衆愚の時代 (新潮新書 353)

著者 :
  • 新潮社
2.85
  • (10)
  • (30)
  • (57)
  • (37)
  • (18)
本棚登録 : 405
感想 : 66
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106103537

作品紹介・あらすじ

いつの間にか、この国では偽善的言説が「正論」になってしまった。負担は先送りして「国民のみなさま」にバラマキを約する政治家、セレブ生活を棚に上げて「CO2削減」を訴えるテレビキャスター、「誰もが望んだ仕事につける社会を」と空論を述べる新聞記者…。誰も本当のことを言わないのなら私が言おう、社会人なら心得ておくべき「当然の常識」を。思わず溜飲の下がる、衆愚の時代への鉄槌。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • いつも鼻息荒くなにか
    問題が起これば、

    やれ社会が悪いと宣う
    人たちがいます。

    ご自分も、その社会を
    構成する一員であると
    いうことに、

    気付いてるのかいない
    のか・・・

    いずれにしても大人の
    態度ではないし、

    いい歳して世間知らず
    の若者達と同じ論調の
    社会批判は、

    聞いている此方の方が
    恥ずかしくなります。

    冷静に現実を見据えて
    真因を叩かなければ、

    いずれ足元を掬われる
    のは自分自身。

    衆愚の群れに埋もれて
    その居心地に馴染んで
    しまった私たち。

    そろそろまどろみから
    目を覚ますときにある。

    早晩茹でガエルになる
    前に。

  • 政権交代後、メディアをつうじて「弱者の目線、弱者の立場」という言葉が今まで以上に頻繁に言われている。確かに世の中には子供や障害者、病人、老人、予期せざる出来事で困窮生活を送ることを余儀なくされている方々がおられるし、国としてそうした方々に救いの手を差し伸べる、あるいは再起の機会を設けることがもちろん必要であることに、疑いの余地は無い。「弱者の目線、立場」と言われれば正面きって反対しづらい。しかし、ことさら弱者という言葉を強調してモノを論じ政策を実行するのは問題が多すぎる。それは、衆愚という間違った方向に国を進めているのではないか?というのが著者の基本的な主張。

    「派遣切りは正しい。派遣を求めたのは消費者であり、派遣をなくせば企業は競争力を失い、それは日本経済のさらなる停滞、空洞化を促進し国民に跳ね返ってくる。」
    「世間とのかかわりを拒んで勝手気ままに生きたい無責任なプータローにフリーターという格好いい名前を与え社会的に認知したマスコミは間違っている。」
    「高速道路無料化の公約も、物流の経費削減で経済活性化につながる事業用車両は対象にならず一般車両のみが対象でどうして経済が活性化するのか?」
    「子供手当ても要は「お前らが無事に育つまでに費やした金はくれてやったんじゃない。貸してやったんだ。だから将来ツケはきっちり払えよな」と言っているわけです。」

    著者は、政府の政策やそれに安易に追随するメディア、識者、評論家そして自分の頭で考えずマスコミに判断をゆだねる我々国民の衆愚の流れを指弾する。私にはすべてうなずけることばかりである。

    そして、「次の世代に借金を残すような公約を掲げる政党は、はなから信じるに足りはしない。」と明言する。
    真心もなく無責任な甘言を撒き散らし、歓心を買うために金も無いのにバッグやコートをプレゼントする。そんな男を、まともな女性なら信じはしない。そんな男についていくのは、目先の欲に駆られたあわれな女性だけである。日本人は、そんなさもしくあわれな国民であってはならない。

    与党だけではなく、自民党や他の党も同じ。政治家たちの頭の中は目先の参院選のことだけ。つねに目先の選挙や支持率で頭が一杯であり、長期的基本的な国家ビジョン戦略は無きに等しい。目先の選挙、支持率だけじゃなく、日本の目指すゴールを明確に定め国民に腹を据えて説明し、国民とともにそこに向かって突き進む強い意志を共有する。そんな政府を我々はいつ持てるのだろうか?目先の個人的損得や感情的判断だけで政治を考えない。そんな国民に、我々はいつなれるのだろうか?それにはまず、国民一人一人が衆愚に陥っていないか常にセルフチェックする必要がある。政治家やメディアの言うことを鵜呑みにせず自分の頭で考え判断するしかない。

