言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 3002
レビュー : 414
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106106637

感想・レビュー・書評

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  • 世間的には『言ってはいけない』ことと言われているかもしれないけれども、私のなかでは、「世の中とはこういう原理で成り立っている」のだよという既知の了解の話しでもあった。
    具体的な遺伝学的な実証データや参照例は、確かに驚かせれものであったり、極端なデータの一部を切り取ったのではないかと疑いたくなるものもあったけど、この本の世界で描かれていることは厳しくも映るが世の中の掟であるのだというこたは、科学が徐々に明らかにしてきている。
    ただ、人間がこの世の中で繁栄するためにはそれでは酷だから物語を作り、神を想像した。そして希望という概念を創造し、共有した。
    それでも、物語では覆い隠しきれない掟の一部はつねに現実の生として付きまとってくる。
    「見えないフリをするのはもうやめよう!」
    「都合よく脚色された世の中に閉じ籠もってはいけない。」と気づかさせる本でもある。

  • 人類進化論の視点で、研究データをもとにした遺伝と環境における社会的な影響について書かれている。馬鹿や犯罪は遺伝するのか、親の収入と子供の学歴の関係など知能格差についてや、美人とブスの経済的格差、人種や性についても触れており、幅広く詳細且つ明瞭で素人にも分かりやすい。「分かりやすい」が「抵抗無く受け入れられる」内容かは個人により異なると思う。著者自身そこは前提とし、オブラートに包めない内容だからこそ文体に気を配っている印象。冒頭から「最初に断っておくが、これは不愉快な本だ」とあり、本文にも幾度となく「不愉快に思うひとがいるかもしれないが」「抵抗があるかもしれないが」といった記述が多い。もしも実際に公的な場所で著名人が話したり、教育の場で親や教師が話すとバッシングを受けるような「社会的タブー」とされる内容が大半を占めている。けれども個人的にはとても興味深い話ばかりで全く抵抗無く、寧ろとても楽しめたし納得できた点も多々あった。軽々しく人に「言ってはいけない」ことだからこそ、多くの人に読んで欲しいと思えた。

  • 最初に不愉快な本と断りを入れているが、これだけ痛快に書いてくれると逆に気持ちがいい。

    まえがきによると本書で書かれていることにはすべてエビデンス(証拠)があるのですが、該当される読者がすべて該当に当たるのかと言えば必ずしもそうではない。

    大切なのは理解をすることであって、絶望することや期待することではないってこと。

    環境と遺伝があたえる影響は、感覚的にはどちらも半々だと思えていたことが、研究の結果どちらの比重が大きいのかを(親としては残酷に感じる!?)知れたことは学びになった。

    読み終えたからと言って、日常に何か変化が起こったわけではないけれど、読んでおいて良かったと感じた一冊。

  • 皆うすうす分かってはいるけれど、口に出すのはためらわれるようなタブーを、データの裏付けをもとに書いてある本。非常に面白かった。
    例えば、頭の良さや犯罪性はどの程度遺伝するのか、性格や能力に子供時代の家庭環境はどの程度影響するのか双子を違う家で育てて検証したり、美人とブスの生涯経済格差や幸せ度比較など。興味深かったのは、企業の社長の顔を見ただけで、その会社の収益がある程度予想できるというところ。自分の実際に知っている範囲で考えてみると、確かにある顔の特徴を持った人が企業トップについているケースが多い。また、反対の特徴の人は心優しく、悪く言えば向上心が少ない。この現実は男性のもつ(社長の多くは男性である)あるホルモンの量に関連するそうだ。
    書評は酷評が多いようだが、一読の価値はあると思う。

  • いろいろなことが遺伝で決まると言うような話だった
    アイデンティティーは周りの集団(友達)によって形成されるところも納得だった
    知能についても遺伝による影響が大きい
    男性と女性で得意な分野(空間把握等)が違うのは分泌されるホルモンの違いである

