フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか (新潮新書 547)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106105470

作品紹介・あらすじ

この男こそ、「史上最強のピアニスト」だ! 聴衆の大衆化、ピアノ産業の勃興、スキャンダルとスターの関係……。リストの生涯をたどると、19世紀の実相が鮮やかに浮かび上がる。音楽の見方を一変させる一冊。

感想・レビュー・書評

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  • この本からはリストの内面や音楽的な意義などはよく分からないが、今まで知らなかったリストの生涯や人柄について知ることができた。説明不足の文章や構成の散漫な点はご愛敬かもしれない。音楽理論的な本ではなく、気楽に読む本だから。
    リストは最強のピアニストということがよく分かった。とにかく凄い人である。その利他主義的な人柄や空前絶後のバイタリティーはびっくりだ。初見でどんな曲でも弾いたというし、残された超絶技巧の曲も凄い。リサイタルというものを開拓し、人気はすさまじかったというし、その収益から学校、音楽関係の施設、孤児院などへの寄付は莫大だったというし、来る者は拒まずで、レッスンは無料、若い音楽家たちを援助し励まし続けたというし、なんという人格者だ。ワーグナーやグリーグ、スメタナたちの心の支えになった。ショパンとはよきライバルだった。古典派やロマン派の作曲家の曲を率先して弾いて世に知らしめた。女性関係はちょっとあれだが、きっと迫ってくる女性を拒めなかったんだろうね。35歳でピアニストを引退し、楽長の仕事や作曲に専念した。交響詩という新しい分野を切り開いたし、無調の曲も作ったという。まさしくスーパースターだ。コジマの血統で今も子孫がいるらしい。そうそう、13歳の時にすでにピアノのエラールの広告塔になっていたらしいね。ほええ。しかしねえ、よくまあこんな題名を付けたなあ。編集者に押し切られたんだろうね。「最強のピアニスト・リスト」ぐらいがいいんじゃない。

    • 本ぶらさん
      >その利他主義的な人柄や空前絶後のバイタリティーはびっくり
      へぇー。
      リストって、利他的な人柄だったんですか。
      あのナルシシズムの権化...
      >その利他主義的な人柄や空前絶後のバイタリティーはびっくり
      へぇー。
      リストって、利他的な人柄だったんですか。
      あのナルシシズムの権化みたいないけ好かない肖像画w(写真?)からは想像もつかない(^^ゞ

      そういえば、小学生の頃。
      世界の心霊話的な本の中に、ベートーヴェンやシューベルト等々名だたる音楽家の幽霊にピアノを教わった女性の話っていうのがあったんですけど、そこでは「中でもリストが一番親切に教えてくれた」的なことが書いてあったっけ(爆)

      ま、天は人に二物を与えるってことか?(^^ゞ
      2023/02/01
    • goya626さん
      本ぶらさん
      リストはなんていうか、人がいい、という人だったようですよ。それで、人のことや自分がやりたいことで超絶忙しかったようですが、やり...
      本ぶらさん
      リストはなんていうか、人がいい、という人だったようですよ。それで、人のことや自分がやりたいことで超絶忙しかったようですが、やり切ってしまうところが超人ですよ。
      2023/02/02
  • リストはこんなにも濃厚な人生を送った人だったのか!と驚いた。何故今まで誰も描かなかったのだろう…。

    宝塚歌劇花組公演を観る予定なので、予習にと手に取った本。とても面白かったし、出会うべくして今出会えた本だと思った。
    リストの生涯を通して、本当に豊かであるとはどいういことなのか学ばせて貰えた気がする。
    経済的(物質的)にこんなにも豊かで恵まれた国なのに、幸福度は低いと言われる日本に足りないのはこういうことなのかな…と考えた。

    音楽書として分類されない本をと書かれたこの一冊、こんなに多面的に多くを学んだことはなかったかもしれない。

  • いつの時代も推しはサイコー

  • ●とにかくモテた。史上最強のピアニスト。最強。最高ではなく。
    ●ただのイケメンではない。圧倒的な超絶技巧と、夢見るような甘い旋律に誰もが息を呑み聴衆の心を鷲掴みにした。
    ●ところがこれだけの人物にもかかわらず、その生涯は一般にはほとんど知られていない。そもそもリストに関する書物が、絶版になっている本を除けばたった1冊である。
    ● 1811年の大彗星。その年にハンガリーで生まれた。
    ●生涯唯一のピアノの師匠。ベートーベンの弟子の1人ツェルニーである。今も世界中で愛用されているピアノの練習曲で有名。
    ● 15歳で父を失い、ピアノ教師として母を養う。
    ●リストやショパンが活躍したパリ・サロンは、復古王政下のサロンである。旧貴族とブルジョア貴族が入り乱れた優雅で奇妙なサロン文化。
    ●彼の卓越した能力は「会話術」
    ●象牙は、鍵盤の究極の素材と言われた。しかし何しろ貴重品である。ヨーロッパ帝国主義と言う時代になり、膨大な象牙がアフリカ大陸から運び込まれるようになった。
    ●ブルジョアの家庭にとっては、ピアノは裕福のシンボルであり、贅を尽くした調度品そのものだった。
    ●人前で演奏することを好まなかったショパンだが、リストとは、意外なほどよく共演した。
    ●リストの弟子は400人とも1000人とも言われる。基本的には来る者を拒まず、またレッスン料は全て無料である。

