「お手本の国」のウソ (新潮新書)

  • 新潮社
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レビュー : 27
  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106104480

作品紹介・あらすじ

「フィンランドは世界一の教育大国」「フランスは少子化問題を乗り越えた」「ドイツは戦争責任にカタをつけた」…日本人が理想視する「お手本の国」には、知られざる別の顔があった。もてはやされる制度や手法がその副作用ゆえに「嫌われモノ」というのは序の口、実は存在していないなんてことも!各国に長年暮らす日本人七人が打ち明ける、"隣の芝生"の本当の色とは。

感想・レビュー・書評

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  • 記述は浅いが、少子化対策のフランス、フィンランドの教育、英国の二大政党制、アメリカの陪審員制度などへの冷静な視点は、さすがに知っっていた方がよい。特にマスコミ人士はこれくらいの現状は把握すべきである。

  • 昨年(2011)辺りの欧州危機によってかなり化けの皮が剥がれてきたようですが、かつて欧州の政治・経済政策等の水準は高く、お手本にすべきものが多いと私は認識していました。この本では、日本がこの数年に取り入れてきたような政策(アメリカの陪審制に似た裁判員制度等)について、本当に真似して良いのだろうかという観点から書かれています。

    この本の著者である田口女史は、各国について調査をしたうえで各国の目玉とも言える政策などについて解説を加えており、興味深く読むことができました。

    以下は気になったポイントです。

    ・フランスの中絶件数は実に多い、日本の中絶件数(22.69万件@2009)であり、フランスと同じ、フランスの人口が日本の半分であることを考えると多い(p14)

    ・フランスの離婚には必ず裁判所を通す必要がある、PACSが人気なのは「一方の意志だけで解消できる」から(p21)

    ・北欧諸国のほとんどすべての言語がインド=ヨーロッパ語族であるのに対して、ウラル語族に属するフィンランド語は、欧州の日本語と呼ばれていたこともあるほど構造が珍しい(p43)

    ・フィンランドでは、教職はクリエイティブな職種であり、教育学部は狭き門の人気学部、修士号が必須とされている(p52)

    ・マインドマップは視覚的記憶力が強い人には良いが、普通の人にはそれほど効果は無い、箇条書きが良い場合もある(p55)

    ・フィンランドでは人口が少ない(第二次世界大戦後は400万人)上に、ソ連の脅威と戦うためにドイツと組んで敗戦国となり賠償金を払うためにも、男女別なく働ける社会構造が必要となった(p61)

    ・フィンランドの家計貯蓄率はマイナス2.3%(2011)、消費税に相当する税金は23%だが、手厚い社会保障がある(p64)

    ・手当の受給を要請する段階で、家計収支のすべてを役所に提示する義務がありごまかしがきかない(p71)

    ・イギリスでは、19世紀後半の議会政治の勃興から第一次世界大戦後しばらくまでは、労働党ではなく自由党が保守党と二分していた、その後、大連立がおきて、その裏で力をつけたのが労働党(p83)

    ・先の総選挙で23%の得票率を誇った自由党は、議席獲得率は9%、そこで代表投票制への転換を打ち出した(p94)

    ・アメリカでは、裁判を受ける者は、原則として、陪審裁判と法定裁判を選ぶことができる(p109)

    ・法定で裁判をするのは稀、刑事案件では罪状認否、民事案件では示談があるのd(p110)

    ・アメリカでは、新規案件(刑事:836万、民事:173万件)のうち、終結したのが(刑事:21.9、民事:151.3万)、裁判に至らなかったのは、刑事:21.2、民事:110万件である(p111)

    ・刑事事件は、弁護側が陪審裁判を辞退したくても、検事が同意しない限り法定裁判にはできない、陪審裁判ができないのは、離婚などの家庭裁判所が扱うもの、未成年者の刑事案件、5000ドル以下の簡易裁判所、交通違反のチケット意義申し多々などに限定(p113)

    ・陪審員を務める義務はあるが、それは市民権をもつもの、さらには裁判所の管轄地域に住む18歳以上、英語を話し、理解できるもの、重罪の前科がないなどの条件がある(p116)

