生物学的文明論 (新潮新書 423)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106104237

作品紹介・あらすじ

豊かな海をはぐくむサンゴ礁にも、日夜潮だまりで砂を噛むナマコにも、あらゆる生きものには大切な意味がある。それぞれに独特な形、サイズとエネルギーと時間の相関関係、そして生物学的寿命をはるかに超えて生きる人間がもたらす、生態系への深刻な影響…。技術と便利さを追求する数学・物理学的発想ではなく、生物学的発想で現代社会を見つめ直す画期的論考。

感想・レビュー・書評

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  • 本川先生といえば!その親しみやすい文章以上に印象的なのが自作の歌ですね!!
    今回の曲「ナマコ天国」は、けっこう長め。

  •  生物学からみた文明論。還暦をすぎたら、本書を入門書に生物学を学ぶのがよい。生態学のところで、サンゴと褐虫藻の共生の描写は、とても美しい。生物のサイズと時間の関係は、目からうろこの感動を覚えました。アロメトリ式(べき乗の式)がちょっと面倒でした。心臓の鼓動15億回、生涯に消費されるエネルギーは30億ジュール。これがほとんどの生物において共通しているとは。

  •   実に興味深い本。色々な視点から書いてあるのだが、やはり動物の時間の部分が印象的だ。
      動物の寿命は、ハツカネズミで2-3年、ゾウで70年。ところがどちらも心臓は15億回ほど打つのだという。ゾウはゆっくりと心臓が動き、ハツカネズミの心臓はゾウの18倍速く打つということ。要はハツカネズミの心臓時計はもともと速く、ゾウのは遅い。我々は常に絶対時間を基準に考えて、ネズミは早死だなどと思っているが、もともとネズミの時間は我々の時間とは違って速く、ネズミにして見れば何も早死にしているわけではない。犬や猫しかりということなのだ。
      これが人間となると40歳と少しで心臓の打つのが15億回に達する。かつては人生40年とか50年とかいわれていたのは生物学的には正しいわけで、良くも悪くも医療技術によって人間が動物的寿命を越えて長生きすることになったということ。本来は50歳を越えたら姨捨山行きのところなのに、膨大なエネルギーを消費しながら高齢者は何のために生きるのかという命題を突きつけられたとも云える。団塊世代としては辛いところだが。
      大げさに云えば、キリスト誕生からカウントするニュートン以来の西欧式数学・物理学に依拠した絶対的時間の概念に新たな見方を提示したものとも云えるのではなかろうか。時計が刻む絶対的時間とは本質的に異なる本来の時間の捉え方、個々の人間に適用される時間の概念が哲学の考え方の中にもあるが、底辺では何か共通するものがあるようにも思える。たかが動物の話とはいえ、「生」というものの根源にも関わりそうで、これまた色々と考えさせられると云えそうだ。

  • 『ゾウの時間 ネズミの時間』の人の新書。巻末には自作の「ナマコ天国」という歌が楽譜付きで付いている。。。!

    サンゴ礁を例に共生について
    生物多様性について
    生物は(四捨五入すると)水である
    生物の基本は円柱形
    生物は柔らかく、活発←→人工物は固く、反応しないようにできている

    一番なるほどなーと思ったところ→「続くものをデザインしようとすれば、回せばよいのです。生命は回るデザインを持つことにより、ずっと続くことを可能にしているのですね。」

  • 生物の特性と環境を絡めて語る環境論。

    似たような本で「生物と無生物の間」がある。あちらが生物学とそのロマンという自身の分野に焦点を当てているのに対し、本書はどーしても結論を一般人向けの環境論に落とし込もうとしていて面白味を感じ辛かった。
    新しい分野に飛び込むつもりで読み始めただけに残念だった。

  • 広く浅めな話題でした。読み物な感じ。

  • 生物学の専門家ということで全体に占める研究対象の話は多かったのですが、それが社会とどう結びつき、生物的な考え方を社会にどう活かすのか?
    という点がいくつかのセクタに分かれており考えされられました。

  • 生物学の視点を通して現代社会に生きる人間のあり方を見つめ直す。なかなか良いことを仰っている。
    サスティナブル社会を考えていくのに生物の知恵を知るのは重要。

  • 例え話などをうまく使って、生物の性質をコミカルに説明する一方、時間や命など大きな観念を捉え直そうとする大胆さもあり、面白かった。
    印象的だったのは、時間とエネルギーに関する記述。現代は、石油を燃やしてエネルギーを使い、恒常的な環境(温度も明るさも一定の環境)を作り出して生産性を高めている。しかし実はこの恒環境をひとつの環境問題と捉えるべきではないか(著者はこれを「時間を速める」と表現する)。私たちは、時間を速めることもゆっくりすることもできる。時間を意図的にデザインできる。私たちは時間というベルトコンベアに乗って運ばれているだけの存在ではなく、自らのエネルギーを使ってベルトコンベアを回す主体なのだ、と

  • 2017.09―読了

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著者プロフィール

生物学者、東京工業大学名誉教授。

「2019年 『生きものとは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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