1998年の宇多田ヒカル (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106106507

作品紹介・あらすじ

彼女たちは何を願い、歌い続けてきたのか―― 。「史上最もCDが売れた年」に登場した、宇多田、椎名林檎、aiko、浜崎あゆみ。その歩みと関係性に「革新・逆襲・天才・孤独」をキーワードに迫る、注目のデビュー作!

感想・レビュー・書評

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  • 1998年、史上最もCDが売れた年。音楽業界が盛り上がっていたこの頃、私自身もやはりCDをよく買い、音楽を熱心に聴いた。この年にデビューした宇多田ヒカル・椎名林檎・aiko・浜崎あゆみ。特に彼女らの大ファンというわけではなかったけど、カラオケでよく歌ったり、身近な存在に感じてきた。今はCDセールスは右肩下がりで、CDは終わったと言われるけど…盛り上がりに盛り上がっていたあの98年に何があったのか、4人の彼女達の活躍の裏に何があったのかを知りたいなと思った。
    本書発売の2015年から17年前が1998年。その16年前が、「花の82年組」と呼ばれるアイドルを多数生みだした1982年。明菜や聖子、キョンキョンがデビューしたこの年と98年の対比が面白く、アラフォーにはツボでした。アイドル~アーティストへの脱皮の過程やCDの登場、小室ブームの到来~衰退と時代の変遷を辿ったところで、4人のそれぞれの分析。あくまでも浅いファンだったので、こうして語られてみると知らない事実がたくさんあった。
    国内で大成功を収めた宇多田ヒカルの、Utadaとしての海外進出の躓きの原因。
    椎名林檎がバンドの活動にこだわる理由。
    aikoのデビューにあたっての苦い経験。
    2001年、世間で大きく話題となった宇多田とのアルバム対決の、浜崎あゆみの本音。
    彼女達の軌跡と共に語られる音楽業界の真実。読んでいて、鳥肌が立ちました。大きなうねりに翻弄され、それでも己を見失わないよう舵を取る彼女らの芯の強さに脱帽。同時代に登場したということで、それぞれ何かしら関わり合いを持つ歌姫達。互いに意識し、時にライバル心を燃やし、リスペクトし合い、切磋琢磨し。特に、「EMIガールズ」の宇多田と林檎の絆にじ~んときた。全体的に過去を振り返る内容ではあったけど、読後はむしろ、音楽業界はこれからどうなっていくんだろうという不安混じりの期待の方が大きくなっていた。「おわりに」に引用されている98年のヒット曲がまた色んなことを示唆してるなと思わずにはいられなかったが…。世代によって感じ方は様々に違いないが、著者とほぼ同世代の自分にとっては、読めてよかったなと思える一冊であった。改めて、この4人の音楽を聴きたくなります。早速、本書でも取り上げられていた、浜崎あゆみが宇多田をカヴァーした“Movin' on without you”を動画で見て、評判通りの素晴らしさに胸熱でした。01年は、まさかこんな時代が来るなんて想像できなかったなぁ。彼女達の、音楽に対する真摯な姿勢に敬意を表したい。

  • 【書誌情報その他】
    判型 :新潮新書
    ISBN :978-4-10-610650-7
    C-CODE:0273
    整理番号:650
    発売日:2016/01/16

    「1998年。史上最もCDが売れた年。宇多田ヒカル、椎名林檎、aiko、浜崎あゆみがデビューした年。偉大な才能がそろって出現した奇跡の年と、4人それぞれの歩みや関係性を、「革新・逆襲・天才・孤独」をキーワードに読み解く。はたして彼女たちは何を願い、歌い続けてきたのか? なぜ今もなお特別な存在であり続けているのか? 苦境の音楽シーンに奮起を促す、注目の音楽ジャーナリスト渾身のデビュー作!」
    http://www.shinchosha.co.jp/book/610650/


    【目次】
    第一章 奇跡の1998年組
    1982年、1998年、2014年/花の82年組/「アーティスト」という呼称はいつどこで生まれたのか?/男子! 女子! そうでない人! /「アイドル再生工場」としての小室哲哉/そして、「1998年の奇跡」が起こった