    遺伝によって影響が受けるものと友達によって影響受けるものこの2つしかない
    家庭の影響はないとのこと

  • 先に読んだ「幸福の資本論」に同じ内容が一部記載されていたが、総じてタイトル通りの内容で読みごたえがあった。(実際は、「幸福の資本論」に一部同じ内容が転用されているが、それをベースに新たな展開が記載されている)
    橘氏の著書はどれを読んでも納得感のある内容で楽しみにしている。

    ・言語性知能は家庭環境の影響を強く受けるものの、それを除けば、一般知能の8割、論理的推論能力の7割が遺伝で説明できるなど、認知能力における遺伝の影響はきわめて大きいのだ。
    ・心拍数の低い子どもは刺激を求めて反社会的な行動に走ることが多い。覚醒度の低さが生理的に不快で、覚醒剤のような麻薬に手を染めるのかもしれない。だがもしその子どもが知能や才能に恵まれていれば、社会的・経済的にとてつもない成功を手にするかもしれない。そもそもべンチャー企業の立ち上げなど、恐れを知らない人間にしかできないのだ。
    ・「発汗しない子ども」は、親がどれほど厳しくしつけても、良心を学習することができないのだ。
    ・「ロンブローゾ・プログラム」という犯罪者早期発見システムが運用きれる近未来。このプログラムでは、18歳以上の男性は全員、病院で脳スキャンとDNAテストを受けなくてはならない。「基本5機能」の検査は、①構造的スキャンによる脳の構造の検査、②機能的スキャンによる安静時の脳の活動の検査、③拡散テンソルスキャンによる白質の統合度と脳の接続性の検査、④MRスペクトロスコピーによる脳の神経化学の検査、⑤細胞機能の精査による細胞レべルでの2万3000の遺伝子における発現状態の検査、からなる。ちなみにこれらの検査は現在の医療技術で可能なもので、それによってLP-V (ロンブローゾ陽性:暴力犯罪)に属すると評価されたものの79%は重大な暴力犯罪を、LP-S(ロンブローゾ陽性:性犯罪)の82%はレイプか小児性犯罪を、LP-H(ロンブローゾ陽性;殺人)は51%は殺人を、5年以内に侵すと予測できる。これは現実のデータから推計されたものだ。
    ・ギリスでは2000年に、精神科医たちの異議を無視して「危険で重篤な人に格障害(DSPD)」に対する法律が制定され、その法のもとで危険だと考えられる人物を、たとえなんら犯罪をおかしくいなかったとしても、警官が逮捕し、検査と治療のためと称して施設に送ることができるようになってもいる。
    ・胎児の脳に悪影響を与える重金属には、鉛以外にもカドミウム、マンガン、水銀など人さまざまなものがある。だがそれよりも問題が大きいのは妊婦の喫煙と飲酒だ。現在では、妊娠中の喫煙は胎児の脳の発達に悪影響を及ぼすばかりでなく、高い攻撃性や行為障害を引き起こすことが知られている。
    ・わたしたちは、面長の顔と幅の広い顔を見せられたとき、後者を攻撃的と判断する。そしてこの直感は、男性に関してほかなり正確だとわかつている(女性については、面長と幅広で攻撃性に差はない)。研究者は、男性の顔の幅はテストステロンの濃度に関係しているのではないかと考えている。テストステロンは代表的な男性ホルモンで、この数値が高いほど競争を好み、野心的冒険的で攻撃的な性格になる(当然、性欲にも強く関係している)。
    ・テストステロンの濃度のちがいは遺伝的な要因もあるが、それよりも胎児のときの子宮内の環境から大きな影響を受けている。胎児は子宮のなかでさまざまなホルモンに曝されていて、その影響は脳だけでなく身体的な特徴としても現われるのだ。広く知られているのは人差し指と薬指の比率で、女性はその長さがほぼ同じだが、男性では薬指が長いことが多い。人差し指と薬指の長さのちがいは、テストステロン値が高いほど大きくなる。テストステロンの濃度が高い男性ほど顔の幅が広くなり、攻撃的な性格が強くなるのだ。
    ・平均より上と評価された女性は平凡な容姿の女性より8%収入が多かった。それに対して平均より下と評価された女性は4%収入が少なった。経済学ではこれを、美人はOOfのプレミアムを享受し、不美人はtsのべナルテイを支払っていると考える。
