日本語通 (新潮新書)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106106606

作品紹介・あらすじ

藤原不比等が“プディパラのプピチョ”? なぜ、太平洋は「太」で、大西洋は「大」なのか? 遣唐使やザビエルの通訳は誰? 「ら抜き言葉」の文豪とは? ……思わず人に伝えたくなるウンチクから、スリリングで奥深い日本語の世界に誘う。

感想・レビュー・書評

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  • 事実や学説を踏まえて、詳細に日本語について書かれている。雑学的な書き方ではない。

    “藤原不比等は、「プディパラ(の)プピチョ」と発音されていた”

    “江戸時代、参勤交代で地方からやってきた大名などは、江戸城内でどのような話し方で会話をしていたのであろうか。全国各地の方言が飛び交い、話が通じるのは到底無理だと想像できる。それを解決したのが「謡曲(能楽)」という共通の教養であった。”

  • ■なぜ太平洋は「太」で大西洋は「大」か。
    ・江戸末期から明治時代にかけて作られた言葉
    ・Pacific Ocean(太平洋)のPace(パーチェ:ラテン語)はPeace(平和)の語源
    ・Pacific Ocean=太平(泰平)の洋(海)を意味する
    ・マゼランが世界一周に成功した際,太平洋をMare Pacificumと呼んだ
    ・Mareはラテン語の「海」でPacificumはラテン語の「太平・泰平」
    ・幕末「太平洋」或いは「泰平洋」「太平海」と書かれていた
    ・明治6年文部省編「地理初歩」に「太平洋」と記載されたことにより定着(大西洋も同)
    ・江戸時代までは「伊豆沖」「江戸沖」「宮城沖」などそれぞれの地域の「沖」と呼ばれた
    ■日本に漢字が伝わり漢字を学び始めたのは,およそ500年頃と考えられている。
    ■漢字の数は異体字を含めて延べ数で言えば10万字を超す。
    ・小学校で習う漢字は1,006字
    ・日常生活に必要な感じの数は常用漢字2,136字
    ・漢和辞典には訳一万字が掲載
    ・論語に使われる感じの異なり字時は1,500字
    ・科挙の必須科目であった五経で使われる漢字の異なり字数は4,500字
    ■「国字」とは日本で作られた字
    ・「峠」「榊」「辻」「凧」「畑」「哘」(さそう)など
    ・国字の数は126字(伴直方の国字考),明治以降に増えたものを入れると1,500字
    ・独自の漢字を作るのは日本だけではなく朝鮮半島やベトナムなどでも行われた
    ■「田」は中国では水田ではなく「畑」を表す。
    ■「鮭」は中国では「調理された魚菜」「フグ」「鮭」の三つの意味で使用される
    ■古代日本人が使っていた仮名に「万葉仮名」があり,これは「ひらがな」や「カタカナ」が生まれる前の仮名。
    ■キラキラネーム
    ・女:姫星(きてぃ),七音(どれみ),金星(まあず),美姫(みっふぃー),桃色(ぴんく),揚蝶(あげは)
    ・男:光宙(ぴかちゅう),大熊猫(ぱんだ),雷音(らいおん),本気(まじ),熱寿(ひいと),幸生大(しいた)
    ■万葉の時代,藤原不比等(ふじわら(の)ふひと)は「プディパラ(の)プピチョ」と発音された。
    ・「母」は「パパ」と呼ばれる
    ■蝶々は「てふてふ」
    ・平安時代に前期に使われ始めるひらがなやカタカナには濁音を表す「゛」の記号はなかったし,促音を表す小さな「ぃ」「ぅ」「っ」のような字はなかった
    ・「ちょうちょう」は「てふてふ」と書くしかなかった
    ■森鴎外は「ヴィ」と書けなかった。
    ・当時「う」に「゛」を打つ記号はなかった
    ・昭和29年国土審議会で外来語の「va vi vu ve vo」は「バビブベボ」と書くということが決まった
    ・現在のように「ヴァ ヴィ ヴ ヴェ ヴォ」を使うことができるようになったのは平成3年2月7日に国語審議会が答申した「外来語の表記」で同年6月28日に内閣告示に号が公布されて以降のこと
    ■日本は「ニホン」か「ニッポン」か。
    ・漢字で「日本」と書かれた初出は「旧唐書」で「日本国は倭国の別種なり。其の国,日辺に在るを以て故に日本を以て名と為す」と記される
    ・「日本」の発音は当時の中国語では「日」はNiet(ニェット),「本」はPuen(プァン)で二つ合わせて「ニェットプァン」
    ・当時の日本語には喉の奥から息を出して発音する「h」はないため「ニホン」という発音ではなかったことは明らか
    ・日本語では「P」の音がなくなりハ行は「ファ フィ フゥ フェ フォ」と発音されていたため「ニフォン」と呼ばれていた
