国家の品格 (新潮新書)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106101410

感想・レビュー・書評

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  • 初めて読んだときは、割と感動して「そうかー、グローバルとか言ってないで日本や国家の良さを見直そう!」などと思ったものでした。しかし30歳も半ばをこえてから、大学院で社会学っぽい領域の修士号取得のため、主に経営学のフィールドから様々な"名著"を読んだ後に眺めたら、とんでもなく薄っぺらく、つまらない本に見えたいくつかの書籍のうちの一つ。論拠がいい加減ですね。学問的な流れもきちんと理解できていない。この方は哲学したつもりなのかもしれないが、単なる"読み物"、ないしは論拠なく日本の良さを語る"エンターテイメント"です。数学者の学問視野ってこんなもんなのかなぁ。

  • 本書は「論理」と「合理性」だけでは社会問題の解決に繋がらないことを指摘し、論理よりも情緒、英語よりも国語、民主主義より武士道精神を重んじてきた品格ある国家・日本に立ち戻り、世界と一線を画すべきだという主張が書かれている。

    第1~2章では、①論理の限界(pp.35-44)、②人間にとって最も重要なことの多くが論理的に説明できない(pp.44-50)、③論理には出発点が必要でそれを選ぶのは情緒や形である(pp.50-55)、④長い論理ほど信憑性がなく、短い論理ほど深みに欠ける(pp.55-64)を理由に挙げ、「論理だけでは人間社会の問題解決は図れない」ことを指摘している。

    第3章では、「③論理には出発点が必要」ということに着目し、欧米人の論理の出発点である「自由・平等・民主主義」の概念に対して疑問を投げかけている。

    私たちの耳慣れた「自由・平等」はそもそもカルヴァンの予定説の潮流に乗ったジョン・ロックの主張が反映されたものであることを論拠に、論理の出発点は神なしでは主張を担保できない、いい加減なものだと主張している(pp.65-74,88-90)。またカルヴァン主義が資本主義を進め(pp.69-72)、自由・平等を前提とした「民主主義」も致命的な欠陥を抱えていると主張している(pp.74-92)。

    第4~6章では、論理の出発点を正しく選ぶために必要な日本人が古来から持つ「情緒」、あるいは伝統に由来する「形」を重んじることが重要であり(pp.95-115,130-157)、情緒を育む精神の形として「武士道精神」を復活させるべきだと述べている(pp.116-129)。そして最終章で他国の文化・思想と日本のそれとを比較しながら、改めて先の議論を強調し(pp.158-190)、武士道精神を重んじてきた品格ある国家・日本に立ち戻り、世界と一線を画すべきだと主張している(pp.191-192)。

    このように詳細に書いたのは、本書の問題点を浮き彫りにするためである。第1~2章に書かれている「論理だけで人間社会の問題解決が図れない」ことは当然である。しかし第3章で主張する「自由・平等・民主主義」が神でしか語れないことの何が問題なのか疑問に感じる。たとえ法の下での制限があったとしても、それは無法地帯のままよりはよいはずである。また武士道精神も、天皇や仏(神)を敬う心が根底にある。そういった点でほかの宗教と変わらないはずである。にもかかわらず、他国の思想を貶めるような批判をし、自国が優れているというような主張に甚だ腹が立つばかりである。

    また著者が理数学者であるという点にも注意が必要だ。学者が自分の研究領域外のことを語るのはもちろん構わない。しかし自分の研究分野外のため、中途半端な主張しかできないし、発言に対する責任も持てない。裏付けが示せない。そういったことでいいわけがない。また論理を否定したら、著者のこの本そのものが論理なわけだから、そういったものもすべて否定されることになるのではないだろうか。

    もちろん、こういった問題はそれぞれの思想の問題である。だが、だからこそ注意深く読む必要があると感じる。学者だからと言っていつも正しいことを言っているとは限らない。他の専門家の主張と比較して、注意深く読む必要がある。

  • 「自由競争にまかせていれば、『神の見えざる手』が最適な状態に導いてくれる」という話は、私も確かにまやかしだと思う。市場原理主義がもたらすのは、ほんの一握りの勝者と大量の敗者で、「再チャレンジができる社会」なんて聞こえの良い事をいうけれど、それもただの言い訳に過ぎないという感覚にも共感。
    ただ、あんまり「日本民族は他の民族よりも優れている」「アメリカ人の考え方は野卑だ」という色が強すぎて違和感がある。
    日本人はみんな弱者に対する惻隠があるというが、長い間被差別階級を政策として作っていたではないか。「日本人は金銭を低くみる」というが、商人はみんなそんなに立派だったのかなど…
    やはり「国」や「民族」で物事を考える事自体がもはやナンセンスで、「個人 対 個人」で考える時代がすぐそこに来ているのではないかと思った。
    実際、領土問題で中国のデモとかみるとすごい腹が立つけど、友人の中国人の彼とは、そんな事を気にする事もなく友人なままの訳ですから^_^

