日本人の足を速くする (新潮新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106102134

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  • 「日本人の足を速くする」
    世界を席巻するアフリカ選手、ルメートルを先頭とする欧州出身選手、小国や諸島から誕生するメダリストやファイナリスト、彼らに勝つ為近づく為に、日本人はどうするべきか。


    400mH選手と言えば、日本人として初めて世界選手権400mHのファイナリスト(1995年イエテボリ大会7位)となった山崎一彦選手、同大会の準決勝進出者でもあった苅部俊二選手、そして斎藤嘉彦選手が挙げられます。彼らが日本のハードルレベルを一気に上げてくれました。そんな彼らに続いたハードル選手が為末大、その人。


    彼は、 2001年エドモントン、2005年ヘルシンキ世界陸上で銅メダルを獲得し、日本人でもトラック競技、しかも短距離種目に並ぶ難関種目で勝つことが出来る!ということを私に教えてくれました。あの走りを見たとき、2003年パリ世界陸上で銅メダルを獲った末續選手の走りと同じくらいの衝撃、興奮、感動が湧いてきました。一陸上部員には、喜び以外のなにものでもない!


    しかし、為末選手は、常に成功だけを掴んできたわけではありません。五輪での転倒と不振、400mで圧倒的強さを見せたジュニア時代からのハードル転向など数々のハードルを飛んできました、ただ速くなりたいという一心で。


    中学高校時代、陸上部に属していた私は、一時ハードルをやっていました(中学時代)。種目は110Hで、県大会には行けずに、その後ハードルから離れました。ハードルはとにかく難しい、それが感想。しかし、110Hよりも難しいのが400Hです。さらに、言っちゃうと、400mを走りながら、ハードルを飛び越えるので、とにかく死ぬほど疲れるw、だから誰もしたくない、それが400Hw


    中学時代でこんなんだから、世界になるとそれはそれは私の想像を越えた、体力と技術共に高いレベルが問われるんだろうと思います。実際、世界陸上や五輪のメダリストは、ハードル向きの肩幅が広く必要な筋肉のみあるすらっとした体型で、手足も長い。それでいて、タイムが良い。


    そんな強豪相手に勝つ為に徹底的に強化したのが、技術です。ハードルを飛び越える一連の動きの綺麗さは、世界でも評価が高く、それを可能にする技術は、アフリカ系の選手のように恵まれていない選手でも勝てる!という可能性を示しました。中でも、ハードル間を13歩で走るというのは、相当凄まじいです。もう笑っちゃうくらいw


    アフリカ系選手などは、あれだけの足の長さでハードルを14歩で飛び越え、調子やタイミング次第で13歩で行くとされています。大抵、14、14、13、14みたいなバラバラな歩数でハードルを飛び越えようとすると、どこかでフォームを崩したり、タイミングがズレたりしてハードルを倒したり転倒したりするのですが、そこは足が長く、センスがある彼ら。なんとかしちゃうことがあるのです。しかし、歩数がバラバラである分、ハードルを飛び越える時間に差が出る。そこを突こうとしたのが、為末選手なんです!


    全ハードルを13歩で飛び越えると、タイムを縮めることができ、彼らに勝つ可能性が上がる。その為には、ハードルを最短距離で飛び越える技術とフォームを身に付ける必要がある、勿論、体力や体幹の強さなども必須。かなり高いハードルです。


