反・幸福論 (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 401
レビュー : 54
  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106104503

作品紹介・あらすじ

無縁社会の何が悪いのか。遁世も悪くない。「ポジティブ」がそんなに善いのか。格差是正なんて欺瞞だ-。権利や豊かさや便利さを追求し「幸せになるべき」と刻苦勉励してきたはずの日本人が今、不幸の底に堕ちている。大震災、政権交代、「正義論」ブームなど近年の出来事を稀代の思想家が厳しく見つめた時、偽善の殻に包まれたこの国の正体が露わになる。柔らかい筆致の中に、日本人の禍福の真理が詰まった至高の啓蒙書。

感想・レビュー・書評

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  • 佐伯啓思、三冊目。

    段々、この人の文章に慣れてきた気がする。
    幸福とは、どんな状態を指すのか。また、それは追い求めるべきものなのか。
    この課題を捉える上で切り離せないのが、「死」という最期で、だからこそ生きている間をより良く在ろうとする人の切実な思いはよく分かる気がする。

    ともすれば、無縁社会を不幸な末路だと思いがちだけれど、古来日本人は進んで自らを縁から切り離そうとしてきたじゃないか、と触れる。

    無常の中で、生きることを見つめていくとき、そこには楽しさや嬉しさよりも先に、哀しさや畏れがあるのではないかと彼は述べる。

    今現在の私は、歴史上最も良い状況にあるわけではない。
    失われてしまったもの、見えなくなってしまったものは確実にあるし、それもまた流れなのだと思う。

    どう生きるか、難しい問いの一つの見方を与えてくれる一冊であった。

  • 哲学
    思索

  • 新潮45への連載したエッセイという事で一つ一つのテーマは気を引く仕立てになっているが、中々頭に残らない。幸せとは何か、という事については、この本を読むよりは自らの価値観を改めて見つめ直す方がよっぽど有意義かもしれないし、その自分自身の価値観のフィルターがあるから、すんなり頭に入らないのかも。

    幸福とはなんだろうか。感覚で実感する幸福感などは、所詮、言葉で定義すべきことではないのかも知れない。

  • 今更ながら再読に挑戦します。
    オレよく分っていなかった・・と思う。

  • 全て然りと思う論理性。民主党政権時代の虚無感、東日本大震災直後によくここまで予測できた。メディア関係者も必読書。

  • 人間は自由や幸福になるべきなのか、批判的な目線で改めてこの問いをかんがえてみるのもよいかも。

  • 本書、前半では、「無縁社会」現象を、戦後日本が目指した「近代化=個人の自由の拡大」の当然の帰結と指摘する等、現代社会の鬱積感というか喪失感の根本(ニヒリズム)を論じている。また、後半では、震災を機に、現代人がすっかり忘れてしまった「日本の霊性」(何か絶対的なものにすがるほかないという感覚)について指摘し(第七章)、民主党政権を「既得権益」や「守旧勢力」などの「権力を批判することによって自らが権力をもつ」屈折した権力欲の集団とバッサリ切り捨てている(第九章)。いずれも成る程と思える鋭い指摘だが、特に、民主政治の問題の本質が、責任を取らない国民のルサンティマンに政治が大きく振り回されることにあると指摘している点には説得力がある。なるほどその通りだと思う。

  • 本書は、『新潮45』で2010年12月~2011年08月に掲載された連載を加筆し書籍化したもの。著者は有名な保守派思想家の佐伯啓思。 

    【感想】 
     数年前に『自由とは何か』(講談社現代新書)を読んで以来著者の本を遡っていくつかフォローしていた。その経験から言うと、本書は比較的出来が悪い。

     章ごとのテーマは最下部にある目次の通り。
     一番の問題としては、価値観や文化を語るにもかかわらず文字数が全然足りていない点がある。十分な理屈を展開できずに、昨今の風潮を否定している部分と著者の主張とだけがほとんど一緒になっているようなカタチ。これでは説得性が低い。
     また、連載エッセイが元のせいか、派手な概念や引用句がポンポン出てくるのに、読んでいてもそれぞれを必要とした話には思ずに少しとまどった。
     全体の印象としては、「今の日本人が忘れてしまった価値について考えてみたい」(本書008頁)という意気込みが思いっきり空ぶっている感じ。著者は、単なる懐古趣味のエッセイストでは決してないのに……。
     エッセイとしては外れの部類だと思う。


    【目次】
    はじめに 003
    第1章 サンデル教授「白熱教室」の中の幸せ 013
    第2章 「国の義を守る」という幸福の条件 037
    第3章 「無縁社会」で何が悪い 061
    第4章 「遁世」という幸せ 085
    第5章 人間蛆虫の幸福論 111
    第6章 人が「天災」といわずに「天罰」というとき 139
    第7章 畏れとおののきと祈りと 167
    第8章 溶解する技術文明 195
    第9章 民主党、この「逆立ちした権力欲」 223
    あとがき 251

  • 現代では幸せはいまここにあらず・畏れの敗北・幸福と不幸は表裏一体・ 死こそ情態,生こそ無常・遁世の境地にこそ縁の再確認あり・己の幸福の追求は不幸の追求に等しい・蛆虫なりの覚悟の必要・西欧科学主義はキリスト教に支えられた信仰・技術の管理不可欠さこそ人間の無能の証明・権力批判は権力欲に等しい・無自覚な正当化ルサンチマンこそが畜群

  • 年度替りの忙しい時期に、次から次から問題が浮上。まあ、この1年、私は決して幸せではなかった、と思う。こと、職場においては。しかし、幸福と言い、幸せと言い、いったいそれは何を意味するのか。長生きするのが幸せなのか。お金持ちが幸せなのか。人それぞれ、感じ方、考え方は違うはず。少しでも長く生きるためにからだにチューブをつなぐ。お金を得るために、休む間もなくはたらく。または、お金がたっぷりあって、はたらく必要もない。だれの役にも立っていない。ひとはいつも幸福でなければならないのか。不幸な時代の方が、未来への希望が持てたのではないのか。本書は雑誌に連載されたものを1冊にまとめられています。死生観、哲学、宗教や政治の話まで、途中からは幸福の話だかなんだかわからなくなりますが、一つ一つ考えさせられることは多いです。連載中に東日本大震災がありました。被災者の皆様にも、いつの日かおだやかな、幸せな日がもどることを願っています。

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著者プロフィール

1949(昭和24)年奈良県生まれ。東京大学経済学部卒。東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得。滋賀大学、京都大学大学院教授などを歴任する。2007年正論大賞受賞。著書に『隠された思考』(サントリー学芸賞)、『「アメリカニズム」の終焉』(東畑記念賞)、『現代日本のリベラリズム』(読売論壇賞)、『倫理としてのナショナリズム』『日本の愛国心』『大転換』『反・幸福論』『西田幾多郎』など多数。

「2018年 『「保守」のゆくえ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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