  • 考え方としては非常に偏っているが興味深い。あまり共感できる内容ではない。美しい自然など日本のみに限らず、ヨーロッパのように文化や古い建物を残し、昔からの自然とともにそのまま残す国は他にも多く存在する。仏や神に敬虔に跪く心は、現代社会において薄れている。神という言葉をオカルト的に捉え、元旦やイベントこそ世俗的には楽しむ物の、日常的に神や仏への信仰が見られることもない。日本の考え方を文字に起こしてヨーロッパへ伝えることは確かに難しい。(まず日本とヨーロッパという地域を比べることがよくわからない。他のアジア地域はどうなのか?日本は国だ。国同士で比較するならまだしも)読みながら疑問に感じることが多々あるが、視野を広げるという点ではよいのでは。そのまま著者の考えを鵜呑みにしてしまうのはいささか危険であるようにも感じる。

  • 近代以降欧米が支配した教義、すなわち自由・平等・民主主義とは一線を画し、美しい日本人としての情緒、すなわち祖国愛や武士道(誠実、忍耐、正義、勇気、惻隠の情など)を重んじて国家の品格を守ることが日本人としての真の責務である、と説く。
    個人的に気になるのは自由・平等・民主主義と美しい日本人としての情緒を二項対立的に論じている点。自由・平等・民主主義は、「未来」のことはいざ知らず、歴史的な時間軸における「現在」においては、人類の幸福を追求しうる最適解なのでは、と思う。
    美しい日本人としての情緒を大切にすることによって、より理想的な自由、平等、民主主義を追求すべし、このことにより国家の品格が保たれるのでは、と感じる。

  • 2010/03/02

  • なるほどと思わせる論理展開はなく、なぜこの本がこのような表題にもかかわらず、ベストセラーになったのかわからない。ただし、数学者がこのような本を書いたのは注目に値したのかも(普通の人はゲーデルの不関税定理は知らないだろうし)。さっさと読めるが、特に読む必要は無い。

  • アメリカを見たあとイギリスを見て、結果、論理より情緒が大事だと感じた筆者の気持ちには大変共感したし、おもしろかったものの、個人的には日本礼賛部分は少し耳障りよすぎるかなと思った。

  • 著者の言いたいことはよくわかりました。「情」という心とか「趣」を感じとるといったいわゆる「日本人らしさ」が希薄になっているようには思います。殺伐とした雰囲気もあるし・・・。だけど根拠がよくわからなかったり、ひきあいに出している話が史実とかけはなれたり・・・という場面も。ちょっと残念です。

  • ・人種のるつぼ、アメリカでは、国家を統一するにはすべての人種に共通のもの、論理に従うしかない。戦後、祖国への誇りや自信を失うように教育され、すっかり足腰の弱っていた日本人は、世界に誇るべき我が国古来の「情緒と形」をあっさはら忘れ、市場経済に代表される、欧米の「論理と合理」に身を売ってしまった。日本はこうして国柄を失い、「国家の品格」をなくしてしまった。現在進行形中のグローバル化とは、世界を均質にするもの。日本人はこの世界の趨勢に敢然と闘いを挑むべき。普通の国となってはいけない。欧米支配下の野卑な世界にあって、「孤高の日本」でなければならない。

    ・どんな論理であれ、論理的に正しいからといってそれを徹底していくと、人間社会はほぼ必然的に破綻に至る。言うまでもなく論理は重要。しかし、論理だけではダメ。これは日常用いられるすべての論理に共通した性質。

    ・江戸時代、会津藩に白虎隊も教えを受けていた藩校の十の掟。これらは〜なりませぬ。と記されている。これらの後はこんな文句で結ばれる。
    ならぬことはならぬものです。
    要するにこれは「問答無用」「いけないことはいけない」と言っている。これが最も重要。すべてを論理で説明しようとすることは出来ない。だからこそ、「ならぬことはならぬものです」と価値観を押し付けたのである。本当に重要なことは、親や先生が幼いうちに押し付けないといけない。たいていの場合、説明は不要。頭ごなしに押し付けてよい。

    ・世の中には「1」も「0」も存在しない。絶対的に正しいことは存在しないし、絶対的な間違いも存在しない。通常は美徳とされる「正直」だって、常に美徳であるとは限らない。本当のことを言ってはいけない時、嘘をつかざるをえない時はいくらでもある。

    ・短い論理は深みに達しない。従って、論理というものは本来、効用のほとんどないもの。ほぼすべてワンステップかツーステップの論理。

    ・真のエリートには2つの条件がある。第一に、文学、哲学、歴史、芸術、科学といった、何の役にも立たないような教養をたっぷりと身につけていること。そうした教養を背景として、庶民とは比較にならないような圧倒的な大局観や総合判断力をもっていること。第二条件は、「いざ」となれば国家、国民のために喜んで命を捨てる気概があること。この真のエリートが、いま日本からいなくなってしまった。

    ・日本は金銭至上主義を何とも思わない野卑な国々とは一線を画す必要がある。国家の品格をひたすら守ること、孤高を保つべき、たかが経済。日本人一人一人が美しい情緒と形を身につけ、品格ある国家を保つことは、日本人として生まれた真の意味であり、人類への責務。途方に暮れる世界を本格的に救えるのは日本人しかいない。

  • 論理だけではいけないことは納得できるが、ちょっと強引で読むのが億劫になり、後半は目次だけ読んで終えた。

  • 武士道精神を基盤に国家を立て直すという。
    しかし,立憲主義的に困難が多い。

    論理を偏重する姿勢に対する批判と、この世には問答無用のルール(道徳)があるという主張だけは、共感できる。

  • メーター”0”か,メーター”振り切れ”かしかない思考.足して混ぜれば普通の話.中庸を知らない人に品格という言葉を使われてもなぁ.
    職場で推薦されて読んだ.本を推薦するときは注意せねば.

