- Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106105579
作品紹介・あらすじ
どうしよう、プレーリードッグが書斎に穴を掘っていた! “狩猟採集少年”がそのまま研究者になったコバヤシ教授。波瀾万丈、動物まみれの日々を送っています。動物行動学のエッセンスに触れる、忘れがたき相棒たちの物語。
感想・レビュー・書評
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「鳥取環境大学の森の人間動物行動学」シリーズ(築地書館)でおなじみのコバヤシ先生が新潮新書デビューです。
親しみやすい文章はいつも通りですが、本書では子ども時代や学生時代の出来事(無論、すべてに動物が関わっています)についても語られており、幼少期から冷めることのない動物への飽くなき熱意が伝わってきます。
コバヤシ先生の本を読むたびに、「隣の家に動物行動学者が住んでいたら楽しいだろうな」と思います。
庭でマーキングしたカナヘビを何時間も追いかけている隣人…ぜひお近づきになってみたいものです。
そして、同じことを動物行動学の祖であるコンラート・ローレンツ博士の『ソロモンの指環』(早川書房)を読んだときにも思いました。
本書では、コバヤシ先生にとって、ローレンツ博士がどれだけ偉大な存在であるのかもうかがうことができます。
今回、特に目からウロコが落ちたのは、生息場所と社会性の違いについてのお話。
森や林の中でえさ探しや子育てを行う鳥類・哺乳類は、一夫一妻で、子育ても夫婦で協力して行う。
一方、草原などの開けた場所でえさ探しや子育てを行う鳥類・哺乳類は、一夫多妻で、子育てはメスが行い、群れをつくって行動する。
頭の中でいろいろ動物を思い浮かべてみながら、「おおお、ほんとだー!」と一人で興奮してしまいました。
知っていると思っていた動物たちの、知らない一面がどんどん見えてくるわくわく感がたまりません。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者小林氏の少年時代も含めた動物とのふれあいのいい個の物語。
<目次>
はじめに
1 自転車にからまっていたカラスの話
2 庭で暮らすカナヘビを追いかけ回した話
3 街の迷い犬を田舎に送った話
4 プレーリードッグと一緒に住んでみた話
5 小さなヒミズに畏敬の念を持った話
6 土の中の魅惑的な生き物たちの話
7 「コウモリを連れたタクシー運転手」の話
8 ドバトは人間をどう認識しているか考えてみた話
9 アカネズミが食べるドングリ、貯めるドングリの話
10 トンビのため“狩り”に明け暮れた夏の話
11 口の中で子を育て雌から雄に性転換した魚の話
<メモ>
動物行動学は、動物(時には植物も対象にするが)の形態が行動・心理などを、それが「環境に適応しながら進化してきた」という見方に基づいて解明していく学問である。
一方生態学は、ある地域に生息するたくさんの種類の生物について、種の間の「食う/食われる」をはじめとした関係や、生物と無機的環境(水や土、大気、光など)との関係を調べる学問である。(26)
層物にしろ植物にしろ、子どもにとって餌(植物の場合は主に光)が得やすい環境では、親は、よりたくさんの子を産み(つまり、多産戦略)、子どもにとって餌が得にくい環境では、親は、大きな卵や種子を比較的少なく産み、保護して育てる傾向がある(少産保護戦略)。(104)
「自分の遺伝子が後の世の世代に残るように」
・母親を食べてしまう子どもの行動は、残酷だと感じられる。
これは人間の生きる論理の中での判断。
・コブハサミムシは「自分たちを保護していた母虫を食べる」という行動特性
動物行動学は、人間という動物の枠の外に出て、人間の行動や心理や感情を見つめることを可能にしてくれた。
擬人化
最近の認知考古学の研究は、擬人化はけっして、子どもや未開の人たちの、幼稚な、あるいは素朴な思考特性ではなく、人間の本来の生活形態である狩猟採集への進化的適応の結果であるという可能性を示している。
「動物の習性や生活をよく知るようになること」と「その動物達を、その習性も取り込んで擬人化すること」とは相互に強めあう関係にあり、それらが高まることによって、動物の死滅に痛みを感じさせるのではないか、と考えている。(132)
