国家の品格 (新潮新書 141)

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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106101410

感想・レビュー・書評

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  • 【速読】前に「B層」を読んだことを下敷きに。現代は「美徳・教養」を兼ねた「日本人論」新書が売れるんですね。「B層」で志向される日本人像と本書のはだいたい同じでして、そして両者に共通するのは理由はないけど「多くの人が共感できる」話題を幾つも用意していること。著者のボヤキです。「教養」を問うけど新書そのものでは「教養」が身につかないというパラドクス?それともこれが新書のあるべき姿なんでしょうか。てことで内容には触れませんけど、これならオレグの武士道の話の方が、ずっとためになります。

  • (2006年頃読んだ直後の感想です)
    『国家の品格』(藤原正彦/新潮新書)について、「論理的におかしい文章が山ほどある」とか、「事実誤認や誇張のカタマリだ」とか、そういう野暮なことを指摘するのは、もういいやと思う。それより、この本が200万部も売れた理由のほうを考えてみたい。

     この本のいいところはどういうところ? ネット書評で惜しみなく★★★★★をつけている気前の良い皆さんに聞いてみよう。まず、平易でわかりやすい。読んでて「そうそう、まさにその通りだ」と思える。日本人であることに誇りを持てるようになる。そして、読んで元気になれる。すばらしい効果だ。まさに五つ星にふさわしい! では、その効果の源泉はどこにあるのか?

     この本が「わかりやすい」というのは、たとえば水戸黄門が「わかりやすい」のと似ている。あらかじめスジが決まっている時代劇のように、読者側がすでにそう思っていることを、さまざまな事例を出してスッキリ言い放ってくれるから「わかりやすい」のだ。
     この本が「心地よい」のは、『キャンディキャンディ』と同じ理由による。少女マンガの王道は「そのままの君が好き!」だ。リクツなんてどうだっていい。論理には限界があるのさ。好きになるのに理由なんていらない! 著者はみんなのアタマをなでて「そのままでいいんです」と言ってくれたのだ。
     この本を他人に勧めてまわる人がいっぱいいる。中には配ってまわる人もいるという。きっと「まさに自分の思ったとおり!」の本だから、みんなにわかってほしいんだね。占い師の決まり文句に、こういうのがある。「あなたは懸命に努力しているのに、周囲の人はわかってくれないんですよね?」 みんな「そう、そうなんです!」と大きくうなずくそうである。

     水戸黄門と少女マンガと占いである。最強だ。これより強力なおもてなしなんて思いつかないほどだ。読者はこの本を読んで、爽快感と慰安と勇気をもらう。こんなにお得な本はナイではないの。
     こう考えていくと、この本は確かに「リクツ」の本ではない。はっきり「セラピー」の本である。「あなたに心地いい言葉を言ってあげる」……スピリチュアルな江原某の本とか、美容の天才な齋藤某の本とかと、おなじなのだ。
     そしてこの本は、まさにそのように作られたものだという。雑誌の記事などでは、まず最初に結論が決まっていて、それにぴったりくることを言ってくれる人を探すものだ。この本は「ちょっと愛国心とかはやってるから、読者にキモチイイこと言ってくれそうな人はいないかなぁ……」と編集部が調べるうちに、講演などで注文通りのことを言っている著者を発見し、その講演原稿を手直しする形であっという間に作り上げたそうである。(かなり情報ゆがめてますか、スミマセン、でもそんなふうに聞こえたのです、リクツじゃないのです)
     そもそも講演というのは、カネを払って聞きに来た客を、たのしませてナンボである。言うなれば芸人といっしょ。めんどくさいことをしろとか、おまえらは頭が悪いとか言っていては、次のお座敷がかかるものか。客をもちあげておだてていーい気分にして帰すのが優れたスピーカーに決まっている。藤原先生は、ものすごく優秀な芸人さんなのである。

     ちゅうわけで、『国家の品格』はすばらしい娯楽本である。さすが200万部も売れる本は、売れるだけの理由がある。ちょっと心配なことといったら、この本を正しく「娯楽」として消費するのではなく、「本気」にしちゃうイタイ人が、ごくごく少数出ちゃったらこまるなぁくらいのものである。
     なぜなら、この本はひとつの取引を持ちかけているからだ。リクツ抜きに癒し、励まし、自信と誇りを持たせてあげる。だって、ただ日本に生まれただけで、あなたはすばらしい歴史と感性をその身に備えているのだから。その代わりに、リクツ抜きでこの国を愛しなさいと。
     果たしてこの取引、お得だろうか。考えない代償というのは、だいたいにおいて高く付くような気が私はするのだが。まぁ、そんな後先考えない取引に応じてしまう人は、この本を「娯楽として」読んでいる人にはいないだろうと思うのだが…………。

