「法令遵守」が日本を滅ぼす (新潮新書)

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  • 新潮社
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レビュー : 65
  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106101977

作品紹介・あらすじ

「申し訳ございません。違法行為を二度と起こさないよう、コンプライアンスを徹底いたします」とは、不祥事を起こした際の謝罪会見での常套句。だが、こうした「コンプライアンスとは単に法を守ること」と考える法令遵守原理主義そのものが、会社はおろか、この国の根幹をも深く着実に蝕んでいるのだ。世の中に蔓延する「コンプライアンス病」の弊害を取り上げ、法治国家とは名ばかりの日本の実情を明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • カバーの言葉より引用する。
    「申し訳ございません。違法行為を二度と起こさないよう、コンプライアンスを徹底いたします」とは、不祥事を起こした際の謝罪会見での常套句。だが、こうした「コンプライアンスとは単に法を守ること」と考える法令順守原理主義そのものが、会社はおろか、この国の根幹をも深く着実に蝕んでいるのだ。世の中に蔓延する「コンプライアンス病」の弊害を取り上げ、法治国家とは名ばかりの日本の実情を明らかにする。

    つまり、短絡的な法令遵守ではなく、法の背景・精神、社会的要請をまず考えよ、ということである。慣用句で言えば、枝葉末節、木を見て森を見ず、ということである。

    そして筆者は、「コンプライアンス」と「法令遵守」は異なると主張する。コンプライアンスとは、「社会的要請への適応」としている。

    目次
    第一章 日本は法治国家か
    第二章 「法令遵守」が企業をダメにする
    第三章 官とマスコミが弊害を助長する
    第四章 日本の法律は象徴に過ぎない
    第五章 「フルセット・コンプライアンス」という考え方
    終章  眼を持つ組織になる。

  • 確かにその通り。バランスが大切

  • 多少不合理な面も含めて形式を満たしながら守るのが法令遵守と思い込んでいたのを改めさせられた。かといって、顕在化した社会要請だけでなく潜在的な社会要請をあれもこれもというわけにいかない。だからフルセット・コンプライアンスの第1が「組織の方針」ということか・・・。法令は環境変化を知る手がかりというのはなるほど。

  • 本質が書かれた 著者の鋭い本です

  • コンプライアンスとは「法令順守」ではなく、「社会的要請への適応」と解釈すべきと作者は問う。
    本来、何のために法律が存在するのか?単純に法律を遵守する事が社会の要請に応える事にはなっていないにも関わらず、「法令を守れば良い」、「法令に従って物事の是非を判断すれば良い」と単純化されていないか、作者は警笛を鳴らす。
    文章も簡潔に非常に読みやすく、分かりやすい。おススメ。

  • 本書を読了したまさにその日、TBS「朝ズバッ!」の不二家関連報道捏造疑惑のニュースで、信頼回復対策会議議長として著者・郷原信郎の名前を発見した。まさに適任であろうと思う。不二家に対する一連の報道は、本書の中でも触れられている、メディアスクラムの構造そのものである。「法令」という正邪の境界を踏み外したと当局から判断された落伍者については、ささいなことでも針小棒大に取り上げ、よってたかって袋叩きにするという、本質論からかけ離れた報道姿勢。ささいなことでも事実であるうちはまだいいが、いつしかバッシングのネタすら捏造するという本末転倒した現象に発展する。
    マスコミに限らず外形的な「法令遵守」にのみ捕らわれ、社会的要請を見誤る日本の企業社会のひずみについて、ライブドア事件や談合などの具体的な事例を挙げながら的確に指摘して、非常に有用な組織論となっている。

  • 細かい条文がどうなっているなどということを考える前に、人間としての常識にしたがって行動すること。そうすれば、社会的要請にこたえられる。
    本来人間がもっているはずのセンシティビティというものを逆に削いでしまっている、失わせてしまっているのが、今の法令遵守の世界

    組織が社会の要請にこたえるためには
    1 社会的要請を的確に把握し、その要請にこたえていくための組織としての方針を具体的に明らかにすること
    2 その方針に従いバランスよくこたえていくための組織体制を構築すること
    3 組織全体を方針実現に向けて機能させていくこと
    4 方針に反する行為が行われた事実が明らかになったりその疑いが生じたりしたときに、原因を究明して再発を防止すること
    5 法令と実態とがかい離しやすい日本で必要なのが、1つの組織だけで社会的要請にこたえようとしても困難な事情、つまり組織が活動する環境自体に問題がある場合に、そのような環境を改めていくこと

