戦略がすべて (新潮新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106106484

作品紹介・あらすじ

ベストセラー『僕は君たちに武器を配りたい』著者、待望の新作! この資本主義社会では、成功の「方程式」を学べば誰でも「勝者」になれる――AKB48から東京五輪、就活、地方創生まで、社会の諸問題を徹底分析した24の必勝パターン。

感想・レビュー・書評

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  • 戦略だけではない様々な要素がちりばめられている。自身の過去の行動に対する意味づけをするにも有意義な時間だった。
    「淘汰される企業は、社会に必要とされているものを、必要とされるコストで提供できない企業であるから、社会的資源を無駄にしているのであり、これを保護するのは社会的に有害である。」...手厳しい(苦笑い)。

  • ■感想
    ・後書きで、戦略的に勝つ方法を提示したいと書かれていた。本書は空気感のようなものを論理的に噛み砕いて説明しており、考えるきっかけを与える本だと思う。
    ・当方は本書だけでは、物足りないと思ったため、他の書籍も読んでみたいと思った。

    ■要諦
    ・プラットフォームビジネスは、人、物、金、情報をネットワーク化することで、そのネットワークの流量が増えるに従って、そのハブであるプラットフォーム事業が利益をあげるという仕組み。さらに、一度強いプラットフォームを築き上げれば、利益を独占し、リスクを回避できる。→全くの新規事業者が、プラットフォームを作ることはできるか?
    ・「報酬は何で決まるか?」…従業員の給与=付加価値額×労働分配率(生産された付加価値のうち労働者が賃金として受け取る比率)できまる。労働分配率は国際的にも60%で違わない。
    ・付加価値額=「資本装備率」(従業ん一人あたりに投入されている資本量)と「資本生産性」(資本から生まれる付加価値額の比率)から決まる。その前提では、大企業と中小企業では、「資本装備率」が倍以上違う。なお、資本生産性は中小企業の方が高かったりする。結局のところスキルの高低ではなく、もともと社員に与えられている資源量で給与差がついている。つまり、学習可能なスキルは給与に繋がらない。
    ・漫画の原作者より、制作の方が設ける。希少なスキルを持っていても、より大掛かりな「儲ける仕組み」との関係ではコモディティになってしまう。資本=儲ける仕組みの形成に加わり、リスクリターンをシェアできているかどうか、という話。
    ・イノベーションは少数意見から生まれる。イノベーション、さらに言えば、資本主義というものは、少数意見が既存の多数意見を打ち破り、新しい多数意見に変わっていくプロセスのいて最も大きな価値が生じるからである。全員がいいと思う考えは、多くの人が殺到するからかえって過当競争になり勝者は誰もいない戦いになる。むしろ、ほとんどの人が注目していない、誰もいない領域を自ら開拓したものに多くの報酬を与えるのが市場メカニズムである。
    ・選択と集中の中で、なんとか維持させるようでは、逆転ホームランは生まれない。IPS細胞の事例で、JST(科学技術振興機構)は合議制ではなく、目利きできそうな専門家の1人の意思決定で予算がつけられる組織だった。

  • 昨今は教養ブームですが、これから教養がますます重要であると述べる根拠は、本書の説明がこれまで私が見聞きした中で一番納得いくものでした。詳しくは本書を読んでいただきたいですが、著者の言葉をそのまま引用すると、「情報の爆発とその防衛による蛸壺化を経て、失われた普遍性を取り戻そうとする動き」が教養ブームだと述べられています。
    また、「コモディティ化された人材」というワードも非常に印象的でした。資本主義社会である以上、競争は避けられないため、簡単に代替可能な歯車のような「コモディティ化された人材」で溢れた会社や国は淘汰されてしまうことになるでしょう。そうならないための戦略を、個人レベルから国レベルまで一人一人がより深く考えていかなければいけない時期なのではないかと思います。

  • 瀧本先生のお話は一貫していて良い。人生あらゆる場面で戦略があれば、勝ちに行けそうです。

  • ありがちな日本の問題点を指摘するだけじゃなく、それに対して具体的な策を提示して解決しようとする姿勢に感服。

    一見、超合理的主義者ゆえに残酷なまでに冷徹に見えてしまうけど、徹底的に考え抜かれた戦略は社会問題を解決し、人々、弱者を助けるんよな。。この志の高さ、、かっこよすぎる。