  • 不覚にも泣いてしまった。著者は数学者で論理についての持論、日本人の特質、文化、美意識から私たちにメッセージをおくっている。天才の生まれる風土について、国語言語が国家であり独自の文化であること、国際人に必要なのは国語力をつけることで中途半端な英語力ではないこと。あとは論理的で合理性をすすめるアメリカ民主主義の閉塞感を打開することができるのは日本の武士道精神や情緒であるというのも面白い。論理的であることが正しいと言えない理由を、論理展開の出発点の確からしさに論理展開時の確立との積で考える発想は流石に数学者らしく美しい。現在の鬱屈した閉塞感を打ち破るエネルギーのある書で、自国の文化をよく知らず日本語の勉強をおろそかにしている私達には必読の書といって良い

  • タイトルからのイメージは、難解な文章が並ぶ難しい本かなと思ったのですが、なんとなく手にとってみました。
    文章そのものは講演された内容に修正・加筆をされたものなので、すらすらと読めます。
    最近、神社に関する話を聞くことが多いもので、戦後の学校教育で失われたものや「もののあはれ」を感じる心をはじめとする日本人が持つ繊細な情緒を見直そう、大切にしようと説くお話は大きく頷くものでした。

  • すべての日本人に誇りと勇気を与えてくれる日本論

  • 大ベストセラーだから読んでみたが、発刊された日からかなり経過しているため流し読み気味になってしまい残念。内容としては日本人らしさ、まさに日本国家としての品格を保ち続けることの大切さを説いており、世界が誇るべき日本人の素晴らしさを力説してくれている。

  • 武士道。名誉は命よりも重い。金銭よりも道徳。
    運命を引き受ける平静な感覚、生を賤しみ死に親しむ(仏教から)▼主君への忠誠、祖先への尊敬、親孝行(神道から)▼為政者の民への慈悲(儒教から)

    新渡戸武士道は日清と日露の間。西洋列強が日本に警戒感を持ち始めた時期。

    敗者への共感、劣者への同情、弱者への愛情。惻隠(相手の心情を深く理解、いたましく思って同情)

    なぜ人を殺してはいけないのか。なぜ野に咲くスミレは美しいのか。ならぬことはならぬ。論理ではない。

    薔薇の西洋、桜の日本。薔薇は花の色も香りも濃厚で、美しいけれど棘を隠している。なかなか散らず、死を嫌い恐れるかのように、茎にしがみついたまま色褪せて枯れていく。桜の花は、香りは淡く人を飽きさせることなく、自然の召すまま風が吹けば潔く散る。清澄爽快(せいちょう)。清く澄んでいる。爽やかで気持ちがよい。

    能・敦盛。
    悠久の自然と儚い人生。
    鈴虫の歌声。秋の憂愁。

    桜の木は毛虫はつきやすい、むやみに太くねじれていて、肌はがさがさ。たった三、四日の美しさのために。

    もののあはれ。自然に対する畏怖。自然への繊細で審美的な感受性。 

    数学には美的感覚。

    家族の延長が郷土。郷土の延長が祖国。祖国の延長が人類。

    自国の利益を追求し、自国の文化・伝統・情緒・自然を愛する。
    自国の利益を追求せず、自国の文化・伝統・情緒・自然を愛する。
    自国の利益を追求するが、自国の文化・伝統・情緒・自然を愛さない。
    自国の利益を追求せず、自国の文化・伝統・情緒・自然を愛さない。