    ・加代女性の平均年収を300万円とすると、美人は毎年皿万円のプレミアムを受け取り、不美人はじ万円のぺナルテイを支払う。ただしこの計算も、一生で孝えるとかなり印象が変わってくる。大卒サラリーマンの生涯賃金は(退職金を含め)約3億円とされているから、美人は生涯に2400万円得し、不美人は1200万円も損して、美貌格差の総額は3600万円にもなるのだ。
    ・さらに身も蓋もないことに、美貌と幸福の関係も調べられている。そして予想どおり、美人はよい伴侶を見つけてゆたかで幸福な人生を手に入れ、不美人はブサイクな男性と結婚して貧しく不幸な人生を送ることが多いという結果が出ている。だが幸いなことに、この差も一般に思われているほど大きくはなく、上位3分の1の容姿に入るひとが自分の人生に満足している割合は55% (すなわち45%は不満に思っている)で、下から6分の1の容姿でも45%が自分の人生に満足している。この結果を肯定的にとらえれぱ、美形でも半分ちかくは不幸になり、ブサイクでも半分ちかくは幸福になれるのだ。
    ・これは男性が女性の若さや外見、すなわち生殖能力に魅力を感じるからで、これもて女性は職烈な「美」の競争へと駆り立てられる。それに対して女性は、男性の外見以外にも、社会的な地位や権力、資産に魅力を感じりる。これはブサイクな男性も、努力によってそのハンディを乗り越えられるということだ。
    ・男性の脳は機能が細分化されていて、言語を使う際に右脳をほとんど利用しないが、女性の脳では機能が広範囲に分布しており、言語のために脳の両方の半球を使っているのだ。こうした脳の機能的ちがいは、興味や関心、知能や感情などさまざまな面に影響を及ぼす。
    ・「男はモノを相手にした仕事を、女はひととかかわる仕事を好む」というキブツの大規模な社会実験の結果は、男女の志向のちがいが(男性中心主義的な)環境ではなく、脳の遺伝的・生理的な差から生じることを示している。男らしさや女らしさは進化が生み出した脳のプログラムなのだ。
    ・日本はもちろんのこと、欧米でも女性の平均収入は男性より低く、組織のトップの座げを占めている人数も少ない。だが先進国で男女の満足度を調べると、いつの時代でも女力性のほうが一貫して高いことが知られている。その一方で、イギリスの2万5000人平の女性公務員を対象にした調査によれば、90年代前半以降、女性の仕事に対する満足度男が下がっているが、男性の満足度はほぼ変わっていない。女性が男性と異なる職業選択をしていたときには、女性は男性より幸福度が高かった。だが男女同権で女性の社会進出が進んだことによって、人生の満足度も男性と同じレべルまで下がってしまったのだ。その説明のひとつは、たとえ高学歴でも、女性は男性に比べて自信を持つことが苦手だというものだ。
    ・最新の遺伝学や脳科学の知見は、男と女では生まれつき「幸福の優先順の位」が異なることを示唆している。男性は競争に勝つことに満足を感じるが、女性の場合、家庭と切り離されると人生の満足度が大きく下がってしまうのだ。「平等な社会」より、高い知能と共感能力を持つ女性が有能な医師や弁護士、教師や看護師・介護士として活躍できる自由な社会のほうがずっといいことは明らかだろう。
    ・男と女の脳には生得的なちがいがあり、その結果、男の子と女の子では見え方や聞こえ方がちがい、遊び方がちがい、学び方がちがい、けんかの仕方や世界の見え方もちがう。だとしたら、男の子と女の子はそれぞれの適性に合わせ、別々の学校で教育したほうがずっと自然かもしれない。
    ・共学の公立校で、校長の判断で男子と女子のクラスを完全に分けたところ、常習欠席は3分の1に減り、標準テストの点数は15%上昇し、大学の進学率もほぼ倍になった。そればかりか、この「改革」で10代での妊娠の割合がいちじるしく減少した。以前は1年につき平均15人ほどいたのが2人ほどになったのだ。女子校では共学に比べて生徒本人の望まない妊娠が少ないことは以前から知られていた。
