イランはこれからどうなるのか: 「イスラム大国」の真実 (新潮新書 384)

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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106103841

作品紹介・あらすじ

今、イランから目が離せない。核開発、開票不正疑惑、大統領の過激発言など、中東発のニュースを独占している。その非妥協的な態度ゆえに、国際社会から孤立しつつも、再建途上のイラクやアフガンを尻目に存在感は増すばかり。しかし、その実像はいまだ不透明なベールに包まれている。核開発の本当の理由、アラブへの近親憎悪、米国への秘めた想いなど、特派員としての取材経験をもとに「中東の大国」の本音に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • イランて、結構、複雑な国なのだなと言うのが、この本を読んだ感想です。
    機会があれば、イランの歴史とか中東の歴史とかの解説本を読んでみたい気もしますが、とりあえず、そんな時間なさそう。

    ちなみに、この本も、@hideoharadaさんがツイッターで紹介しているのを見て、読みました。

  • イランについて語られた他の本と対比するのも面白い。

  • イラン駐在の新聞記者が、現地取材・生活体験を通じ、イランの民族性(アラブ人蔑視等の優越意識と大国への劣等感)に着目してまとめたもの。イスラム諸国でありながら、ゾロアスター教に基づくペルシャ文化を受け継いでいるイランの内情を、具体的事象を通じて説明しようとしており、判りやすい。反面、叙述が散漫な面もあるが、許容範囲といえる。ドバイとイランの関係、信教の自由の維持、イスラエルとの関係、他のアラブ系イスラム諸国との関係等、興味深い記述が多い。

  • 2005年から4年間、毎日新聞のテヘラン特派員としてテヘランで過ごされた著者によるイラン分析。「へぇ」と思うところが多々あって、面白かった。アメリカ、イラン、イスラエル、アラブ諸国などの関係は表面的に見えているところだけでは判断できないもののようだ。

    以下、覚書。
    *イランは中東では最もアメリカ的なものが好きな国民。
    表向き反米の旗を振りながら、実際は対米関係の修復を志向している。
    *イラン人は日本人以上に本音と建前のギャップが大きい。
    *女性の服装について。
    西洋化政策を進めたパーレビ王政は1936年、チャドルを後進性の象徴として着用禁止令を出した。
    これに対し、王政への不満が強まる中で、チャドルの着用はパーレビ王政に対する抵抗の象徴となった。
    「西洋では女性が肌を露出させ、その美しさを誇示することが性の商品かにつながった面がある。これこそが女性の隷属化ではないのか」
    *イランでは一般の会社や役所の中間管理職に占める女性の割合は日本より圧倒的に多い。
    *女子はイスラム的な伝統社会の中で家族に大切に守られて育つ。それが解き放たれるのが大学生活。なので男子よりも勉学へのモチベーションが強い。
    *イランには今も約二万人のユダヤ人が居住し、イスラエルを除けば中東最大のユダヤ人コミュニティがある。
    *1948年にイスラエルがパレスチナの地に建国された際、中東で真っ先に国家承認したのが、王政当時の親米国家イランだった。
    *ホメイニ師は「ユダヤ人」と「シオニスト」を区別。
    *イスラム教シーア派を国教とするイランだが、信教の自由は憲法が保障している。
    *イランは反米・反イスラエルを掲げながらも、アメリカやイスラエルから武器供給という軍事支援を受けていた。
    *スンニ派は形式をより重んじる。
    イラン人で日常的に礼拝している者は見ないし、偶像崇拝の禁止についても気にかけていない。
    *シーア派に自爆の発想はない。
    *「嘘は方便」はイランの常識。その例が「タキーヤ」(信仰秘匿)
    *911の時、中東アラブ諸国では多くの人が歓喜したが、イランでは各地で市民がろうそくを灯して犠牲者を悼んだ。

  • [潜在大国の表と裏]その政治体制から宗教、外交政策に至るまで、ありとあらゆる側面で注目を集めるイラン。強硬派とされたアフマディネジャド大統領時代にイランに赴任することになった記者の現地レポートにして、今後のイランの行く末を考えた一冊です。著者は、毎日新聞で記者を務める春日孝之。


    著者は特に「イスラム」と「ナショナリズム」の両面が近年のイランでは溶け合っていく様子に注目しているのですが、イランの複雑さを理解する上でも勉強になる視点なのではないかと思います。多くのイランの有力者のインタビューが掲載されているのも好感が持てますし、赴任が初めてのイラン経験とは思えない程いろいろと考えられているのだなと感心してしまいました。


