いつまでも若いと思うなよ (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106106392

作品紹介・あらすじ

明日に向かって老いろ! 「楽な人生を送れば長生きする」「老後は貧乏でも孤独でもいい」など、前期高齢者となった作家が、「老いに馴れる」ためのヒントを伝授。老若男女のための年寄り入門。

感想・レビュー・書評

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  • 老いについて、著者の経験を交えながらいろいろ考えた本。どこか他人事というか、楽観的な部分も大いにあったように思う。
    若い→まだ若い→もうそんなに若くない→若くない→老人、という五段階変化は納得。物忘れが多くなるのは、脳がいっぱいになってきて、覚える気もなくなってくるからというのもなんとなく納得。そして、皆んな、自分の老いに対してはアマチュアだということも。きっと、いろいろ思い悩みながら、徐々に受け入れ、老いに慣れていくしかないのだと。人生ってそんなもの。でも年を取るのは皆んな同じで、老いを経験した諸先輩方はたくさんいると思えば、老いるのはそんなに恐いこともありませんね。とりあえず、いまは健康でいることに感謝して、日々一生懸命生きたいと思います。

  • 人はそう簡単に年寄りになることに慣れられない。「この俺様がジジイなんかになるわけないじゃん」大人になるのを拒む現代人が上手に歳をとるのは難しい。子供ののころ飼っていた猫が死期を悟って人目につかない場所へ行って死んだという記憶。。死はよく分からない。別に輪廻転生を信じているわけでもない。人は、眠る時に意識をなくす境界を認識することができないように、死ぬ時も分からないんじゃないか。死ぬ時は感覚を失って、いつのまにか死んじゃうんだろう。でも死んだことがないので、考えても無駄かも。

  • 老いる準備をしようと読み始めたが,橋本治の人生が波瀾万丈すぎて全く参考にならない.

  • なんだかとりとめのない語りだなあと思って気乗りせずに読んでいたら、第六章「老いの貧苦」が驚きの内容。「余は如何にして貧となりしか」と題して億単位の借金を抱えることになった経緯が記されている。これだけでもすごいのだが、さらに、第七章「病気になる」では、免疫系の難病を発症し、それでもなお借金返済のために入退院を繰り返しながら働いていることが綴られていて、なんともまあ壮絶である。あるのだが、しかし、そこが橋本治であって、あっけらかんと、というか、飄々と、というか、形容に困るのだけれど独特の語り口なので、あらまあそうなの?という感じで読まされてしまう。

    自分より十歳ほど年上の、いわゆる団塊の世代の方たちが、「高齢者」の仲間入りをしつつある。従来の「年寄り」という概念が崩れている今、どう年をとっていくか、参考にしたくて注目している方たちがいるのだが、著者もその一人だ。「老・病・貧・孤」という状況を抱えつつこの境地。とてもじゃないが自分には無理だけれど、どこか気持ちを楽にしてくれるのは確かだ。

    • シンさん
      ごぶさたしています。橋本治の近況にびっくりしたのでついついコメントを。億単位の借金と難病ですか……。『青空人生相談所』や『恋の花詞集』を愛読...
      ごぶさたしています。橋本治の近況にびっくりしたのでついついコメントを。億単位の借金と難病ですか……。『青空人生相談所』や『恋の花詞集』を愛読した身としてはつらいです。どうも近年の著作には食指が動かなくなってたんですよねえ。
      ブクログの更新はすっかりおろそかになってますが、また復帰したいです。(うーんこればっかり言ってる気が……)たまもひさんのレビューを楽しんで読んでいます。
      2016/02/07
    • たまもひさん
      おおシンさん!お久しぶりです。コメントありがとうございます。是非またレビューを書いてくださいね。
      いやあほんと、橋本治氏がこういう状況であ...
      おおシンさん!お久しぶりです。コメントありがとうございます。是非またレビューを書いてくださいね。
      いやあほんと、橋本治氏がこういう状況であったとは驚きました。すごく好き、というわけではないけれど、ずっと気になる書き手の方だったので、こんなことになっていたとは…。驚きました。

      読んだものの心覚えに、と思ってとりとめもなく書いていますが、読んでくださる方があるのはとても嬉しいです。よろしければまたどうぞお越し下さい。
      2016/02/07
  • 萩原魚雷の本で紹介されていたもの。
    本書の中でも本人が書いていたが、色々なところで著書や本人のことが紹介されているらしい。
    確かに読んだことはなかったけど、橋本治という名前は何度も聞いたことがあった。
    「老い」というものの受け入れ、どのように自覚するかといった考え方が納得のいく部分があった。
    『老いながら、「自分の老い」を発見し続けるのですから、誰もが「自分の老い」の前ではアマチュアなのです。』
    『つまり、分かったようなことを言っても、自分の老いの形はそんなによく分からないということです。』

    自身の変化って確かに人に指摘されて初めて気が付くことが多い。ネガティブにとらえられがちな「老い」に関してはなおさらである。
    「中年」という言葉もポジティブな響きはあまりない。ただ、若者にはない経験値を携えたものという意味合いを含ませることができれば、決して「中年」はネガティブではないはず、と自分にしみわたらせることにした。

    本書の最後あたりの猫の死に方、人間の死に方といった部分は考察が鋭くて、表現が上手だなあと感じた。
    部分的に感じたことはたくさんあっても、それをいざ言葉にして表現するのが難しい。それをしてくれると、「そう、そう!」ととても共感できる。
    「考えるのは無駄だよ」と言われながらも、「生」のほうからの「死」をこれからも意識して生きていくんだろう。

