- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106106781
作品紹介・あらすじ
家庭、学校、仲間、地域、本人……一体、誰のせいなのか。グレない人。グレて更生する人。グレ続けてヤクザになる人。人生の分岐点はどこにあるのか。自身、グレていた過去を持つ新進の犯罪社会学者が元組員らの証言をもとに考察した入魂の書。
感想・レビュー・書評
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なんか思ってたのと違うな。環境のせいです。で終わってるけどそれだけではないでしょ。知的障害や差別(部落など)については書かれてなくて割とレポだった。
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新書の文量、内容に相応しく興味深かった。
ヤクザになってしまうのは自分の意思とは他に、家庭環境や境遇に起因しているようだ。
自分とはかけ離れたことだと思ったらそれは間違いで、自分の教育や愛情によって子供がヤクザになってしまうと思ったら身近な問題だと思った。
ヤクザを減らすにはといった問題は非常に複雑であり難しい、、、 -
育った環境がかなり影響しているようだ
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東2法経図・6F開架:368.5A/H73y//K
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2019年3月1日読了
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読みようによっては、ヤクザになるのは社会的要因としているところがあるが、共感できない。
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筆者も昔グレてて、統計上の研究だけでなく実際に、当事者偽色を取りながら論を展開する。判りやすいし納得しやすい。
他社の論にも触れているし、論の展開も淡々としている。
最も面白いのは、元やっちゃんのインタービュー部分だったりするのがだが、入門書的であり網羅的。 -
非行に走っても、その先の受け皿(暴力団)がなければ、そこで立ち消えになる?
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■暴力団対策の二つの問題。
・若者の暴力団加入問題
・暴力団離脱者の社会復帰問題
■社会科家庭の中心点は子供が自己の生れついた社会の文化を内在化すること。
■下層階級の家庭の経済状況は不安定であり,その日暮らしであり,まじめに働いても獲得できる報酬は少ないので,常に金を稼ぐことにあくせくしている。彼らには芸術を鑑賞する感覚もなく,怒りや悲しみを直接的に言動に表出し,感情の表現が洗練されていない。そのような家庭で育った子供は親自身の教養が低く自分の子供を社会的に躾けていくのに自信がなく,場当たり的な矛盾した教育を行うか,あるいは全く放任している。その結果,子供は社会的個人として十分な躾を受けることはない。彼らの日常行う行動は中流階級の倫理価値からすれば,そのまま非行につながり日常生活そのものが飛行文化的な生活になっている。そして家庭の躾が十分になされず日常生活が不安定な下層階級の人たちは犯罪や非行的文化に接触する機会が多く犯罪や非行的文化に慣れてしまっていることが多いので犯罪や非行に対する態度は寛容,容認的となっている。
■暴力団加入経験者の家庭
・単親家庭
・疑似単親家庭:共働き家庭や長期出稼ぎ
・葛藤家庭:家庭内暴力が絶えない
・放置家庭:学童期に門限がない,躾や勉強の面倒を見ない
・意思疎通上の機能不全家庭:親子の会話が極めて少ない
■グレるという言葉の由来
・ハマグリを逆にしたグリハマという語をグレハマと訛り,それが動詞化されたもの。ハマグリは対でない他の貝と合わせると食い違うところからきた。
・まぐれる(紛れる)=迷うから転じたという説もある
■暴力団に加入する青少年の学校との関わり
①教育歴が短く義務教育修了者か高校中退者が多い