    ・唐時代の発音「ニェットプァン」から,中国語経由のラテン語で「ジッポン」,日本では「ニフォン」へと変化
    ■「ツ」「つ」はいずれも漢字の「川」が元になって作られた。
    ・「川」は呉音でも漢音でも「セン」と発音するが,隋の初期時代は「ツィェン」と発音
    ・750年頃には「ツィゥェン」と発音されるように変わり,780年から800年頃には「チュィアン」,宋代には「チュアン」と変化
    ・当時の日本語の「タチツテト」は「チャ チィ チュ チェ チョ」と発音され「チュ」と発音していた「ツ」を書くために「川」の字が選ばれた
    ■「カタカナ」は820年頃,「ひらがな」は880年頃に作られた。
    ・摂関政治が行われるようになり女性を中心とした文化が花開く頃「ひらがな」が作られ,「古今和歌集」が「ひらがな」で書かれた
    ■明治時代になると方言によって通じない日本語をどうするかという大きな問題が議論された。
    ・方言改良に最も大きな役割を果たしたのが「五十音図」
    ■清少納言は(「春はあけぼの」の冒頭:「春はあけぼの。やうやう白くなり行く山ぎは」を「パルパ アケボニョ イャウイャウ ツィロク ニャリイゥク イャマギパ」と発音していたと考えられる。
    ・清少納言の時代から百年ほど経った平安末期から鎌倉初期になると,もう当時の発音は既に変化し,「ファルワ アケボノ ヨウヨウ シロク ナリユク ヤマギファ」となった
    ■日本語には英語と同じ,或いはそれ以上,少なくとも六種類の時制を表すための助動詞があった
    ・「き」:過去の一点を表す
    ・「けり」:過去から現在に至る時間の経過を示す
    ・「ぬ」:今まさに規定となりつつある時間
    ・「たり(り)」:「~している」という継続して存在していることを表す
    ・「つ」:「さっき(ついさっき)~してしまった」という時間を示す
    ・「けむ」:過去の推量と呼ばれるもので「~たであろう」「~たろう」と訳される
    ■室町時代以降,まず「き」と「ぬ」という過去を表す助動詞は消滅し,次に「つ」が失われ,「たる」「たり」という助動詞が残った。
    ・これが現代語の「た」が生じた原因の一つ
    ・「たる」「たり」がそのまま「た」になったのではなく,「き」「ぬ」「つ」「けり」などのあらゆる「過去」が凝縮して生まれたもの
    ■「外郎」は元々官名。
    ■古代には日本語固有の書き言葉というものはなく,万葉仮名と呼ばれる漢字を当て字式に使って書く方法しかなかった。
    ・飛鳥時代から奈良時代などは,話している言葉を聞いてどのように万葉仮名を当てて書くかということを中国人から習わなければならなかった
    ■「ルビ」は元々宝石のルビーを意味するもの。
    ・イギリス,アメリカ出版業界の隠語で,それぞれ,6.5ポイントの活字を「エメラルド」
    ・5ポイントの活字を「パール」
    ・4.5ポイントの活字を「ダイアモンド」
    ・5.5ポイントン活字を「ルビー」
    ・明治時代の活字の右横に付ける振り仮名は5.5ポイントが使われたことから「ルビ」という言葉が創られた
    ■空海は「ん」を創った人。
    ■明覚(1056年~没年不詳)は五十音図を創った人
    ■本居宣長の投げかけた問題のうち日本語として最も大きなことは書かれた言葉と話された言葉は一致しているのかどうかということ。
    ・1776年に出版された「字音仮名用格」という本で五十音図の「を」と「お」の混同を解決した

  • 日本語が、中国から感じを取り込み、かなを作り出し、欧米の国と交流するために次のステップに進む。
    変化するのが言語だけど、日本語はちょっと早すぎないか?

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著者プロフィール

1963年、長崎県佐世保市生まれ。大東文化大学文学部中国文学科教授。中国山東大学客員教授。博士(中国学)。大東文化大学文学部卒業後、同大学院、フランス国立高等研究院人文科学研究所大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。専門は、文献学、書誌学、日本語史など。著書に『心とカラダを整える おとなのための1分音読』(自由国民社)『文豪の凄い語彙力』(さくら舎)ほか多数。

「2020年 『語感力事典 日常会話からネーミングまで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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