国家の品格 (新潮新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106101410

感想・レビュー・書評

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  • 数学者にしてエッセイストの藤原正彦が2005年に発表した、発行部数270万部を超えるベストセラー。
    著者は、30歳前後に米国に滞在し、その時の様子を『若き数学者のアメリカ』(1977年発表、日本エッセイスト・クラブ賞受賞)に著し、また、40代前半で英国に滞在し、『遥かなるケンブリッジ』(1991年発表)を書いているが、本書では、それらの経験を踏まえた上で、日本の伝統的な国柄を再認識し、尊重するべきであることを、熱く強く語っている。
    著者の主張を目次に沿って示すと、概ね以下の通りである。
    ◆今や「近代的合理精神」が限界にぶつかり、先進各国で社会荒廃が進んでいる。
    ◆「論理を徹底すれば問題が解決できる」とする考え方は誤りである。「ならぬことはならぬものです」(会津藩の「什の掟」より)。
    ◆「民主主義」は成熟した判断ができる国民を前提としており、それは現実的には難しい。「自由」も「平等」も所詮フィクションである。
    ◆「論理」の出発点は「論理」ではなく、「情緒」や「形」である。「情緒」や「形」を重んじた日本型文明こそ、「論理」偏重の欧米型文明に代りうるものである。
    ◆「情緒」とは、自然への感受性、もののあわれ、懐かしさ、惻隠の情などを指し、教育によって培われるものである。
    ◆「形」とは、主に「武士道精神」からくる行動基準で、宗教を持たない日本人の道徳の中核をなす。
    ◆品格ある国家として、国家の独立不羈、高い道徳、美しい田園、学問・文化・芸術などの天才を生む環境(役に立たないものや精神性を尊ぶ土壌、美の存在、跪く心)を維持・回復することが重要である。
    特に後半の数章では、「この国をよりよくしていこう」という著者の強い志から溢れ出る(一部は論理的でもない)思いが綴られているが、それは著者がいみじくも本書で語るように、「論理」ではないところから出発しているものとも言え、それについては著者に共感するかしないかに尽きるものであろう。
    発刊から10年を経て依然として変わらない、いや、寧ろ悪化している内外情勢を見るにつけ、読み返す価値のある書と思う。
    (2005年12月了)

  • 日本人でよかった。

  • 論理だけではいけないことは納得できるが、ちょっと強引で読むのが億劫になり、後半は目次だけ読んで終えた。

  • かつて帝国主義が正義とされた時代があった。欧米諸国が植民地をもつのは当然だとアフリカ人もアジア人も思い込んでいた。現在はびこっている国際主義も後から振り返れば誤っている可能性がある。藤原は実力主義も誤りで、「資本主義の勝利」は幻想にすぎず、「会社は株主のもの」という考え方も否定する。学説よりも常識を重んじる主張がわかりやすい。そして「論理は世界をカバーしない」と言い切る。
    http://sessendo.blogspot.jp/2015/09/blog-post_7.html

  • 2回目の読了。学生時代に一度読んだことがあるもののそのときはほとんど読了しただけで、特段読んでよかったと思えなかったことは記憶しているのですが、今回は考えさせられることがありました。
    論理だけがすべてではない。論理は合理性は大事だけれども、それだけではだめだ。路線と合理性に加えるべきなのは、情緒と形である。というのが本書の論旨の一つであるのですが、考えさせられたのは、論理には必ず出発点があるということ。数学とは違い現実の世の中では、論理の出発点は公理ではなく、その人の主観によるところ大であることから、出発点は情緒によって形成されなければならないということだと思います。
    情緒とは・・・日本人が古来から持ってきたものが失われつつあるということです。情緒を取り戻すために、何から始めようか・・・

  • 学生の頃に憧れていた教養人のイメージを思い出した。

    きちんとした文化人としても人格を形成せずに、論理だけを振りかざすことがいかに無粋か。自己弁護のための論理、成果主義という名の差別。

    日々直面して頭を悩ます矛盾の数々について、頭を冷やして考え直す良い機会になった。成功しているからって正しいとは限らないし、真似して同じ結果が出るわけでもなし。誠実に生きるのが一番。