    昨年「永遠の0(ゼロ)」という史実をベースにした零戦パイロットの小説を読んでから、「客観的冷静に考えたら日本が負けると誰でもわかったはずの太平洋戦争を始めてしまい、数百万の人間が死ななければならなかったのは何故なのか?誰に責任があったのか?」という素朴な疑問から昭和史や戦記を何冊か読んだ。

    私なりに少しわかったのは、個々の状況では特定の個人の考え判断が戦争へと歴史の歯車を回したことはあっても、あの戦争の根本責任は昭和天皇とか東条英機とかの一個人にあったのではなく、軍部を中心とした政治家等国家の中枢部にいた複数の人間(まさに衆)の衆愚、そしてマスコミが国民を衆愚へと導き、戦争への引き金を引いてしまったのではないかということ。開戦に反対だった著名な軍人、政治家も何人かいたが、衆愚の流れに抗することは出来なかった。これが衆愚の恐ろしいところで、日本人は他民族と比べても優秀賢明な民族だと思うが、衆になった時に愚かになる特性は他民族に比べても強いように思う。

    それは企業でもどんな組織でも考えてみればすぐわかることで、個々人は健全賢明な考えを持っていてもいったん何かの流れが出来上がるとおかしいと思ってもまっとうな意見を表明しづらくなり、大勢の流れについつい合わせてしまう。いわゆる場の雰囲気というやつである。そこでまっとうな意見を表明すると、空気が読めないとして存在を排斥される危険性まででてくる。

    政府も国民も、日本はまさに衆愚の時代。
    衆愚は民主主義の宿命とはいえ、我々は、その危うさを自覚する必要がある。

    この政治家、政党は選挙だけではなく本当に国を考えているか?
    このメディアは視聴率や販売部数だけでなく、社会を考えてニュースを流し記事を書いているか?この男はエッチや自分の都合だけでなく、真剣に自分のことを思ってくれているか?(スイマセン!?)
    衆愚の危険性からまず自分を、そして家族と国を守るため、つねに眉に唾つけて目を見開いていることが必要である。



    2010年04月11日 17時15分 [ 閲覧数 26 ]
    2 4 [ 拍手した人 ]
    日記カテゴリ「ニュース・

  • 「マスコミ」を「マスゴミ」だと思っている人が読めば
    特に新しい話ではありません。

    自分が社会に出て歳を重ねたことも影響していると思っていたが、
    いつからだろう。こんなにコメンテーターのコメントが
    不適切になっていったのは。

    弱者とは誰のことか?
    現実逃避して、夢を追い続けて定職につかなかったやつ等が弱者か?
    自由が欲しいと言って派遣社員になってるのが弱者か?