森や林の中で、餌探しや子育てを行うような鳥類・哺乳類では、婚姻形態は一夫一妻で、つがいが一緒に行動し、子育ても雌雄が協力して行う。そして、雌雄の体の大きさに差はない。
草原などのような開けた場所で、餌探しや子育てを行うような鳥類・哺乳類では、婚姻形態は一夫多妻で、子育ては、たいていは雌のみが行い、多くの個体が群れをつくって行動することが多い。そして、雄の体は雌よりも大きい。(134)
2014.04.30 練馬の本屋で見つける。
2014.06.29 借りる
2014.07.06 読了 -
新書版なので真面目な話・・・と呼んでたら、
真面目な話でも、やっぱり小林節で楽しかった♪
子ども時代と高校教師時代を中心に、
思い出深い動物たちと研究が書かれている。
その根本には、動物行動学がしっかりと、根太く、
あることにも感心させられてしまう。
他書にもちらちら登場した、ドバトのホバの話が、
1章あって、良かったです。 -
学問的なことは抜きにしても、とても面白い内容でした。現代のファーブル昆虫記、あるいはシートン動物記ですネ。
著者がいろんな動物たちを観察する過程で、必要以上に感情移入されていく様子から、その愛情の深さを垣間見ることができました。世の中には、動物を実験材料として扱う学者も大勢いるのでしょうが、著者にとって動物は、単なる研究の対象ではなく、愛すべき存在、人生になくてはならない存在なのだということがわかります。
犬や猫に限らず、動物がスキという人はたくさんいます。動物って、見てるだけで癒されますもんネ。なぜ人は動物を愛するのか?という研究があってもいいのではないかと思ったりするきょうこの頃です。
べそかきアルルカンの詩的日常
http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2 -
自分にとって、小林朋道先生は日本のコンラート・ローレンツです。
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面白いのでついつい読んでしまうのだが、何冊目だろう。いつも同じ調子なので、少しマンネリ化してきた。何冊か読んだ実感がなく、厚い一冊の本を少しずつ読んでいるような気分。
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小林先生は、動物行動学を専門にしてらっしゃいます。
動物行動学とは、動物の形態や行動・心理などをそれが「環境に適応しながら進化してきた」という見方に基づいて解明してゆく学問です。
小林先生の凄さは、犬だけでなくカラス、カナヘビ、プレーリードック、ヒミズ、コウモリ、ドバト、アカネズミ、トンビ、魚などを実際に飼った経験があることです。
http://ameblo.jp/nancli/entry-11954605183.html -
11月新着
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同じ著者がおもしろそうな本を何冊か出していらっしゃるのは知っていたのですが、今回初めて本書を手に取りました。難しい話はないので、気軽に通勤途中に読ませてもらいました。本当に動物が好きなんだなあと感じる文章ばかりです。ほ乳類だけではなく、トンビにも、カナヘビにも、小さな熱帯魚にも、土の中のオケラにだって愛情がこもっています。著者が出会ってきたたくさんの動物の中でも、特に印象に残っている動物ばかりを扱った文章だから、当然のことなのかもしれません。最終章のシクリッドという熱帯魚の交尾の描写、その後の口の中での子育て、そして性転換、自然界にはまだまだ不思議なことがいっぱいあります。それにしても、オケラの写真は本当にかわいい。
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道ばたの風に揺れている
ほわほわの頭部を持った雑草が
エノコログサという名だと
教えてもらったとき
しばらくの間、それをみる度に
エノコログサと唱えていた
今まで知らなかったものが
名前を覚えた瞬間に
今までとは違って
見えてくる
小林朋道センセイの「動物行動学」エッセイを
読む度に
自分の周りに生きている
「生き物」たちのことを
そうそう そうやって懸命に生きているよなぁ
そんな気持ちにさせられる
この感情は
エノコログサの時の感情とそっくりである