国家の品格 (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 6679
レビュー : 1110
  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106101410

作品紹介・あらすじ

日本は世界で唯一の「情緒と形の文明」である。国際化という名のアメリカ化に踊らされてきた日本人は、この誇るべき「国柄」を長らく忘れてきた。「論理」と「合理性」頼みの「改革」では、社会の荒廃を食い止めることはできない。いま日本に必要なのは、論理よりも情緒、英語よりも国語、民主主義よりも武士道精神であり、「国家の品格」を取り戻すことである。すべての日本人に誇りと自信を与える画期的提言。

感想・レビュー・書評

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  • 筆者が現在の日本が如何に危機的状況にあるかを憂い、その打開策として古くは武士道にあるような「情緒と形」といったような道徳を身につけて国家としての品格を高める必要性を述べた。
    品格を高める上では、自ら母国の文化や伝統、歴史、言語といったものをきちんと理解しておくことの重要性にも触れられている。このことは、真の国際人となるためにも必要である、とも。

    歴史学(及び人文学系学問)をやることの意義について考える上で、一つの道筋が示されていよう。

    国際化の名の下に幼少期より英語教育を行うなど米追従の姿勢に反感を覚える私としては、
    より多くの人々に読んで頂きたい一冊として紹介したい。

  • 【速読】前に「B層」を読んだことを下敷きに。現代は「美徳・教養」を兼ねた「日本人論」新書が売れるんですね。「B層」で志向される日本人像と本書のはだいたい同じでして、そして両者に共通するのは理由はないけど「多くの人が共感できる」話題を幾つも用意していること。著者のボヤキです。「教養」を問うけど新書そのものでは「教養」が身につかないというパラドクス?それともこれが新書のあるべき姿なんでしょうか。てことで内容には触れませんけど、これならオレグの武士道の話の方が、ずっとためになります。

  • 不覚にも泣いてしまった。著者は数学者で論理についての持論、日本人の特質、文化、美意識から私たちにメッセージをおくっている。天才の生まれる風土について、国語言語が国家であり独自の文化であること、国際人に必要なのは国語力をつけることで中途半端な英語力ではないこと。あとは論理的で合理性をすすめるアメリカ民主主義の閉塞感を打開することができるのは日本の武士道精神や情緒であるというのも面白い。論理的であることが正しいと言えない理由を、論理展開の出発点の確からしさに論理展開時の確立との積で考える発想は流石に数学者らしく美しい。現在の鬱屈した閉塞感を打ち破るエネルギーのある書で、自国の文化をよく知らず日本語の勉強をおろそかにしている私達には必読の書といって良い

  • タイトルからのイメージは、難解な文章が並ぶ難しい本かなと思ったのですが、なんとなく手にとってみました。
    文章そのものは講演された内容に修正・加筆をされたものなので、すらすらと読めます。
    最近、神社に関する話を聞くことが多いもので、戦後の学校教育で失われたものや「もののあはれ」を感じる心をはじめとする日本人が持つ繊細な情緒を見直そう、大切にしようと説くお話は大きく頷くものでした。

  • 今頃やっと一昔前のベストセラーを読んだ。それほど色褪せてないし今でも十分な説得力がある内容だった。情緒と形こそこの国に相応しい品格の礎だと断言している。頷ける箇所も多い良書だった。

  • 2か月前の読了なのでだいぶ内容は抜けてしまったが。『銃・病原菌・鉄』を読んだ直後だったので、どうしても考察や議論が浅い感は否めなかった。日本の伝統芸能や義理人情の文化などを改めて確認できるが、著者の言うこの日本の文化こそが世界を豊かにするという論調はいささかなナショナリズム的な物に後押しされた飛躍を感じるし、ではどのようにして日本の美徳を世界へ浸透させ、それがどのように世界を変えていくのかという具体性に欠けた。個人的にはpatriot でありたいと思っているのでイデオロギーとしてはわかるのだけどね。

    ただ、近現代の論理主義(著者はこれを欧米的価値観とよぶ。まあ近現代の思想は欧米思想が基調なのでそうとも言えるだろう)に対する反駁は興味深かった。人類普遍の論理を尽くすことで、必ずお互いが合意する一般解を求めることができる。しかし実際は論理というのはそんなに素晴らしいものではない。論理というのは、結論から辿っていけば結局は主体が自明と考える命題を出発点とせざるを得ない。主体の思考力によってその根本の前提命題のレベル感は異なるだろうが、究極的には、全ての論理的帰結のよりどころとなるその命題は「自明」とするしかない。ここの説明に、何ら「論理」はない。そして、何を自明とするかというのは、主体の価値観、尺度、哲学(そしてこれららはしばしば主体の立場や状況に大きく左右される)に依って決定される。すなわち、「論理」というのは、何ら普遍的解を提示する保証などなく、むしろ主体の依る前提によって異なる帰結が生まれるものなのだ。そこで著者は、真に重視するべきはこの詭弁的な論理ではなく、その根本を成す価値観だと述べるのだ(彼はその価値観こそ日本的価値観に統一されるべきと述べるのだがそれはさておき)。
    うすうす大学に入ったあたりから自分でも感じていたことではあったが、他者により言語化されたものを読んだことで改めてその認識をブラッシュアップできた。世界の全てについて論理で絶対解が出せる、心のどこかでそんな風に信じていた時期が、僕にもありました。まあ最近は統計学でそれに近いことができるんじゃないかなって思ってきているのだけどそれはまた別のお話。

