- Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106104268
作品紹介・あらすじ
列島を揺るがせた未曾有の震災と、終わりの見えない原発事故への不安。今、この国が立ち直れるか否かは、国民一人ひとりが、人間としてまっとうな物の考え方を取り戻せるかどうかにかかっている。アメリカに追従し、あてがい扶持の平和に甘えつづけた戦後六十五年余、今こそ「平和の毒」と「仮想と虚妄」から脱する時である-深い人間洞察を湛えた痛烈なる「遺書」。
感想・レビュー・書評
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会社の先輩からお借りした、初めて石原新太郎の本を読んだ。
著者の確たる考え方・正義感がストレートに表現されており、歯に衣着せぬ一部、過激な内容もあり、刺激的で歯切れの良い内容。
各論には賛否両論あろうが、これくらいはっきり物事の良し悪しをいえる人はそうそういないだろうと思った。
著者の思考軸や評価軸がぶれない背景には、それなりのレベルに達するまでの知識や情報収集等の努力の積み重ねがあろうと垣間見れる。
それにしても、内容は過激で刺激的だが、文章がうまいというか表現が奇麗というか、さすが物書き。頭も良いんだろうし、感受性も高いんだろう。レベルの高い人って、難しいことを簡単に表現してくれる。
同著書もものすごく読みやすかった。石原さんという人に興味が出た。時間があったら同著者の小説などにもトライしてみたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
石原慎太郞(1932~2022年)は、一橋大法学部卒、作家・政治家。大学在学中にデビュー作『太陽の季節』で芥川賞を受賞し、「太陽族」が生まれる契機となったほか、弟の石原裕次郎は同作品の映画化によりデビューした。1968年から政界に転じ、参議院議員(1期)、衆議院議員(通算9期)、その間、環境庁長官、運輸大臣、日本維新の会代表、共同代表、次世代の党最高顧問を歴任。また、1999~2012年には東京都知事(当選4回)を務めた。2022年2月1日逝去(89歳)。
本書は、「日本堕落論 このままでは日本は沈む」(「文藝春秋」2010年12月号)と「仮想と虚妄の時代 援助交際と純愛」(同2005年5月号)に大幅加筆・改稿し、2011年7月に出版されたものである。
私は、本書の出版直後に入手し通読していたが、先日石原氏が死去したことから、今般書棚から引っ張り出し、(通読したときに線を引いた箇所を)飛ばし読みしてみた。
まず、石原氏は、2011年3月の東日本大震災直後に「天罰」と発言して批判を浴び、本書の序章でもそれについて触れ、「・・・一部の人々の誤解と顰蹙を買いましたが、その折りの発言は、ことの大きさにたじろぎ国家としてこれをどう受け止めるかを思ってのことでしたが。」、「直接の被害を受けた方々にとっては胸にも刺さる言葉と感じてお詫びしましたが、しかしなおあの言葉が表象するように・・・」と書いているのだが、何と弁解しようと、「天罰」という言葉を使う必然性は全くなく、到底受け入れることはできない。(根本的に反省していないことは、本書の副題に「天罰」という言葉を使っているのを見てもわかる)
本書の内容については、石原氏が語っているのは、第1章で日本及び日本人の真の自立の必要性(そのための、憲法の修正や核兵器の保有)、第2章で人間の真の関わりの重要性(IT技術の進歩等による人間関係の希薄化への危惧)であるが、私は、基本的には国際協調主義、多様性重視のスタンス(いわゆる「リベラル」)ながら、それでも、現実論として国益をどう守るか、また、テクノロジーの進歩(AIや生命工学等)と人間性の維持をいかにして両立させるのかなどには強い関心を持っており、そうした観点からは、同意できる部分もある。
どんな本にしても、(自然科学などを扱ったものでもなければ)著者の主張を自分の中で咀嚼すればよい(する必要がある)のだが、そのようなスタンスで向き合うなら、本書も一読する意味のある一冊と言えるだろう。
(2011年8月了) -
老人の愚痴
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『文芸春秋』2010年12月号の「日本堕落論 このままでは日本は沈む」と同2005年5月号「仮想と虚妄の時代 援助交際と純愛」を、大幅に加筆、改稿してまとめたものだそうだ。2011年7月の発行であるから、改稿時はおそらく震災後数ヶ月の民主党政権。
印象だけで嫌うのはバランスが悪かろうと借りて読んだ一冊。
日米関係における政府のふがいない対応への批判や、性犯罪の氾濫への嘆き節には肯けても、続く意見があまりにも極端すぎて、前の主張もそれらを正当化するためのツールのように見えてしまう。
終戦時の体験から培われた発想や考え方は、彼にとっては必然だったのかもしれないが、私は共感できない。ここに記されている物事への考え方、捉え方を見ると彼の知事時代の過激な発言も、まんざらスタンドプレーを狙っただけのものでもなかったように思える。
いろんなことが自由に言える社会であってほしいと思う。
たとえ、私から見て極論と思えるものであっても、である。
でも、ペンを以て劍を持てと説くような人に政治的な力を持ってほしいとは、私は思わない。彼についてはもう、今更、ではあるけれど、、、やっぱり、ちゃんと理解して選挙に行かないとネ。 -
私が抱いていた違和感が文章に表現されていて、心がすっとした。これからの日本を、世界を良くしていきたいと思った。
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この著作を読んで、益々、石原新太郎という人間が好きになった。3.11の震災を機に「我欲」という言葉で日本人全体に警鐘を鳴らすものの、言葉の意味を理解するにはこの著書なくして語れないと思う。
やはり戦争を境に日本人が日本人でなくなり、アメリカの妾同然の所業に鉄槌を喰らわせたいと思う同輩にとっては、何度でも読み返したいものである。
核保有については肯定的な持論を展開する石原氏、日本人への自我の目覚めを強く訴える石原氏。更に、本当の男女間の(命がけの)恋愛というものを説く石原氏。
この人亡き後の事を思うと、果たして誰がその思想と行動を継ぐ事ができるのだろうか? -
僕らのように「戦争は間違っていた」と教え込まれてきた世代は、戦前にプライドを持っていた石原慎太郎さんのような人間の意見は、本を読まない限りほとんど知ることができない。公共性の高いメディアでさえ、産経を除いて左に傾倒しているからだ。
自身で憲法を作ることをドイツは許されたけど、日本は許されなかった。黄色人種だったからだ。規制緩和の強要にも見られるように、いまだに日本はアメリカに指図されている。安保理。バカにされていることに気づいてすらいないのは、本当に悲しいことだと思う。
自制心とプライドを持とう。民家に絨毯爆撃してきた米軍機と戦った日本兵を、石原さんは目の当たりにした。 -
前半部分は日本の問題の根本に言及されていて、歴史認識を要因とする堕落という点が深く胸に刻まれた。長老様はやっぱはんぱねえ。
ただ、後半はじいさまの時代の羨望と今の時代への愚痴にしか読めなかった。
グローバルやITの時代への変化をただの否定としてしか見ないのではあまり役に立たない。
大事なのは自己認識に加えて、変化にどう対応していくかだと思う。そのへんはお前らが考えろってことか。
賛否両方ある本だけど読んで良かった。 -