  • リストの曲はよく聴くし、リストが史上最強のピアニストであることも、女性にモテまくっていたこともよく知っていたのだが、この本を読んで、私はリストについて何も知らなかったことを思い知らされた。
    10代に鬱病を患っていたこと、「リサイタル」を発明したこと、聖職者になることに憧れていたこと…。リストについての印象が大きく変わった。
    またピアノが19世紀のヨーロッパにおいて、経済を支える重要な商品であり産業であったことも知らなかった。リストのことだけでなく、リストの音楽の受け手であった、当時のヨーロッパの人々の息づかいまで浮かび上がってくるような本だった。

  • 善き
    リストの生涯についてとても詳しく、また作者の主観が強すぎる事もなく、とても読みやすい。
    リストを知りたい方へおススメできる一冊
    タイトルが奇を衒っているように感じるが、コレがリストのイメージなのかもしれない。それを覆すだけの内容がここには在る。

    リストに関する本は絶版を除くと1冊しかないそうだ。
    若き日々はスキャンダルも喜んで起こし名声を得て、且つ見えない努力も凄まじい。恋愛にも溺れ生まれた子供を自分より早く亡くしてしまったり、最後まで天才ショパンを尊敬し一つの祖国ポーランドへの愛国も示す。
    ワイマールの宮廷楽長、聖職者と知られざる一面も記されていてとても面白かった!

    師匠ツェルニーが亡くなるまで続く、超絶技巧練習曲は師に捧げたもの
    11歳でウィーンにてデビュー、ツェルニーに徹底的に基礎を叩き込まれる
    12歳パリへ
    15歳父を亡くしパリでピアノ教室として名声を上げる
    18歳七月革命にて魂揺さぶられ、美青年はサロンを舞台に女性たちを魅了していく 

    失神した女性たちは、ブルジョワ女性の鬱積したエネルギーはフェミニズム運動へと駆り立て、欲望と快楽のメカニズムだと。

    1839年3月8日 ローマ ピアノリサイタル誕生

  • 一見、恋愛指南書のようにも捉えられる題名だが、中身は全く異なる。リストが行った膨大な活動と、その基となっていた信仰・哲学に触れることができる。今まで持っていた世俗的なエンターテイナーのイメージが完全にひっくり返った。ショパンは好きだけどリストは…と言う人に読んで欲しい一冊。

  • 同時代を生きた、ショパンとリスト。
    日本では、ショパンは絶大なる人気を誇るのに比べ、リストはそのピアニストとしての才能を正当に評価されているとは言いがたい現状。
    サロン、巡礼、エレガンス、ブルジョワ、ショパン、ピアノ。
    これらキーワードとともに、「19世紀音楽の縮図」と言われるフランツ・リストを通して浮かび上がる、19世紀の文化現象。

  • ~あらすじ~
    フランツリスト。当時は、民衆の間で圧倒的な人気を誇り、西洋音楽史に名を残す最強のピアニストでありながら、日本ではほとんどその人生について知られていない。そんな彼の苦悩や野望、恋などを、ショパンなど彼の周りの人物や手紙のやり取りなどから考察していく。

    ~感想~
    リストという人物は、単なる超絶技巧の持ち主であったというだけではなく、その内面には、当時の音楽家の誰よりも過去と未来の音楽に対する愛と希望が溢れていたのである。
    また彼は、どんな難曲も引きこなせる天才でありながら、恋に悩んだり、たくさんの弟子を教えたりと、とても人間らしく一途で、男らしい人物だったということが伝わってきた。
    フランツリストという人物をより深く知り、より深く愛せるようになる作品である。

  • 刺激的なタイトルのために外で人の視線が気になるところが難点だが、リストと19世紀ヨーロッパの音楽事情がコンパクトにまとまっていて読みやすい。より詳しい資料への導入として。

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著者プロフィール

1961年生まれ。文筆家・文化芸術プロデューサー。一般財団法人欧州日本藝術財団代表理事。代官山未来音楽塾塾頭。サラマンカホール音楽監督。フランスを拠点に作曲、音楽研究活動に携わったのち帰国。三井住友海上しらかわホールのエグゼクティブ・ディレクターを経て、現在、浦久俊彦事務所代表。多彩なアーティストのオリジナル企画を手がけるほか、文化芸術のナビゲーターとしても全国で活躍している。著書に『フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか』『138億年の音楽史』『ベートーヴェンと日本人』など。2021年、サラマンカホール音楽監督としての企画で、サントリー芸術財団第20回佐治敬三賞を受賞した。

「2021年 『「超」音楽対談 オーケストラに未来はあるか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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