  • 初めて読んだときは、割と感動して「そうかー、グローバルとか言ってないで日本や国家の良さを見直そう!」などと思ったものでした。しかし30歳も半ばをこえてから、大学院で社会学っぽい領域の修士号取得のため、主に経営学のフィールドから様々な"名著"を読んだ後に眺めたら、とんでもなく薄っぺらく、つまらない本に見えたいくつかの書籍のうちの一つ。論拠がいい加減ですね。学問的な流れもきちんと理解できていない。この方は哲学したつもりなのかもしれないが、単なる"読み物"、ないしは論拠なく日本の良さを語る"エンターテイメント"です。数学者の学問視野ってこんなもんなのかなぁ。

  • 本書は「論理」と「合理性」だけでは社会問題の解決に繋がらないことを指摘し、論理よりも情緒、英語よりも国語、民主主義より武士道精神を重んじてきた品格ある国家・日本に立ち戻り、世界と一線を画すべきだという主張が書かれている。

    第1~2章では、①論理の限界(pp.35-44)、②人間にとって最も重要なことの多くが論理的に説明できない(pp.44-50)、③論理には出発点が必要でそれを選ぶのは情緒や形である(pp.50-55)、④長い論理ほど信憑性がなく、短い論理ほど深みに欠ける(pp.55-64)を理由に挙げ、「論理だけでは人間社会の問題解決は図れない」ことを指摘している。

    第3章では、「③論理には出発点が必要」ということに着目し、欧米人の論理の出発点である「自由・平等・民主主義」の概念に対して疑問を投げかけている。

    私たちの耳慣れた「自由・平等」はそもそもカルヴァンの予定説の潮流に乗ったジョン・ロックの主張が反映されたものであることを論拠に、論理の出発点は神なしでは主張を担保できない、いい加減なものだと主張している(pp.65-74,88-90)。またカルヴァン主義が資本主義を進め(pp.69-72)、自由・平等を前提とした「民主主義」も致命的な欠陥を抱えていると主張している(pp.74-92)。

    第4~6章では、論理の出発点を正しく選ぶために必要な日本人が古来から持つ「情緒」、あるいは伝統に由来する「形」を重んじることが重要であり(pp.95-115,130-157)、情緒を育む精神の形として「武士道精神」を復活させるべきだと述べている(pp.116-129)。そして最終章で他国の文化・思想と日本のそれとを比較しながら、改めて先の議論を強調し(pp.158-190)、武士道精神を重んじてきた品格ある国家・日本に立ち戻り、世界と一線を画すべきだと主張している(pp.191-192)。

    このように詳細に書いたのは、本書の問題点を浮き彫りにするためである。第1~2章に書かれている「論理だけで人間社会の問題解決が図れない」ことは当然である。しかし第3章で主張する「自由・平等・民主主義」が神でしか語れないことの何が問題なのか疑問に感じる。たとえ法の下での制限があったとしても、それは無法地帯のままよりはよいはずである。また武士道精神も、天皇や仏(神)を敬う心が根底にある。そういった点でほかの宗教と変わらないはずである。にもかかわらず、他国の思想を貶めるような批判をし、自国が優れているというような主張に甚だ腹が立つばかりである。

    また著者が理数学者であるという点にも注意が必要だ。学者が自分の研究領域外のことを語るのはもちろん構わない。しかし自分の研究分野外のため、中途半端な主張しかできないし、発言に対する責任も持てない。裏付けが示せない。そういったことでいいわけがない。また論理を否定したら、著者のこの本そのものが論理なわけだから、そういったものもすべて否定されることになるのではないだろうか。

    もちろん、こういった問題はそれぞれの思想の問題である。だが、だからこそ注意深く読む必要があると感じる。学者だからと言っていつも正しいことを言っているとは限らない。他の専門家の主張と比較して、注意深く読む必要がある。

  • (2006年頃読んだ直後の感想です)
    『国家の品格』(藤原正彦/新潮新書)について、「論理的におかしい文章が山ほどある」とか、「事実誤認や誇張のカタマリだ」とか、そういう野暮なことを指摘するのは、もういいやと思う。それより、この本が200万部も売れた理由のほうを考えてみたい。

     この本のいいところはどういうところ? ネット書評で惜しみなく★★★★★をつけている気前の良い皆さんに聞いてみよう。まず、平易でわかりやすい。読んでて「そうそう、まさにその通りだ」と思える。日本人であることに誇りを持てるようになる。そして、読んで元気になれる。すばらしい効果だ。まさに五つ星にふさわしい! では、その効果の源泉はどこにあるのか?