  • 数学者が書いた今年のベストセラー。賛同できる部分と?という部分があります。国語教育の大切さは全く賛成。小学校から英語、パソコンを教える愚は同感です。英語は手段であり、要は語るべき何か、日本文化、思想などをじっくり育てていくべきだからです。一方、国益で北朝鮮の核武装を容認するような言葉は軽率だと思いました。あまり「品格」を感じさせる主張ではないです。プロテスタンティズムの件もそうでした。M・ウェーバーの業績とは程遠い分析です。やはり日本の右傾化、ナショナリズムの高揚の中で読まれ、持て囃されてきたのだと分かります。日本は優れた文化を持っており、自信を持って美しい国を目指すべきだという主張に繋がるものだからです。頷くことができたのは、日本の俳句の情緒を外国人は理解できないだろうというところ。「枯れ枝に 烏の止まりたるや 秋の暮れ」という芭蕉の句を森本哲郎氏がドイツ人に訳してあげたところ、「それで?」という反応だったとか。確かにこれでは何にもストーリーが始まっていない!という印象なのでしょう。

  • ブクログ登録日以前の読了の為レビュー無しです
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  • 佐藤優の本の中で紹介されていたので読んでみた。ワンクリックで買えるKindle便利。

    先ず、最初に著者が断っている通り、思ったことを書いているだけだから、その内容の是非を言うのは野暮なんだろう。だけど…
    英語に関する考え方の一部など、内容的には共感できる部分もある。だけど…

    品格云々を云うならば、何かにつけ嫁のことを書くのはどうなんだろう?
    イギリスの食事が未だ美味しくないということを云うのはどうなんだろう?
    名前こそ出していないが、ホリエモン批判がマスコミからのニュースのみに基づいているように見えるのはどうなんだろう?
    こういった、少なくともこの著書の中で相手が反論できないような事を書くのは品格あること、武士道を鑑みて、おかしくないことなのだろうか?
    日本人の美徳として、相手に非や至らぬ部分があっても、それを思いやる心というものがあるのではないだろうか?

    因みに、マスコミでの報道云々で言えば食料自給率に関してもそう。国によって算出方法が違うものを出して日本の農業を残すべきと訴えるのは妙だ。日本のようにカロリーベースで計算してたら野菜をどれだけ作っても自給率は大して上がらない。

    それに、金銭第一という経済主義的な考え方を批判するならGDP2位になったことを誇るかのような文もおかしいと思うし。

    気になったことは色々あるが、恐らく、著者はわかって書いているのだと思う。それにしても、「品格」ある内容とは思えないんだなぁ。内容が愚痴に近くて。

    気持ち的には星1つでもいいと思ったけど、前述の通り、そういう内容だと最初に著者が述べているので、星2つ。ただ、ここに書いた通り、タイトルに対して内容はそう思えないものだった。
    著者と同世代の方達なら両手を上げて共感できるのだろうか?

  • 筆者の極端なまでの欧米批判が面白かった。武士道が素晴らしいというのは理解できる。しかし完璧なものなどこの世に存在しないと思うし、その素晴らしさを語るのに他を強烈なまでに批判する必要があるのかが疑問だった。また武士道を唱えるのならば、欧米の文化にも敬意を払う姿勢がもう少し見せるべきだと思った。

  • 確かに,このアメリカナイズされた感じの,完全な実力主義は日本に合わないものでしょう。それは認めざるを得ない事実だと思います。

    でも,それに迎合し,それを積極的に受け入れようとしている事実。そこに目を向けるべきじゃないでしょうか。

    「アメリカの考え方はいかん!」と考えることは簡単なことです。「論理論理といっていたら『もののあはれ』はなくなってしまう!」と非難するのは誰でもできます。問題は一歩その外から眺めてみて,なんでそうなっているのか,何がそうさせているのかを冷静に考えることなんじゃないでしょうか。

    でも,小学校の英語教育導入に反対,もっと本を読めっていう主張には大賛成です♪

  • 斬新な結論を導いているところは評価できますが、議論に欠陥が多く、質問しなければ判断できないところがあまりに多いように思えます。疑問点は以下の通り。
    ・筆者が指摘しているのは「悪い論理」である以上、論理を正しく使えば問題がないのではないか
    ・筆者の目指す日本の具体的な形が分からない
    ・筆者が否定するナショナリズムを、この本は誘っているのではないか。なぜならば、日本が素晴らしい理由をたまたま自然が豊かだったことに求めているからである(ナショナリズムを煽っているかどうかは、ネット上のレビューで判断できるだろう)

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