  • 世界からみた日本のすばらしさを改めて感じるところがありました。

  • 藤原正彦。
    他の著作で興味をもったので、代表作を読んでみた。

    武士道の惻陰の情によって、弱者の痛みを知る。
    英語教育よりも、国語や算数の基礎学力向上が大事、日本人ならではの教養を身に着けよう。は理解できる。

    クライマックスの、イラク復興は日本がすべて引き受けようとか、役に立たないことをしようとか、言葉尻だけとらえると説得力ない主張は首をかしげる。

    英語教育への批判は、海外留学経験あって英国の大学で教鞭もとったという経歴だからこそ、説得力ある。

    論理よりも情緒や形が大事。
    たしかにまあそうだけど…。貧しかったら盗んでも見逃してあげる…はどうだろう。盗まれたほうだって貧しくなったら? それは武士道に反するじゃないか。

    理系の人が文系っぽいエッセイを書くのは福岡伸一でもそうだが、理屈っぽい世界に疲れたのかな、という気がする。

  • すごく面白い。薄っぺらいグローバル化を振りかざす人が多い環境にいるならとても響く提言だろう。論理だけでは解決しない

  • 「たかが経済」という観点が面白い

  • とある方からの推薦図書であったため、その感想文として提出したものを引用しておきます。

    <論理について、自分と照らし合わせて>
     私が就活を控えている身であるからかもしれないが、ロジカルシンキングや合理・理論と言った言葉を最近よく耳にしているような気がする。確かに論理的というのは何となく耳触りがいいが、私自身今年度ゼミ活動が本格化してからその言葉やあり方に疑問を持つようになった。所属するゼミでは12月に、来たる2025年問題に対して医療・年金・介護の3つの班から提言をしていくという内容の研究成果の発表会があり、私は介護班の班員として活動をしていた。提言を考える際に、「なぜそのような提言になったのか」「その根拠は」「論理は」と求められることが多かったが、その度に思い悩んだ。その判断に至った理由をいくら求められても、最終的には「それがいいと思ったから」に尽きてしまうのだ。また、最終的に内容が固まったとて、質疑の際に必ず問題になるのは、「それは本当に問題の解決になっているのか」ということ。自分たちとしては論理的に段階を踏んで組み立ててみたつもりではあるものの、結局は問題点とずれていたり、非人道的なものとなってしまったり、難しいのである。こういうことが最近あったので、筆者が述べていた「論理がダメな理由」にはとても共感するところが多かった。ダメなものはダメだし、遠回りに見えたって問題解決につながることもある。論理は絶対の存在ではなくて、ひとつの指針・選択肢であるのだと再認識した。

    <わが国に求められること>
     本書では欧米的考え方に従う姿勢に対する反発や疑問が一貫して述べられていたような気がする。(日本が良い、好きであるということを言おうとしたあまりか「普遍的価値」の例では少々無理やりな感じもしたが)筆者は品格のある国家の指標として「独立不羈」「高い道徳」「美しい田園」「天才の排出」を挙げていた。特に前者2つはいち独立国としての日本が存続するためには欠かせない条件であるだろう。これを達成するために、「自信を持つ」ことを条件として追加することを提案したい。
    古来、日本は朝鮮半島や大陸から伝わった文化を和風としてアレンジして自国の文化の中に取り込んできた。しかしながら、近年は欧米の基準をそのまま受け入れているような気がしてならない。気づけば鼻が高くてぱっちりとした二重が美人の条件となっていたし、個人主義がもてはやされるようになってしまっていた。その一方で従来の文化は「ダサい」ものになり下がってしまったのである。今や全世界が欧米に憧れを抱いているとは思うが、このような状況でこそ自国に誇りを持ち、「みんなはそうかもしれないが、私たちはこう思う」と自信を持って言うことは重要なのではないか。自分たちの基準に自信を持つことで、筆者の挙げた「独立不羈」にもつながるのである。
    これは我々個個人にも言える。自らに自信を持ち、他者からの情報を鵜呑みにしないこと。例えば、愛国主義者は危ないという言説を疑ってみること。一人ひとりが自立していくことで、愚者の民主主義から少しは進歩できるかもしれない。もちろん、自己中心的にはならず、惻隠の心は忘れてはならない。品格のある国家は品格のある国民によって成り立っていると、私は思う。

  • 恐らく狙って極論書いたのだろうと思うけど、情緒や品格を重視しないでどうするよ、という点は読んでいて痛快。国民は成熟しない、真のエリートが国には必要、という辺りは激しく同意だけど本に書くにはやや危険な思想、敢えて書いたんだろうな〜。小さな一市民ではあるけれど、日本人としての矜持を持って生きていきたいと思わされる内容だった。外資の会社で働いていてなんだけれど。