    ・陪審員の日当は15ドルとガソリン代、日本の栽培員は、1万円程度(p127)

    ・裁判では、誰場一番いい話を伝えられるかが、正しいことを言うことよりも重要、これを実現するのが、CG映像(p134)

    ・ニュージーランドがオーストラリアから分離したのは、8500万年前ほどで、日本とは異なり哺乳類が十分に進化していない時期であり、独自の生態系を持つ(p150)

    ・何百年とかけて育つ冷温帯の木からなるニュージーランドの森の40%は、マオリ人が定着した1300年から数百年で焼失した(p153)

    ・ナチスが第三帝国と言われるのは、神聖ローマ帝国(962-1806)、プロイセン王国によるドイツ帝国(1871-1918)、に続くものであるため(p180)

    ・ナチスは女性に自己犠牲の精神を求め、決断権は全て男性にあるとした、結婚を機に女性が仕事をやめると、1000帝国マルク分の商品券を夫に貸付けて、子供1人に対して250マルクを帳消しにした(p182)

    ・日本とドイツの戦争時における侵略の相違点は、ドイツは国家が法律を定めて指令したかどうかにある(p186)

    ・ドイツは2011年に、時代にそぐわないとして、18歳以上に課せられていた徴兵制度は撤廃された(p203)

    2012年11月25日作成

  • ドイツでは、フランスでは、フィンランドでは…というお手本をよく見聞きする。現地に暮らす日本人が、本当はそうでもないぜ、と説明する本。

    漠然と憧れるフィンランドの教育ですが、フィランドメソッドなどはなくて、先生はクリエイティブな職なのだと。

    なにか、ここに要諦がある気が。お手本もなければウソもないかもしれない。それらの捉え方は、柔軟でなくてはいけないのだ、と。

    雑学的に楽しく読みましたが、生き馬の目を抜く(いや、そこまでしまい。落ちているものを拾って食べる、ぐらい)新書業界では「お手本の国のウソのウソ」という本を虎視眈々と狙っている人がいたり、しないかなあ。

  • 世界一の教育国フィンランドにはフィンランドメソッドは無かった!
    という項が秀逸。

  •  マスメディアで問題にされるたびに「お手本」とされる外国。本書ではその対象である「お手本の国」7カ国の実情を現地に住む日本人がレポートしたもの。

     それにしても新潮新書は書名での煽りが上手いです。『バカの壁』『人は見た目が9割』など、内容よりもインパクトだとばかりに刺激的でキャッチーなタイトルをつけてきます。
     本書についてもこの傾向は顕著で、マスメディアで伝えられる「お手本」の実情はウソでした、というような単純なものではありません。

     少子化対策に成功したというフランス(第1章)、フィンランド式教育メソッドが上手く行ったフィンランド(第2章)というのは、真っ赤な嘘というわけではありません。少子化対策、教育対策ということを目立って行ったわけではなく、別の目的でなされた施策が上手く行っているという、全肯定派・全否定派どちらにも「ぐぬぬ…」となるのが実情のようです。施策を細かく見ていくと、フランス・フィンランドはそれぞれ自国の国民性を考慮に入れた施策をしており、安易にフランスやフィンランドの方式を模倣するのが一番失敗するパターンであることは確実です。

     二大政党制の範の一つとされるイギリスの議会についても、近年は第三党が出てきて混迷の様相を呈しているようです。
     が、2012年8月現在の日本の政局と比較すると、二大政党制の下、与党の失政を見て「次は自分が与党だ」とほくそ笑む野党も票が伸びず、第三局が台頭、連立政権を組むも第三局は与党になった途端にマニフェストの政策を転換して支持率を下げた2010年5月以降のイギリスの政局は、これからの日本の未来予想図を見ているような気がしてきます。

     アメリカ・カリフォルニア州の裁判所書記官をしている伊万里氏のレポートは、実務をつぶさに見てきた著者ならではのリアルな内容です。昔、英米法の授業で「アメリカ人は陪審裁判に対してファナティックな信頼を置いていると言われている。アメリカの裁判官自身も裁かれるなら絶対陪審裁判の方が良いと言っている」と習いましたが、書記官から見るとまた一つ違う感想を持つようです。