    日本・自己を知らない人は国際人とは言えない。縄文土器と弥生土器はどう違うのか。元寇は2回あったが違いはあるのか。中身空っぽ英語ペラペラではいけない。

    国際聯盟規約 第22条【委任統治】
    1 今次の戦争の結果従前支配したる国の統治を離れたる植民地及び領土にして近代世界に激甚なる生存競争状態の下に未だ自立し得ざる人民の居住するものに対しては、その人民の福祉及び発達を計るは、文民の真正なる使命なること、及びその使命遂行の保障は本規約中に之を包容することの主義を適用す。
    2 この主義を実現する最善方法は、その人民に対する後見の任務を先進国にして資源、経験又は地理的位置により最もこの責任を引き受くるに適し且つ之を受諾するものに委任し、之をして連盟に代わり受任国として右後見の任務を行はしむるに在り。
    3 委任の性質については、人民発達の程度、領土の地理的地位、経済状態その他類似の事情に従い差異を設くることを要す。
    4 従前トルコ定国に属したるある部族は、独立国として仮承認を受けうる発達の程度に達したり。尤もその自立しうる時期に至るまで、施政上受任国の助言及び援助を受くべきものとす。前記受任国の選定については、主として当該部族の希望を考慮することを要す。
    5 他の人民特に中央アフリカの人民は、受任国においてその地域の施政の責に任ずべき程度に在り。尤も受任国は、公の秩序及び善良の風俗に反せざる限り良心及び信教の自由を許与し、奴隷売買または武器若しくは火酒類の取引の如き弊習を禁止し、並びに築城または陸空軍の根拠地の建設及び警察または地域防衛以外のためにする土民の軍事教育を禁遏すべきことを保障し、且つ他の聯盟国の通商貿易に対し均等の機会を確保することを要す。
    6 西南アフリカ及びある南太平洋諸島の如き地域は、人口の希薄、面積の狭小、文明の中心より遠きこと又は受任国領土と隣接せることその他の事情により受任国領土の構成部分としてその国法の下に姿勢を行うを以って最善とす。但し受任国は、土著人民の利益のため前記の保証を与うることを要す。
    7 各委任の場合において、受任国は、その委託地域に関する年報を聯盟理事会に提出すべし。
    8 受任国の行う権限、管理又は施政の程度に関し、予め聯盟国間に合意なきときは、聯盟理事会は、各場合に付き之を明定すべし。
    9 受任国の年報を受理審査せしめ、且つ委任の実行に関する一切の事項に付き聯盟理事会に意見を具申せしむるため、常設委員会を設置すべし。

  • 気象台に勤めながら観測所での経験を生かした山岳小説で人気を集め、昭和を代表する作家として活躍した新田次郎。本書はその次男であり、東大卒の数学者でありながらエッセイストとしても人気の藤原センセイが世に出したベストセラー。経済優先という欧米型の論理と「合理性」が幅を利かす21世紀においては、情緒と伝統を重んずる日本の「品格」こそが世界を救うという画期的な提言が話題を呼んだ。著者自らが「品格なき筆者による品格ある国家論」と称する通り、舌鋒鋭い批判の中にも独特のユーモアが溢れており、思わず声を上げて笑ってしまう。今の日本に必要なのは論理よりも情緒、英語よりも国語、民主主義よりも武士道精神と説き、特に昭和から平成にかけて失われた「国家の品格」を一刻も早く取り戻そうと説いた書で、このあと二匹目のどじょうを狙った「品格ブーム」の火付け役にもなった。ベストセラーという言葉にアレルギーを持つ読者にもすっと腑に落ちる、おススメの一冊。

  • 数学者である筆者が、近代西洋科学を否定し、情緒や感情を大事にするという非常に斬新な本でした。一方で、その情緒の醸成をしたところで、どこまで国家の品格が向上するのか?効果測定はなく、感覚的な物になるため、実際にどうするのか、ということの理解は読者に委ねられる部分が多い。
    海外勤務で合理や科学を武器にマネジメントをしてきた中で、日本人として大切なものを失いかけていた。改めて国家の品格の重要性を認識。

  • 内を見直すひとつのきっかけになる。

    日本人が無意識に抱く、欧米諸国との比較に
    基づいた根拠の不明確な劣等感。それって本当に
    確かなの?
    と、日本を見直すための土台を照らしてくれる。

    ただし文中で著者自身が指摘を受けたと言っているとおり、
    半分くらいは誇張や極論、というフィルターを通して
    見るのがちょうどよいと思う。そうでないと、著者の意図と反して
    ナショナリズムに陥る読者が増える危険性がある。


    大切なのは情緒、美への感受性。
    これには足元を「洗われた」気がする。

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著者プロフィール

お茶の水女子大学名誉教授

「2020年 『本屋を守れ 読書とは国力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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