     この本が「わかりやすい」というのは、たとえば水戸黄門が「わかりやすい」のと似ている。あらかじめスジが決まっている時代劇のように、読者側がすでにそう思っていることを、さまざまな事例を出してスッキリ言い放ってくれるから「わかりやすい」のだ。
     この本が「心地よい」のは、『キャンディキャンディ』と同じ理由による。少女マンガの王道は「そのままの君が好き!」だ。リクツなんてどうだっていい。論理には限界があるのさ。好きになるのに理由なんていらない! 著者はみんなのアタマをなでて「そのままでいいんです」と言ってくれたのだ。
     この本を他人に勧めてまわる人がいっぱいいる。中には配ってまわる人もいるという。きっと「まさに自分の思ったとおり!」の本だから、みんなにわかってほしいんだね。占い師の決まり文句に、こういうのがある。「あなたは懸命に努力しているのに、周囲の人はわかってくれないんですよね?」 みんな「そう、そうなんです!」と大きくうなずくそうである。

     水戸黄門と少女マンガと占いである。最強だ。これより強力なおもてなしなんて思いつかないほどだ。読者はこの本を読んで、爽快感と慰安と勇気をもらう。こんなにお得な本はナイではないの。
     こう考えていくと、この本は確かに「リクツ」の本ではない。はっきり「セラピー」の本である。「あなたに心地いい言葉を言ってあげる」……スピリチュアルな江原某の本とか、美容の天才な齋藤某の本とかと、おなじなのだ。
     そしてこの本は、まさにそのように作られたものだという。雑誌の記事などでは、まず最初に結論が決まっていて、それにぴったりくることを言ってくれる人を探すものだ。この本は「ちょっと愛国心とかはやってるから、読者にキモチイイこと言ってくれそうな人はいないかなぁ……」と編集部が調べるうちに、講演などで注文通りのことを言っている著者を発見し、その講演原稿を手直しする形であっという間に作り上げたそうである。(かなり情報ゆがめてますか、スミマセン、でもそんなふうに聞こえたのです、リクツじゃないのです)
     そもそも講演というのは、カネを払って聞きに来た客を、たのしませてナンボである。言うなれば芸人といっしょ。めんどくさいことをしろとか、おまえらは頭が悪いとか言っていては、次のお座敷がかかるものか。客をもちあげておだてていーい気分にして帰すのが優れたスピーカーに決まっている。藤原先生は、ものすごく優秀な芸人さんなのである。

     ちゅうわけで、『国家の品格』はすばらしい娯楽本である。さすが200万部も売れる本は、売れるだけの理由がある。ちょっと心配なことといったら、この本を正しく「娯楽」として消費するのではなく、「本気」にしちゃうイタイ人が、ごくごく少数出ちゃったらこまるなぁくらいのものである。
     なぜなら、この本はひとつの取引を持ちかけているからだ。リクツ抜きに癒し、励まし、自信と誇りを持たせてあげる。だって、ただ日本に生まれただけで、あなたはすばらしい歴史と感性をその身に備えているのだから。その代わりに、リクツ抜きでこの国を愛しなさいと。
     果たしてこの取引、お得だろうか。考えない代償というのは、だいたいにおいて高く付くような気が私はするのだが。まぁ、そんな後先考えない取引に応じてしまう人は、この本を「娯楽として」読んでいる人にはいないだろうと思うのだが…………。

  • 欧米の文化文明に比べて日本のそれがいかに高度だったか、「論理」の限界、伝統的なものや田園、寺院などの「美」的感覚と学問、工業的発達のリンクについて書かれた本。

    「真のエリート」についての部分が特に納得できた。
    国民は永遠に成長しないので、一見むだな教養を身につけた総合判断力のあるエリートが、時には身を投げ打つ覚悟で政治をするというのは、正しい考え方だと思う。
    これは大企業にも同じことが言えるはずだ。

    日本の卑怯、惻隠等、武士道精神が素晴らしく、欧米は駄目だという論調は正直「?」だった。部落差別や皆殺しという習慣があったことを考えると、偏っている。
    それでも、外国から来た文化人が日本の文化を褒めそやしていたことを紹介している点は、やっぱり誇りに思える部分もあり、良かった。

    出版後8年経っているが、オバマケアと政府機能の閉鎖に苦しむアメリカを見ると、内容は色あせていないと感じた。

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