    組織が何を目的とし何を目指しているか、その実現に関して何が問題になっているかを、全構成員が理解、認識すること

  • 行政の分野に対する例えが、野球の守備範囲。所管事項にこだわると、ボールを取りこぼす。社会要請に対するフルセットコンプライアンスの考え方も妥当。

  • コンプライアンス=法令遵守としてしまい、形から入り、形で終わっている今の世の中、会社、組織に警鐘を鳴らしている本。

    筆者はコンプライアンス=「組織が社会的要請に適応すること」と定義していると書いてある。長いから広がらない、とあるが、個人的には辞書にこの意味が載るような簡潔な日本語が作られれば、と思う。明治時代にはそうしてきたはずだ。

    法律やルールを守っていくことは大事なことであるが、それは何のために、誰のためにやっていくのが大事なのか、記者会見で頭を下げれば終わりというわけではない、と改めて考え直すべきなのであろう。

  • 法令遵守そのものに焦点を充てるのではなく、社会の要請は何で、それを実現するにはどのようなルールが必要かを問い直すことが重要だと主張。

  • 「法例遵守」することで、大丈夫だと思っている日本人に向けて、それが問題の解決にはならないことを指摘する良書。

    談合が非公式のシステムとして認められたことであること、公正取引委員会が歴史的には非常に難しい立場であったこと、ライブドア、村上ファンド、耐震強度偽装事件、パロマ事件などを例に挙げて、官とマスコミがそれを後押ししていると指摘している。

    日本の法律は元々、実態にあっていく慣習法ではなく、大陸成文法であるとともに、学者の研究も経済活動などとは無縁で、法学のタコつぼにとじこもって、主に、民法、刑法、行政法が研究対象になる。このような中で、フルセット・コンプライアンスの考え方が有効であると指摘している。

    いろいろな意味で、今の過渡期の日本の問題点がよくわかった。やはり、このようなことをその場で押さえずに、構造や組織や仕組みで変えていかないと真の問題は解決しないと感じた。

  • 『法令遵守が日本を滅ぼす』。なんだかタイトルもあざといし、新潮新書なのであまり期待しない方がいいかな(←出版社差別)と思いながら読んでみたのですが、思ったよりも面白く読み応えのある本でした。

    法律と企業倫理のこれまでの関係と、そのこれからあるべき関係が述べられています。具体例や歴史的経緯、それに日本人の法感覚などに照らし合わせながら論述が進められていくので、本の厚さに対して情報量も相当なものです。

    まあ大まかな作者の主張はタイトルの通りで、最近は法令遵守ということがよく言われるけれどそれだけではダメだ、ということです。

    規則を無視するのも、規則を無批判に遵守するだけの態度も、どちらも間違い。そもそもその法律が社会的感覚とズレていることは多くあるのであって、企業は必ずしも法律に即さないような社会的・道義的責任までも見据えていかなければならないのです。そういうことが述べられています。

    もっと簡単に言えば、「企業よ、法律を守るばっかりではなく、ちゃんと社会の空気を読め!」といったところでしょうか。

    しかしこの本は「企業寄り」という感じで、もはや法律に絶望しているようにも見えます。その点が少し気になりますね。

    恐らく企業にだって空気が読める企業とそうでない企業があることでしょう。それにそうした空気じたい、一般的な暗黙の合意としてあるわけではなくて、マスコミがどう報道するかにかかっている部分もあります。

    例えばマスコミが「この企業はこんなに反省しているから許してあげよう」という報道をすれば、社会全体でそういう空気になるものです。また逆に、どんなに謝罪しても、マスコミが叩く限り我々はその企業をそういう目で見続けてしまうものです。

    この本の立場は「明文化されたルールに依存するとろくなことはない」ということだと思いますが、僕にしてみれば「場の空気を読んでばかりいるのは日和見主義で、そうした立場からは一貫した道義性は生まれない。不祥事を起こした企業は、それへの対応が、今後も他の企業に対して模範となるように心がけねばいけない」といったところです。

  • コンプライアンスとは、「法令遵守」ではなく「組織が社外的要請に適応すること」。これだ。

  • 有名な郷原弁護士の著書。
    フルセット・コンプライアンス論の提唱者。今取り組んでいるコンプラ課題の来季以降の方向性の参考にと、購入してみました。『食の不祥事を考える』と『司法記者』は読んでみようかと…

  • 「過剰なコンプライアンスが非効率・非生産性をまねいている。(組織には柔軟性・寛容性があったほうがよい)」みたいな話が聞きたかったのだけど、「法令順守(という言葉自体)が誤解されいてる」といった内容で、期待したイメージと違った。

