原発賠償の行方 (新潮新書 443)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106104435

作品紹介・あらすじ

法律も枠組みも決まったから賠償は粛々と進行する…なんて思ったら大間違い。福島第一原発事故の賠償は、建国以来最大の法律問題であり、そう簡単に事は進まない。今後、全国民にツケが回されること必至。外国からの賠償請求額は想像もつかない。なぜこんなことになったのか。法律無視の政府と安全神話を盲信した専門家の責任を厳しく糾し、採るべき道を探る。法律家の目で論点を冷静に整理、検討した独自の論考。

感想・レビュー・書評

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  • 「事故の対応をしっかりと考えることは原発が安全ではないと認めることと同じ」
    この考えが安全神話につながっていたのだと思う。

    仕事上であなたは原子力村の住人になっていないか。専門用語で論破しようとしてはならない。

  • ふむ

  • 読みやすくわかり易いのは良いのだが、責任問題について関係者に優し過ぎるスタンスに思えた。それ故に内容に迫力が感じられず読後に満足感が残らない。
    やはり法律論といえども正義感や使命感をもっと強く打ち出して欲しいものだと思えた。

    2017年2月読了。

  • 原発の賛否に問わず、法律的な議論のなされていない福島第一原発事故を検証する

    放射能の危機への対策がとられたあと、損害賠償が問題になるだろう。
    原発事故による損害賠償の取り決めが事故以前になされてなかったのは、安全神話によるものだ。

    損害の種類
    強制的避難生活
    健康被害
    不動産価格下落
    職業喪失、学業へ就けない
    農産物等への風評被害
    精神的苦痛
    などきりがない。

    復興予算は賠償の対象にならない

    喫緊の問題である被災者支援とは別問題の賠償の枠組みを、短期間で作り上げた政府
    しかも東京電力の存続、債権者の負担はなし、電気料金の値上げによる賠償の原資とする


    以上まで引用。
    原発事故の損害賠償は原賠法に基づき免責事項を適用する。
    東京電力の資産を売却後、可能な限り賠償を行う。
    東京電力の資産(設備等)を買い取った新事業者が電力安定供給の義務を果たす。
    個別の賠償額については紛争審査会の指針に基づき、双方の納得がいかない場合に裁判で決定する。

    ここまで本書を読んだ私の考え。

    数ある賠償訴訟に比べても、放射線による被害を証明するのが困難で、かつ個別の事案(原発による恩恵を受けてきた)などを加味すると、裁判の長期化は避けられない。

    安全神話に基づき原発事故にかかる国際条約に加盟しなかった日本政府、利益追求のために安全対策を怠った東京電力の責任は大きく
    その賠償金を各電力会社による支援(無責任者に負担させる料金値上げ)から捻出しようとする政府の指針は
    三権分立に背く法をないがしろにした決定であり
    法治国家として許すまじ、という新たな視点を提供してくれるものであった。

  • 原発賠償は、建国以来最大の法律問題だが、政府は法律上根拠のない権力を行使している

    政府は、法律的にみると根拠のない見料行使を行っている
    理系から文系になった人だから、理系的な発想だと思います

  • 東京電力を潰してはいけないのか?政府の「超法規的措置」は許されるのか?

  • 原発の賠償について。
    賠償すべきという前提の下に話が進んでいるが、法律的な検証はおそらくこの本ぐらいでしかしていないのでは?
    マスコミや政府に流されていく自分が気になる。

  • 展示期間終了後の配架場所は、1階文庫本コーナー 請求記号:369.36//I57

  • 法律か人情か・・・。
    著者の主張からは外れるかもしれないが、いっそ日本では人情優先で良いような気もする・・・。

    この書のような冷静な突っ込みは是非とも必要だとは思うが一個人としてはやはり難しい・・・。

    ただ、海外からの賠償請求については、
    「日本で事故は起きない」と言う建前のために国際条約に未加盟とは・・・
    それを思えばしっかりとした法律問題として避けては通れない道なのだろうか。

  •  これも職場の本屋の平積みから購入。

     原発以外の復興で頭がいっぱいになっていて、新聞情報以外にあまり原発賠償の話は理解できていなかった。

     なんとなく、東電がきちんと被災者に賠償するんだろうなと思っていた。

     しかし、この本を読んで、様々な論点が残ったまま、賠償が進んでいることを知った。

    ①東電は、仮処分への意見書のなかで、原子力賠償法の第3条の「異常に巨大な天変異変」にあたるため免責の余地があるという主張をしている。(p70)

    ②当時の菅内閣でも、枝野官房長官は免責できない、与謝野大臣は免責だといって大議論になっていて、枝野さんが押しきった形になっている。(p68)

    ③それなのに東京電力がおとなしくしているのは、今の賠償スキームが東電及びその債権者、株主を守った上で、賠償額が積み上がった部分は全国の電力利用者の料金転嫁することを認めているため。(p117)

     東京電力に責任があるかどうかについて、司法的な議論をしっかりした上で、仮に責任があるのであれば、東電を一度破産させて、銀行等の債権者や株主に負担をさせ、電力会社は一旦国営化するなどして、安定供給をはかる。

     そして、その上で、東電が払えない賠償額については、国会の議論をへて法律に基づき、税金で国民が広く負担する、というのが透明な手法のような気がする。

     東京電力の電気をつかっているからといって、料金やその発電もとを選べない電力利用者、さらには、関西電力などの電気利用者の料金で賠償を負担するというのは、国家財政を通らないという意味で、ごまかしがきくが、新たな負担を求める手法としては、非民主的といえないか。

     まさに、広く税金で負担するという筋に戻してこそ、著者が主張している原発交付金をうけ原発を誘致したこととの過失相殺の議論、賠償の範囲の合理的な確定などの議論が、冷静にできると思う。

     その他、海外の裁判所で、損害賠償請求がおこされる可能性なども指摘されていて、ぞっとする。

     しかし、国民全員が受け止める課題として、真正面から議論することは大事だし、それに気付かされたという意味でこの本は有意義。

     

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著者プロフィール

同朋大学大学院人間福祉研究科・社会福祉学部准教授。臨床心理士。
名古屋大学大学院文学研究科博士前期課程(心理学専攻)修了(文学修士、1982)。愛知県児童相談所に勤務(1983〜1999)。1999年より同朋大学社会福祉学部専任教員。家族援助論、児童福祉臨床研究などを担当。児童家庭相談、特に児童虐待防止ケースマネジメントを研究。
主な著書等:『児童虐待へのブリーフセラピー』(共著 金剛出版 2003)、『新生児医療現場の生命倫理』(共著 メディカ出版 2004)、「サインズ・オブ・セイフティ・アプローチ入門」(共著 そだちと臨床vol.2 明石書店 2007)。訳書として、『安全のサインを求めて』(ターネル、エドワーズ著 共監訳 金剛出版 2004)、『児童虐待を認めない親への対応』(ターネル、エセックス著 共監訳 明石書店 2008)

「2008年 『子ども虐待防止のための家族支援ガイド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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