    ・共学では、男子と女子は個人というよりも、それぞれが属するグループの地位によって付き合う相手を選ぶ。グループでいちばん人気のある男の子は、おなじくグループでいちばん人気のある女の子とデートする、というように。交際がグループ単位だと、どこに行くにも、なにをするにもいっしょになるのだ。もしボーイフレンドにふられると、そのことは即座に友だち全員の知るところとなり、女の子同士の関係、すなわち学校での社会的アイデンティティそのものが危うくなるのだ。一方、男の子にとっても、他の男の子がガールフレンドとセックスしているのに、自分だけがセックスできないと、グループ内での地位が危機にさらされることになる。当然彼は、「愛情の証」として、執勘にガールフレンドにセックスを求めるようになるだろう。そうなると彼女は、友だちグループの関係を壊さないために、それを受け入れるしかなくなる。共学では、こうした「社会圧力」が望まない妊娠へとつながっていくのだ。
    ・それに対して男女別学の学校では、女の子の友だちグループは、ボーイフレンドの友だちゲループとは切り離されていることが多い。の関係はずっと個人的なものになるだろう。女の子の友だちは、彼女にボーイフレンドができたことには気づくだろうが、毎日学校で顔を合わせるわけではないからたいして興味を持たないのだ。その結果、女子高の女の子は、性的な意思決定に対して自律性を保てるようになる。ボーイフレンドからのセックスの強要を断ったとしてもそれが女の子同士の関係に影響を与えるわけでよなく、男の子にふられたとしても、学校での友だちづき合いはこれまでと同じようにつづいていくのだ。
    ・動物学者は、ヒトの性行動がきわめて特殊なことに早くから気づいていた。ヒトのメスは、排卵を隠蔽して生殖可能な時期をわからなくし、受胎できる結かどうかにかかわらずセックスできるよう進化した。メスの排卵期を知ることができなくなったオスは、いっでもどこでも発情してセックスを求めるようになった。この性への妄執が、知能の進化や文化の成立をもたらしたと考える研究者も多い。
    ・ヒトには、乳幼児が独り立ちするのにきわめて長期の養育が必要になるという、もうひとつの際立った特徴がある。この場合メスは、遺伝子の優劣だけでオスを選択するわけにはいかなくなる。一夫多妻で他の多くのメス(ライバル)とひとり(1匹)のオスを共有したのでは、オスからじゅうぶんな支援を受けられない恐れがあるからだ。10の資源を持っているオスと、4の資源しか持たないオスでは、当然、10の資源のほうが好ましい。だがこの10の資源を3人のメスで分け合うのなら、4の資源のオスを独占セしたほうが経済的に合理的なのだ。これが、ヒトの社会で一夫一妻制が広く観察される理由だとされている。
    ・同じメスと複数回交尾したオスにとっては、自分の精子はじゅうぶんに注入したのだから、それ以上の努力は資源の無駄づかいだ。それに対して別のメスとの交尾は、遺伝子のコピーを増やす新たな機会を提供してくれる。そこで「利己的を遺伝子」は、精子を有効活用して子孫の数を最大化するよう、同じメスとのセックスに飽きたり、新しいメスに興奮したりするプログラムを本能に組み込んだのだ。
    ・一夫一妻制におけるメスの最適戦略は、オスによる嫉妬の報復を避けながら、他人の子どもを自分たちの子どもだと巧みに偽って育てさせることだ。
    ・セックスをモノと同一視するのは抵抗があるかもしれないが、男性であれば、自分の若い頃を考えれば誰でも心当たりがあるだろう。「受け入れてくれる(やらせてくれる)」女の子はモテるのだ。そうなると、道徳的な女の子はカレシ獲得競争できわめて不利な立場に置かれることになる。好きな男の子がいたとしても、セックスを拒んでいると、カレは「やらせてくれる」女の子のところに行ってしまうのだ。
    ・ユニクロの登場でフリースやジーンズなどカジュアルウエアの価格が大きく下落したように、一部の女の子がひにんを条件にカジュアルセックスを楽しむようになると、それにひきずられて性市場における女の子のセックスの価格も下落してしまう。このようにして、保守的で道徳的な社会であっても、多くの女の子が婚前交渉に応じざるを得なくなる。