    第二章 1998年に本当は何が起こっていたのか?
    人類史上最もたくさんCDを買っていた1998年の日本人/CD信仰とは何だったのか?/等価になった「現在の音楽」と「過去の音楽」/過大評価されている渋谷系/小沢健二と「夜空ノムコウ」/小室ブームの終焉/1998年のエアポケット

    第三章 1998年の宇多田ヒカル
    255万枚売れたのに1位にならなかった「Automatic」/タイアップ万能時代の終わり/8センチ・シングルの終わり/深夜のテレビスポット/東芝EMIに提示された条件/ニューヨーク生まれ、スタジオ育ち/編曲家としての宇多田ヒカル/Utada作品に違和感を覚える理由/音楽メディアの終わり

    第四章 椎名林檎の逆襲
    2014年の椎名林檎と宇多田ヒカル/東京事変とは何だったのか?/2020年東京オリンピックにこだわる理由/Jポップ職人としての椎名林檎/東芝EMIガールズと東芝EMIボーイ

    第五章 最も天才なのはaikoかもしれない
    1995年のaikoと椎名林檎/「ヤマハのコンテスト」と「スター誕生! 」/音楽家は二度生まれる/aikoと音楽ジャーナリズム/Jポップのグラウンド・ゼロ

    第六章 浜崎あゆみは負けない
    2015年の浜崎あゆみと宇多田ヒカル/「世紀の歌姫対決」が残した悔恨/日本のマイケル・ジャクソンとしての浜崎あゆみ/彼女が見つけた居場所

    第七章 2016年の宇多田ヒカル
    岐路に立たされる宇多田ヒカル/彼女たちはラッキーだったのか?/絶望も希望もない

  • ただの宇多田論ではない。
    著者はロッキングオン出身の音楽ジャーナリストで、単著としてはこれがデビュー作。
    史上最もCDが売れた年=1998年にデビューした宇多田ヒカル、椎名林檎、aikoを「日本の音楽シーンにおけるトップ3の才能」と評価し、ビジネス論や業界ウラ話、音楽理論的な分析に偏ることなく、ポップ・ミュージックの歴史の中にこの3人の「音楽家」を位置付けながら、ある種の「史観」を呈する思索的な音楽評論である。
    何より、この本を読んでいると椎名林檎の「ありあまる富」が聴きたくなったり、テレビから流れるaikoの声がぐっと際立ったりする効果がある。そして、今年予想される宇多田ヒカルの本格復帰が一層待ち遠しくなるのだ。
    だから、宇多田ヒカルに特別興味ない人にも薦めたい。きっと、聴き直してみたくなる。ある視点の導入で見える世界が変わる。これが、ジャーナリズムの力だ。

  • Kiroro、モーニング娘。、MISIA(この2組は同日!)、浜崎あゆみ、椎名林檎、鈴木あみ、aiko、宇多田ヒカル……筆者が「奇跡の1998年組」と名づけるまでもなく、98年デビューの女性アーティストたちは今もほぼ、一線で活躍している。
    98年の音楽ソフト売り上げから算出すると、平均して1人が月に2枚のCDを購入し、年間に3万円を使っていた。
    人口比をふまえれば、 この年の日本人は「1人あたり世界でいちばんCDを購入していた国民」である。欧米各国でも、97〜99年は歴史上もっともCD出荷枚数が多い3年間だった。つまり98年の日本人は「人類の歴史が始まって以来、もっとも多くの音楽ソフトを買っていた人々」ということになる。

  • その業界にどっぷり嵌っているとなかなか客観的に物事を捉えられなくなる傾向がある様に感じる。確かに世間的に桁外れな販売額や動員数などを記録しているのだが少し大仰の様に感じた。
    しかしながら偶然だと思えていたモノが時代背景などの必然であると言う立証は大変興味深く読めました。

  • 1998年が既に20年前という事にびっくり。
    確かに皆がCD買いまくって、自分自身も相当なお金を音楽に投下していた自覚が有ります。本書によれば日本で一番CDが売れた年がこの1998年だったそうです。
    そんな1998年にデビューを飾った「宇多田ヒカル」「椎名林檎」「aiko」「浜崎あゆみ」の4人にスポットを当てて、当時の音楽シーンと今の音楽シーンの在り方の違いを論じています。
    これからはCDは終わっていくメディアになってしまいましたが、僕ら世代はあの円盤にどれだけ情熱を傾けたか。自分のCD棚を見上げると感慨深いです。
    ちなみに1998年の売上枚数は下記の通りです。めちゃくちゃ懐かしいですがさほど古く感じないのは自分の青春時代から途切れ目無く耳にしているからなんでしょう。