    しかし、為末選手は、それをやり切った。それも苦悩しながらも、そこに楽しみを添えて。さて、そんな為末選手が考える足の速さとは。

  • 速く走ることよりも、
    為末大選手の目標達成までの考え方、について注目して読むとすごく良い本だと思う。

  • 侍ハードラー・為末大選手が自身の半生を振り返りながら陸上競技というものの魅力や展望について書いている。

    著者の世界を見る目は独特で、世間的な常識という枠に必要以上に囚われずに何事も自分の頭で考えようとする姿勢には学ぶところが多かった。

    言葉のチョイスが巧く、専門用語も皆無なので、僕のように陸上に特別な思い入れがあるわけではない者でもぐいぐい引き込まれる。

    「考える」ということに長けた人、という印象。

  • 為末さんの文章はわかりやすい。

  • プロ陸上選手が自分のために調べに調べぬいた体のことを書いた本。

    実際このとおりに動きをイメージすると走るのはもちろん歩くのも速くなる。

    絶対にコーチをつけなかった彼のやり方から、一流選手のひとつの在り方も感じる。

  • 生き方、価値観、考え方、いつも刺激をもらってます。

  • 自分で考え、自分の考えを信じ、繰り返し実践する。 <br>
    これを尋常でない錬度で、深く強く行っている。 <br>
    見習いたい。 <br>
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    以下抜粋。(簡略抜粋もあり) <br>
    「欧米、アフリカ人はおおむね骨盤が正面向き。日本人の骨盤はやや上向き。そのため日本人が欧米人と同じ方法で走ると、前へ進む力が斜め上へ逃げてしまいがち。」(P.26) <br>
    →そこで「イメージとしては、滑りやすい学校の廊下を滑らないように走る、あの感じ。ある意味は、能の舞で見られる、あの摺り足のイメージです。」(P.27) <br>
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    『何万回、何十万回と着地する中で、地面に着いた足の上に骨盤が乗り込み、股関節のあたりに地面を踏んだ感触が直接に伝わってきて、体がスムーズに前へ進んでいく感覚をつかんだのです。 <br>
     今までとはまったく違った感覚でした。今までなら、着地したときに地面から跳ね返ってくる圧力は膝にきていたのです。それが、膝を通り越して、股関節に来ました。』(P.29) <br>
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    「世界一を現実のものとするためには、ハードルを越える技術でのさらなる上積みを望むよりも、フラットレースでのスピード強化したほうが効率が良い、と判断して、ハードル練習を封印したのです。」(P.32)<br>
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    「スポーツでも大事なのは、クリエイティブな力です。問題点を自分を分析し、どう対処すべきかを試行錯誤していく、柔軟な発想とたくましい行動力です。」(P.69)<br>
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    『誰もがやっていて、だれもがそれなりに効果が得られると思われるトレーニングと、他の人はやってないけど、自分には大きな効果があると期待できるトレーニング、大きく分ければこの二つがあるのです。』(P.81) <br>
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    『行けるときには、後先考えないで行けるところまで突き抜ける。風が吹いてきたら、その風に乗っかって、自分でも考えていなかったところまでも運ばれていく。ちっぽけな人間の力では推し量れない何かに身を任せてみる、ある種の潔さを持っていると、勝負の世界というダイナミズムの中で、日本人はもっと活躍できるのではないでしょうか。』(P.85) <br>
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    『2003年秋には、入社して1年半しか経っていない大阪ガスを辞めました。サラリーマンという安定した環境にいたのでは、世界のトップクラスに太刀打ちできない、と感じたためです。自分を追い込んで彼らと同じ土俵に上がらなくては、まずメンタルで迫力負けしてしまう。それを恐れたのです。』(P.88) <br>
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    『食事に行く時間も惜しくて、グラウンドに座り込んでササミを食べていると、ああ自分は生きている、頑張っている、という確かな実感に包まれたものです。』(P.90-91)<br>
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    『私たちアスリートは、失敗したときのことをあらかじめ計算する暇があったら、どうすれば自分の潜在能力を最大限に爆発させられるか最優先して考えるべきです。』
    (P.91) <br>
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    「100mでそれなりの記録を残した選手が、200m、400mを走るようになり、さらに400mハードルを本業にするといったケースは異例なのです。 <br>
     それが心の支えになりました。常識を打ち破るチャンスを得たのだ、と私は自分に幾度となく言い聞かせました。」(P.106) <br>
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    「遠回りすることだってありますが、どんな失敗をしても、必ず自分のレベルにまで原因を落とし込む作業を繰り返していくと、同じ過ちを犯さなくなるのです。原因と結果が自分の中で結びついて、改善策がクリアに見えてきます。 <br>
     人間が一番痛いと思うのが自己嫌悪です。そして、その他の何よりもその痛みが、同じ間違いを繰り返しさせません。それこそがトレーニングを洗練させるのにもっとも重要なことで、自分がそれを選択したという過去が必要なのです。<br>
     自分には何が足りないのか。それを解決するためには、何をすればいいのか。<br>
     それを自分の脳で突き止めた上で行うトレーニングは、上から降りてきたメニューをこなしている場合とは、効力が雲泥の差になるのです。」(P.108-109) <br>
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    「私は、自分で考えるという最高に面白い作業を、もったいなくて人には渡したくないのです。」(P.108-109) <br>
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    「ファッションモデルの歩き方を取り入れたモデルウォーク走法。両足を一直線上に進める、あの独特な歩き方をするとスライドを広げられることに気がついたのです。実際にこれを試してみると、一歩につき1cmの距離を稼ぐことができました。たった1cmと思われるかもしれません。けれども、400mハードルのレースを走ると私の場合163歩かかるのですから、スピードがそのままなら163cm分早くなるのです。」(P.113-114)<br>
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    「私はどんなに意識が朦朧としていても、9台目、10台目への15歩は体が自然に正しい反応をしてくれるようになっています。」(P.132) <br>
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    『満潮の後には潮が引き始め、干潮の後には潮が満ち始めます。そういうバイオリズムが自分という小世界の中にもあるのではないかと感が手います。』(P.155)

著者プロフィール

1978年広島県生まれ。スプリント種目の世界大会で、日本人としてはじめてメダルを獲得。シドニー・アテネ・北京のオリンピックに連続出場。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2019年7月現在)。2012年現役引退。
現在は、Sport × Technologyに関わるプロジェクトを行う株式会社Deportare Partnersの代表を務める一方、「どうすれば人は、自由に、しなやかに生きていけるのか」を、等身大のことばで発信している。こどもらしさを忘れずに息子と向き合うお父さんでもある。
著書に、『諦める力』(プレジデント社)、『走りながら考える』(KADOKAWA)などがある。

「2019年 『生き抜くチカラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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