経営センスの論理 (新潮新書)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106105159

作品紹介・あらすじ

会社をよくしたければ、スキルよりもセンスを磨け! 「よい会社」には根幹の戦略に骨太な論理=ストーリーがあり、そこにこそ「経営センス」が現れる――。気鋭の経営学者が縦横に語り尽くした「経営の骨法」。

感想・レビュー・書評

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  •  楠木氏の著作は「ストーリーとしての競争戦略」がビジネス書のベストセラーになった頃から読んでいるが「ハズレ」と感じたことはない。
     本書は2013年初版だが、2022年現在でも違和感なく読めた。これは「本質」に肉薄したことが書かれているからだろう。古い本を読むと著者の主張の真贋(予想の当たり外れ)が分かって面白い。

  • 著者の言いたいことを書いた読みやすい本。
    新規事業の人、管理職(マネージャー)、日頃仕事に鬱憤がある人に読んでもらいたい。


    ・印象的なこと

    1、p.14
    優れた戦略をつくるために必要なのは「センス」。スキルとセンスをごっちゃにすると、スキルが優先し、センスが劣後する。

    2、p.22
    客観的なものだけで判断していくと、同じような結論に至る。それだけでは他社との差別化を可能とする面白みのある戦略にならない。好き嫌いにこだわることが重要である。

    3、p.28〜
    ハンズオンを目的に、「何をやらないか」をはっきりさせる。垂直的・水平的分業による形式的な線引きではあり得ない。

    4、p43〜
    その業界に根付いている「認知された非合理」を乗り越える。ここにイノベーションと進歩の分かれ目がある。
    イノベーションは技術進歩とは異なる。「次から次へとイノベーションを生み出そう!」という掛け声はイノベーションの本質を誤解している。イノベーションは、「非連続性」だからだ。
    イノベーションは供給より需要に関わる現象である。どんなにスゴイものでも、顧客の心と体が動かないとイノベーションにならない。

    「できる」だけではイノベーションにならない。顧客がその気になって必ず「する」。その絵が描けてはじめてイノベーションの芽となる。
    アップルは、この「する」を突き詰めている。

    5、p.66
    「いまはまだないけれども、将来は可能性のあるニーズだから…」という発想では、イノベーションは難しい。人間の本質部分では連続的なもの。今そこにないニーズは、将来にわたってもないままで終わる。未来を予測、予知する能力はいらない。今そこにあるニーズと正面から向き合い、その本質を深く考える

    6、p.148
    企業は逆境を正面から受け止め、人のせいにしないことだ。問題は常に山積みしているものと割り切る。

    7、p.152
    戦略は個別企業の問題であり、個別企業の中にしか存在しない。

    8、p.173〜
    限られた資源を有効活用する戦略が大切になる。逆に言えば、資源制約がなければ戦略は必要はない。これが戦略論の前提として大切なこと。

    9、p.178〜
    「カネ、名誉、権力、女・男」のどれが一番かは愚問。相互に繋がっているから。

    10、p.182
    商売の本筋は「長期利益」。適正に長期に、しっかり儲けること。

    11、p.201
    いつの時代も前世代の価値基準は世の中の実際と少しズレている。ズレた基準に引きづられると新陳代謝が進まない。

    12、p.204〜
    「働きがいのある会社」と「戦略が優れた会社」は高い確率で重なっている。
    「人間はイメージできないことは絶対に実行できない」。だから、未来への意思を会社で働く人たちにイメージさせる。頭に入らなければ、会社は動かない。数字より「筋」。

    13、p.211〜
    「具体」と「抽象」の往復。具体だけだと、目線が低くなり、視野が狭くなり、すぐに行き詰まってしまう。
    抽象化・論理化して本質を掴み、そこから具体のレベルに降りていく。
    どんな仕事も最後は具体的な行動や成果での勝負である。ただし、具体のレベルで右往左往してあるだけでは具体的なアクションは出てこない。抽象化させることで、取るべきアクションが見えてくる。

    14、p.221〜
    情報インプットの目的は、「インプット自体のため」と「アウトプットを生むため」。前者を「趣味」、後者を「仕事」という。
    人の役に立つ成果が生み出されなければ、仕事と言えない。インプットしているだけで、アウトプットな出なければ趣味の領域である。
    情報のインプットを増やしていけば、自然とアウトプットが豊かになるということは絶対にない。
    情報は仕事の友ではなく、わりと悪質な敵である。

    15、p.227〜
    人間が何か継続的に取り組むためには、「意味がある」と「面白い」のどちらか/両方を満たすこと。
    その行動に目的達成の意味があると思えるときに、人は努力を投入する。
    そのこと自体にその人にとっての価値があると面白くなる。
    「面白い」から始めることか大切。「意味がある」と思って始めても、知識のインプットそれ自体は面白くないことがほとんどなのでそのうち挫折してしまう。