    もちろんひとくくりにはできないが。

    都合のいい情報ばかりが流れるこの社会を確認できる一冊。

  • テレビのコメンテーターや司会者の発言を聞いていると頻繁に頭の中がハテナマークだらけになる。確かに自分の知らないウイルスや海外のニュースの内容なら、へぇなるほどと感じる事もあるが、何でもかんでも騒ぎ立てるだけのコメンテーターを見ていると見るに耐えず、怒りすら覚える。つい先日までは擁護する様なコメントを偉そうに話していたのに、世論が逆方向の批判に転じるや否や、あたかも自分は初めから反対していたの如く、徹底的に真逆のことを主張し始める。つい数日前と逆ですが、一体貴方の本当の考えは何なの?と問いかけたくなる。単なる世論を面白半分に騒ぎ立てるだけならいっそ、いない方が害はない。まぁ、それ位なら我慢すればいいしその番組その局を避ければ良いだけ。怖かったのは災害発生時の緊急避難にも関連する様な内容で、司会者がこんな時はどうすれば良いの?とウェブミーティング越しに専門家に質問した際の回答だ。私でも一瞬「違うよ」と声が出てしまったが、どちらに逃げたら良いかの判断を明らかに間違えさせる回答を即答していた。恐らく見栄えだけで呼んだのかと思う様な、綺麗な方で、恐らくは医師という難しい職業とのギャップを狙った、あたかもバラエティ番組の様なキャスティング、更には司会者の質問に躊躇なく科学的にも真逆の回答。質問された側のプライドもあってか一か八かの即答には驚いた。コマーシャル明けに、番組キャスターが逆だった事を簡単に謝って済ませていたが、もしコマーシャル前で番組を回してしまった人が居たら、もし今後それが真実だと信じたまま、災害現場で逆の行動を取ってしまったら。そこまで考えの及ばないのか、単に無かった事で済ませようとしてるのか、局の品位を激しく疑う。
    そんな事もあってか、私も筆者同様言いたい事は山ほどあるから、えらくすんなり読み終わる。こうしたレビューの機会がなければ、そうした日常のストレスな出来事を敢えて表明する事もないので、そのちょうど良い機会になった(万が一このレビューを読む様な方居たらごめんなさい)。
    まぁ、出るわ出るわ、世の中こんなにも不条理といい加減、取り繕いに溢れている。筆者は政治やメディアや国民意識に対しても、相当の憤りを感じているだろう。いや、そう感じながらも普段は冷静に対処する術を知り自身の中で処理できていると思うが。筆者もせっかくのこの様な執筆機会を得て、世の中に溜まった汚れや澱みについて次々と吐き出してくれる。見ている方は、そうだよな、よくぞ言ってくれました、やっぱり本質的にはそこか、といった相槌を打ちながら読むパターンになる(1番ストレス解消になる)。
    教育にしても、雇用にしても、社会政策にしても、簡単に職を転々とする若者(若者全部が悪いとは言わないが、社会の勉強は明らかに必要だ)にしても、時代・世界が変わったとか、技術が変わったとかではなく、本来人が備えていなければならない、考える、我慢する、義務を果たしてから権利を主張するなど、生きていく中で当然持ち合わせる考え方や力が落ちてきた事を危惧している。同感だ。
    また、今月も辞めていく20代後半の社員がいた。彼は次は決めてないという。何をやりたいか自分探しをするという。自立できていないのか。30歳目前で自分探しも良いが、いい加減見つけたほうが良いだろう。これまで何を目指していたのか、成人して10年過ぎてまだ探すのも良いが、これでも生きていけるのだから、世の中甘い。

  • 「衆愚」とは愚かな民衆という意味で、過去に同じ新潮社から政治学者の矢野暢(とおる)が出版した同タイトルの本は、マスコミやポピュリズムに流される民衆に警鐘を鳴らした一冊。ベストセラー作家である著者があえて同じタイトルの本を出版したのは、やはり今の日本人が世論に流されて愚かな考えに走るのを憂いての理由から。 「派遣切りは当たり前」・「就活で失敗してネットで愚痴るバカ」・「官僚なんてマフィアそのもの」と身もフタもない批判が炸裂する本書は「あとがき」にも書かれているようにバッシング覚悟での出版という事だが、読後の脱力感はひとしお。ご意見はごもっともなのだが、もう少し日本の未来に希望の持てる提言という形にして欲しかった。

  • 面白くない。

  • 1

  • 冒頭から今の日本の政治家、マスコミの批判が炸裂するが、共感する部分はうすかった。著者は作家であることから、文章が読みやすいことはよかった。
    著者の言いたいことで共感できたところは
    ・マスコミの報道する弱者と呼ばれる人たち全員を援助する必要はない(自らなにも行動せず、社会の責任にするものもいる)
    ・勉強する気もないのに大学に行く必要はない(職業訓練を充実させるほうがいい)
    ・先も読めないのにマイホーム購入するのはばかげている
    後半になってくると?という部分もあったが、前半は割りとおもしろかったと思う。

  • 痛快な一冊。必読であろう。テレビなどの安易な論調に流されないために必要。

  • 衆愚という言葉に惹かれて購入。深みがない。親父の愚痴。

全66件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1957年生まれ。米国系企業に勤務中の96年、30万部を超えるベストセラーになった『Cの福音』で衝撃のデビューを飾る。翌年から作家業に専念、日本の地方創生の在り方を描き、政財界に多大な影響を及ぼした『プラチナタウン』をはじめ、経済小説、法廷ミステリーなど、綿密な取材に基づく作品で読者を魅了し続ける。著書に『介護退職』『国士』『和僑』『食王』(以上、祥伝社刊)他多数。

「2023年 『日本ゲートウェイ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

楡周平の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
村上 春樹
古賀 茂明
リチャード・ドー...
村上 春樹
冲方 丁
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×