  • P32
    私は、現代離れのした人間なので
    私の考え方もおかしいのだが、
    それは時代が違っているだけで
    ものの考え方としては
    別におかしくなんかないと思っている

    P33
    経験を重ねないと自信は生まれなくて、
    自分で自信が持てるようにならなければ
    経験を積んだということにはならない

    P42
    社会が年齢を規定する

    P86
    私が貧乏になったのは目の前にあった
    「貧乏にあんるか」と
    「貧乏になるから逃げるか」という
    選択肢の内から
    「貧乏になる」を選択した結果だ。
    自分で選択したのだから
    「貧乏を嘆く」もへったくれもない。
    「クッソー、本当に貧乏になりやがった」
    と思うだけだ

    P92
    貧乏は正しい!

    P92
    「別にもうほしい物はない」

    P95
    この先は”金を使う”じゃなくて
    ”金を使うことに振り回される”
    になるな

    P96
    日本人がテレビを知ったのは
    戦後のことだ。
    もっと前にはラジオもない。
    新聞もない。
    家の外から刺激となるものが
    家の中に直接やってくることは
    まずない中で日本人は生きていた

    P97
    年寄りのあり方は
    昔に倣えばいい

    P97
    年寄りというものは
    社会と距離を置いて存在するもの

    P98
    権限を新しい世代に譲るのだから
    隠居が地味に暮らすのは当たり前だ

    P130
    人間にとって「物を考える」というのは
    「不安になる要素を探し出す」ということだ

    P131
    「困ったこと」は起こるかもしれない。
    それが「明日」かどうかは
    分からない。
    起こるかもしれないけれど
    いつ起こるか分からない先のことで
    毎日「今日やること」を続けていれば
    その先で「困ったこと」が
    起こったとしても、
    それを乗り超える力や方法が
    見つかるかも知れない。
    だから「万一もあるかもしれないな」と
    覚悟を決めておいて
    「今日やるべきこと」をやっておけばいい ※

    P134
    「大丈夫だ」と思っていれば
    結構大丈夫だ

    P156
    流れに逆らったって
    ロクなことはない

    P154
    「気に障ること」や
    「イライラすること」を
    極力排除する。理由は
    「そんなものと接触したら体に悪い」から。
    だから病気から脱出しようと考えることも
    体に悪い

    P157
    老いというのは
    「年を取った」と言って
    完結するものではなくて、
    死という最終のエンドマークに
    向かって年を取り続けて行くことだ

  • 橋本治流の「老いのリアル」についての報告と考察です。

    著者は以前『橋本治の思考論理学―考えるワシ』(マドラ出版)で「ハゲ」についての思索を展開しており、そこでは著者の「中年」論をうかがうことができましたが、本書はそれにつづく「老人」論というべき内容です。
    著者がバブル期に多額の借金を抱え込むことになり、その後仕事に追われつづけてきたということは、あちこちで書かれていますが、本書でもその経緯が振り替えられるとともに、その後難病に罹患し、老いに向きあわなければならなくなったこと、そのなかではじめて気づいたことなどが綴られています。

  • 始めにいきなり「老いとはまず他人事である」との命題が提示されるが、結局これが老いとは何か?に答える究極の結論なんだと気付いた。
    自分は昔から老けているので、実年齢が上がるとそれに応じて見た目の年齢と近づいて行くから歳を取るのは嬉しかったりする。それでも『老人』という響きにはやっぱり抵抗がある。それはどこまでも他人事なのだ。
    しかしこういう老いと死に関するテーマを著者の死後に読むのは複雑だ。読みながらつい余計な事を考えてしまう。

  • 橋本治自身が体感した生老病(死)+貧をよりどころにしたエッセイ。傍で聞いていると何億もの借金やら難病やら壮絶なのだけれど、当の著者は「そんなものかな」と平熱で「なるほどなるほど」と加齢にともなうあれこれを是々非々で受け止めているのが、らしいといえばらしい。それぐらい達観していてもなおみずからの老いを素直にみとめるのは簡単じゃないようで、そのへんの自己観察がおもしろかった。古代〜平家物語の時代のご長寿の分析もおもしろかった。
    言っても詮無いことだけれど、もっと生きて、世の有象無象を分析&説明しまくってほしかったなぁと思わずにはいられない。

  • 読売新聞朝刊「現代版・金色夜叉」、楽しく毎朝読んでます。橋本治さん、ひとつ先輩です。「いつまでも若いと思うなよ」(2015.10)、はい、心します!客観的に自分を観察し、そして、時には主観的に浪漫も抱きたいと思ってます(爆)

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著者プロフィール

1948年東京生まれ。東京大学文学部国文科卒。小説、戯曲、舞台演出、評論、古典の現代語訳ほか、ジャンルを越えて活躍。著書に『桃尻娘』(小説現代新人賞佳作)、『宗教なんかこわくない!』(新潮学芸賞)、『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』(小林秀雄賞)、『蝶のゆくえ』(柴田錬三郎賞)、『双調平家物語』(毎日出版文化賞)、『窯変源氏物語』、『巡礼』、『リア家の人々』、『BAcBAHその他』『あなたの苦手な彼女について』『人はなぜ「美しい」がわかるのか』『ちゃんと話すための敬語の本』他多数。

「2019年 『思いつきで世界は進む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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