日本辺境論 (新潮新書)

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  • 新潮社
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レビュー : 611
  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106103360

感想・レビュー・書評

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  • 日本人特有の学び、パイオニアではなく先人に学ぶ、辺境性ゆえの標準に追いつこうとする思考

  • うまく説明できないでいた自分が依って立つ自分の価値観や判断基準の芯のようなものの成り立ちがとても腑に落ちる形で載っていた。
    フラットな国際人になってるつもりだったが、国民性・土地柄にどっぷり漬かった典型的日本人であることがわかってなんだか日本が改めて好きになった。

  • 日本辺境論

    内田16冊目
    この本を読んで思ったことは、内田樹は、日本論をまとめ、辺境人としての生き方を述べることで、自分語りをしているのではないかということである。彼の別の本で、幼いころから身体が弱く、そのような劣性において、勝てなくとも、負けないために合気道を始めたと書かれていた。そして、武道で大切なことは、弟子となることである。
    さて、辺境人としての生き方を見ると、自分以外のところで発生した世界のストーリーや、スタンダードを真似して、キャッチアップすることにはたけているが、今まで自分の世界像を提示したことのない、弟子としての日本人、辺境としての日本人の在り方がある。辺境という微妙な立場にあえて甘んじることで外交的なフリーハンドを手に入れていたこと、日露戦争後の日本の行動についても書かれているが、その日和見的な現実主義に、既視感を覚えた。日本人が常に変わり続けてきた、そして日本人が変わり続けてきたという事実、流体としての在り方は変わらないという言いえて妙な日本人論はさすが内田樹といえるが、どうも内田が、日本人論を今までの自分の半生を見てきた観点から配置しなおそうとしているようにも見える。
    さて、後半は修行論に書いてあった機の思想である。日本人は、辺境人として弟子の思想、学びの思想は心得ている。しかし、全てのものを「道」(最終地点へ到達するための過程)にしてしまうために、一方で自分の未熟さを正当化してしまう危険性があると内田は述べている。自分のいる地点は発展途上であると割り切ることで、素直で謙虚な姿勢を貫けるが、途上にある自分を甘受してしまえば、そこで成長は終わる。そのような矛盾に、日本人は機の思想を使うことで、対処してきた。機の思想とは、時間感覚の再編である。要因があって、結果があるというリニアな時間の継起を完全になくし、全てが同時に起こるというような発想である。修行論でも触れていたが、天下無敵とは、完全なる自分に対し、自己を抑制するものを除去した状態ではなく、まさしくその環境によってはじめて成立した生命体として行動することである。そこで生まれたものであるならば、抑制するものなどというものはそもそも存在しない。だから、無敵なのである。機の思想は実に不思議な考え方である。機の思想の実現に必要なものは、それが起こるかはわからないが、それについて先駆的に確信をもって行動することである。一種の勘、嗅覚が必要だ。学びにも言える。本来、学びとは、それがどのように役に立つのかわからないが、それを学ぶことが良いことであると先駆的に確信することから始まる。この人は何を教えてくれるかわからないが、なんだかこの人についていけば大丈夫だと確信する時、師は見つかる。あとは、いつものシラバス批判から、学びの資本主義マインド批判、いつもの流れである。

    日本辺境論において、初めて見たのは、日本語の異質さである。かな文字という表音文字と漢字という表意文字を同時に使っている民族は稀有である。そのような民族的奇習を持つ日本人は、コロキアルで身体性の強いかな文字と、異質な文化を異質なままに、理解しようとする漢字を使い分けてきた。この、異質なものを異質なままに理解するという能力は、辺境人ならではの能力で、圧倒的に翻訳においてアドバンテージを与えたのであった。
    日本人は、構造的に、学びにたけている民族であったのである。

    また、別に気付いたこともあるが、それは年代からくる考え方の違いである。それは、子供の時に支配的だった思想にあるのではないか。これはまさしく偏見中の偏見であることは認めるが、60歳代の人々はどうも「大きな物語」で物事を見ることが多いなと感じる。それは、当時の支配的な思想がまさしく快刀乱麻を断つような歯切れの良い、マルクス思想のような思想によっていたからではないかと思う。一方、自分の同年代の人間は、細かいことにこだわることや、多様性、ある種のアパシーを感じる。それは、歴史学がそうであったように、教育から、「大きな物語」が排された以降の時代に育っているからではないかと思う。専門は専門という、教育のセクショナリズムや、歴史像の多様化は、自分たちの世代に底流している基本的なマインドセットなのかもしれない。

  • (機の思想)の章は辞書なしでは理解不能でした。この本の発想はなるほどと感心します。白川静が登場するのも予想外。

  • 高一の時挫折しましたが!ついに!読めた!

