日本版NSCとは何か (新潮新書 552)

著者 :
  • 新潮社
3.35
  • (2)
  • (13)
  • (11)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 94
感想 : 16
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106105524

作品紹介・あらすじ

そもそも「国家安全保障会議」って何なの? モデルとなった本家・米国での実情と創設の歴史、日本で考え得る有事のシミュレート、そして「特定秘密保護法」との深い関係……。その全てを分かりやすく解説。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • NSCは国家安全保障会議(National Security Council)と訳され、大統領や首相の下で外交や国防に関する戦略を立案する組織の名称。本家アメリカでは大戦後の1947年、米ソによる東西冷戦を背景にトルーマン大統領によって創設され、大統領への政策助言などの役割を果たしているが、日本ではようやく2013年の安倍内閣で発足したばかり。日経新聞の記者を経て同社のグローバル研究室長などを務める軍事評論家が「日本版NSC」の内情を解き明かし、この組織が果たして日本の国防における安全装置として機能するのか、そして憲法との関係はどうなのか等の疑問に対して解りやすく解説する。

  • 国家安全保障会議の成立に至る道程と本家アメリカ版NSCの実像から、日本版NSCとは何かということ及び課題を提示する。
    多頭制とならないか、NSCに情報を提供する情報機関の強化、文民統制の一機能としてのNSCといった課題があるとのこと。
    日本NSC設立時点でも本家アメリカのNSCは試行錯誤を続けており、その意味では、我が国のNSCも出来上がってめでたしめでたしではなく、これからも変化していかざるを得ない宿命にあると思われる。

  • 【日本にとって、NSCという組織の創設はトライしてみる価値のある壮大な実験であります。しかし、NSCはある意味、諸刃の剣のような存在になる可能性もあることを忘れてはなりません。】(文中より引用)

    2013年末に安倍政権下で発足した国家安全保障会議(NSC)。厳しさを増す国際環境の中で何故に日本政府は同会議体を創設するに至ったのか、そして大いに参照された米国におけるNSCの運用と変容とはどのようなものかを記した作品です。著者は、日本経済新聞に務め、『核がなくならない7つの理由』などの著者でも知られる春原剛。

    制度としてのNSCだけでなく、運用におけるNSCにも踏み込んでいった良書。米国の例を単に紹介するのではなく、その運用面から見る陥穽についても触れ、NSCを絶えず変化が求められる組織と喝破した意義は大きいように思います。

    類書があまり多くないこともあり☆5つ

  • 【由来】
    ・確か佐藤優の週刊ダイヤモンドの連載だったと思う。

    【期待したもの】
    ・日本版NSCについての基礎知識を身につけたい。

    【ノート】
    ・NSCとはアメリカの国家安全保障会議の略だがスノーデンの一件で有名になったNSAとはまた別ものらしい。このNSC、各国にあるらしいのだが、インテリジェンスの分野ではアメリカの師匠格だと思っているイギリスに設置されたのは2010年5月のキャメロン政権後ということで意外だった。なお、イギリスはNSC創設時に、アメリカと協調路線を取るが隷属的ではない」とその原則を明言したらしい。日本の関係者には、これが日本へのエールに聞こえるか、それともあてつけに聞こえるか。

    ・NSCは組織横断的で、内外の危機に対応する進言を首相に行い、権力の暴走も抑制する、ということらしいが、そんなおためごかしが歴史上、うまく機能したことなどあるのだろうか。

    ・佐藤優の文章によると、NSCは日本が戦争していいかどうかを決める機関ということだったが、災害への対応も行うというNSCの説明は単なるお題目なのか本当なのか。それに、NSCに集まってくる情報をインテリジェンスと呼べるレベルにするためには、諜報機関も必要になるでしょ。既にあるのか、それともこれから作るのか。最近のイスラエルへの接近は、この辺りの動きとも関連しているのかも知れない。

    【目次】
    第一章 なぜ日本にNSCが必要なのか?
    NSCとはどのような組織か?
    日本に創設する意味とは?
    従来の組織では対応できないのか?
    なぜ安倍首相は創設にこだわるのか?
    日米同盟との関係は?
    官僚の有効活用ではうまくいかないのか?
    「シンクタンクが必要」という発想はどうして生まれたか?
    日本版NSC構想に到る経緯とは?
    アメリカの真似ができるのか?

    第二章 本家NSCとはどのような組織か?
    「側近型SA」とは?
    SAの必須条件とは何か?
    イラン・コントラ事件の教訓とは?
    理想のSAとはどのような人物か?
    子ブッシュ政権での「問題点」とは?
    どういうタイプのSAが失敗するのか?
    オバマの失態の背景は?

