『こころ』は本当に名作か―正直者の名作案内 (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 185
レビュー : 29
  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106103087

作品紹介・あらすじ

文学に普遍的な基準はありません。面白いと思うかどうかは、読者の年齢や経験、趣味嗜好に左右されます。「もてない男」に恋愛小説が、そのケのない人に同性愛的文学がわからなくても、仕方のないこと。世評高い漱石の『こころ』やドストエフスキーは、本当に面白いのでしょうか?読むべきは『源氏物語』か『金閣寺』か?世界の古典を「大体読み終えた」著者が、ダメならダメと判定を下す、世界一正直な名作案内。

感想・レビュー・書評

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  • いま、ちまたでは女性お笑い芸人が占い師に洗脳された、という話題が持ちきりである。占いってのは、「こちらがわからない手段によって、こちらのことを知る」技法のことであり、事前調査とかコールドリーディングとか視線の動きをみるとか、かまをかけて反応をみる、とか誰にでも当たるこという、とか様々な技法がある。

    で、つまりは、それって、「人間を知る」方法なのであり、そのやり方をしらない人にとっては、「魔術師のように」みえる効果がある。

    小谷野氏のこの本は、ある意味そういう「魔術師のように人間を知る」本であり、読んだほうがいい本であろう。

    どういうことかといえば、「相手が好む本で相手がわかる」ってことで、たとえば「漱石が好き」という人は「母に愛されなかった」人であり、小林秀雄が好きって人は「母に愛された人」。

    じゃあ、両方好きな人は「自己欺瞞に陥っているか嘘つきかどちらか」ってことで、これを知っただけでもこの本を読んだ価値があった。

    志賀直哉好きはお坊ちゃん。

    ワイルドが好きなひとは同性愛者。

    ドストエフ好きーはキリスト教好き。

    こういうの知っていると、占い師よろしく、相手の生活環境で好きな本がわかるようになるかも。

    まあ、まあ、そもそも読書好きにしか通用しない占いだけどね。

    人の生まれ育ちが読書の好みを左右するから、普遍的に面白い本なんてないという、まあ、よく考えると当たり前だが、そんなことをいうと評論家は飯が食えなくなってしまうから誰も言わなかったことをいったから「正直者の名作案内」というわけである。

    だから、小谷野も、ここに上げた名作が普遍的な価値をもっているといっているわけでなく、あくまで好みだ、としているから正直だ。これによって、小谷野自身の人間がバレてしまうからだ。

    結局のところ、自分をどの程度さらけ出したか、が小説の価値に大きく影響する。
    で、「そんなとこまで見せちゃうひとっていままでいなかった」ってのが歴史的名作であり、でも、みんながみせちゃうと、いずれ読まれなくなるかもしれない、から、価値は普遍的ではありえないってことです。

  • 文学

  • 読書が万人のものというのはたかがここ百年のことであって、名作と呼ばれるもも全てが誰もが楽しめるものではない。
    この主張は分かる。

    が、論考を進める上で著者が面白いと感じる作品の面白さは主観の域を超えていないように読める。

    ある程度の読書経験や習慣がある人にはいいが、層でない人には怠惰な態度や読解力の至らなさの言い訳、隠れ蓑になってしまうのではないか。

  • 『こころ』は本当に名作なのか?
    なんか当たり前のように名作だと決めてかかっていたけど、言われてみれば思い込みとか周りの評判に流されていただけかもしれない、と思ってハッとさせられた。
    確かに、その小説が面白いかどうかは読者の人生経験や知識などで左右されそうで、普遍的な絶対的な基準は難しそうだ。
    森鷗外、三島由紀夫、ドストエフスキーなどなどバッサリ切ってて痛快だった。けっこう何カ所かで笑った。この主張が合わないという人も多いだろうけど、最近はいろんな作家や知識人が読書遍歴や読書のすすめみたいな本を出してる中でとても特異な主張だと思う。
    昔も今も「みんながこう言うから」みたいな感じでそれを信じて自分を合わせようとする人が多いけど、小谷野さんのように自分の基準がちゃんとある人はいいなと思う。

    以前『ぼくは勉強ができない』という本を読んで嫌悪感しか感じなかった経験があったけど、たとえ自分以外の全員が褒めていても自分はそう感じたということは間違いでもなんでもないんだと本書でちょっと勇気をもらった気がする。

  • ブックオフで買って、速攻ブックオフに売り払った。

    はしがきを読みだすと、「いわば」(だったと思う)があり、その数行後に「いわば」がまた使われている。

    同じ言葉の連発に受けた印象は「文章雑だなー」。

    読む気がしなくなり、文学作品を著者の視点から批評する内容なので、どの作品のどのようにいいのかをちょっとチェックすればいいやとわりきった。

    で、著者が一番いいと論じているのは「源氏物語」だ。理由は「とにかくいい」

    だけである。

    どのようにいいのかを読者は知りたいんだよ!