    16、p.231〜
    人間の仕事における満足度は、ある特定の要因が満たされると満足度が上がり、不足すると満足度が下がるということではない。
    満足度は一本の物差しの両極ではない。それぞれが独立の次元である。
    満足の反対は、不満足ではなく、満足がない状態。
    不満足の反対は、不満足がない状態。

  • 『ストーリーとしての競争戦略』(参考:http://d.hatena.ne.jp/muranaga/20100810/p1)の著者、楠木先生の面白い講演を新書にまとめた印象の本である。一見「経営漫談」みたいだが、先生の洞察力・論理・センスが感じられる。

    たとえばイノベーションについては:
    ・イノベーションの成功について「(技術的に)できる」ことと、「(大多数
    の顧客がかならず)する」ことの違い、を理解しているのがアップルであり、アマゾン。
    ・ユーザインタフェースなど、非連続性を追求しているように見えるアップルだが、顧客がかならず「する」ことに対しては、非常に保守的であり、連続的である。
    ・イノベーションのために取り組むべきは今そこにあるニーズ。

    経営者、戦略、グローバル化、日本、よい会社、思考、といったテーマがとりあげられている。

  • 読了。戦略は「こうなるだろう」という先読みの仕事ではない。「こうしよう」という未来に向かった意志表明だ。経営には「こうしよう」しかないはずだ。聞きたいのは「こうしよう」という商売の意思表明だ。全てのビジネスマンの必読書だと思う。是非おすすめします!!

  • スキルではなくセンスが必要
    アナリシスは分けること
    優れた経営は要素だけではだめで、ストーリーが必要という著者の主張と整合する
    余談も多いが堅苦しくなく読みやすい

  • ・好き嫌いの感覚を大切に
    ・面白がる力が突き抜けさせる
    ・そして背後にある論理の力を面白がれるようにする

  • 2024年2月21日読了。「逆タイムマシーン経営論」など最近よく見かける経営学者の本を見かけて読んでみた。急に「DHC問題(デブハゲチビ問題)」の話が出てくるなど妙にとっ散らかった印象を受ける本だが、ダイヤモンド誌連載の内容を再構成したものね納得。本全体でうねるような論理展開、みたいなものはないが、経営にはストーリーが必要・ストーリーを語るにはセンスが必要、であったり、CEOへの高額な報酬は企業価値向上に連動しない・むしろ短期の業績を求めるあまり価値を毀損する事例が多く、欧米の数分の一の給与の日本のCEOの経営の方に可能性がある、など、世の中に流布する「常識」がいかにあてにならないか、を考えさせられる本だった。学生の人気就職先ランキングは「食べたことのないラーメン屋ランキング」と同じではないか、という指摘は興味深い。

  • ストーリーや逆タイムマシンとは違い、気になった論理を徒然と書いている本。
    経営や戦略にはスキルでなく、センスが大事。
    スキルは「分析、物差し有、身につく手法有、良し悪し、担当者」
    センスは「綜合、千差万別、自分で育つのみ、好き嫌い、経営者」
    センスを磨くには、好き嫌いを意識し、こだわる。
    経営や戦略は、「せざるを得ないではなく、こうしたい」
    Amazon「購買意思決定のインフラ」「これまでにはない売り場」「最高の顧客接点」
    日本は専業の国、柔道剣道、「何してきてどう進むか」⇆米国ポートフォリオ「見切りつける」
    抽象化と具体化の往復「地頭いい」
    「効率化社会」Wiki収束させる⇆ニコ動収束させない
    心理学者パーズバーグ「二要因論」○仕事×待遇
    面白がる力=論理の面白さ→知的能力ど真ん中

  • 個人的にアダム・グラント氏の著書の翻訳をされているイメージの強い楠木先生の本を見つけたので、読んでみた。

    10年前に初版の出た本ということもあってか、例えば給与の話(米の金融に係る人は、インセンティブをもらい過ぎなため短期的な株価上げに終止しがち)は一理あると思いつつも、今の動きと比べるとどうしても古さを感じてしまった。

    他、日本市場とまとめることが正しいのか等そうだよな、と思うところも感じつつ、オリンピックの件等、著者の主張が長くなりすぎて冗長に感じるときもあり、読んでて辛く思うときがあった。

  • 抽象・具体の往復運動は大事。アウトプットのためのインプット、そのための注意。相変わらず腑に落ちることを伝えてくださる。感謝。製造機能100個が限界の工場に1万個製造できる部品を集めても意味がない。でもこれをしがち。気をつけなければ。

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著者プロフィール

経営学者。一橋ビジネススクール特任教授。専攻は競争戦略。主な著書に『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』(東洋経済新報社)、『絶対悲観主義』(講談社)などがある。

「2023年 『すらすら読める新訳 フランクリン自伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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