    ・性の高学歴化が低学歴の女性の性戦略をきわめて困難なものにしている。高学歴で高所得の女性は、自分に釣り合った高学歴で高所得の男性とカップルになろうとする。男性は一般に、女性に若さや美貌を求めることが多いが、それでも低学歴の女性が高学歴の女性との競争に勝ち残るにほかなりの資質を持っていなければならない。高学歴の男性も(女性ほどではないとしても)高学歴の相手と家庭をつくる傾向があるためで、一時のロマンスなら若さと美貌でじゅうぶんだろうが、長期の関係を考慮すると、趣味や噌好、家庭環境がまったくちがう相手はやはり億劫なのだ。こうして高学歴の男性と高学歴の女性が結婚し子供をつくると、(グローバル資本主義の陰謀などなくても)ごく自然に社会の経済格差は拡大していくだろう。次に問題なのは、いまやかなりの比率の男性が学歴社会から脱落しっっあり、高学歴の女性の恋愛市場が過当競争になっていることだ。あぶれた女性は「恋人なし」になるか、低学歴の男性から自分の好みに合う相手を見つけるほかはない。
    ・高学歴の男性が稀少となりつつある現代の知識社会では、低学歴の女性は人種にかかわらずきわめて不利な状況に置かれている。その結果、母子家庭が増えたり、独身で低所得のまま老年を迎える女性が増えると経済格差はますます広がり、社会は不安定化するだろう。これはとても難しい問題だが、経済学的には、こうした状況を大きく改善する方法がひとつだけあるとアドシェイドはいう。それは一夫多妻制の導入だ。
    ・成人したゴリラのオスは体重200キロ近くになるが、ぺニスの長さは約3センチで皐丸は大豆ほどの大きさだ。なぜゴリラが立派なべニスや大きな皐丸を持っていないかというと、オス同士の競争はその前に終わっていて、セックスにコストをかける必要がないからだ。
    ・それに対して乱婚のボノボは、ゴリラの5分の1の体格(平均体重40キロ)にもかかわらずべニスの長さは約3倍で、畢丸にいたってはLLサイズのタマゴくらいの大きさだ。ボノボがなぜ巨大な畢丸を持つようになったかというと、身体の大きさや力の強さではなく、精子レべルで他のオスと競争しているからだ。1頭のメスを複数のオスで共有するなら、多量の精子を生産できるほうが、自分の精子が子宮に到達できる可能性が高まる。
    ・それでは、ヒトのオスはどうなっているのだろう。皐丸はゴリラやテナガザルよりも大きいが、ボノボやチンパンジーよりも小さい。これもまた、ヒトの本性が一夫多妻でも乱婚でもなく一夫一妻制に近いことの証明だとされてきた。ヒトのペニスはボノボチンパンツーと比べて2倍近く長くて太いし、ぺニスの先端に亀頭を持つのも霊長類ではヒトだけだ。一方で、霊長類のなかで、発情期にかかわらず交尾し、性行為をコミュニケーションの道具に使うのはヒトとボノボだけだ。そのボノボは、一夫一妻制のテナガザルや一夫多妻制のゴリ一フより進化的にはるかにヒトに近い。従って、ヒトの本性は一夫一妻制や一夫多妻制ではなく、(ボノボと同じ)乱婚である」。
    ・ヒトの本性が乱婚だというきわめて説得力のある証拠のひとつが、男性器の構造だ。ヒトのぺニスは乱婚のチンパンジーやボノボよりも長く、太く、先端にエラがついている。ペニスと同じかたちをしたものをゴムの管のなかで激しく動かすと、管のなかに真空状態が生じ、内部の液体が吸い出されるのだ。男性のべニスと性行動は、その特徴的なかたちとピストン運動によって、腔内に溜まっていた他の男の精液を除去し、その空隙に自分の精子を放出して真つ先に子宮に到達かできるよう最適化されているのだ。
    ・男性が短時間でオルガスムに到達するのは、女性が大きな声をあげる性交が危険だからだ。旧石器時代の男にとっては、素早く射精することが進化の適応だった。それに対して女性には、大きな声をあげることに、身の危険を上回るメリットがあったはずだ。それは、他の男たちを興奮させて呼び寄せることだ。これによって旧石器時の女性は、いちどに複数の男と効率的に性交し、多数の精子を腔内で競争させることができた。そのためには、よがり声だけでなく、連続的なオルガスムが進化の適応になるにちがいない。
    ・江戸時代までの日本の農村には若衆宿のような若者たちの共同体(コミューン)があり、夜這いによる性の手ほどきや祭りの乱交が広く認められていた。こうした風習を持つ社会はアジアだけでなく世界じゅうで見られるが、それが隠蔽されたのは近代化によってユダヤ・キリスト教由来の硬直的な性文化が支配的になったからだ。すこし注意してあたりを見回せば、私たちのまわりには「乱婚」の痕跡がたくさん残っている。
