 目次 ]
    序章 二周目の挫折、三周目の破綻
    第2章 「宿命」を受け入れる潔さ
    第3章 「不条理」を生きぬく図太さ
    第4章 「日本人」であることの誇り
    第5章 「大人」を取り戻すために

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  •  昨今の日本人に失われたと言われる謙虚さ、日本人としての誇り、などの元凶は戦後教育にあるとし、学校は「青年用保育園」に成り果てた、とする種々の分析を展開している。
     「不条理があるから共同体」など、納得できる部分は多々ある。ただ、かなりデリケートな話題を扱っているので、筆者の趣旨を注意して読みとる必要がある。「○○を決して肯定しているわけではないが」と断り書きが随所に書かれているものの、やや感情的に書かれている部分も見受けられる。(08/09/24)

  • 6/12 己を知る謙虚さ。 宿命を受け入れる潔さ。 不条理。

  • 新書ってあおりとかタイトルとか神ですね。
    面白かったはず。

  •  不条理に耐えうる大人になれる教育が、今ほど求められる時代はない。やりたいことをやりなさい、自分の興味に従って好きなことをやりなさいと、個人の価値観を奨励してきた戦後民主主義的教育の限界が露呈している。

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著者プロフィール

教育評論家。中央教育文化研究所代表。元東京都職員。1995~2005年まで、都内公立学校に出向経験がある。著書に、『いじめの構造』『日教組』『戦後教育で失われたもの』『誰が「道徳」を殺すのか』(以上、新潮新書)、『なぜ日本の教育は間違うのか』『自治労の正体』『左翼老人』『売国保守』『税をむさぼる人々』『左翼商売』(以上、扶桑社新書)、『校内犯罪(いじめ)からわが子を守る法』(育鵬社)など。

「2022年 『左翼の害悪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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