    先生の著作を、言葉を胸に刻んで生きたい。

  • ベンチャー企業が非連続に変化して成長するときの全長として、優秀な人材が次々と転職して参画するという現象がみられる

    一見良い兆しに見えても実は衰退している企業の全長としては大量採用が行われ、学歴、社歴、職歴などのレジュメの見た目だけはよいが、個々人をみると個人の成果がハッキリしないという人材がかき集められるケースである

    まず、どの土俵なら勝てるかを見極め、勝てる土俵を選ぶ
    楽勝できることを徹底的にやる
    どの領域が勝てそうか見極めたら、次に資源をどう投入するかを決める

    場を作る 物理的な設備の効果だけでなく、ネットワークとしての効果も大きい

    資金援助を切実に必要としている人に対して、直接投資することが「カネ」の最も効率的な使い方

    才能と努力を成果に結びつけるには戦略が必要だ

    多くの組織で基本とされている合議制は、決してベストの結果を生むものではない

    イノベーションは少数意見から生まれる

    ハイリスクハイリターン型の投資に一定の予算を割り当てない限り、その企業が先細りになることは避けられない

    現代においては、書籍などで学ぶ知識だけでなく、教養としての人的ネットワークの重要性が増している

    自分の仮説と逆の考え方や事実を探し、それがどの程度信頼できるかという、反証的な視点で検証していく

    インターネットによる情報爆発は、世界をつなげるという理想と裏腹に、自分の狭い認識をお互いに再確認しあうとう真逆の社会を生むことにもなっている

    教養に一つの昨日は、アラン・ブルームの言葉を借りれば「他の考え方が成り立ちうることを知ること」にある

    多くのイノベーションは、他の異なる考え方を組み合わせることによって生まれる。そうなるとイノベーションを起こすための隠れた武器庫は、自分のしらない思考様式、学問体系、先端的な知識にならざるを得ないのだ

    何が教養か。極端に言えば、それは自分と異なる思想すべてを指す

    ローレンスJピータ教授 組織労働の法則 ある職階のなかで、成績の良い者が上位の職階に上がり、成績が悪いものはその職階にとどまる

    地方議員の位置づけ 単に地元の議会のメンバーというよりも、身近な代理人、市民向けロビイストといったほうが実は大きな可能性を秘めている

    日本という国は、初期に成功を収めても、戦略がないために最終的に失敗してしまう。だからこそ、日本人の組織は、意思決定のまずさを現場の頑張りでなんとか解決しようとする

  • 印象に残ったところメモ。
    ・(アイドルやコンサルタントでは)素質のありそうな人間をとりあえず大量採用し、才能が開花して顧客を獲得できた人間だけがパートナーになれる。→(人間の数で試行回数を稼ぐ戦略、エグイ)
    ・プレゼンテーションにおいて、最も重要なのは、「聴衆が何を求めているか」ということである。
    ・大企業と中小企業で資本生産性はそれほど変わらず、差がつくのは資本装備率だ。
    ・より高い報酬を望むのであれば、取るべきはみずからが「資本=儲ける仕組み」の形成に関わり、リスク・リターンをシェアすることで、大きなわけ前を得られるようにする。
    ・特定の時期に分野を超えて受賞が一つの大学にしゅうちゅしたり、他分野の研究者が実は友人だったりする。
    ・他のやや極端なケースを観察して、その特徴をヒントに未来を予測する「アナロジー」を活用する。
    ・最後まで騙し続けられる「カモ」を探すには、最初の段階で明らかにおかしいものを提示し、それでもおかしいと思わない人を選び出す必要がある。
    ・「裏をとる」のではなく「逆をとる」。すなわち、自分の仮説と逆の考え方や事実を探し、それがどの程度信頼できるかという、反証的な視点で確認していく。(→反証によって信頼性が高まっていくというのは科学とまったく同じ。自分の考え、アイデアに対して反証を仕掛ける。)
    ・自分の身近にすでに起きている小さな未来をたくさん持っている・知っていることが極めて重要。
    ・教養の一つの機能は、アラン・ブルームの言葉を借りれば「他の考え方が成り立ちうることを知ること」にある。
    ・隠れた武器庫は、自分の知らない思考様式、学問体系、先端的な知識にならざるを得ない。
    ・採用の本質的な失敗はそれが取り返しがつかなくなる数年後まで表面化しないから改善が進まない。(→長期の時間軸で成果が出るあらゆるものに関して通用する考え方)
    ・資本主義は資源配分の効率を高めることで「全体」のパイの拡大に最適化されているが、そのプロセスで「全員」がうまくいくわけではない。むしろ、優勝劣敗によって、システムを新陳代謝させて「全体」の効率を高める仕組みだ。
    ・企業側の宣伝文句や広告を鵜呑みにするのではなく、その商品を実際に購入している人の意見を聞く。