  • 世間も会社もコンプライアンスを意識して、何かと息苦しいと感じている昨今だが、本当は何を守るべきなのかを考え直したくて読んだ本。
    著者の郷原氏はコンプライアンスに関して各所で講演したり、九州電力のやらせメール事件で第三者委員会の長を務めた方で、最新刊であるも「組織の思考が止まるとき」も3月に読了してレビュー済み。
    現在の日本はあまりに法律を機械的、形式的に適用しようとする「法令遵守」に偏りすぎていると言う。
    まずは日本の独禁法に関する歴史、建設業界の談合摘発、ライブドアや村上ファンドに絡む証券取引法やインサイダーという実例における実例を簡潔に説明してあるので、あれだけ世間を騒がして事件がこんな形でねじ曲げられてきた事情がよくわかる。
    建設業界に勤めるN田君が、飲むとよく談合について必要悪だというようなことを言っていたのだが、この本を読んでよく納得できたものだ。
    結局、郷原氏の言いたいことの本質はP101にある図で表されており、法律はあくまで社会的要請の下に整備されているものだから、そこを考慮せずに法令遵守しても役に立つものではないということ。
    至極真っ当な意見であり、ここでもJR福知山線事故の時の実例をあげて納得行く論理を展開している。
    (被害者家族が家族の安否を問い合わせても、医療機関が個人情報保護法を盾に情報を開示しなかったという件)
    またマスコミによる法の精神の湾曲に関しても触れている。
    帰任してからの2年半あまり、マスコミの報道により物事が本質から外れる方向に流されるケースが多いことには本当に腹がたってしょうがないのだが、ここでも記者クラブの悪弊や、物事を簡単にまとめようとするあまりに何でも善玉・悪玉論に置き換え用とする傾向が、まさに法律を社会的要請から切り離してしまうことを指摘している。

    そして、先に上げた著作でも触れていた「フルセット・コンプライアンス」の考え方に基づくことで、単なる法令遵守とは異なる社会的要請に適応する法律の生かし方につながるんだという。
    即ち、以下の5つである。
    1、社会的要請を的確に把握し、それに応えていくための組織方針の具体化
    2、方針に従ったバランスの良い組織体制の構築
    3、方針実現に向けて組織を機能させること
    4、方針に反する状況になった場合には原因究明と再発防止
    5、一つの組織だけで社会的要請に応えるのが困難ならば、その環境自体を改めて行くべき

    本著作は2007年出版になるのだが、当時だけでなく現時点以降で社会、企業にまさしく必要になってくる重要な考え方を示唆している。
    このような考え方をしっかりと持って、日常の業務にも取り組んでいきたいと思う。

  • compliance はロングマン英英辞典でも、 formal when someone obeys a rule, agreement, or demand という訳でしたね。著者のいう「社会的要請への適応」という意味もなんとなく沿っているかとはおもいますけれども。法令順守といいながら、かなり偏ってるなあという感じがする昨今の事件、とくに経済事件の取り扱い。企業も企業に属する個人も社会的要請に直接向き合わなければならなくなった、しかも世界的にもというおまけつき、のこの世の中。本書自体は問題提起で終わってしまっているように思うのですが、あらためて経済、社会への企業人としての取り組み、課題を整理するにはちょうどいい書だと思います。

  • 官製談合などを引き合いに、立法事実を軽視した法運用がいかに社会にマイナスに作用するか、また昨今の企業不祥事で散見される、無自覚な「法令遵守」だけをして本質的な原因追求をしないために、類例が何度も繰り返されているのではないかと警鐘を鳴らしています。
    また、本質を見失ってしまうのは、官僚やマスコミの行動が弊害になっているからという指摘は同感ですが、根拠についての記述がいささか弱かったかなという印象です。
    「法令遵守」=「コンプライアンス」ではないという説明に著者の主張が凝縮されており、「コンプライアンス」の真の意味を問い直すのに、一読の価値ありでしょう。

  • ルールや法律が目的とズレが生じると形骸化されたり、法律の抜け穴になり法律は守ってるけど社会の要請に応えられてない事は世の中にも普段の仕事でもよくある。
    法律は守らないといけないが、守る為のルールに生産性を感じない。

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著者プロフィール

郷原 信郎(ゴウハラ ノブオ)
郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表
1977年東京大学理学部卒業。83年検事任官、公正取引委員会事務局審査部付検事、東京地検検事、広島地検特別刑事部長、法務省法務総合研究所研究官、長崎地検次席検事、法務省法務総合研究所総括研究官兼教官などを経て、05年桐蔭横浜大学法科大学院教授、06年弁護士登録、08年郷原総合法律事務所(現・郷原総合コンプライアンス法律事務所)開設。09年名城大学教授。2012年関西大学特任教授。
『青年市長は司法の闇と闘った』(KADOKAWA、2017年)、『告発の正義』(ちくま新書、2015年)、『検察崩壊~失われた正義』(毎日新聞社、2012年)、『第三者委員会は企業を変えられるか~九州電力「やらせメール」問題の深層』(毎日新聞社、2012年)、『組織の思考が止まるとき~「法令遵守」から「ルールの創造」へ』(毎日新聞社、2011年)、『特捜検察の終焉』(飛鳥新社、2010年)、『検察が危ない』(ベスト新書、2010年)ほか著書多数。

「2019年 『初級 ビジネスコンプライアンス 第2版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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