②学業成績が不振であり怠学歴も顕著で教育的アチーブメントの水準(学歴)が極めて低い
③学校内に親しい友人がなく学校生活への全体的な不適応が認められる(筆者は違和感)
・暴力団経験者学校不適応者であったか否かを検討する際,フォーマルな教師文化の視点に立つかインフォーマルな生徒文化の視点に立つかによりその結果は異なったものとなる
・筆者の調査では暴力団経験者の多くが学校における生徒文化に適応しそこで肯定的な評価を受け高い地位を得ていた
■「グレる分かれ道」は中学時代
■非行の第一段階は,家財の持ち出しや万引き自転車泥棒,学校・学級内窃盗など児童期の狭い活動範囲内における単純な非行
■非行の第二段階は,深夜徘徊,万引き,カツアゲ(路上強盗),オートバイ使用窃盗,暴走行為,シンナーや薬物の乱用,性非行等
・特徴的なこととして挙げられるのが「集団化」
■暴走族構成員やグレン隊の成員の意識の基盤には落伍者意識が常にあり,その結果自分と同じレベルにある社会的落伍者としての仲間との連帯を大切にし「仲間を極端に大事にする」。
■暴力団は典型的な「非合法的な機会構造」。
■覚せい剤のことを「骨までしゃぶる」から「シャブ」と言うようになった。
■シャブをやらないといけない場面
・住み込みで雑用をやる時期(部屋住み)には寝る時間がなく,親分を車の中で待たなければならない
・兄貴分から勧められる
■人がグレ続けて暴力団に加入する社会的な要因
①機能不全家庭による社会化
②学校内の教師を評価主体とする学校文化における否定的評価
③学校内生徒文化における肯定的評価や支持
④非行集団による地位の付与
⑤近隣地域における暴力団組織の存在
■暴力団加入における個人的要因
①学業成績不振者である
②中卒や高校中退者が多く教育的アチーブメントの水準(学歴)が低い
③非行集団加入歴がみられる
④早い時期から非行の傾向がみられる
⑤帰属する集団内において地位への主着がみられる
■「地位的な欲求」の存在こそが暴力団加入における最も重要な個人的要因であり個人的な特性である
■暴力団経験者たちの人生過程には様々な負の要因がかくも有機的に関連し負の連鎖を形成していることが見て取れる。
・家庭の放置は非行化の始点
・近隣の環境は非行や非行集団に加入する促進剤
■人は自分の生れてくる環境を選択できないという意味で家庭環境は制御不可能な状況とみなせる。即ち父母の教育水準,職業はどうであるかとか,そして家庭の所得レベルについても子供からすれば既に決められた環境である。そしてこれら制御不可能な家庭環境が子供の将来の人生経路を決める確率が高いことは,広く一般に認識されている。やさしく言えば,親が恵まれた状況にいれば子供も恵まれる可能性が高い。
■暴力団加入メカニズムの仮設
・社会的・文化的資本が撤収された家庭で発達した者が非合法的な機械構造内で地位を求めるとき暴力団に加入する傾向がある
・一般社会において自尊心の低下を経験したものが新たな帰属集団において自尊心の回復を希求するとき暴力団に加入する傾向がある
■トビラス・ハーシの「社会的ボンド理論」(「なぜ人は犯罪を止めるのか」という理論)
①「愛着のボンド」:両親や教師,雇用者に対する愛情や尊敬の念を指し,彼らに迷惑を掛けたくないという気持ちが非行や犯罪を抑制するというもの。
②「努力のボンド」:これまで努力して手に入れた社会的な信用や地位を犯罪に伴う利益喪失と比較し衡量した上で非行や犯罪が抑制されるというもの。
③「多忙のボンド」合法的な活動に関わり非行や犯罪に陥る時間がないこと。
④「規範意識のボンド」社会のルールに従わないといけないという意識であり,非行や犯罪に罪の意識が強い場合は抑止されるということ。
■暴力団からの離脱に関する仮定。
・成員のボンドが強い家庭や安定した仕事,近隣社会関係といった社会関係資本から生じるインフォーマルな社会コントロールが,従来の犯罪傾向の差異とは関係なく,暴力団からの離脱を説明する。
■暴力団離脱に作用する二つの力
①プッシュ要因:暴力団に居続けることへの魅力の低下(暴力団における内的な要因)
②プル要因:暴力団以外のルート,新たな(合法的)活動と道筋に引き付ける環境と状況(代替性)(暴力団における外的な要因)