    なるほどなるほど、という感じ。
    分かりやすい。

    この辺境人的なサイドをどう生かすかが。個人的な課題でもあるなあと思った。

  • 積ん読状態で放り出されていたのを拾って一気に読了。自ら主体的になるのはやはり難しいのか・・・?

  • 辺境をキーワードにした日本文化論。
    受け売りだとか言い訳がましいとかの批評が多いようだが、氏の視点と分析は型にはまった時評よりはるかに幅広いものの見方を示唆してくれる。

  • 978-4-10-610336-0 252p 2009・12・5 4刷

  • 名著

  • この本を読んでいて感じたのは僕は日本論とか日本人論にあまり興味がなくて、文章が柔らかい良い本だとは思うけども「私たち」や「我々」といった言葉はどこか遠くで語られている言葉のように感じてしまった。それでも最後の章である日本語の話は面白かった。

  • 9条どうでしょうの論評を拡大冗長していて、凝縮具合の鮮やかさでは前者に花がある。岸田秀の外的自己内的自己論の補論としては興味深い。

  • こじつけ本だけど、新入生の課題図書には良さそう。
    1章は先人の引用ばかりなので、うなずける。
    2章の学びは、司馬遼太郎と武士道のみ。
    持論を述べる感じだが、合気道の裏付けがあるのでまだいい。
    3章の宗教になると読めない。
    4章の日本語も引用なしで粗雑。
    1・2章がオリジナルを手に取るきっかけになれば、この手の本としては成功。

  • 空気を読み、棚上げしていいとこ取りをする。フォロワーとして優秀だがリーダーとして劣る。文化的辺境であった時期には有利に働いた性質が、いわゆるグローバル化によって優位性を失った。日本人が漠然と感じている不安がうまく言語化されていると思う。現状分析に優れ、提言が途端にあやふやになる、ってのも付け加えておこうか。

  • 梅棹の文明の生態史観が根底だが、基本的には森毅の「まあ、ええやないか」と高橋馬一郎のノホホンを著者独特の原理論にまとめ上げたという印象。いわゆる独善的な日本主義的なものをスモールパッケージホールドでひっくり返そうとするジュニア級の技。簡単に「寛容」と「謙虚」という言葉で済ませられることであるが。しかし、現代日本で最も厄介な論客ではあるだろう。

  • まったくもって、しみじみと同感しました!はぁ〜

  • 日本文化論。中心から離れた辺境にいるからこその利点と業。その生存戦略。
    要再読。

  • 題名を見た時に読んだことはないのに馴染みがあるような感じを持ったのは、やはり「文明の生態史観」の影響だった。
    日本でなされる中国や韓国の批判や日本の自画自賛に接する際に、あちらやこちらの言い分を相対化させてくれる有益な視座を提供する本だと思う。
    そのような「議論」との兼ね合いは別とすると、内容的に納得する点も多々あるが、地理的な枠組みでの説明は、頭の中の説明に別の頭のようなものを持ち込む無限退行を感じる。
    アジアという視座であれば、日本という島は辺境と言えるだろうが、その日本の中にも「辺境」はある。そこは、倍々的に「辺境性」は高まるのだろうか。逆に、地球全体という枠組みをとったときに、アジア全体が辺境だったとも言えるのではないか。その時に、同じことがアジア全体に薄くとも言えるのだろうか。
    この辺りに、「文明の--」を読んだ時にも感じた違和感があり、自分の判断にこの議論を用いるのには、慎重を期したい。

  • 既出情報と前置きがあったが、自分にとっては新しい考えが多くあった。(今回は二度目なのに。。。)


    日本式議論は内容の優位性ではなく、立場の優位性を示すものとの考えには嘆息した。その通りで非常に嘆かわしい。

  • 日本人とは何ものか

  • 「辺境」というキーワードによって、日本人のメンタリティや行動様式が驚くほど明快に説明できる。この本で読書会やったら盛り上がるだろうな。

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著者プロフィール

うちだ・たつる 1950年東京生まれ。武道家(合気道7段)。道場兼能舞台兼私塾「凱風館」館長。神戸女学院大学名誉教授。翻訳家。専門はフランス現代思想史。東京大学文学部卒業。東京都立大学大学院人文科学研究科修士課程修了。ブログ『内田樹の研究室』。



「2019年 『そのうちなんとかなるだろう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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