    ・学問的にはともかく、専門家が積極的に「乱婚」説を取り上げたくない理由はなんとなくわかる。女性のセクシャリティはできるだけ多くの男と性交することだと、みんなが思うようになったとしよう。これは性文化における革命的な変化だが、現代社会(資本主義社会)では、フラワーチルドレン的(あるいはボノボ的)な愛と平和の理想郷をつくるのではなく、破壊的な作用をもたらす可能性のほうがはるかに大きい。ヒトの本性が男も女も乱婚だとすると、男性からの性交の要求を拒むのは文化的な抑圧でしかなく、純潔や純愛などという「迷信」はさっさと捨て去って、妊娠可能な女性はどんな男でも喜んで迎え入れるのが自然だ、と主張するひとたちが現われるだろう。
    ・高貴な血への崇拝と破れた血の忌避は、人類に普遍的なスピリチュアルセンスだ。しかし20世紀半ば以降は、人種差別やホロコーストの悲劇を経て、「械れた血が子どもに引き継がれる」という考え方はタブーとされた。だったら高貴な血の神話もいっしょに捨て去らなければならないが、そうすると王制(天皇制)の根拠がなくなってしまうので、こちらのほうは残すことにした。こうして、「高貴な血は子々孫々まで引き継がれるが、械れた血は遺伝しない」というなんともご都合主義なイデオロギーが「政治的に正しい」とぎれることになつたのだ。
    ・論理的推論能力や一般知能(IQ)において共有環境(家庭環境)の寄与度はゼロだ。音楽、美術、数学、スポーツ、知識などの才能でも、やはり共有環境の寄与度はゼロ。家庭環境が子どもの認知能力に影響を与えるのは、子どもが親の言葉を真似る言語性知ど能だけだ。こうした結果は学習だけでなく、性格でも同じだ。パーソナリティ(人格)を新奇性追求、損害回避、報酬依存、固執、自己志向、協調、自己超越に分類して遺伝と環境の影響を調べると、遺伝率は35-50%程度で、残りはすべて非共有環境で説明できる。すなわち、共有環境の寄与度はやはりゼロだ。同様に、自閉症やADHD (注意欠陥・多動性障害)をどの発達障害でも共有環境の影響は計測できないほど小さい。さらには、男らしさ(男性性)や女らしさ(女性性)といった性役割にも、共有環境は何の影響も与えていない。
    ・家庭が子どもの性格や社会的態度、性役割に与える影響は皆無で、認知能力や才能で一はかろうじて言語(親の母語)を教えることができるだけ。それ以外に親の影響が見らなれるのはアルコール依存症と喫煙のみだ。
    ・子どもの成長にあたって子育て(家庭)の影響がほとんど見られない理由は、思春期を迎えるまでは「友達の世界」がこどもにとってのすべてだからである。「友だちの世界」で生きるために親の言葉すら忘れてしまうなら、それ以外の家庭での習慣をすべて捨て去ってもなんの不思議もない。「子どもが親に似ているのは遺伝によるもので、子育てによって子どもに影響を及ぼすことはできない」。勉強だけでなく、遊びでもファッションでも、子ども集団のルールが家庭でのしつけと衝突した場合、子どもが親のいうことをきくことはぜったいにない。。子どもが親に反抗するのは、そうしなければ仲間はずれにされ、「死んで」しまうからなのだ。
    ・どものパーソナリティ(人格一は遺伝的な適性と友だち関係との相互作用のなかでつくられる。子どもはみんな、友だちグループのなかで日立てるように、自分が得意なことをやろうとする。それはスポーツだったり、歌や踊りだったり、勉強だったりするかもしれないが、そうした才能は遺伝の影響を強く受けている。
    ・ひとは無意識のうちに人種別のグループをつくる。これが人種差別の原因になるのだが、ひとは自分に似たひとに引き寄せられるという特徴(人間の本性)を持っているのだから、どうしようもないことでもある。ここで問題なのは、無意識のうちに集団を人格化し、敵対するグループとはまったく実異なる性格(ギャラ)を持たせようとすることだ。一人の子ども集団が禁じるのは白人の子ども集団が高い価値を置くことすべて子で、その象徴が「勉強してよい成績をとること」だ。
    ・「親は無力だ」というのは間違いだ。なぜなら、親が与える環境(友だち関係)が子ど」もの人生に決定的な影響を及ぼすのだから。