     ニュージーランドの自然保護の実情については、それ以前にニュージーランドで起きた惨状の方に目を覆いたくなります。
     残酷とはいえ、外来種を徹底的に駆除しなければ、そこでしか生きられない原生生物が絶滅してしまう。その覚悟を人間の「責任」と表現してあり、業深い責任の取り方だよな…(もちろん彼らはそこまで覚悟してやってるんだろうけど)、と思いました。

     ドイツの戦争責任については、西尾幹二『日本はナチスと同罪か ―異なる悲劇 日本とドイツ―』の内容と重複していました。が、気になるのは戦後、ドイツはユダヤやイスラエルに対しては甘くならざるを得ない半面、イスラムには厳しいということ。移民問題を抱えているなど個別の事情はあるのでしょうが、それにしても…です。
     あと、日本と違ってドイツはナチスに全ての罪があるとしたため、ナチスに関与していた人が身内にいると、全てを許して過去の歴史に目をふさぐか、親子で絶縁してしまうかという極端な二者択一状態が生じている、というのも気になりました。娘が「父親が以前ナチス党員だったから、その悪い遺伝子を残すわけには行かない!」と子供を産みたくないというのは、それ、ナチスの優生思想そのものじゃないのか? と読んでいて頭を抱えました。
     ドイツは戦後補償をキッチリ果たしたから日本と違って戦前の罪を引きずっていない、という見方は、ドイツの実情を知らないだけでなく、こういう問題を抱えていることを認識の外に出してしまうだけに危険だと思いました。

     最後は、「ヤバそうと思ってるけど、実はお手本に"すべき"国」であるギリシャです。観光立国としてはイタリアが有名ですが、ギリシャもなかなかの観光立国です。
     あれだけ財政がムチャクチャでもリピーターが訪れるギリシャの観光政策にこそ、日本が見習うべき点があるはずです!(笑) いや、歴史という観光資源では日本だって負けてない上に、世界に日本だけのオリジナリティ爆発なんですから、これをもっと利用することは真剣に考えるべきでしょう。
     ですが、日本の鉄道は複雑で難しい、という指摘には納得しつつも笑ってしまいました。東京の鉄道網なんて世界有数の複雑さだと思いますが、それをちゃんと使いこなせている日本人の優秀さ(?)故に、気づかなかったんだろうなぁ、と鉄道ほどではないにせよ読んでて複雑な顔つきになってしまいました。

     「だぁーから日本はダメなんだよぉー! イギリスではぁー」としたり顔で言うテレビのコメンテーターの言をそのまま信じてしまいがちな人にも、聞くだけで眉をひそめてしまう人にもオススメの一冊です。

  • フランス・フィンランドの項が興味深かった。
    フィンランドの教育制度についても「大なり小なりの見直しは10年ペースで続けられており~右から左、左から右に方針が変わることを、あまりネガティブにとらえていない。まずいところを認め、原因を分析・追求して直せば良い」
    フィンランド人全てがこのような考えとも思わないけど、この柔軟性こそ見習うべきなのだろう。

  • 新書文庫

  • 世界一の教育であるフィンランドメソッドも、市民感覚で公正に裁かれているはずの陪審制も、現地に長年住む日本人から見れば、かなり違っているようだ。
    海外の人が思う日本と実際がかけ離れている場合があるのを思い出せば、ごく自然なことなのだが、ついつい「隣の芝生」は青く見えてしまう。

  • フィンランドメソッド カカポ 順化協会 

  • 「自然保護大国の破壊と絶滅の過去-NZ」って章が気になって読んでみた。
    マオリとヨーロッパ民族の流入でうんうんと。
    「人間が破壊と危機に追い込んだ鳥類の王国を取り戻す---「保護か、殺戮かわからない」その手法とロジックとは」って一文はいいねぇ。
    キリスト教的には自然の調和を守るのは神から嘱託された人間の役割って価値観なのね。それ参考になった。

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