    第三章 日本版NSCは実際、どうなっている?
    第一次安倍内閣での失敗とは?
    その後、なぜ混迷したのか?
    民主党版NSCの改良点とは?
    描かれていたシナリオとは?
    有事の際をシミュレートしたら?
    「二〇一三年版」構想の問題点とは何か?
    屋上屋を架すだけでは?
    警察の役割はどうなるのか?
    第四章 今後の懸念と課題は?
    「安全装置」としての役割は可能か?
    「日本版CIA」は必要か?
    インテリジェンス・コミュニティーの問題点とは?
    特定秘密保護法案との関連性は?
    スノーデン事件のインパクトは?
    憲法第二十一条との兼ね合いは?
    文民統制はクリアできるのか?
    NSCの「使命」とは何か?

  • 日本版NSC(国家安全保障会議)について、そのモデルとなった米国のNSCの歴史からひもといて解説しているのでわかりやすい。国家安全保障問題担当補佐官に求められる資質や、日本版NSCと米国のNSCの違い、日本版NSCの今後の課題などがとてもわかりやすかった。が、本来まとめとなるはずの終章で関係ない話が始まり、ミスリードするような話が始まり、蛇足も良いとこだった。どうして今時シビリアンコントロールでシビリアンでは無い文官の武官への優越という誤った解釈に帰結していくのか、著者の知識からすると不自然な記述だらけで、本当に蛇足でした。そこで星一つ減らして四つ星

  • 自民党の官僚丸投げの制度疲労があった、この中で20年くらい前から日本版NSCの萌芽となる議論が行われていた。本場米国のNSCの歴代SA。模範となるスコウクロフト氏。日本版NSCの問題点等。

  • 簡単な覚書として

     NSCとは国家中枢に位置する戦略的意思決定機関。
     本元の米NSCは1947年トルーマン大統領の下に発足。中心人物がSAであり、組織の価値はこの人物の器によるところが大きい。米NSCもまだ組織として多くの課題を抱えている。
     日本版NSCは冷戦終結後より取り沙汰されるようになった。ポスト冷戦における米一極支配の終焉に伴い、自立防衛志向を背景に議論が活発化。迅速な意思決定や情報収集力・分析力の統合能力に欠ける官僚機構の弱点を改善すべく2013年に安倍首相が創設。
     合議内容は主に外交・防衛計画の基本指針。
     NSCに課せられた使命は、権力を補佐しながらその暴走を抑制しつつ、日々、起こりうる事象に現実的、および長期的な視点をもって臨機応変に対処すること。

  • 縦割り、たこつぼ官僚制のはびこる日本において、屋上屋を重ねる式のNSCは機能しないのではないだろうか。戦前のインテリジェンスを思い浮かべるとそう思わざるを得ない。アメリカ式情報組織にはゼネラリスト型のリーダー。イギリス式情報組織には強いリーダーシップを発揮できるチャーチルのようなリーダー。安部首相からはじまるリーダーはどんなリーダーを目指すのか。

  • 日本版NSCはポスト冷戦においてアメリカの権勢に陰りが見えたから。
    NSCを創設するということは戦後日本がこれまで真剣に自らの問題として捉えてこようとしてこなかった国家安全保障という課題に真っ向まら取り組むことを意味する。
    島国で内向きになりがちな特性を持つ日本にとってオールジャパンの視点でそれぞれの地域に詳しく、かつ多数の知己を持つ質の高い専門家を育成することは国家戦略上急務。
    キッシンジャー、ブレジンスキー時代のNSCは一見すると確かに強い組織。刻足政治学者としての豊富な知識を誇り、周囲を圧倒する後列な個性を持つ両氏は独特のカリスマ性を持っていた。

    そもそも対外的に目立つことが仕事の一部であるような政治家にとって、舞台裏の黒子に徹することは不可能。

    内閣の情報収集能力を高める。

  • 特定秘密保護法とともに、日本に設置する日本版NSCについて、必要性やアメリカとの比較で説明している本。

    内容は、なぜNSCが必要となっているのかその理由と経緯、本家(アメリカ)のNSCはどのような組織かを主に子ブッシュとクリントン政権のSA(Security advisor)についてをまとめている。後半は、日本のNSCの導入の第1次安倍政権から第2次安倍政権までの歴史、文民統制等の問題点をまとめている。

    秘密保護法案がインフラであることを理解できたり、NSCについての知識を整理したり、よいまとめになったと思う。

全16件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

春原 剛
春原 剛:日本経済新聞社編集委員

「2013年 『オバマと中国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

春原剛の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×