  • 話題の一冊。
    予想通りというか、予想以上に「それを言ってはオシマイだよなぁ」と思えるような身も蓋もない話が全編にわたって綴られております。
    巻末には豊富な参考・引用文献のリストもあり。
    付箋は19枚付きました。

  • 2017年、4冊目です。
    犯罪者に遺伝は影響があるのか?
    知能に人種による差はあるのか?
    データが何らかの因果関係を示すと、私たちは眉をひそめたくなる事がある。
    声高に話すことが憚られる事を、
    「言ってはいけない残酷すぎる真実」と説明しています。
    美醜による人生の格差は、データで証明されている。
    人種による成功や知能に格差があることも。
    犯罪を犯した人の遺伝子は、受け継がれていることも。
    なんとなくそうだと思っていても、あるいは、巷間言われていることも、
    なかなか公然と報道されたりすることはない。
    そういったことが、社会にはたくさんある。
    客観的なデータがありながら、事実として語らず覆ってしまうのは、
    表現の自由の観点からも間違いだとというのが、著者の出版主旨です。

    著者の執筆の動機は、次のことだとあとがきされています。
    2015年1月7日、フランスの風刺雑誌『シャルリー・エブド』の編集部が、イスラム過激派の武装集団に襲撃され、編集スタッフや警官など12人が犠牲になった。この
    事件を受けて、日本を代表するリベラルな新聞社は、「テロは言語道断だが下品な風刺画を載せた方も問題だ」として、「ひとが嫌がるようなことをする表現の自由はない」と宣言した。本書の企画を思いついたのは、この驚くべき主張を目にしたからだ。不愉快なものにこそ語るべき価値があると考えている。

    以前、ゴアアメリカ副大統領が「不都合の真実」を問いかけて話題になりました。
    事柄が、我々人類の将来の存亡にかかわることなので、公にされた事実は、
    権益を持つ人たちには不都合だったが差別や人権侵害とは距離のあるものでした。

    現代の進化論が突きつける不愉快な真実は、
    歪んだ理性を暴走させないための安全装置なのだと。

    究極は私たちがこれらの歪んだ真実を、
    寛容で受け止められるかだと感じました。

  • 世間で常識とされていることを、遺伝的に否定する。残酷ではあるけど、知っておくと世界で起こっていることの見方が変わる。今まで私の中で常識的だったことが覆る瞬間がたくさんあってずっと、わくわくした。

  • こんなにレビューの書きにくい本は初めて。しかし一読、二読の価値はある。

著者プロフィール

作家。1959年生まれ。2002年国際金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部を超えるベストセラー、『言ってはいけない残酷過ぎる真実』(新潮新書)が45万部を超え、新書大賞2017に。『幸福の「資本」論』(ダイヤモンド社)など著書多数。

「2019年 『2億円と専業主婦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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