「いいね!」が社会を破壊する (新潮新書 542)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106105425

感想・レビュー・書評

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  •  1988年に世界で14万5千人の従業員を抱えて世界一のフィルム企業イーストマン・コダック社は2012年にチャプターイレブン(会社更生法)適用となった。絶頂期には1ドルで70セントの利益が出ると言われた、フィルム・現像・プリントの各段階で利益が見込めたからだ。ご想像の通りその凋落の要因は、デジタル化です。フィルムレスのデジタルカメラの登場に加えスマホで高画質カメラが搭載しかも瞬時にネットに掲載や共有、メールでのやり取りも出来る。一部のマニア等以外には必要とされなくなった。

     書籍も同様だ。amazonを筆頭にネット販売で実店舗書店は世界中で激減している。日本は再販制度で本の定価が決まっているのでネットでも実店舗でも価格差は無いが利便性や在庫数には太刀打ち出来ない。更に今後は電子書籍が普及すれば、出版社は大幅縮小し取次・書店・製本・紙業・印刷業・物流業に多大な影響が出るのは必至だ。私自身は、紙派だが今後電子書籍が相応の価格(紙に比べて圧倒的に低コスト)になれば、保管場所、即時性、特にエコの観点から電子書籍を勧めざるを得ないと思う。

     上記二点は、イノベーションだがこれ等ITイノベーションは高度デジタル化と通信インフラ向上によって、雇用や機会の喪失をもたらし極一部の人間とプラットフォームを有する企業だけが有利になるのが、現在のイノベーションだ。既得権益を壊し新たな産業を生み出すが雇用を生み出すものでは無くなってきた。

     本書の題名、''いいね!が社会を破壊する''とは、決してソーシャルメディア等の反応を示す''いいね''では無く、日々進化するIT化による超効率化や生産性向上による弊害で雇用や賃金が守られなくなり、素晴らしいITを駆使したインフラも利用する人が限られやがて衰退するのでは、という懸念だ。

     AI化やロボット化は、確かに素晴らしい人に代わって頭脳・肉体労働を行なってくれるだろう、では人は何処へゆくのか? ロボットへの前後準備作業や手作業でないと出来ない本当に単純な労働、もしくは高度で人としての感覚が必要な頭脳労働。超二極化されつつ有るのでは無いでしょうか、

  • コダックの崩壊理論。
    レイイナモトさんの持論とあわせて読んだのでわかりやすかった。

    しかし、筆者がフェイスブックをやっていないのに、いいね!をタイトルに入れるのは、ちょっと看板の上げ方がちがうのでは?

  • 本のタイトルと内容にギャップあり。売るためのネーミング。
    ・フィルム式のカメラからデジタルカメラに移行した話、コダック社。
    ・紙の本からいずれデジタルデータの本が主流になる話。
    ・フェイスブック、ツイッター、LINE等による個人情報をIT企業が握り、それを国家が使う話、安易に著者が不安を煽るような内容ばかりだった。対策、解決案もなし。

  • SNSやIT企業による社会変化をテーマに描いている本著。
    既存市場の衰退
    ・書店ー電子書籍によって、大手企業しか生き残りが厳しくなる(独自のブランドや特色を出す、万引きなどの犯罪をいかに防ぐか)

    ・個人の情報倫理、プライバシー権→外部企業による監視カメラの調査
    ビックデータという名の下で、個人の行動、思考、性別、病歴など様々な情報が瞬時に入手・搾取される。

    つまり、こういった商品や物を持っているということで危険人物とみなされ、逮捕される可能性も…。(大逆事件ー幸徳秋水ら社会主義者への弾圧・虐殺等)

    【テーマ】個人情報保護法、SNSによる犯罪、忘れられる権利(グーグル社への訴訟問題から提起された視点)、共通番号制など

  • 想像していた内容とは違ったけど、いつものとおり鋭い。

  • 「だれが本を殺すのか」(佐野眞一)を読んだ流れから購入してみた。楡周平だしね。
    彼が以前に働いていた会社、コダックがカメラデジタル化のために倒産してしまった話から始まり、電子書籍とSNSの出現により出版のの世界も今や危ない、と世の中が変化しつつあることに言及。便利になればなるほど機械化が進み、人の力がいらなくなり雇用が減る。最近では3Dプリンターなる、優れた復元機能を持つ機械まで発明され、ここまで来ると工場も店もいらなくなる。ロボットが人間を駆逐するという恐ろしいブラックSFが現実になろうとしているのだ。
    これからの日本経済はどのようになっていくんだろうか。私たちの子供や孫の時代に明るい未来はあるんだろうか。将来が全く見えないから今の若者はお金を使わず守りに入っている。だって会社に入ったからと言って将来が約束されてるわけではないんですからね。IT企業でプラットフォームを立ち上げたり、人気アプリを制作すればいいのかというと、結局お金を持たない人がこれから増えてくるとITだってどう発展していくか、保証はまったくない。
    ネット生活のことは全て忘れて、少々不便でも昭和の頃のアナログな生活にリセットした方がいいのかもしれない。

  • フィルムや書店、モノがデジタルに呑み込まれ、市場は十分の一以下、しかもプラットフォーマーが総取り。人が要らなくなり、雇用が失われる。

    facebookが何で?と思ったのですが、もっと広く、出版界とデジタルメディアの話でした。良かった過去を持つ週刊誌読者向けの内容だと思いました。

  • 便利の追求が雇用を奪う

    物流コスト、情報の非対称性、タイムラグなどが、現在の多数の企業が存在する必要条件となっているわけで、それがなくなれば経済学の原理、つまりは完全なる自由競争に近づくだろう

    つまり、無駄なものはなくなり勝者は限られる
    結果、最後まで笑っていられるのは誰・・・?

    結局は、モノを作る人じゃなくて、プラットフォームを作る人なんだろうか
    何だかなぁ

  • コダックの企業の変遷と、便利をもたらす機械化などにより仕事の質が変わっていく話は別な機会に論じたほうが良かったのではないかと感じた。

    人が仕事に携わるということは付加価値をつけるということだが、機械化によりその作業は変わり続けていると思うが、社会的な構造も変わっているので、対応していけばよいのではないかと考えてみたのだがどうなのだろうか。

    あと5年後、ネットスーパーなど、便利になったサービスがどう変わったのか、見届けたいと思う。

  • 簡単に要約すると下記のとおり。
    ネットが普及することにより
    仕事がなくなる。
    貧富の差が広がる。
    プライバシーが侵害される…などなど。
    結果として未来は暗い。

    似たようなことを多くの人が既に語っており,
    新たな知見は特になかった。

    上記のような問題を指摘した場合,
    では,「どうすればいいのか?」という問いが自然と出てくるのだが,
    対策・処方箋は一切書かれていない。

    現状を軽く俯瞰したいという人が読むといいかもしれない。

著者プロフィール

1957年生まれ。米国系企業に勤務中の96年、30万部を超えるベストセラーになった『Cの福音』で衝撃のデビューを飾る。翌年から作家業に専念、日本の地方創生の在り方を描き、政財界に多大な影響を及ぼした『プラチナタウン』をはじめ、経済小説、法廷ミステリーなど、綿密な取材に基づく作品で読者を魅了し続ける。著書に『介護退職』『国士』『和僑』『食王』(以上、祥伝社刊)他多数。

「2023年 『日本ゲートウェイ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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