人間の覚悟 (新潮新書 287)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106102875

作品紹介・あらすじ

そろそろ覚悟をきめなければならない。「覚悟」とはあきらめることであり、「明らかに究める」こと。希望でも、絶望でもなく、事実を真正面から受けとめることである。これから数十年は続くであろう下山の時代のなかで、国家にも、人の絆にも頼ることなく、人はどのように自分の人生と向き合えばいいのか。たとえこの先が地獄であっても、だれもが生き生きした人生を歩めるように、人間存在の根底から語られる全七章。

感想・レビュー・書評

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  • 生き方についての哲学書。
    古典的なニュアンスを持つが、現代の若者から共感されそうな生き方を説いていると思う。
    現代の若者とはいっても、自己啓発していつか成功してやる、という野心的な方ではなく、時代の流れに任せて、自分の裁量を自覚して今を生きる方。
    1日1日を大切に、1歩1歩自分の頭で考えて生きる、そういう考え方を学べた本です。

  • 人間は情動で動くもの、知識や言葉としてではなく、人間に内包され蓄積されたルサンチマンなるものを非常に重く見ています。

    とりあえず生きているということで、人間は生まれた目的の大半は果たしている。存在する、生存して行くこと自体に意味がある。

    生きることの大変さと儚さを胸に、この一日一日を感謝して生きていくしかない。そう覚悟しているのです。

  •  「覚悟」ということについて、仏教的視点から解説した本。「覚悟」とは「あきらめる」ことだが、ここで言う「あきらめる」とは今使われるような「途中でやめる」というネガティヴな意味合いではなく、「明らかに究める」という意味。

     著者曰く、現代は「鬱」、「下山」といった言葉で括られる時代。何だか寂寥たる感じがするが、これは「あきらめる」しかない。こういう苦しい時代では「おれが、おれが」と我を張って独善的になるよりも、「他力」を頼って行きていく方が安楽なのだと思った

     本書で言うとおり、憲法で保障されているような権利も、安心も安全も実は儚いものなのかもしれません。聖徳太子の言うとおり「世間虚仮、唯仏是真」なのだということを考えさせられる。でも、そういう視点に立って初めて見えてくるものもあるのだと思う。

  • 「大河の一滴」を読んだことがあるので、特段新しいことが書いてあるという印象はなく、それをベースに新たに付け加えられたという印象。
    この時期だからこそ冒頭の「国家に頼らない」という覚悟を決めること、身をもって感じるところである。
    第2章の鬱については、鬱状態を経験し、克服したことのある著者ならではのうわべだけではない内容。どの人の中にも鬱となりうる「ふさぎの虫」を飼っている、しかしそれを抱えて生きていくもの、という考えは鬱を恐れる人にとってそれを和らげるものとなりそう。
    第3章は第6章とつなげ、老いに向かう状態と老いた状態についてまとめて述べてほしい内容。特に第6章では、老いることもその上で認知症の症状を発症することも怖れるものではないと思わせてくれる。自分が老いる前に上の世代の人が老いてくることを見届けるのに私も覚悟が少しは備わった気がする。
    第4章については、西洋文化は根本的にキリスト教に基づいているので、そうではない人にとっては完全に理解できない部分があるとはずっと感じていたことなので、書かれている内容には納得。以前はそれを自分の勉学の不足からだと思ったこともあったが、それはそれで仕方がないもので、それが自分たちの文化との違いなのだと思ってよいのだと改めて思わされる。
    最終章は特に重い。しかしこれだけでも読む価値のある濃い内容。私も今まで生きてきて直接であれ間接であれ悪に無関係であったわけではない。それを覚悟の上、人には期待をしすぎず生きなければならない。長く付き合いたいと思った人と縁が切れてしまい、悔やむ思いをすることもあるが、人の縁も水のように流れ移ろぐもの。それをしっかりと受け止めて生きていきたい。

  • 五木寛之さんの三冊目。日本人・経済に警鐘を鳴らし続けてきている。「鬱の時代」まさしく今はそれに、あてはまると思う。「覚悟」とはあきらめることであり、「明らかに究める」こと。希望でも、絶望でもなく、事実を真正面から受け止める事である。「覚悟」を決める大切さ、「老いる」ことの自覚。人間は「死」と言う病のキャリアで、いつ発症するかわからない、そんな考え方ができるんだと再認識し、納得できました。ボランティアは「石もて追われる」までやれ。
    「子供を叱るな、昨日の自分。年寄りを笑うな、明日の自分」重過ぎる言葉で、肝に銘じます。

  • 中盤までずっと鬱鬱とした話で、気が滅入ってしまった。

  • 生きていることに価値があり、大変さと儚さを胸に、一日一日を感謝して生きていく覚悟が必要だとあった。読みごたえがある一冊だった。私も向上心ばかりでなく、毎日の無事に感謝する心を持って、寿命まで元気に健康で仲良く暮らしたいと思った。

  • ちょっと前の本だけどコロナの混乱を予見したような記述もあり興味深く読んだ。
    戦前戦後も含めた圧倒的な経験値は貴重だよな。
    このような人達が亡くなると戦争抑止力が無くなってまた戦いが始まるような気がする。

  • 四年前に読んだ。

  • 戦後50年間、ひたすら元気に坂を登り続けたこの国は、その後に続いた「失われた20年」によって停滞しているかのように見えるが、それはちょうど、頂上までゆっくりと登り続けていたジェットコースターが、これから始まる急降下に向けて一瞬止まるのに似ていると表現するのは作家の五木氏。折しも2008年、リーマンショックによる100年に1度の経済恐慌が起こった直後に書かれたこの本は、資本主義という巨大な恐竜が断末魔の叫びを上げ、格差社会や年金崩壊などの災いが人々に襲いかかってくる近未来を予見する。「国を愛することと、国家を信用することは別である」と主張する著者が、現在のような混沌の時代における「諦める覚悟」の重要性を説く。しかしその「諦め」とは「投げ出す・ギブアップする」ことではなく、「明らかに究める」という意味。目の前に起こっている真実を真正面から受け止め、人間としての「覚悟」を決めた生き方について提言する。

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著者プロフィール

1932年、福岡県生まれ。作家。生後まもなく朝鮮半島に渡り幼少期を送る。戦後、北朝鮮平壌より引き揚げる。52年に上京し、早稲田大学文学部ロシア文学科入学。57年中退後、編集者、作詞家、ルポライターなどを経て、66年『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、76年『青春の門筑豊篇』ほかで吉川英治文学賞、2010年『親鸞』で毎日出版文化賞特別賞受賞。ほかの代表作に『風の王国』『大河の一滴』『蓮如』『百寺巡礼』『生きるヒント』『折れない言葉』などがある。2022年より日本藝術院会員。

「2023年 『新・地図のない旅 Ⅱ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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