    日本においては外交面、特に核開発で注目を集めるイランですが、その内政が外交に大きく関わってきていることを感じ取れるのが印象的。個人的にも興味を持っている国なのですが、こういった形の手に取りやすい本が出版されることは大変ありがたい限りです。

    〜イランが本気で「イスラムの大義」を掲げてイスラム共同体の建設を目指すのであれば、「シーア派」の顔も「ナショナリズム」の顔も、大きな妨げになる。にもかかわらず、それらを抑えられないところが、なんともイランらしいのである。〜

    なんと多層的な国家なんでしょうか☆5つ

  • イランと中国は似ている。内外に様々な問題を抱えていて、一朝一夕にはよくならないのだろうな。米国とイランが仲直り出来ますように。

  • イランの現地に行ったことのある人間じゃないとわからない話が多い。
    欧米の論理が通じないイランに対して、アジア的な発想で日本は何かできないんだろうか?

  • イラン世界がよくわかります。
    現地に行って現地の人の声を聞いているのでリアリティがあり、ニュースで取り上げられていることや自分自身がイランに持っていたイメージなどが全然違ったことに驚きました。

    ペルシャ人はアラブ人と「同じムスリム」と同一視して欲しくない。自分たちは「アーリア人、白人だ」という思いが強い。アフガンやバーレーンなど周辺の小国への露骨な大国意識を隠さないし、イラン・イラク戦争の前科もあるので、アラブ諸国はイランへの警戒感は非常に強い。

    シーア派VSスンニ派
    イランVSアメリカ
    イスラムVSユダヤ

    などなど、

  • テヘラン特派員として日本人記者が現地で見てきたイラン像が中心となっている本。著者が実際に驚いたことが書かれているからなのか、「え?そうなの?」「なるほど!」と思う箇所が多い一冊でした。

    ブッシュ前大統領の「悪の枢軸」発言にしても、対タリバンや対アルカイダという利害一致によるアメリカ支援という当時の事実を知った上で考えれば謎めいて聞こえる。イランはイスラム教でもシーア派の国で、スンニ派のアラブ各国とは考え方も全然違う。「中東」「イスラム」というキーワードだけでは判断出来ないことが、この本を読むとわかると思います。

    イラン人は「嘘は方便」が当たり前だったり、隠れてホームパーティを毎週開催していたり、さまざまな個性を知った上で考えると、アフマディネジャド大統領もただの過激派というわけでもないように思えてくる。

    イランとイスラエルの戦争の可能性は排除できないと思うが、メディでの報道以外の視点でもこの問題を見られるようになりそうなので、その点でこの本を興味深く読めて良かった。

  • ヘジャブというのは一種の哲学、心にヘジャブをつけることにより、悪口を言わない、誘惑に負けない、盗みをしない、など、心をいかにコントロールするかも諭している。
    イスラム体制は男社会である。高位のイスラム法学者は男ばかりだし、最高指導部に女性の姿はない。
    イランは口こみ社会。反対派はSNSやYoutubeを活用して世界に発信し、当局から圧力を受けた。
    イラン人はアーリア系で、アラブ人はセム系。イランでは紀元前5000年ごろから文化が栄え、紀元前1500年ごろまでにアーリア人がイランの地に移住し、どうかした。一方アラブ人は永い間女性の略奪と殺し合いに明け暮れる部族で野蛮人だった。イラン人がアラブ人に建築も科学も教え、文明を吹き込んだ。
    イラン人はもともと世界最古の一神教であるゾロアスター今日を信じていた。イラン人がイスラムを吸収したのは、ゾロアスター今日と似ていたいから。しかも根付いたシーア派はいらんかしたイスラム。モスクはゾロアスター今日の神殿跡地に建てるなど要らん文化と融合した。
    誇り高きイラン人はアラブ人に対してやっかみがある。ドバイを激しく嫉妬している。
    イランにアラビア湾はない。ペルシャ湾。
    イランは世界に知られた反イスラエル国家である。イランがイスラエルを敵視したり、非難する場合、必ずシオニスト、シオニスト国家と呼ぶ。一般ユダヤ人とは区別している。
    イランには大イランという考え方がある。トルコからイラク、中央アジア、アフガン、パキスタンに至る、かつてイランが勢力化に置いた地域を今も自国の影響圏とみなす。
    イランは同盟国を持たない自立自尊の孤立主義国家。

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著者プロフィール

1961年生まれ。ジャーナリスト、元毎日新聞編集委員。アフガン、イラン、ミャンマー報道でそれぞれボーン・上田記念国際記者賞候補。著書に『イランはこれからどうなるのか』、『未知なるミャンマー』ほか。

「2020年 『黒魔術がひそむ国 ミャンマー政治の舞台裏』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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