    もういいや、この本読まなくて。

    いや、待てよ。本書のタイトルの「こころ」はどうなんだ?高校の教科書にもある日本文学における大作品をどう斬っているんだ?

    要約「みんながいいって言うのが気に入らないからけなしたい」

    マジかよ。天邪鬼なだけかよ。

    そんな本書から得られたこともある。

    「文学作品の評価は普遍的なものではない」

    ってこと。昔に駄作といわれていても、現在では評価の高い作品もあるし、現在評価の高い、人気のある作品でも未来では駄作といわれることもあるかもしれない。

    読む人の価値観がちがえば、その作品の評価も変わってくるってことです。

    絵画の世界でゴッホの描いた絵は生前全く評価されていなかったけど、今は高額の値がついている。それと同じことが文学にもいえるんですね。

    いや、芸術的なものだけじゃなく、もの、人の評価は全て普遍的じゃないんだな。

  • 2015/5/1読了34
    私もこころが名作だと思えず購入してしまった。著者ならではの文学論が書かれているが、一般論とは異なるように感じられ、なかなか刺激的。

    作家によっては、偉大な作家かどうかさえ疑われていたりするのだが、そんな作家の本でも著者は面白いと感じた本は面白いと言っている(例えばトーマス・マン)

    私も自分が面白いと感じたものだけを面白いと言えるように、自分の中での明確な基準を持っていたいと感じた。

  • 東西の古典文学の「だいたいは読み終えた」という著者が、おもしろかおもしろくないかを大胆に判定を下した読書案内です。

    本書は作品自体のおもしろさを中心に評価しているのですが、それ以外にもたとえば白樺派の作家たちがトルストイをどのように受け入れたのかといった、受容史的な観点からのおもしろさというものもあるはずで、本書にも随所にそうした薀蓄が示されているのですが、あまりアカデミックな文学研究に立ち入らないようにしているのか、そうした側面はほとんど切り捨てられているように思います。

    たとえば、本書で著者が「好きではない」と述べている推理小説などの場合には、先行作品をどのように消化しているのかといった評価の観点もあるように思うのですが、そういうものは好事家に任せておけばいいので、本書のように単純な意味での作品のおもしろさをズバリ述べているのは、一つの見識ではあります。

    もっとも著者は、「インターテクスチュアリティ」といった用語に代表されるような、非実証的なポストモダンの文学理論にどうしてもガマンがならないようで、そのことを考慮に入れておいた方がいいかもしれません。

  • 著者が選んだ読むべき古典と名作といわれているが著者には違うという古典案内の本

    源氏物語、シェイクスピアなどは最高峰の名作であり

    ドエトフスキーはキリスト教色強いので、日本人にはわからない

    漱石は母に愛されなかった人は共感する

    芥川、鴎外、永井荷風は名作かあやしいそうです。

  • 名作とされている文学作品に対し、自分の感じたまま、良い悪いを断じるのが痛快。
    無理矢理なところもあるけど、面白く読めるのは、小谷野敦の知識と技術によるものかなと思う。

    小谷野敦は基本的に「もてない男」目線で読んでいる。
    「もてない女」である私から見たら共感できる部分もあったし、感覚が決定的に違うと感じた部分もあった。

  • 片っ端からぶった切ってる感が何とも痛快でした。名作案内、書評のはずなのに何故か痛快で面白い。容赦ないこき下ろしっぷりがまた笑える。
    普遍的ではない書評、と言うのがまたいい。決して万人受けする内容ではないが、だからこそに著者の好みや価値観が顕著に出ていて楽しめる。
    案内本としてはいまいちだが、一般的な普遍的な書評に飽きた人にオススメしたい

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著者プロフィール

1962年茨城県生まれ。本名読み・あつし。東京大学文学部英文科卒。同大学院比較文学比較文化専攻博士課程修了。1990-92年、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学に留学。学術博士(超域文化科学)。大阪大学言語文化部助教授、国際日本文化研究センター客員助教授などを経て、文筆業。文芸批評、小説、演劇、歴史、男女論などフィールドは幅広く、独自の「男性論」を展開。また、論壇・文壇のもたれ合いへの鋭い批判も行なっている。著書に『夏目漱石を江戸から読む』(中公新書)、『江戸幻想批判』『リアリズムの擁護』(新曜社)、『〈男の恋〉の文学史』(朝日選書)、『もてない男』『バカのための読書術』(ちくま新書)、『日本売春史』(新潮選書)、『退屈論』(河出文庫)、『聖母のいない国』(河出文庫、サントリー学芸賞受賞)、『恋愛の昭和史』(文春文庫)など多数。小説に『悲望』『童貞放浪記』(幻冬舎)、『美人作家は二度死ぬ』(論創社)。

「2018年 『江藤淳と大江健三郎 戦後日本の政治と文学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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