  • 自分のポジション、圧勝できるフィールドを見つけ、構造的に勝てるよう状況をつくる。ただ振り返ってみるとこういう領域はまだ自分にはない、、差別化を図れる武器は最低限ほしいといったところ。

    「本来、大学で学ぶべきことの一つには、解が一つとは限らない、もしくは定まっていない課題について自分で問題を設定し、仮説を立てリサーチを重ね、自分なりの結論を導き、他者に説明するということがあるだろう」

    このフレーズは、仮説思考に関する本を最近読んでいたこともあってか、個人的に響いた。色んなコミュニティに所属することで、「問題解決」という課題には何度も直面してきたから、この点は今のうちから意識しておきたい。また本書に書いてある通り、仮説を立証する際、自分に都合の良いエビデンスをかきあつめてしまうことがしばしばあり、批判的な思考が欠けがちなのでその点も。

  • 本書は、身の回りの出来事を題材に、戦略的にどのような背景があるのか、それらを一つ一つ解き明かしながら、戦略的思考とは何か、を解説している本である。

    「戦略的思考」というのは、今までの競争を全く違う視点で評価し、各人の強み、弱みを分析して、他の人とは全く違う努力の仕方やチップの張り方をすることだと筆者は言う。

    「戦略的思考」をするためには、メソッドや理論を学んだだけでは身につかず、それを実際に用いて実戦経験を積み、成否を検証するプロセスを何度も経験することが肝要と説く。

    加えて、典型的な手法や古典的な思考による「戦略」は、すぐに共有されその戦略の賞味期限が失われてしまうという「戦略のパラドックス」に陥るため、通り一遍のありふれた考え方ではなく、少し違う角度で世の中を見たり、もう少し深い部分や裏の面まで追求しようという思考態度がなければ、本当に効果のある戦略を生み出すことはできないと主張する。

    本書で展開されているように、身近な出来事や日々のニュースに対して、「戦略的に勝つ」方法を考える疑似トレーニング習慣を身に着けることで、戦略的思考を自分のものにすることができるとしている。

    本書のこの主張内容は、先に読了した『戦略「脳」を鍛える(御立尚資)』の中で「よい戦略には、定石にプラスアルファされたインサイトがあ」り、「定石を超えた戦い方のイノベーションこそが戦略の本質である」という内容と共通した考え方であり、「戦略的思考と何か」の答えがあるように思う。

    『戦略「脳」を鍛える(御立尚資)』が戦略的思考の型と解説、戦略駅に考えるプロセスの追体験に重きを置いているとすれば、本書は、身近なニュースや企業活動、政治経済の動きを戦略の見地から、裏側の種明かしをしてくれる本だと感じました。

    追記
    よくマッキンゼー出身の著名人が言う「フレームワーク」というのは、「考え方」「思考法」ということではないだろうか。

  • 言いたいことは分かる。ぼーっと生きるな、ということやな。

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著者プロフィール

京都大学客員准教授、エンジェル投資家、教育者。1972年生まれ。麻布高等学校、東京大学法学部を卒業後、大学院をスキップして直ちに助手に採用。専攻は民法。任期終了後は学界に残らず、マッキンゼーへ入社。3年で独立し、多額の債務を抱えていた日本交通の経営再建などを手がけながら、エンジェル投資家として極めて初期段階の企業を15年以上にわたって支援し続ける。京都大学では教育、研究、産官学連携活動に従事。「意思決定論」「起業論」「交渉論」の授業を担当し、人気NO.1若手教官として「4共30」講義室を立ち見に。各界において意思決定を先導するリーダーを育てることを目標に、選抜制の「瀧本ゼミ」を主宰。著作物やディベートの普及活動を通して、次世代への教育に力を入れていた。2019年8月10日永眠。

「2022年 『瀧本哲史クーリエ・ジャポン連載集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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