    1位 誘惑 GLAY 161.2万
    2位 夜空ノムコウ SMAP 157.1万
    3位 my graduation SPEED 147.5万
    4位 タイミング BLACK BISCUITS 145.1万
    5位 SOUL LOVE GLAY 137.2万
    6位 長い間 Kiroro 118.2万
    7位 HONEY  L'Arc~en~Ciel 117.3万
    8位 愛されるより 愛したい KinKi Kids 113.5万
    9位 Time goes by Every Little Thing 113.2万
    10位 全部だきしめて/青の時代 KinKi Kids 112.7万

    これは1978年なのですが突然いにしえの雰囲気が出てきます。でも僕の20歳上の人は1998年と陸続きに見えるんでしょう。今の24才が1998年のランキング見たら同じく古臭い感じを受けるんですかね。

    1位 UFO ピンク・レディー 155.4万
    2位 サウスポー ピンク・レディー 146.0万
    3位 モンスター ピンク・レディー 110.2万
    4位 君のひとみは10000ボルト 堀内孝雄 91.9万
    5位 微笑がえし キャンディーズ 82.9万
    6位 透明人間 ピンク・レディー 80.0万
    7位 カナダからの手紙 平尾昌晃・畑中葉子 70.0万
    8位 Mr.サマータイム サーカス 65.2万
    9位 時間よ止まれ 矢沢永吉 63.9万
    10位 わかれうた 中島みゆき

  • 80年代のアイドル全盛期と対比しても明らかなように、人気で足の長い人は、やはり同性の支持が強い。それに加えて宇多田ヒカルが時代にもたらしたもの=セルフプロデュース。そして彼女を支持した背景には、その魅力を誰もが自然と認識していたからに違いない。その意味では個人的に「倉木麻衣」の偉大さも強く訴えたい。

  • 日本の音楽史上、最もCDが売れた1998年。宇多田ヒカル、椎名林檎、aiko、浜崎あゆみの四人が揃ってこの年にデビューしていた。彼女たちの活動を追っていくことで、音楽業界の現状を浮かびあげる。

    「アーティスト」っていう言葉が誰が使いだしたのかも面白く読めた。

  • この新書に書かれている四人のミュージシャンが世に出てから今までをリアルタイムでなんとなくは見ているだけの僕でも十二分に楽しめる一冊になっていた。
    知らない世代、1998年以降に生まれた人たちにとっては生まれて物心ついたらいた人たちなのでその頃にCDが売れまくっていたという時代のあと、デジタルネイティブの人たちはどう読むのだろう。
    1998年から18年が経ち、どうやら今年宇多田ヒカルが復活しそうだという年に刊行されたことの意味も大きいだろうが、こうやって四つの軸から時代の流れがわかる、記された本はなかったのだと思う。


    「世界がわれわれを無視続けるのと同じように 
     われわれもまた世界を無視しつづけているわけだ 
     しかし例えば一冊の本を読むことはそれに抗うことだよ
     一冊の本を著すこと 
     一篇の詩を詠むことは 
     世界に無視され消えてしまうことこばむ行為だとわたしは思う 
     広大すぎる世界に圧倒されないようにふんばっているんだな」という西島大介さんの『世界の終わりの魔法使い』のセリフを思い出す。

  • 1998年の宇多田ヒカルたちデビュー当時の様子がよくわかった。
    最近と当時の比較も書かれてたが、
    最近の音楽事情が、本書の執筆時のことなので、最近の音楽事情についての考えが、段々時代遅れになってるかもしれない。

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著者プロフィール

1970年、東京都生まれ。映画・音楽ジャーナリスト。音楽誌、映画誌、サッカー誌の編集部を経て、2008年に独立。著書に『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(くるりとの共著、新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。編著に『nakata.net ITALY WALK』(角川書店)、『ap bank fes ‘09 official document』(ポプラ社)など。

「2018年 『日本代表とMr.Children』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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