  • 今、日本に必要なのは
    論理よりも情緒
    英語よりも国語
    民主主義より武士道

    確かにね。正しい日本語で自分の意見を堂々と述べられない人間が世界に出たってグローバルな人とは言えない。

    数学者の藤原正彦氏の少し行き過ぎとも見える主張は痛快である。

  • 日本のポジティブな部分を感じられた。誇れるものもある

  • ・論理的に正しい事でも本質であるかは判定不可であり,いずれ破綻する ・ダメなことはダメ ・論理的でも出発点が誤っているなら無価値 ・現実は白と黒でなく,灰色の濃淡のみ ・「栄華の巷,低く見て」

  • 武士道精神を基盤に国家を立て直すという。
    しかし,立憲主義的に困難が多い。

    論理を偏重する姿勢に対する批判と、この世には問答無用のルール(道徳)があるという主張だけは、共感できる。

  • 著者の言う通り、論理が飛んでいたり疑問に思う点は少なくない。
    にしても、国のあり方、統治のあり方を考える上では良書だ。
    エリートとはどうあるべきか。格差社会を是としており、ノブリスオブリージュには納得できる所も多い。自分が下流階級に落ちる事など考慮しない、暴論のような所もあるが…

  • 確かに一理あると感じさせる事が多く共感できる部分がありますね。「ならぬものはならぬ」こう言った考え方や教え方、私はいいと思います。好きとか嫌いじゃないところで守るべきものなのではないでしょうかね。それに絵を見たり本を読んだり文化的な体験や自然の雄大さや美しさ、風情を感じることの素晴らしさは言うまでもありません。それに物を大切にしたり、勿体無いと思う気持ちもとても大事だと感じます。私も今の若い人たちにはもっと本や映画を見て欲しいと思います。
    文章も非常に読み易かったです。言ってる事がいまの世の中の総体的な流れと逆で面白かったです。ちょっとした目からウロコ…体験だったかも…今年の1冊目としては良い出会いでありました。お勧めします。

  • (2006/4/9)

    母に前から
    「これ,よんだら~?お母さん読んだけどすごいよかったわー」

    みたいな,それに類した事を言われていたモノノ,出産・引っ越し・出張等で,ばたついて,読んでなかった.

    アマゾンで書評を調べていたらカナリ賛否両論あるみたいで,☆の数も3.5と,ベストセラーの中では,まあまあ,分かれているご様子.

    で,今日,ランチを食う時に時間ができたんで,読んでみたのです.
    で,行き着いた先は寧ろ

    「国家の品格」いまいち・・

    まあ,いろいろ意見はあるわけですが,基本的には
    議論が薄いように感じる・・・.

    全体から漂ってくるのは

    「退官した数物系教授が専門分野をはみ出したところで,一般教養レベルを本に書いてる文章」

    これは,いろんな読者の共感と反感を買うのは仕方ない・・・.

    著者自身が始めに述べているように.

    「女房に言わせると,私の話の半分は誤りと勘違い,残りの半分は誇張と大風呂敷.」
    「品格無き筆者による,品格ある国家論」

    である事を読者は念頭におくべきでしょう.

    でも,この本が,どっか日本人にくすぶる危機感をくすぐってくれるのは確か.

    だから売れるんでしょう!

    もちろん売れることには理由がある!

    そして売れる事は大切なこと!

    ただ,その危機感を解消へ導いてくれる本では無いってこと.



    読む人は
    「この本は専門書ではない.」

    と,言うことを理解しておく必要があるでしょう.

    まあ,わかって読まれている方が多いとは思いますが.

    くれぐれもエッセイとして読みましょう~.

    格差社会と言われる昨今で,それを筆者も嘆いています.


    僕は過去に比べると,現在そんなに世の中悪くはなってないと思う.少なくとも,僕ら2,30代は,そんな悲観論より具体性のあるアクションで赤ん坊の為の未来を切り開く,責任があるのだと思う.

    よりよい未来へのアクションにつながりうる日々を送らないといけませんね.そういう警鐘の書とうけとることとします.


    ちなみに,この本を読んでおもしろいと思った方,歴史観を深めたい方には,

    ジャレ・ド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」

    が,お勧めです.

  • 独立不羈
    高い道徳
    美しい田園
    天才の輩出

    情緒 論理越

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